岡山県023

いかしの舎

  • 1992年竣工
  • 設計/古民家再生工房
  • 施工/藤木工務店
  • 構造形式/木造および土蔵造 地上2階 本瓦葺、桟瓦葺、桧皮葺および草葺(藁・茅など)
  • 用途/文化施設
  • 所在地/岡山県都窪郡早島町1466

もともと「いかしの舎」は早島町の旧家の住宅の呼び名であった。明治期に建てられたこの住宅は、空き家となっていたが、所有者から町に寄贈、土地も貸与されたのち、コミュニティセンターとして活用される改修工事が計画され、平成4年(1992年)に竣工した。施設内の茶室はこのときに新たに増築されたものである。
この建築を設計したのは「古民家再生工房」という団体である。この団体は6人の建築家のメンバーで構成され、調査から竣工まで全メンバーが参加した。文化財的な保存修理ではないため、設計には建築家の個性が表現され、新たな試みもなされている。それらが外観に表れているものとしては、ナマコ壁の張り方や丸窓、トップライトの卯建つ、室内では建具の意匠、畳の敷き方などである。これらの意匠は、同じ建築家によって他の建築物でも使用されるものであり、建築家の固有のスタイルである。
明治以前に建設された民家を保存展示するのではなく、公共団体がコミュニテイセンターとして活用する、こうした試みは、倉敷川畔で起こった町並み保存運動からつながるものであり、後の時代の「古民家再生」の流行の先鞭をつけるものである。
古い民家の改修設計なので、形態や構法に関する地域性は、改修以前のもとの建築物にその由来を求めることができるが、それだけではなく、「古民家再生工房」のメンバーの活動の地域における面的な広がりや、実績の数的大きさをかんがみれば、地域で先駆的に活動する建築家と捉えることが可能であり、彼らの設計に地域性を見ることは妥当である。
なお、建築および庭園は適正に維持管理がなされている。