長野県025

やまびこドーム(旧 信州博覧会グローバルドーム)

  • 1993年竣工
  • 設計/齋藤木材工業+KAJIMA DESIGN
  • 施工/鹿島・齋藤木材工業
  • 構造形式/木造および鉄筋コンクリート造 地上2階(観客席部分)
  • 用途/文化施設
  • 所在地/長野県松本市空港東9036-4

○概要
「やまびこドーム(信州博覧会グローバルドーム)」は、1993(平成5)年に開催された、建設省「地域イベント推進事業」第1号に認定された『信州博覧会』のメイン施設として、前年から1年をかけて建設された。
信州博覧会終了後は、多目的スポーツ施設、各種イベント(文化催事・展示会・見本市など)として利用されている。
○特徴
地球をシンボル化した半球状の建物は、信州博開催当時「グローバルドーム」と呼ばれ、期間中800を超える国内外のイベントがここで行われた。このドームは、信州産カラマツ材による初の100m級ドームである。外観はアルプスの山並みを背景に松本平の景観と調和を図りつつ、折板状のステンレス葺き大屋根をコンクリートの二重列柱の上に浮かせたものである。内部はカラマツ材による湾曲アーチに、直部材小梁を杉綾状(「ヘリンボーン(herringbone:ニシンの骨))に組み上げ、その梁間にスギの間伐材を垂木として全面に配し、トップライトからの光でそのパターンを美しく浮かび上がらせている。また、木の持つ性質が活かされ、素材のぬくもりが感じられる、信州を代表する建造物の一つである。
○評価
<革新性> 長野県産の信州カラマツ材の大断面集成材の大梁を使用したドーム建築では、国産材を使った木造ドームとしては当時日本一の大きさであった。直径110m、高さ40.5m(12階建てビルに相当)である。
構造上の特徴である静岡産杉材の野字板パネルシステムは、屋根下地材と構造材を兼用するもので、新しい発想に基づいて開発されたものである。
<技術性> 建方は、ドーム中央に作られた仮設構台の上に鋼製型枠を組上げコンクリートを打設し中央圧縮リングを構築、同時に下部構造も構築する。続いて山形に地組された下部のアーチユニットを方杖材で支持しながら建て、中間部のアーチュニットを建て込み上部の中央リングと接続している。建方中は、架構の均衡を保つため円を3等分し、対面する各ユニットがそれぞれバランスするように順次建方を行っている。建方完了後は、中央リングを支持するジャッキをダウンすることで、初めてドームとしての力学系が成りたち完成する。メインアーチと杉綾状の小梁の間に、細かく並べられたスギの間伐材に構造用合板を釘打ちすることにより、屋根面剛性を高めると同時に折版構造のドームを構成している。
○現状
1994(平成6)年2月 松本平広域公園の愛称及びグローバルドームの名称が公募により「信州スカイパーク」・「やまびこドーム」と決定。グラウンド全面に砂入り人工芝を新たに敷設し、さまざまなスポーツから各種イベントまで、さまざまな用途に利用可能な多目的施設として親しまれている。天候に左右されない屋内施設なので突然の雨でも安心して使用できる。グラウンドには冷暖房設備こそありませんが、木造の屋根が強烈な日光を遮り、外気温との差が5~8℃に保たれるため、暑い真夏の季節でも比較的快適である。また、グラウンドの他に、広さの異なる3つの会議室があり、会合・各種教室などさまざまな用途に使われている。

文責:小笠原み江