岡山県007

和気町中央公民館

  • 1970年竣工
  • 設計/建築:建築研究協会+京都大学+川崎研究室、構造:塩路建築事務所、設備:建築研究会
  • 施工/大成建設岡山営業所
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 鉄板葺
  • 用途/文化施設
  • 所在地/岡山県和気郡和気町尺所7-1

和気町中央公民館は岡山県南東に位置する人口1万3千ほどの和気町中心部を流れる金剛川の堤防に沿った町庁舎(現在は移転)の敷地内に大阪万博の年1970年(昭和45年)、イベント施設としての地方公民館建設の流れの中で竣工した。設計は建築研究協会と京都大学川崎清研究室である。構造は鉄筋コンクリート造で一部鉄骨造、照明デザイン は石井幹子による。
外観は、開口部の少ないコンクリート棟からガラスのエントランス空間が金剛川を挟んで臨む和気富士に向けて鋭利にせり出し、コンクリートの閉塞感とガラスの開放感の強い対比が周辺のランドマーク的役割を果たしている。平面計画はホール型で約16m×約16mの大集会室と約11m×約10mの第一会議室、ホールロビーを挟んで、事務室、第2会議室、調理実習室、講義室、今は改修された図書資料室、閲覧室が配置されていた。玄関ホールは外部空間の延長としてアプローチデッキと同レベルで内部に導入され、ハーフミラーの全面開口によって外部からの連続性の高い中間領域を構成している。川崎による万博時の大阪国際美術館にも見られるエントランス・ロビー全面のカーテンウォールとガラス手すりなどの当時の近未来的なディテールにも氏の意匠性と70年代の息吹を感じる。
平面図には、外部から玄関に至るまでの広いアプローチデッキに「プラザ」と名付けられている。2年後設計した同館の日笠分館においてはアプローチを「西の庭」と名付けている。どちらもアプローチから玄関ホール、ロビーそして各諸室へと繋ぐ空間を吹抜の階段でアクティブに周辺の外部環境と繋いでいく特有の手法である。
和気町では以前は青空公民館として地道な社会教育活動が続けられていたが、この公民館が完成して、年間延べ15万人近くの利用者が訪れる様になり、この町の社会教育に多大な影響を与えることとなった。開館から半世紀近く経った現在も変わらず町民に親しまれている。