鹿児島県027

ウッドタウン知覧

  • 1987年竣工
  • 設計/基本:市浦都市開発建築コンサルタンツ、実施:堂園設計
  • 構造形式/木造 地上1階
  • 用途/住居建築、公営住宅
  • 所在地/鹿児島県南九州市知覧町郡4630-77

鹿児島県では、昭和60年から、県民の居住水準の向上、良好な住環境の形成並びに地域の振興を図るため、地域特性に応じた良質な木造住宅の開発及び供給を促進するウッドタウンプロジェクトを全国に先駆けて推進しており、このウッドタウンプロジェクトにより建設された木造住宅モデル団地の一つである。県・知覧町・県住宅供給公社・同町土地開発公社(建設当時は知覧町であったが、現在は隣接の2町と合併して南九州市となっている。)が一体となって昭和60年代に市街地に隣接した山林を新たに開発した木造住宅モデル団地(公営住宅75戸・宅地分譲73宅地)に昭和62年から平成2年にかけて県営45戸と町営30戸の計75戸の公営住宅(ウッドタウン知覧)を建設し、その後の団地全体の街並み形成に大きく影響を与え、知覧の伝統を踏まえた街並みが形成されている。
ウッドタウン知覧は、薩摩の小京都と呼ばれる知覧武家屋敷群(伝統的建造物群保存地区)の美しい街並みをモデルにして造られた公営住宅であり、木造平屋の2戸1棟とした入母屋瓦葺きのどっしりとした住宅には武家門をイメージした倉庫を兼ねた門が各戸に付いている。
また、藩政時代の地域の政庁である仮屋をイメージした集会所、自然切石積みの石垣と低木・中木のイヌマキを2段構成した生け垣による外構など、徹底して伝統的集落の優れた景観や民家の造りを現代に活かした街づくりがなされている。
団地中央の石畳の遊歩道には隣接する川の水を取り入れた清流溝が設けられ、住民のふれあいの場となっている。
団地には地場産の木材、石材、瓦、樹木などの活用が積極的に図られている。
ウッドタウン知覧は、建物の屋根・外壁や外構を統一し、また木の良さを活かすため、外壁の一部や主要部を杉板(横張り)とし、純木造の門兼倉庫を設けるなど、木造住宅団地にふさわしい景観となっている。住戸プランは2LDK、3DK、3LDKで、本県の伝統的な住まい方であり、現代においても根強いニーズのある続き間を設け、高温多湿の気候に対応し、風の通りを良くするとともに、ヌレ縁や縁側を設けるなど、夏季に涼しいプラン構成となっている。また、伝統的な土庇を持つ錏(しころ)葺きタイプの住棟プランも採用している。なお、維持修繕については、適宜必要な補修は行われており、県営住宅については、平成24年から25年にかけて屋根や外壁の塗装工事が行われている。