腰越の谷戸の裾野に敷地を構える当修道院は「開かれた修道院」をモットーとし、大きく開かれた門の中に広がる芝庭に面し、回廊と鐘楼とともに、妻面に大きなピロテイを持つ聖堂が建っている。正面の扉から聖堂に入ると、簡素静謐でありながら、淡い色彩も映す豊かさ溢れる空間が広がる。聖堂の建設は長年にわたって修道院の念願であり、修道院付属の各施設で働く修道女らの浄財を建設資金として、修院棟に続き今井兼次に設計が託された。
聖堂は壁を鉄筋コンクリート造、複雑な形状の屋根は鉄骨造で建設された。内外の随所には今井が好むさり気無い造形のレリーフがアクセントを添える。設計者が最も腐心したという祭壇後壁の上や両脇に設けられた異なる色ガラスの嵌まる開口部は、季節や時間帯によって光の色や明暗が変化する。正面入口上の二階聖歌隊席に設けられた六角形の窓には、この聖堂では唯一のステンドグラスが入る。
創建以来、幾度か行われた補修の記録の多くは屋根の不具合によるものであり、現在まで当初の状態を変えることなく維持されている。
受賞歴等/神奈川県建築コンクール入賞