静岡県024

静岡県立美術館 本館

  • 1986年竣工
  • 設計/設計共同企業体静岡設計連合(高橋茂弥建築設計事務所・高木慈生建築設計事務所・田中忠雄建築設計事務所・サン設計事務所)
  • 施工/住友建設
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄骨造 地上2階、塔屋1階 銅板葺
  • 用途/文化施設
  • 所在地/静岡県静岡市駿河区谷田

1981年に実施された指名設計競技で、地元の4つの設計事務所(高橋正恒、高木滋生、田中楯夫、杉山喜一郎が主宰)が共同する静岡設計連合が当選し、駿府城公園内の敷地に建設着工しようとしたとき、今川義元の館跡とみられる礎が発掘された。遺跡尊重か文化拠点かの議論の末、コンペ案は幻となったが、新しい敷地を日本平の丘陵地に定め、再び静岡設計連合により2回目の設計が開始され、4ヶ月余の短期間のうちにまとめられたという経緯をもつ。
静岡鉄道の駅から上り坂800mのケヤキの並木道を抜け、彫刻プロムナードの内外作家の作品に触れながら広いプラザへと導入される。大和葺きの銅板の屋根が人々を迎え入れてくれる。控えめな外観は、美術館は作品展示と保存が主目的であり、建築が主役となってはならないという設計者の意図が具現化している。
外と内とを結ぶ入口は狭く、高さも絞り込んでいる。それはカメラの絞りと同様、光の調整の役目を果たし、明るい外部から無窓の大空間に導くための空間のリズムであるといえる。
高さ9m、四国の由良石を使用したエントランスホールの大空間の右側奥に、頂部からわずかに明かりを落とした太い柱が立つ。それが2階展示室へ自然と導いてくれる。光を押えた空間が、ホールを歩いているうちに、そして緩い歩幅で階段を上っているうちに美術鑑賞への期待感を不思議と高めてくれる。