鹿児島県030

霧島国際音楽ホール(みやまコンセール)

  • 1994年竣工
  • 設計/槇 文彦(槇総合計画事務所)
  • 施工/竹中工務店
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上2階、地下1階 敷地面積:44,800㎡ 建築面積:3,190m㎡ 延べ床面積:4,904㎡
  • 用途/文化施設
  • 所在地/鹿児島県霧島市牧園町高千穂3311-29

霧島国際音楽祭は、1980年夏から始まった。当初から中心となって活動されたゲルハルト・ボッセ名誉音楽監督(1922~2012)は、【新建築1994年11月号】への寄稿で以下のように述べている。
『最初のメイン会場は空調設備がなかった。3年目は会場を移し空調設備が整った中で出来た。ただ最上の響きを創造するのに不可欠な良い音響を提供はしてくれなかった。音楽家と聴衆が共に満足できるホールへの願いと要求が生じ、日ごとに強くなっていった。第12回目の音楽祭で、土屋佳照県知事が3年後新しいホールを提供することを約束してくれた。』
霧島国際音楽ホール(みやまコンセール)は、鹿児島県の「霧島国際芸術の森」構想(1992年3月)の中核施設として建設された。豊かな自然環境に恵まれた、起伏に富んだ斜面の中腹に静かに置いたかのように建ち、北東側に位置する霧島連峰に開き配置されている。霧島連峰のパノラミックな展望は、喫茶室・ホワイエから望める。建設当時の植栽が成長し、見える範囲も少しずつ縮まりつつあるが、雄大な自然との一体感を目指した音楽ホールとして意図されたことが確認される。
770席の音楽ホールは、シューボックスを基本とした木の葉型の平面と船底型の天井を採用し、クラシック音楽を中心とした室内楽にふさわしい残響や音に包まれた立体感ある豊かな響きを味わうことができる。音響設計は安藤四一(神戸大学工学部助教授・当時)博士である。室内の壁は1/10の角度で傾斜しており、ランダムな凸凹した形状で、ハードメープルという木質系の仕上材でできている。優れた室内楽ホールとして、世界的にも知られている。
設計者の槇文彦が60歳頃の作品で、県内では「いわさき美術館」に次ぐ作品であり、曲線や立体的な形態の組み合わせは、槇文彦の新た造形の展開を示している。担当は、現在、慶応大学教授の池田靖史で、その複雑な形状から、槇総合計画事務所で最初期のCADを用いて設計された。
以前、外部アプローチに手摺の設置をしてほしいとの要望があったらしいが、勝手に設計者の意図に反してデザインを壊すことは出来ないと、設計事務所に確認したうえで止めたらしい。設計事務所との連携も素晴らしいが、芸術に携わる仕事をされる方の意識の高さに感心させられた。
現在、鹿児島市にある県文化センター、近隣にある湧水町の霧島アートの森美術館との連携も始まりつつあるようだ。今後、音楽祭での密な連携もしていく予定らしい。