鹿児島県031

輝北天球館

  • 1995年竣工
  • 設計/高﨑正治都市建築設計事務所
  • 施工/五洋・春園特定工事共同企業体
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上4階 敷地面積:5,288㎡ 建築面積:425㎡ 延べ床面積:427㎡
  • 用途/文化施設
  • 所在地/鹿児島県鹿屋市輝北町市成1660-3

輝北天球館が建っている輝北町上場公園は、標高550mの高台にある。西には眼下に錦江湾と桜島、東には都城盆地、北には霧島連山、南には志布志湾と360度の大パノラマが楽しめる。また、この地は環境庁主催の全国星空継続観測において4季連続「冬季・夏季星空日本一」に認定されている。
長期振興計画「さわやか高原リゾート構想」の一環として、この一帯の全体計画「星の降る里(仮称)」の目玉として、「輝北天球館」(当初は「(仮称)輝北町星の降る里館」)が建設され、設計者はプロポーザル方式で選定された。
設計者である高﨑正治は設計コンセプトを次のように述べている。
『自然の景を積極的に抽象化、視覚化する / 建築は常にその土地への共感の意志を持つべきである。輝北町の山並など自然の景をデザインモティーフとして積極的に抽象化、視覚化する形状の集積による流動的形態に<輝北町>と<そこに集う人達>との有機的関係を取り結ぶ場を多義に創出する。』
『環境生命体としての建築をめざす / 自然環境の清澄な美しさを取り込むために、光・風・気など自然の微妙な変化に感応し、多彩な表情で流動するデザインを基本とする。このように、そこに流れる<時間>そのものを構造化する建築は、生命的パワーを放射して周辺の<空間>を覚醒し、自然環境と協働する。』
『宇宙へのファンタジーを喚起し、具現化する / 例えば<宇宙への道>をイメージして美しい流線を描く形を配し、その形態には独特の存在感を創出する。』
上場公園では、一帯を利用したクロスカントリーやトレイルランニングなども開催され、キャンプで訪れる者も多数いる。その上場公園のランドマークとして輝北天球館はそびえ建っており、現在も天文台として稼働しており、天体観測も盛んに開催されている。
外観は、建築というよりオブジェのような形態が、コンクリート打放しでつくられ、力強い。外壁は、多少の汚れ等は目立つが、塗装防水の修繕をするなど維持管理は良好である。1階から伸びる柱は全て傾斜しており、当初、鉄筋コンクリート造の柱の予定であったが、施工上の問題で鉄骨鉄筋コンクリートで造られたと言われる。施工は、五洋建設・春園組の共同企業体である。この作品で高崎正治は日本建築家協会の新人賞を受賞した。
1階の地の広場から研修室(ゼロスペース)を貫く3本の傾斜柱は、そのまま外部に飛び出し、空に伸びている。その「ロータス」は最高高さ34mで、この建築物の特徴の一つとなっている。内部の研修室(ゼロスペース)は、楕円形のコンクリート打放しの空間が大変美しい。ただ現在、「子供のいえ」「スタードーム(プラネタリウム)」は使用されていない。