神奈川県007

神奈川県立川崎図書館

  • 1958年竣工
  • 設計/神奈川県建築部営繕課・創和建築設計事務所
  • 施工/合名会社関工務店
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造、陸屋根
  • 用途/文化施設
  • 所在地/神奈川県川崎市川崎区

川崎市の中心部、騒音激しい富士見通りに面し、多くのレクリエーション施設が集まる富士見公園の一画に建つ県立図書館である。紅葉ヶ丘の県立図書館が社会・人文系、郷土資料を扱うのに対し、川崎の県立図書館は自然科学・工学、産業技術系の資料を主に扱っている。
地上3階建ての矩形平面の建物で、平面は中央に便所と階段の2つのコアを配し、コアの間に階段ホールを設けて廊下動線を減らし、その周囲に必要とされる各種のスペースを広く確保している。外壁は、防音性を考慮して二重壁とし、内側に9㎝厚のドリゾールブロック積み、その外側に二重壁としてプレコン製溝型版を横張りとしている。すっきりとした外観だが、各階で開口部のデザインが異なり、1階では周囲をピロティ状の回廊スペースとしつつ、石積み風の外壁の天井沿いに横長連続窓を設け、2階では横張りの溝型版を腰壁として用い、その上部に横長の連窓を廻す。主閲覧室の置かれた3階は高い防音性と採光を得るため壁面無窓とし、多くのトップライトを設け、まだ珍しかった完全空調で遮音性と採光性を実現している。徹底的な事前環境調査とシュミレーションにより、平面計画、外壁構造の工夫、吸音材の選択、トップライトや完全空調の採用と、悪い環境条件の下で図書館機能を満たした作品である。
当館は、日本有数の産業関係の社史や産業科学技術関係の情報量を誇り、情報支援型の特殊かつ貴重な図書館である。後年、書庫不足対応に隣の教育文化会館建設時に外壁を共有して鉄骨造5層を増築した。2018(平成30)年には溝の口のかながわサイエンスパークへ移転予定である。

受賞歴等/神奈川県建築コンクール入賞