岡山県025

華鴒大塚美術館

  • 1993年竣工
  • 設計/倉森建築設計事務所
  • 施工/大林組・小田組共同企業体
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上2階 元桟瓦葺および銅瓦葺
  • 用途/文化施設
  • 所在地/岡山県井原市高屋町

華鴒大塚美術館は繊維業が盛んでタカヤグループの企業メセナの一環として平成5年(1993)に竣工した。コレクションの大半を占める花鳥画家・金島桂華の優美な作品を中心とした展示がなされている。この建物は鉄筋コンクリート2階建て日本瓦葺きの数寄屋風の上質な建築物である。岡山西部に位置する井原市の中心部より約3km西にある井原鉄道高屋駅前の四辺を道路に囲まれた3,000m^2弱の敷地である。敷地北側の道路が主要道であり、北面に高屋駅、西側の隣地に駐車場があることから、敷地北西からのエントランスアプローチとしている。
建物の配置構成としては北側に東西方向の主棟、東側に2階建て南北方向の展示棟、西側に平屋建て南北方向の特別展示棟によるコの字型配置となっている。
西北の広々としたエントランスアプローチより建物の全体をみると、日本瓦の織り成す景観が古くから栄えたこの地の風景に混ざり込み違和感を感じさせないデザインとなっている。
ポーチより内部ロビーに入ると、正面に日本庭園「華鴒園」が広がる。茶道上田宗箇流15代家元・上田宗源により設計監理された枯山水方式のこの庭園は茶道の風雅幽寂の境地が表現され、建築のデザインに見事に調和されている。
東に位置する展示棟は1階、2階ともに展示室を配し、2階ホールやロビー上部吹抜とともに一体感のある空間構成となっている。各展示台にも統一されたデザインがほどこされ、上品なスッキリとした展示室となっている。
西に位置する特別展示棟は入って正面に坪庭を配し、和風デザインの床の間や床柱をしつらえ、壁は聚楽壁、天井は船底天井といった部材で構成されている。設計者の倉森治(1936~) は岡山県の建築設計業界を長く牽引してきた第一人者であり、県内全域に大変多くの作品を残している。地域の風景の中にさりげなく溶け込み、落ち着いたデザインは倉森氏の景観を重視する特徴としてとらえることが出来る。
現在、この美術館は絵画の企画展はもとより工芸作品の展示など文化施設として地域に開放され、ギャラリー、コンサートホール、お茶席、講演会等、利用の場を拡げている。