鹿児島県025

岩崎美術館

  • 1979年竣工
  • 設計/槙 文彦(槙総合計画事務所)
  • 施工/間組
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上2階、地下1階
  • 用途/文化施設
  • 所在地/鹿児島県指宿市十二町3755

1975年に財団法人岩崎美術館が設立され、事業家岩崎與八郎氏所蔵の美術品71点が寄贈された。その後も多くの美術品の収集が行われ、1977年3月槙総合計画事務所(代表 槙文彦)に設計監理を依頼し、1979 年3月に岩崎美術館は竣工した。また、1983年1月に管理棟別館を増築し、同年4月27日に岩崎美術館は開館した。その後、1987年3月に岩崎美術館の創設者岩崎與八郎氏の芳江夫人の遺志により工芸品、民芸品を展示する岩崎芳江工芸館を増築した。3期に渡る工事の設計監理は槙総合計画事務所(代表 槙文彦)で、構造設計は美術館が木村俊彦構造設計事務所、工芸館は花輪紀昭建築構造設計事務所、施工はいずれも株式会社間組である。
2つの建物は地下通路でつながっており地上では2棟別々の建物に見える。外観は明瞭な幾何学な形態で水平垂直の力強いラインと、繊細な鉄骨フレームが対比する。コンクリートの打ち放しに白の塗装を施した外壁は時の経過を感じさせながらも、強い太陽の光、青い空や海、深い植物の緑にくっきりと浮かび上がる。建物全体のレイアウトはなだらかな丘になった地形を活かすことによって、海側の工芸館を少し低いレベルに抑え存在感を和らげている。美術館内部も緩やかな地形がそのまま活かされたスキップフロアで空間がつながり、その中にマッキントッシュやコルビジェの椅子が置かれている。いずれも自然の地形あって成しえる空間構成であり、設計着手時に現場を訪れた槙文彦氏は九州電力の高所作業車に乗り込み、上空から辺りを見渡し美術館の配置を決めたとの事であったが、この時すでにこのような空間構成を描いていたのかもしれない。自然の光が差し込むホール、壁に組み込まれた暖炉、まぶしい光があふれるテラスなどがそのまま展示空間となり、地中海のヴィラをイメージしたとの槙氏説明の通り有機的空間となっている。工芸館においては海の見えるラウンジ、テラスとつながる談話空間があり、大自然を感じながら芸術と触れることが出来る。年間利用者も多く、鹿児島の誇りとして存在する美術館である。