静岡県016

青嶋ホール

  • 1976年竣工
  • 設計/田中謙次
  • 施工/産業建設
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 音楽館:地上1階、住居:地上2階
  • 用途/文化施設
  • 所在地/静岡県静岡市葵区西草深町

閑静な住宅街の一角に建つ小さな室内楽専用ホールである。設計は田中謙次建築研究所。
もともとホールとして造られたものではなく、施主である音楽家・青嶋昭男氏が自宅つなぎに練習用として造ったものである。
コンクリート打放しの荒々しい外壁にバイオリンの一部を型どった瀟洒なレリーフがあり、「青嶋ホール」と小さく刻まれている。
道路に沿って垂直に立ち上がる外壁が、敷地内に人を招き入れるように凹形にくびれている。重い扉を開けるとそこは80席がやっとのサロン的な器ではあるが、コンクリートが大きなコブのように盛り上がり、凸面で構成された異空間を感じさせる。
この小さなホールで、国内外の世界的に著名な演奏家が静岡を訪れ、超一流の音楽会が開かれ続けている。ピアノ の舘野泉、ヤン・ホラーク、チェロの堤剛など。生の音と音楽を迫真の空気感の中で聴くだけでなく、演奏家の激しい息遣いまでも感じてしまう。聴衆と演奏家が一体となれる距離感なのである。
コンクリートの壁を平行させずに構成して空間をつくった小さなホールから世界的な音楽の調べが奏でられ、音楽家と聴衆が融け合い感動を生み出し続けている。