1989年11月から1990年5月、TAKASAKI物人研究所 高崎正治氏によって住宅として設計された建物。施工は1990年6月から1991年7月まで春園組が行った。ZERO COSMOLOGYとは、ゼロの数学的概念を哲学としてとらえ、建築という物理的空間に宇宙を具現化したものである。建築には常に風土が大きく関わっているが、活発な桜島に対して人工物がどうあるべきかをテーマとして計画された。地上階は円形の水盤があり、最上階には天空庭園をもつ。その中間に位置するゼロの小宇宙は、天でも地でもなく宙に浮くように造られている。外部の四角いフレームは大地を表し、その中にある丸い卵型の空間は宇宙を意味する。大地で囲われた小宇宙は聖域となり、小さな丸窓が54カ所設置されている。54とは人間の煩悩108つの半分にあたり、季節や時間によって刻々と光の形状が移り変わり静寂でエネルギーを感じる空間である。まさに高崎氏の唱える「思想が形を造る」建築である。当時施工した春園組の高い施工技術でこの革新的な作品が具現化した。この建物は、現在高﨑正治氏のアトリエとして利用されている。