岡山県004

岡山市民会館

  • 1963年竣工
  • 設計/佐藤武夫建築設計事務所
  • 施工/建築:大本組、舞台機構:三精輸送機
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上4階、地下1階、塔屋 鉄板葺
  • 用途/文化施設、商業・事務所建築
  • 所在地/岡山県岡山市北区丸の内二丁目1-1

佐藤武夫の設計による1963年(昭和38年)竣工の岡山市民会館は岡山城の西、本丸跡の石山台地の北側に1718席の大ホール棟と会議室、結構式場からなる付属棟から構成される。佐藤の「一体の美観地帯に形成しよう」※という思いのもと、完成時には現存しないNHK会館を東の当りとした空地を囲んで北に本会館付属棟と南に佐藤事務所による前年竣工の山陽放送会館事務棟が中空ブロックによる同様のファサードを纏って向かい合って配置された。空地は佐藤がヨーロッパ都市の駐車場兼用広場として小舗石敷で中央には噴水と水盤が配されていた。建築家が働きかけて公共と民間の別機能施設が共有空間と外観意匠の一体性をもつ協調提案による都市の公共性創出が実現できた時代性、地方都市の官民双方の気概を感じる希少な例であろう。
正八角形の二丁掛特殊焼成タイル張りの大ホールは隅部のニッチ、中空ブロック壁のホワイエの突出、北側の水平庇などで量塊性は柔らげられ、低層管理エリアを介して繊細な半透過の中空ブロック壁を纏う付属棟と接続される。多角形ホールと直方体の対比的構成は後の熊本市民会館にも見られる設計者特有の巧みなデザイン手法である。構造形式は佐藤事務所が採用してきたV字型断面の鉄筋軽量コンクリート造である。高さ制限のなか、座席下の勾配天井などで観客の歩行動線と休息のためのホワイエを重層的に構成して流動性を高め、外部にも跳ね出してリズムを形成している休憩場所の壁面のガラスモザイクの多彩な光に誘引される。内壁はコンクリートの粗いはつり仕上げで覆われ、触感を呈する。ホール内部も縞目のあるはつり壁と吸音壁があわさった立体的な空間構成は佐藤の音響計画にくわえて意匠性を強く感じる。
当時は市民のニーズであった結婚式場は現在、貸会議室となり継続利用されているが、岡山芸術総合劇場の2023年開設による閉館案が市民に惜しまれている。

※「月刊RSK昭和36年4月号」掲載「新築の山陽放送会館」佐藤武夫