鹿児島県022

指宿いわさきホテル

  • 1972年竣工
  • 設計/ウインバリー、ウイズナンド、アリソン&トング事務所、浦辺建築事務所(実施)
  • 施工/大成建設
  • 構造形式/鉄骨鉄筋コンクリート造 地上10階、地下2階、塔屋1階 増築部分:建築面積5,013㎡、延べ面積23,936㎡
  • 用途/商業・事務所建築
  • 所在地/鹿児島県指宿市十二町3805-1

戦後日本の高度成長期、南九州が新婚旅行のメッカと呼ばれた時代を象徴するリゾートホテル。薩摩半島東南端の指宿、15万坪の敷地に「ジャングル風呂」「ジャングルパーク」など「温浴・観覧・飲食」を備えた一大リゾートホテルとして1972(昭和47)年夏に竣工した。当時国体の鹿児島開催に来訪された天皇皇后両陛下の宿所となった。翌1973(昭和48)年夏には南国ムード溢れるリゾートガーデンを含む全工事が完了した。創設者 岩崎與八郎(1902-1993)がホテル建設に当たり設計者を厳選し、米国ハワイに実績のある「ウインバリー、ウイズナンド、アリソン&トング事務所」と日本の「浦辺建築事務所」に共同設計を依頼した。リゾートのマスタープランはハワイの「ベルトコリンズ社のレイモンド・ケイン」氏、インテリアデザインは香港在住の英国人「デール・ケラー」氏を起用、当時としては画期的なリゾートホテルを作り上げた。客室棟交差部に中庭を設け3つの円弧を組み合わせることにより各室からの眺望を確保、その機能が巧みに湾曲した外観となって現れている。またエントランス内部の吹抜け空間に有機的な動線を組み合わせたロビーには「空間のダイナミズム」が感じられ、内外含めた多様なシークエンスを体験することが可能である。パームツリー繁る中庭から泉水が湧き出しピロティ列柱空間を流れながらロビー内外を出入りし、やがて屋外のリゾートガーデンへ導かれた先には「青い海辺」が現れる構成は、米国ハワイのリゾートを彷彿させる手段として「ランドスケープを建築に融合させた」マスタープランナーの力量である。戦後を脱し豊かな時代へ突入したモダンムーブメントの建築と位置付けられ、その時代性を保ちつつ、今でも指宿の代表的なホテルとして稼働しており、親しく多くの来館者を日々迎え入れている。