神奈川県029

保土ヶ谷の家(旧石井邸)

  • 1974年竣工
  • 設計/清家清+デザインシステム
  • 施工/八木下工務店・保土ヶ谷土建
  • 構造形式/木造+鉄筋コンクリート造地上2階地下1階建、双曲面屋根
  • 用途/住居建築
  • 所在地/神奈川県横浜市保土ヶ谷区

1974(昭和49)年に東海道貨物線の新設工事に伴い、近くの南西傾斜の崖の中腹へと移転を求められた土木技術者の建主が、清家清の作品に惚れて直接設計を依頼し、自らも施工に関わり建設した個人住宅である。
敷地を見た清家は、近景のクヌギ林、中景の街並、遠景の富士山を考慮して建物の位置を決定し、さらに居間の南側と西側に設けたピクチャーウィンドウからそれらの景色が見渡せるように正方形の平面を等高線に対して45度振って配置した。最下階のホームバー(当初)から書斎、居間、食堂、和室、最上階の寝室へと地形に沿ってスキップフロアとなっており、各階から戸外に出られるように床レベルが設定されている。中心の居間の吹抜からは上下の各部屋に視線と風が通り、建物に一体感をもたらしている。
清家はテクノロジーとデザインの一体化の表現を好んだが、この住宅では屋根にシェル構造を採用している。当初の屋根仕上げは、双曲面を表現した瓦棒葺きであった。室内では双曲面を構成する梁が室内に露出され、内部空間をよりダイナミックに見せている。
周囲の崖地にあるクヌギ林はこの家の素晴らしさを引き立てる最大の要素であるが、相続の際には周辺の敷地を横浜市に緑地として譲渡することで、この良好な環境と街並としての景観を守った。