岡山県003

岡山県天神山文化プラザ

  • 1962年竣工
  • 設計/前川國男建築設計事務所
  • 施工/大本組
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上3階、地下1階
  • 用途/文化施設
  • 所在地/岡山県岡山市北区天神町

前川國男の設計による岡山県天神山文化プラザは終戦前から公共建築エリアとして後にカルチャーゾーンと呼ばれる岡山市中心部の天神山に建つ。施設は当初、図書閲覧室、視聴覚ライブラリー、日米文化センター、集会室(現ホール)を併設した文化振興複合施設の嚆矢、岡山県総合文化センターとして1962年(昭和37年)完成した。1988年県立美術館,図書館の開館により、収蔵・図書館機能をそれぞれに移管し、2005年に改修して5つの展示室、ホール、練習室、会議室を備えた芸術文化振興施設となった。
前川は高度成長期端緒に顕著であった文化会館開設において1960年から京都会館、東京文化会館などの設計に携わり、作品ごとにテクニカル・アプローチを展開していた。その一例が師、ル・コルビュジエ風のブルータルなコンクリート打ち放しから転じて生産性とディテールの正確さの追求のためのプレキャスト採用であった。本施設では南北面の格子状フレームに採用されている。それはブリーズ・ソレイユ(日除け壁)とよばれ、ル・コルビュジエの風合いを持ちながらも前川風にアレンジされ、南北面の水平連続窓の前面に取りつき、西側の迫り出した踊り場の階段を包含するピロティに欠き込まれた量塊との対比的な構成は特徴的な意匠性を呈している。
平面は外部階段、ピロティ、吹抜、ロビー、コアからなる中央部をはさみ南北両側に東西のホールと展示室、会議室などの主要空間によって構成される。ル・コルビュジエの近代建築5原則の一つであるピロティは風と光が抜け、何より外部のロビーとしても機能する。その正面にある屋上までの吹抜け壁面には山縣壽夫によるコンクリート打込みレリーフ「鳥柱」が設けられ、ロビーの打放しの壁にはオブジェのように穿孔された空調スリットや部分的に彩られる強烈な原色もあいまって文化芸術施設にふさわしい空間が総合的に形成され、老若男女の創作発表の場として今も県民に親しまれている。