神奈川県027

川崎市河原町高層住宅団地7・8・9号棟

  • 1972年竣工
  • 設計/大谷研究室(大谷幸夫)
  • 施工/大成建設
  • 構造形式/鉄骨鉄筋コンクリート造14階建及び9階建、陸屋根セメントスレート葺
  • 用途/住居建築
  • 所在地/神奈川県川崎市幸区

13.7haに及ぶ広大な元工場跡地に建設された高層住宅団地で、1970(昭和45)年から1975(昭和50)年にかけて9階および14階建の7棟が建設され、住棟内に3,591戸の住戸とともに小学校、保育園、集会施設、住棟内店舗が収容された。都市部の住宅需要が増していった時代に、高密度高層住宅団地のより良い住環境を追求し、またその周辺への環境影響や都市再開発の孕む問題を提起した高層住宅団地である。
均等な採光・通風条件と内部への公共空間の確保を目指して考案された住棟には、逆Y型断面と平面H型の2タイプがあり、いずれも団地内の環境への影響を考慮し、南北軸に平行の2棟が内庭を挟んで対面する形式(対面2棟で1ブロック棟)とされた。公平な日照を期すために各ブロック棟は十分な隣棟間隔をとって配置され、また冬至日照3時間とプライバシーを確保するため、高さの異なる14階と9階のブロック棟が千鳥状に配置された。
県営、市営、住宅供給公社が事業主体であり、県営住宅(県営7~9号ブロック棟)は、中央の14階建ての逆Y型断面棟の両端に9階建ての平面H型棟を接続した形式で、市営住宅4ブロック棟と住宅供給公社1ブロック棟はいずれも平面H型である。
逆Y型棟の末広がりの低層部は南面により日照が確保され、その下部に設けられた半戸外の広い吹抜広場は子供の遊び場だったが、落下物、騒音やごみ問題等で制限され、今は祭礼などの行事の時のみ使用している。県営以外のH型は耐震補強したが、県営の逆Y字型+平面H型は補強不要である。

受賞歴等/神奈川県建築コンクール優秀賞