岡山県006

玉野市役所本庁舎

  • 1966年竣工
  • 設計/K構造研究所
  • 施工/前田建設工業
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上4階、塔屋2階
  • 用途/官公庁舎
  • 所在地/岡山県玉野市宇野

玉野市が宇高連絡船やフェリーが高松と結び四国への玄関口として、また造船業の企業都市として賑わった頃、昭和41年(1966年)宇野の新浜塩田の埋め立て地に建設された玉野市役所庁舎である。庁舎は鉄筋コンクリート造4階建て、1階は中央に二層の吹き抜けホールを持つ市民窓口部門、2階は吹き抜けホールを囲み行政事務部門、3階は市長室、大会議室、4階は議場を含む議会部門と階別にゾーニング分けして構成されている。更に屋上には二階造りの望楼が設けられ、最上階から宇野港や瀬戸内海、市内一円を見渡せる展望室が設けられている。本館の東側に三棟の鉄骨造り平屋建て、約2,100㎡の附属棟も同時に建設された。
設計は、旧日生庁舎(1960年)、新見市庁舎(1962年)等を設計した株式会社K構造研究所である。同社は、鋼材量が在来の鉄筋コンクリート構造の約半分ですむ「軽量鉄骨鉄筋コンクリート構造」の特許考案者である松本明男が創立したもので、1956年東京事務所と大阪事務所を設立し、1963年に呉市体育館の受注を契機に、広島事務所が開設された。
昭和30年代、庁舎建築は前川國男、丹下健三などの鉄筋コンクリート構造打放しが全盛を極める中、同社の庁舎建築はRC構造を直截に表現した構造デザインが特徴である。本建築の中央に階段室、EV、WCで構成されるダブルコアーに囲まれた、13.2m×19.8mの二階吹き抜けホールを設け、その直上3階に無柱空間である大会議室、4階に議場を配置した、野心的な構造計画が注目される。また、ホールの太い柱・梁、手摺り、4面の外観での力強く跳ね出したベランダが印象的であり、無装飾を標榜したモダンデザインのセオリーに対して、望楼、ベランダの鉄製手摺りやホールのコンクリート壁面にV字型の模様が繰り返し採用され意匠のポイントとなっている。
一階の吹き抜けホールに見るように、市民サービスの効率化を図り最小経費で最大効果を意図した、市民に開かれた市庁舎は、約60年間その偉容を保っている。