岡山県030

岡山西警察署

  • 1996年竣工
  • 設計/磯崎新アトリエ(磯崎新)、倉森建築設計事務所、構造:川口衛構造設計事務所
  • 施工/蜂谷工業・奥村建設共同企業体
  • 構造形式/鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄骨造
  • 用途/官公庁舎
  • 所在地/岡山県岡山市北区野殿東町2-10

岡山西警察署は、クリエイティブTOWN岡山(CTO) のプロジェクトのひとつとして岡山市郊外の当時は田園地域の一角に計画され、設計は磯崎新アトリエ、共同設計者に地元の倉森設計、構造設計を川口衛構造設計事務所が担当て1996年(平成8年)に完成した。
CTOコミッショナー岡田新一から磯崎にはキー・センテンスとして、「新たな町造りの核となる公共施設」、「強いインパクトを与えるもの」、「安全性と市民に対する開放性の機能の両面を満足させること」などが示された。配置構成は道路に平行して前面に市民が訪れるパブリック機能群と奥に警察固有の機能群に分割された二つの直方体による。「歩行者の視線に加えて、瞬時に通過する車窓からの視線によっても容易にその公共建築としての特性を認知しうるため」※1、道路側は多柱式のピロティと万成石の骨材入りPC板と透明ガラスの市松壁の対比構成が「強いインパクト」と「市民に対する開放性」を表現している。また、奥の亜鉛鉄板瓦棒張りの直方体は警察機能の「安全性」と堅牢さを表現してミッションに応えている。
磯崎氏は設計主旨のなかで「マッスとヴォイド、閉鎖と開放、透明と不透明、無柱と多柱、メタルと石、壁と皮膜、実と虚などの対立概念を徹底して並立関係」に置くこと※1は、このように空間構成やデザインにあらわれる徹底的な対比項の併置は二分法※2というシステムとして、これまでの記念的建造物の持つ完結性を曖昧にするねらいをもった設計思想によるものであるとする。ここでも古来からの建築理論のなかの概念的命題から個のプロジェクトの課題解決につながるものを抽出して設計コンセプトを構築し、独特なデザインで応答するという磯崎特有の作品創作における問題提起のあり方が鮮明にあらわれる。
築後30年が経過し、岡田氏が予想したロードサイドの商業施設が林立した景観の中でも、引けを取らないインパクトのあるデザインの警察署は地域のランドマークとして市民に認知されている。

※1 「SD9601」「岡山西警察署庁舎」磯崎新
※2 「新建築, 1997.4」岡山西警察署 輪郭線消去と2分法 磯崎新