鹿児島県026

枕崎漁港水揚げ荷捌き施設

  • 1985年竣工
  • 設計/新港北側1期工事:Best建築設計 新港北側2期工事:川元設計 新港南側:川元設計
  • 施工/新港北側1期工事:飛鳥建設・仲間建設JV 新港北側2期工事:日本国土開発・森組JV 新港南側:五洋建設
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上1階
  • 用途/産業施設
  • 所在地/鹿児島県枕崎市松之尾町66番地及び82番地

枕崎はカツオの一本釣漁業が盛んで、枕崎魚港には南方漁業基地として遠洋漁業と沿岸漁業の水揚がある。水揚げ量の増加と漁船の大型化に伴い、漁業設備の整備を行うため港は南側に埋め立て拡張され外港が建設された。調査対象建物は巻き網船の陸揚げと選別作業場として使われている。
北側の建物は水産庁の補助金と種子島周辺対策事業の補助金が投入された。昭和60年(1985年)1期工事で200m、平成1年(1989年)2期工事が100mの2期に分け建設された。全体は屋根部分で奥行き30.6m、全長300mの建築で外壁の無いピロティ形式となっている。屋根には半円筒形のプレキャスト版を並べた特徴のある屋根で、柱は桁行25mの12スパン、梁間方向が20mの1スパンである。梁間方向両側に5.3m屋根がキャンチで出ている。屋根のプレキャスト版は梁間方向に12枚並べて構成されている。1期工事の200m部分は近海のアジ、サバなどの近海巻き網船の水揚げとして専用使用され、2期工事100mは遠洋からの冷凍カツオ、マグロの水揚げとしても使用される。
平成12年(2000年)新港南側に同様の構造で新棟が建設された。奥行き30.6m、全長100m用途は遠洋漁業の冷凍カツオ、マグロ専用の水揚げ荷捌を目的として、種子島周辺対策事業の補助金で建設された。
特徴的な形態となっている屋根の構造はむくりがあり、薄肉プレキャストプレストレストコンクリート版(製品名:シルバークール)で、肉厚は薄い部分が74㎜で全長23.3mの部材である。製造は飯塚の工場で行われ現場への搬入は専用のトレーラーを使い夜間に陸送で行われた。
接岸された漁船からクレーンで水揚げしベルトコンベアの両脇に並んだ人により選別されコンテナに氷と共に収納される。海に向かってコンクリートの床には勾配が取られ、仕切りのない空間をフォークリフトが水揚げされ選別されたコンテナを輸送用のトラックまで運んでいる。
屋根からの雨漏りなどの改修を定期的に行なっているが、この工法は面剛性が低く構造的な補強や、海外への輸出で衛生的な環境の改善が必要になり、荷捌き所の整備計画がある。今後、改築か改修などの検討がなされることになっている。
この屋根構造は鹿児島県内では昭和50年代より体育館や講堂の屋根に使われていた。昭和60年前後に連続スパンの大規模な建築が種子島公設地方卸売市場や漁港の荷捌施設として建築され、串木野漁港、山川漁港、阿久根漁港などにも建設された。工場が九州にあったため、まだ、いくつか見られるが、漏水や耐震補強の問題から徐々に減少しつつある。