神奈川県033

桂花の舎(千博文邸)

  • 1984年竣工
  • 設計/白井晟一研究所
  • 施工/数寄屋建設
  • 構造形式/木造平屋建、切妻造銅板葺
  • 用途/住居建築
  • 所在地/神奈川県大和市

2寸勾配の瓦棒葺きの切妻大屋根が妻面を大きく見せる平屋建てのアトリエ付き住宅で、白井作品に魅せられた施主が当初予定していた設計者を断り、面識ない白井に車庫とアトリエ付きという条件のみで設計を依頼した。
建物は、塀や前庭との一体感が豊かな景観を呈する。道路に沿って二方に巡らされた振瓦付きの塀は高さ1.5m程と低く、煉瓦と豆砂利モルタルを層状に仕上げた版築風である。その内側の芝庭には大小の金木犀が植えられ、門から玄関へは付属車庫に沿って柱廊風の石畳が延ぶ。建物の南面は、広い間口が太い柱によって大きく割られ、大きなガラス障子が端正にファサードを形作り、その手前に長い雨落ちの黒砂利が足元を引き締める。
外部の柱や枠材、屋根の破風板をはじめとする主要な部材には太めの栗材を用い、足元には花崗岩を多用している。内部は、アトリエ、居間、玄関、サロンの四室に面する要の位置に、光庭が設けられている。
建設中に白井が他界したため、白井晩年の遺作の一つにあたる。創建時からの改変は照明器具の電球以外一切ないとのことで、竣工時の状態をほぼ完璧に留めている。