岡山県015

株式会社 創和設計

  • 1982年竣工
  • 設計/石井修/美建・設計事務所
  • 施工/清水建設
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上2階、地下1階
  • 用途/商業・事務所建築
  • 所在地/岡山県岡山市北区野田屋町二丁目10-5

この建築は測量機器メーカーの事務所として昭和57年(1982年)に竣工した。その後売却され2000年より建築設計事務所として使用されている。岡山市の中心地にありながら、地上2階、地下1階の小規模な建築物である。
「現代の市街地を美しい町並み」※1とするために、この建築の屋上は緑化された。それと同時に「屋根面積の半分がガラスなので(中略)、植物の力を借りなければ成立しない建築」※1という温熱環境上の目的も兼ね備えている。また、斜めのガラス屋根ではなく、ボックス状のトップライトと植樹帯がひな壇状に交互配置された外観は、分節されたことによって繊細なものとなっている。一方、内観はコンクリートの円柱と胴差しの梁からなり、その梁が幅広の束を受けるなど簡潔で力強い構成となっている。束を必要とするのは植樹帯のボックスのピッチが柱間隔の半分のためである。
設計者の石井修は、「目神山の一連の住宅(西宮市)」によって1986年度日本建築学会作品賞を受賞している。同住宅群の特徴は、緑の中に家を建てることにある。具体的には「ひな段状の住宅地ではその存在自体が小さな森」※2というもので、傾斜地と緑化の組み合わせである。この手法が市街地の建築に応用される場合は、建築をひな壇状にセットバックさせる。「ドムス淀川(1979)」「シャルレ本社ビル(1984)」は1層ごとにセットバックされたベランダのパラペット部分に緑化が施されている。それに対して、この建築の緑化は屋上全体を一体的に覆うもので、「人工の小さな森」※1と呼ぶに相応しいものである。このように、この建築は石井修の設計上の特徴が顕著に見られ、同氏の作風の展開を示すものである。
この建築の所有者が建築設計事務所に変わったときに、増床するために北西隅の吹き抜け部分を床に改造したが、それ以外は当初の状態をよく留めている。また、1年2回の屋根掃除をおこなうなど、維持管理も十分になされており、継続性が高い。

※1 新建築 57 (13).新建築社,1982
※2 石井修「見えない家」建築雑誌 107(1328) ,1992