岡山県008

井原市民会館

  • 1971年竣工
  • 設計/関西建築事務所(村山衛弘)
  • 施工/松本組
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上2階(一部3階)
  • 用途/文化施設
  • 所在地/岡山県井原市井原町

岡山県の西部にあり広島県に接する、井原市の行政・文化施設が建ち並ぶー画に、井原市民会館は位置している。竣工は昭和46年(1971年)である。この一画の東北部には文化施設にあてられており、1969年落成の「田中館」(現在の田中美術館)を核として、北側に「道挟公園」(現在の田中苑)、そして東側に井原市民会館が位置している。田中館は井原出身の彫刻家・平櫛田中を顕彰することを目的とし、その作品を展示公開するための美術館である。
1969年に公表された「市民会館建設完成予想図」※によると、2階建ての外観は、高さの半ばでバルコニーが回り、屋根はフラットで軒裏が外に向いて反り上がったもので、前川國男設計の一連の会館の意匠に近く、この時代の劇場建築の典型的なスタイルとみなすことができる。実際に竣工した時の軒先は反り上がった形状ではなく、上すぼまりの台形である。建物の正面には、高い時計塔を屹立させ、バルコニーと軒による水平ラインとの交差により、意匠的な独自性を保っている。
建築の主要な仕上げは、コンクリート打放しであり、木製定尺パネルと(合板型枠+桟木による樹木型模様)の併用がおこなわれているが、後者の施工は特筆に値する。また、ホール棟の東西面には抽象形態のレリーフが付けられており、大変目立つものである。
設計は岡山の公共建築(玉野市役所、旧日生町役場、新見市役所など)を手がけたK構造から独立した関西建築事務所(村山衛弘)によるもので、K構造の作品を加えた一連の作品の岡山における集中の度合いから地域性の一端を担っている。
竣工後35年目である2006年には耐震改修を含む改装をおこなっており、継続性の点でも評価可能である。

※『井原市広報』昭和45年1月15日発行