文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 (第4回)

日時:平成26年9月18日(木)
    17:00~19:00
場所:文部科学省東館 3F1特別会議室

議事

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)クラウドサービス等と著作権について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配布資料

資料1
榊原委員提出資料(910KB)
資料2
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会等におけるクラウドサービス等と著作権に関する主な意見概要(案)(373KB)
参考資料1
ロッカー型クラウドサービスの分類について(平成25年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム(第2回)配付資料1)(489KB)
参考資料2
クラウドコンピューティングと著作権に関する調査研究報告書(424KB)

議事内容

【土肥主査】  それでは,そろそろ定刻でございますので,ただいまから,文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第4回を開催いたします。本日は,お忙しい中,御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてですけれども,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと,このように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいているところでございますけれども,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方には,そのまま傍聴いただくことといたします。
 なお,本日は榊原委員が欠席されておいでですので,また榊原委員の申出もございますので,一般社団法人電子情報技術産業協会著作権専門委員会委員の太佐様にオブザーバーとして出席をいただいております。そのことを御紹介しておきます。
 本日の配付資料について,事務局から確認をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,配付資料の確認をいたします。お手元の議事次第の下半分をごらんください。
 資料1としまして,榊原委員御発表資料,資料2としまして,クラウドサービス等と著作権に関する主な意見概要に関する資料。それから,参考資料1,2としまして,議事次第記載のとおりのクラウドサービスに関する資料を御用意しております。
 配付資料は以上でございますので,落丁等ございましたら,お近くの事務局員までお知らせください。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,議事に入りますけれども,初めに,議事の進め方について確認をしておきたいと存じます。本日の議事は,(1)クラウドサービス等と著作権について,(2)その他の2点となります。
 早速,(1)の議事に入りたいと思っております。本日はまず,諸外国のクラウドサービス等と著作権について,一般社団法人電子情報技術産業協会から御発表の希望が出ておりますので,御発表いただいて,質疑応答と討議を行いたいと思っております。
 また,クラウドサービス等と著作権の問題につきましては,前回の本小委員会において,これまで本小委員会等で出された主な意見の概要(案)を事務局にておまとめいただいたところでございますけれども,前回行われました利用者側委員のヒアリング及びそれを踏まえた議論の概要をこれに加える形で,意見の概要(案)を新たにおまとめいただいておるところでございます。こちらについて説明をしていただいた上で,議論を更に深めていきたいと考えております。
 それでは,諸外国のクラウドサービス等と著作権について,電子情報技術産業協会より御発表をいただきたいと存じます。先ほど申しましたように本日は榊原委員が御欠席でございますので,太佐様から御発表をいただくことといたします。それでは,よろしくお願いいたします。

【太佐氏】  ただいま御紹介にあずかりました,一般社団法人電子情報技術産業協会JEITAより参りました,太佐と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 当団体は昨年8月のヒアリングにてクラウドに関する意見を申し述べる意見を頂戴したわけですけれども,そのとき以来,諸外国での実際のサービス事例を御紹介しました。それについて各サービスが適法という前提で行われているのかという御質問があり,それについての追加調査ということで頂戴しておりました宿題に対する一定の回答ということで本日の発表を行うという位置付けでございます。
 資料の方ですが,資料ナンバーとして資料1としてあるものと,あとは関連条文が付いてございます。関連条文というのは,資料1の中で参照している条文を参考までに抜き書きしたものでございますので,随時見ていただければと思っております。
 では早速,資料の説明に参ります。2ページ目,2点ほど申し述べておきたいことがございます。こちらで実際に紹介したサービスは第三者のサービスでございますので,その辺についての違法性・適法性の法的見解を述べることそのものは我々としても本意ではございませんし,そういうことをするべきではないと考えておりますので,ある程度,クラウドロッカーサービスないしメディア変換サービスという文脈の中で各国法制でどういう判断がされ得るかという観点で参考までに情報を提供するということで,こちら御紹介の資料を作ってございます。これが1点でございます。
 2点目,調査方法というところで,具体的にどう調査したかということなんですが,実際に具体的な事例の各サービスの事業者が提供している情報をはじめ,各国の実際の立法例,それから,裁判例等に加え,必要に応じて委員会メンバーの各会社で使っている弁護士さん等の見解を得た上でこのように資料をまとめてございます。そういう位置付けを御認識いただければと思います。
 中身の方ですが,実際,過去のJEITAの資料で御紹介したものには,例えばウクライナですとかスイスですとかそういった国の事例も含まれてございましたけれども,今回はクラウドロッカー,メディア変換サービスという議論が今,主眼になってございますので,そちらに関しての実際のサービスが行われている国,主要国についての調査結果ということでまとめてございます。ですので,先進国中心ということで,米国,カナダ,イギリス,ドイツ,シンガポール,韓国について情報を整理してございます。
 この中で,昨年8月と,恐らく今年の2月頃のJEITAの発表の時点から状況が変わったのはイギリスでございます。イギリスでは,今年法改正がなされてございますので,その辺りも情報としては含めてございます。
 では一応,一通り御紹介したいと思います。まずは米国です。これについてはもう御承知のとおりかと思いますけれども,いわゆるフェアユースの規定がございます。実際幾つかの判例の蓄積がございますということで,基本的にはその範疇(はんちゅう)の中で事業者が侵害責任を負わないと考え得る根拠がございます。
 1点,前回の小委員会か,その前かと思いますけれども,Aereoの事件の最高裁判決で事業者側が敗訴するという事例の紹介がございました。これについても御承知かとは思いますけれども,事実だけ見ると敗訴ではありますけれども,判決文本文の中で,新技術に対する制限を意図する判決ではないということが明示されている,あるいは傍論のところで,いわゆる所有者,占有者向けということであれば公衆送信に当たらないというような言及もございますので,いわゆるクラウドロッカーのようなサービスへの一般的な波及効果は限定的と考えております。これが米国の状況ということでございます。
 次に,カナダでございます。カナダは,2012年に法改正がなされております。そこで具体的に明文規定が置かれておりまして,29.22条というのが新たに設けられてございます。必要であれば,関連条文1ページ目に実際の条文を載せてございますので,御参照いただければと思います。2012年6月に成立し,11月施行ということになっております。
 明文規定において,ネットワーク上のデジタル記憶を含めて適法取得した著作物の私的複製を許容するという規定が導入されてございます。加えて,ネットワークサービスについての条文がありまして,31.1条です。ここでホスティングのようなサービスに関しても事業者が一定条件で免責されるという明文規定が導入されてございます。
 あとは,メディア変換に関しては,条文上明示的に読み取るのが結構難しいかと思いますが,ファクトシートというものが政府から公表されてございまして,いわゆるフォーマットシフティングについてもこれにより可能になるということが述べられてございます。ということで,カナダは適法の根拠があるであろうということで,こちらの結果をまとめてございます。
 次,イギリスでございます。イギリスも前回紹介時には法改正の議論中という状況ではございましたけれども,段階的に幾つかの法改正が実施されているようです。私的使用目的の複製に関する立法についても,今年の7月だったと思いますが,承認されまして,10月1日からの施行と理解しております。実際の明文規定は関連条文の資料2ページ目の下の方に書かれてございます,28Bというところです。
 この中で,明示的に私的使用目的の複製を許容しております。具体的には,例えば関連条文の資料3ページを見ていただくと,上から4行目ぐらいに,private useには以下のものを含むということで,バックアップコピー以外に,フォーマットシフティング目的とか,ストレージ目的として,いわゆるネットワークを通じたストレージとか電子的な記憶領域への記録もその範囲に含むという改正がなされてございます。
 これに関し,説明資料のメディア変換サービスの欄に「権利者の許諾があった方が事業者のリスクが少なくなる」と書いてございますが,これはメンバー企業の会社の方が弁護士さんの意見を取ったときに,こういう規定はあるんだけれども,より安全に進めるのであればということでコメントをもらったということでこういう記載になってございます。いずれにせよ,紹介しましたとおり明文としてはそういった新しい規定がつい最近立法化されているというのがイギリスの状況でございます。
 続きまして,ドイツです。これは条文上は53条というのがございまして,関連資料でいくと3ページの下,ここに一定の私的複製を許容する明文規定がございます。加えて,ShiftTV事件というようなものが,実際の判決がございまして,ある程度プロセスが自動化されているサービスについては明確に適法だという判断が下されているということで,ドイツにおいても適法の根拠があるだろうというふうに考えております。事業者の免責の部分については,条文上,have madeといいますか,他に複製を製作させるという表現が出てまいりますので,その部分で許容されるであろうという判断でございます。
 続きまして,シンガポールでございます。シンガポールは2004年に法改正がなされておりまして,Fair dealing条項の中にフェアユースのコンセプトが含まれるような改正がなされてございます。すなわち,文言上はFair dealingでございますけれども,特定目的以外の目的については,米国型のフェアユースの規定が盛り込まれてございます。条文でいえば,関連条文の資料4ページから5ページにかけて,特にフェアユース条項の要件という部分では5ページのところの(a),(b),(c),(d),(e)というところがございますので,比較的広い範囲での適用除外が認められております。加えて,先ほどの事件にちょっと似ておりますけれども,RecordTVという事件において実際に合法の判断が下されております。事業者が侵害責任を負わないという方向での判決が出ているということでございます。
 最後ですけれども,韓国です。これも御承知かと思いますが,2011年に法改正がなされておりまして,米国型のフェアユース規定が導入されております。実際そのフェアユースの規定の下で,あるいは実際の消費者の私的複製に関しては30条というのが別にございまして,その条項の下で適法性の根拠が認められるであろうということでございます。
 説明資料をめくっていただいて3ページ,4ページは,実際に過去の説明資料で御説明したもの等を引きながらの補足ということでございますので,詳細説明を省かせていただきます。
 宿題として頂戴していたものへの回答としては以上でございます。
 参考として付けてございますのは,その他サービスについてです。今,ロッカーサービスを中心とした議論をしているということですけれども,クラウドサービスというのは,それが全てではありません。それ以外のサービスもございますということを思い出していただく参考用に用意したものです。それについてもある程度適法の根拠はあるだろうということですが,ここでは,現行の議論に資する範囲にとどめるということで,詳細は省かせていただいております。
 以上,簡単ではございますが,資料の説明させていただきました。今回の資料が,現在の議論の方向性を検討する上でその促進に寄与することを願っております。クラウドは国境を越えるサービスでございますので,こういった各国法制の動向を見ておくというのは非常に重要であろうと考えてございます。その前提でこの後,議論いただければと思っております。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ただいまの御発表では,ロッカー型クラウドサービスを中心に,メディア変換サービスとか,あるいは参考ということでその他のサービスについても言及がございましたところでございます。本小委員会におきましては,今,太佐様もおっしゃいましたように,ロッカー型クラウドサービスを中心にまずは検討を進めることとなっておりますので,これに関する意見交換を中心に行っていただければと思っております。それからどんどん広がっていくのは構わないと思いますけれども,まずはロッカー型クラウドサービスのところから御意見を頂戴したい,あるいは御質問がもしございましたら,お願いしたいと思います。どうぞ。
 浅石様,どうぞ。

【浅石委員】  代役御苦労さまでございます。皆様にも御質問があろうかと思いますので,ドイツにつきまして若干質問させていただきます。ここでクラウドロッカーサービスとしてShiftTVの事件,下のシンガポールのRecordTVもそうなんですが,これ,どちらかというと,日本でいうまねき・ロクラクの範囲で,これをクラウドロッカーの類型の中に入れることの整合性といいますか,それをどのようにお考えになっているのかということと,その次のページで,ドイツはShiftTVではなくて,HiDriveがクラウドロッカーサービスの類型として入れ替わっているわけですけれども,ここは何か意図なさっているのかどうか。
 それと,一つ,ドイツで,ちょっと参考までにお聞きしたいんですが,メディア変更サービスの例で,ドイツの,何て読むんだか分かりませんけれども,四角の中で,書籍にこれは限定しているのでしょうか。例えばこれ,CDに置き換えてしまうと,ユーザーが使用するCDであることで,スキャン後,CDですと複製後は,そのCDを廃棄すれば適法になり得るというふうに読めるのか,いや,そうじゃなくて,これは書籍だけに限定しているものなのか,何かここに書かれている関連の条文といいますか,そういったものがドイツの著作権法で読むところができるのかどうかというところをお教えいただければなと思っております。
 それから,関連して,メディア変換の2ページ目のドイツの53条の後に,54条で報酬の義務というのが,これ,関連条文の中に書かれていませんけれども,54条で53条を満たしていても報酬の義務があるということが書かれております。サービス事業者ではなくて,製造業者だとか輸入販売ということになろうかと思いますけれども,53条を満たせば何もなくていいんですというわけではないのではないかなと思っておりまして,その辺追加して御説明いただければと思っております。

【太佐氏】  御質問ありがとうございます。まず2ページの表のところでShiftTVのところをクラウドロッカーに入れている点でございますけれども,これについてはこれがクラウドロッカーの代表よという趣旨ではございませんで,それをある程度サポートする判決ということでこういうものが出ておりますよという意図でございます。そういう意味ではちょっと誤解を生むかもしれませんが,もともとそういう一つの事例,適法性を参酌する上での参考になる判決ということで入れているという意図でございます。
 あとは,2点目のところ,個々のサービスの関係ですが,実は,ここのドイツの部分は個人的に余り詳しくないため,詳細必要であれば,追って宿題として持ち帰らせていただければと思っております。先ほどの例えばメディア変換の件ですと,書籍に限定されるかどうかと,私自身ちょっと記憶していないものですから,不正確な回答をするよりは,必要であれば追って次回等に回答させていただければと思ってございます。不十分な回答で申し訳ございません。

【土肥主査】  浅石委員よろしゅうございますか。

【浅石委員】  はい。

【土肥主査】  ほかにございますか。
 奥邨委員お願いします。

【奥邨委員】  今の浅石委員からの御質問とちょっと関連するんですけれども,少し分からないので教えてください。メディア変換サービスに話を広げるつもりではないんですが,このメディア変換サービスとおっしゃっておられるのは,有体物,すなわち複製物を業者に物理的に送って,業者がデータに変換してくれるという,日本でいう自炊代行のようなサービスと考えてよろしいんでしょうか。それとも,クラウドと書いてありますので,ユーザー側で例えばリッピングしてそれをネットで送るとか,そういうふうに全部ネットだけで完結するサービスなのか,そこがこの資料だけでは,ちょっと分かりづらいものですから。もしかしたら,昔配られたもので分かるのかもしれないのですけれども,その辺を教えていただきたいんですが。

【太佐氏】  御質問ありがとうございます。実のところ,私も全て把握できているかというと甚だ心もとないのでございますが,例えばUSのDVD Your Memories等はクラウドのものを含んでいた,ネットでのやりとりも含んでいたかと思いますが,その他については,即答できる情報が今手元にございませんので,お答えがちょっと難しいかなと思います。これについても必要であれば,また追加で次回回答させていただければと思っております。
 有体物をやりとりしてのメディア変換というのは当然含まれている上で,加えて,クラウドでのサービス提供がかなり含まれていたと記憶はしておりますけれども,これは含まれています,これは含まれていませんというレベルでの正確な情報が今,手元にございませんので,そういう意味では,申し訳ございません,宿題とさせていただければと思いますが,よろしいでしょうか。

【土肥主査】  では,恐縮ですけれども,幾つか追加でお願いすることになるんだろうと思いますけれども,よろしくお願いします。
 ほかにございますか。
 椎名委員どうぞ。

【椎名委員】  以前プレゼンテーションしていただいたサービス類型は実に87に上るんですね。国内のものも含めてなんですけれども。それで,今回,法的な背景として御説明いただいたものは6例ということなので,大半はまだ調査が済んでないということでしょうか。

【太佐氏】  正直申し上げますと,全てにおいての情報を調査するというのは非常に限界がございまして,今回は議論のための優先順位ということでこの範疇(はんちゅう)にとどめさせていただいているというのが実情でございます。個社でこれを調べること自体が業務ではないということもございますが,その辺り,どこまでこちらの小委員会での議論に必要かという目的と手段の関係の妥当性というのもございます。いずれにしても第三者のサービスについての適法・違法についてコメントするというのは結構勇気の要ることでございますので,その辺り斟酌(しんしゃく)いただけると非常に有り難いと思っております。直接の回答にはなっていないかもしれませんが。

【土肥主査】  どうぞ。

【椎名委員】  フェアユースの部分というのは,確かにフェアユース規定があって,法的な背景というよりは,裁判の結果に委ねるという意味合いですよね。何か法的に担保されているということなんじゃないのかなと思います。
 それから,カナダに関して,適法に取得した著作物というところをもうちょっと伺いたいんですが,これ,話を聞くと,レンタルを除外していたりとか結構狭い規定になっているようなことを聞いたんですが,そこら辺はどうなんでしょう。

【太佐氏】  個々の法改正という部分でいきますと,関連条文の資料の1枚目のカナダのところを見ていただくと回答になろうかと思います。御指摘のとおり,カナダの少なくとも立法においてはということでございますけれども,29.22条の(1)号の(b)のところで,「the individual legally obtained the copy of the work…..other than by borrowing it or renting it」というのがございますので,そういう意味では,人から借りたものはここでいう適法取得には含まれていないということになろうかと思います。

【椎名委員】  それから,同じような話なんですが,イギリスは,ここの表現としては,個人のインターネット上のストレージ利用というふうに書いてあるんですが,当然ながら,これ,共有等は含まないという理解でよろしいんですよね。

【太佐氏】  立法者ではございませんので明確に解釈を述べることはできませんけれども,少なくともその問題を議論の俎上(そじょう)にあげるためのベースとなる条項がある,ということにとどめさせていただきたいと思います。

【土肥主査】  よろしいですか。

【椎名委員】  ありがとうございました。

【土肥主査】  ほかにございますか。
 畑委員どうぞ。

【畑委員】  先ほど椎名委員も質問されましたので,それはちょっと省いて,2点ほど質問させていただければと思います。アメリカはフェアユース規定があるということで,法制の状況を条文も含めお示しいただいておりますけれども,スライドの資料の方の3ページでアメリカの例については,audioboxという,いわゆるクラウドロッカーサービスを例示されております。それに対して,今この資料で例示されております判決がCablevision判決とAereo判決ということで,直接クラウドロッカーサービスに関する判例ではないと理解をしておりますが,これは判決の中でクラウドロッカーサービスもフェアユースに当たることが読み取れる判断があるという御趣旨でしょうかというのが1点目。
 もう一つが,同じくその下のドイツのHiDriveのキャプションでございますけれども,プロセスが完全に自動化されていれば私的複製に該当すると。「音楽専用の場合も同様」ということであえて強調しているのは何か意味が,御趣旨があるんでしょうか。その2点を教えてください。

【太佐氏】  まず1点目,米国の判決との関係でございますけれども,例えばAereoの方では,具体的な事例としてクラウドベースのリモートストレージという言葉が出てきていたかと思います。今ちょっと手元にございませんけれども。ということで,判決本文中,ニューテクノロジーに対する影響を意図したものではないという文脈の中でリモートストレージというのが出てきたと理解しております。
 ドイツに関しては,すみません,この下線部を私が引いたわけではないのですが,ここを強調することで何かを主張したいということではございません。音楽がこれから排除されるということではないということを述べる趣旨と理解いただければと思います。

【土肥主査】  よろしいですか。
 ほかにいかがでございましょうか。
 よろしゅうございますか,特には。よろしいですかね。
 クラウドロッカー型サービスについて我々非常に関心は持っているわけですけれども,この資料によると,いわゆるコンテンツを用意するのが利用者なのか,あるいは事業者なのかという切り分けのところと,それを共有するのか共有しないのかという,そういう二つの軸でいわゆるタイプ2というものを絞っております。先ほど来から御質問等がございました,例えばドイツのクラウドロッカーサービス型として挙がっているその事例等が適切なのかどうかというようなことも含めて事後に追加的に御報告いただけるということでございましたので,お手数だとは存じますけれども,どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは次に,事務局から本小委員会等におけるクラウドサービス等と著作権に関する主な意見概要(案)をまとめていただいておりますし,更に関係の参考資料もあるようでございます。これらについて御説明をいただければと存じます。よろしくお願いします。

【秋山著作権課課長補佐】  説明申し上げます。本日お配りの資料のうちの資料2をごらんください。それから,参考資料1も必要に応じて御参照いただこうと思っております。参考資料2につきましては,この後の議論で必要に応じて御参照いただく性質のものでございます。
 先ほど主査から御紹介がありましたように,前回の小委員会において,それまでの主な意見概要について御説明を事務局より申し上げたところでございます。このため,重複する部分は適宜省略をしつつ,前回の会議で議論があった部分を中心に,改めて全体の概略を説明させていただきたいと考えております。
 まず,1ページ目のローマ数字1のところをお願いいたします。当面議論の対象とすべきサービスについてでございます。この点については,私的使用目的の複製が関係するクラウドサービス(ロッカー型クラウドサービス)について検討すべきという趣旨の御意見が複数ございました。上から一つ目,二つ目という部分,それと三つ目の部分です。
 これに対しまして,私的使用目的の複製が関係するクラウドサービス以外のクラウド上の情報活用サービスについても,海外では広く展開されているものがあり,我が国においても早期に検討をお願いしたいとの御意見がございました。これに関しましては,その下の矢印でございますけれども,海外におけるサービスについて,各国の法律において適法なサービスとして展開されているのか不明であるなどの御意見があったところでございます。
 こうしたことを踏まえて,次のページでございますけれども,土肥座長(当時)の御提案に基づきまして,当面は私的使用目的の複製に関係するクラウドサービスについて検討がなされることとなったところでございます。
 次,ローマ数字2のロッカー型クラウドサービスの各分類に関する意見について紹介申し上げます。まず,タイプ1及びタイプ3,配信型のものですけれども,これにつきましては,権利者と事業者との契約によって対応すべきとする御意見が多数でございました。
 次に,タイプ4,共有ユーザーアップロード型につきましても,契約関係によるサービスを提供することが適当というような御意見。そして,そうした上で,権利許諾を受ける窓口などの機構の構築を求めるということの御意見がございました。
 また,契約のない場合には,正に無許諾アップロードの代表的類型であるということで,権利制限規定などの法制度の見直しというのは解決策として不適切であり,契約により解決すべき旨の御意見がございました。この点に関しては,タイプ4に関しては,権利者と事業者の間で包括的利用許諾契約が締結されるかは個々のケースによるとしつつ,その判断に当たり,間接侵害の成立範囲が明確になっている必要がある旨の御意見があったところでございます。
 それから,利用者による著作権侵害については,事業者はプロバイダ責任制限法の枠組みの中で事後的に申告等に基づき削除の措置をとるなどして対応しているといった御意見や,不特定多数に公開するのであれば契約等で処理すべきとの御意見があったところでございます。
 3ページをお願いいたします。このほか,タイプ4に関してですが,映画やアニメについては,タイプ1及びタイプ3において確立したビジネスモデルがあるため,対応の必要はない旨の見解が示されております。
 次に3ポツのタイプ2,プライベートユーザーアップロード型でございますけれども,これに対する意見を紹介いたします。タイプ2全体にわたる議論としては,大別すると三つの見解がございました。まず一つ目,私的使用目的の複製と整理されるべきとする見解でございます。この見解としまして,ユーザーが用意したコンテンツやネットなどで入手できるものについて,どの著作物を保存し,送信するのかを意思決定するのもユーザーであるという場合には,ユーザーが行為主体と考えるべきである。それから,多数の利用者との共有機能を有しない限り,正規に入手したものをロッカー型クラウドに保存して自分自身で使うことは,権利者の許諾なく行えるようにすべきといった御意見がございました。また,三つ目の後段のところですけれども,フォーマット変換などの変換機能を有しても当該サービスを許諾なく行えるようにする議論をしてもよいのではないかとの御意見もございました。
 これに対して,法的に明確に切り分けることは困難であるという見解もございました。具体的には,事業者の関与度合いが低く,私的使用目的の複製と整理できるものもあるが,タイプ2の全てがそう言えるわけではなく,クラウドに様々な機能を付加することによって事業者が関与度合いを高めていくことも可能。今後もクラウドサービスが多様に発展していくことに鑑みると,そこに何かしら法的な明確性を求めることは難しいとの御意見でございました。
 また,三つ目の権利者と事業者との契約によって対応すべきという御意見でございます。この点に関しましては,まず既に契約事例があること,仮にユーザーの行為が私的な行為という評価であったとしても,様々な検討すべき法制上の課題があることを考えると,契約処理の促進によりサービスを実現することが現実的ではないか。それから,放送について,今後展開される具体的なサービスに応じて関係者間で適切な方策について合意されることが重要であるという御意見がございました。
 また,タイプ4のところでも御紹介しましたけれども,いずれのクラウドサービスも,契約によりサービスを提供することが適当であるとしつつ,権利処理のための機構の構築を求める御意見も頂いております。このような,契約により対処すべきとの御意見に対しまして,契約処理でうまくいかない現状があるということで,多様化するビジネスに対応するためには,著作権法に柔軟性のある規定を制定することが必要ではないかとの御意見がございました。他方,こうした議論に関しまして,経済取引の原則の観点からは,私的財産に関する取引も基本的には契約によるべきであり,契約で対応できない部分があるからといってその部分を取り出して特別な対応をせよというのはおかしいとの御意見があったところでございます。
 なお,契約処理に関する御意見としては,権利者団体と事業者団体との間で協約的な権利処理を行うのがよいのではないかとの御意見がございました。この点につきまして,共役的な権利処理は,タイプ1,タイプ3に関する議論ではないかとの御意見があったほか,権利者の団体を全て集めて事業者の団体と契約することは実際には難しいのではないかとの御意見もございました。このような議論に関しまして,スピード勝負のところもあり,まず契約処理に積極的な権利者と事業者との間でモデルを作るなどできるところから始めるということでよいのではないかとの御意見もございました。
 なお,映画及びアニメにつきましては,タイプ4に対する意見のところでも御紹介したように,ビジネスモデルがあるために対応不要であるということでございました。
 次に,4ポツのところでございますけれども,タイプ1から4に係る個別の議論以外の点に関する御意見を紹介いたします。まず,権利者と事業者はお互いの立場を尊重した上で,利便性の高いサービスの実現に協力して取り組むことが求められるとの御意見。それから,クラウド上の情報活用サービス等の多くは,クラウドやインターネット特有の問題ではなく,私的使用目的の複製にとどまらない,複製権に関わる権利制限の在り方全体に関わる課題であることから,慎重に取り扱うべきとの御意見。それから,制度を作るのであれば,今後のIT技術の発展のロードマップを把握した上で議論すべきとの御意見がございました。
 最後に,ローマ数字の3,権利者への適正な対価の還元に関する御意見を紹介いたします。御意見は大きく4点ございました。一つ目ですけれども,まずロッカー型クラウドサービスにおいて,権利者がコントロールできない流通が増大し続けている現況下にあっては,コンテンツの訴求力から生じる果実を享受している事業者が,権利者への対価の還元について一定の負担をしていく仕組みを確立することが重要との御意見がございました。
 一方,対価還元の問題はコンテンツ流通のあらゆる局面を包含するものであり,一局面にのみ関わるクラウドの課題とセットで議論すると論点が錯綜し,審議が遅れることを懸念するとの御意見がございました。
 次,6ページをお願いいたします。このほか,対価の還元は原則的にはビジネスモデルによって担保されるはずであるとしつつ,将来にわたって日本のコンテンツの製作力や製作過程が担保される土壌を守っていく必要があるということで,補償金というよりは,クリエーターの育成と創作拡大に向けた支援基金という形を考えていくべきではないかとの御意見もあったところでございます。
 さらに4点目としまして,専門録画機器であれば対価還元の妥当性はあるが,汎用性の高いものに求めるのは妥当でないとの御意見があった一方で,クラウド事業者は利用者に権利者のコンテンツを利用させることで収益を得ており,こうした収益を全く無視してよいのかとの御意見もあったところでございます。
 議論の概要は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】  ありがとうございました。事務局において,これまでの本小委員会における各委員の御意見を適切にまとめていただいておると思っております。どうもありがとうございました。
 御説明いただきました意見概要(案)にもございますように,タイプ2以外の,特にタイプ1,タイプ3,それから,タイプ4の主要な領域については,基本的には契約等で対応する,契約等で対応できるという意見で異論はなかったかなと思います。一方,タイプ2につきましては,これは私的使用目的の複製と整理されるべきであると,このような見解,それから,法的にも明確に切り分けることは難しいのではないかというような見解,タイプ2も他のタイプと同様,権利者と事業者の契約によって対応すべきではないかというような御意見,このように委員の間で意見が一致してないところであると承知をしております。
 そこで,本日は,タイプ2につきまして重点的に議論をいただきたいと思っております。タイプ2を全般的に扱うということになるとまたいろいろ議論が拡散するかと思いますので,まずコアになる部分といいますか,汎用ロッカー型という,このお手元の資料の2ページの一番左側の部分,こういったところについて各委員がどのようにお考えになるのか,この点についておおよその合意ができれば,どんどん右側の方のコンテンツロッカー型とか,変換機能付加型とか,そういうようなところに広げて議論していきたいなと,このように思っております。時間が十分ございますので,御意見,御質問ございましたら,お願いいたします。
 では,津田委員どうぞ。

【津田委員】  事務局の方の資料2ですごくきれいにまとめていただいたと思うんですけれども,1点だけ,ページ3の3ポツ,タイプ2に対する意見の2ポツのところ,ここの二つ目の「多数の利用者との共有機能を有しない限り,利用者が正規に入手したものをロッカー型クラウドに保存して,自分自身で使うことは権利者の許諾なく自由に行えるようにするべきである」というここの意見,これ,我々インターネットユーザー協会だけではなくて複数の委員から出てきた意見だとも思います。
 この一番初めの「多数の利用者との共有機能を有しない限り」となると,今回何度も話に出てきているDropboxなんかが除外されなくなってしまうというか,Dropboxは共有機能も有してはいるので,なので,これ,利用対応に着目するという意味で,「多数の利用者との共有機能を有しない限り」というところのここの文面を削除していただいた方が意見としては分かりやすくなるかなと思うんですけれども,事務局いかがでしょうか。つまり,共有機能のありなしが前提になってしまうというのはもう少し,これから答申がある話だと思うので。

【土肥主査】  今の津田委員の御意見といいますか御要請ですけれども,この部分というのは,正に津田委員の御意見を中心におまとめいただいたという部分でしょうか。

【秋山著作権課課長補佐】  こちらは,津田委員からの御意見の部分も含まれますが,河村委員から別途,前回の小委員会において御提出いただいた意見の中に,特にこの「多数の利用者との共有機能を有しない限り」という部分がございましたので,その部分を掲載させていただいたという状況でございます。

【土肥主査】  なるほどね。そうすると,必ずしも津田委員だけのものを反映しているのではないと。

【秋山著作権課課長補佐】  はい,さようです。

【土肥主査】  ということなんですが。

【津田委員】  河村委員いかがですかね。ここが削除できるんだったら削除した方がいいと思うんですが。

【河村委員】  すみません,削除の理由をもう一度おっしゃっていただけますか。

【津田委員】  単純に,そうなると,我々が使っている,僕なんかも例えば音楽をデジタルデータ化したものをDropboxに置いて,自分の私的複製の目的で利用しているわけです。ただ,Dropboxは不特定多数に公開する機能を有してはいるので,そうすると,これ,「有しない限り」というふうになってしまうと,そうでないサービスは私的複製として扱われない可能性が出てくるということなので,むしろユーザー側の利用対応に注目してという趣旨で削除した方がいいのではということです。

【河村委員】  分かりました。機能があるなしではなくて,私的な利用であるかどうか……。

【津田委員】  そうですね,あと,音楽だけじゃなくて,写真とか,非常に汎用性が高いクラウドサービスの場合は,そこを問題にすべきではないという趣旨です。

【河村委員】  賛成します。

【土肥主査】  私的複製,30条問題というのは,ある程度人の範囲という使用者の範囲を規定上有していますよね。

【津田委員】  そうですね。

【土肥主査】  その意味でいくと,津田委員は,その範囲を超えてもということになりますか。

【津田委員】  超えてということではなくて,実質的に私的複製の目的で利用している人が利用対応としてはDropboxなんかはほぼ全てだと思うんですね。

【土肥主査】  飽くまでも30条の中でという意味でいうと……。

【津田委員】  そういうことですね。機能に着目して切り分けるべきではないという,そういう趣旨ですね。

【土肥主査】  この点について。
 はい,畑委員どうぞ。

【畑委員】  利用態様に照らして,いわゆる私的な使用なのかどうか判断という御趣旨は分かる部分もあるんですが,実際に今,検討しているのは,法制度でやるのか,あるいは契約でやるのかという部分で,そこにおいては機能として共有がありやなしやというのは,どうしても検討の要素に入れざるを得ないと思う部分もあるんです。機能があっても個人が使うか使わないかは別問題としても,機能があってそれを使った途端それは私的の範囲から外れるということになれば,アンコントロールになってしまうおそれがあろうかと思います。

【津田委員】  アンコントロールの話でいうと,我々の発表のときに,例えばDropboxの機能で資料を公開したときに,大量のアクセスがあった場合はDropbox側でシャットアウトするようなそういうものが機能として講じられてもいますし,例えばこの議論を敷衍(ふえん)させていくと,LINEどうなるんだという話にもなっていくんですね。LINEって,大量に何百人という登録するグループを作れて,そこに対してファイルを送信する機能とかもあって,そうすると,あれも一つのクラウド型のロッカーサービスというふうに使えてしまうときがある。
 「ある限り」というようなことを文言としては多分,というか,ほぼ全ての最近のウエブ上のコミュニケーションサービス,コミュニケーション機能のあるサービスが不特定多数にこういう形での共有する機能を有してしまっているという前提がある時点で,それがもうクラウドサービスで不特定多数に公開する機能が付いていないやつだけを私的複製にするというのは,これはなかなか現実的に即していないのかなという趣旨です。

【松田委員】  質問です。

【土肥主査】  どうぞ。

【松田委員】  そうすると,この文言は,「多数の利用者と共有機能を有しない限り」というのを取るのではなくて,「多数の利用者と共有しない限り」とすれば,津田さんの意見と合うことにはなりませんか。

【津田委員】  はい,そちらでも大丈夫だと思います。機能ではなくて,行為に着目した方がいいと思います。

【土肥主査】  畑委員もそれでよろしいですか。

【畑委員】  この議論としてはそこのところをどう捉えるかはこれからも議論すべきだと思います。

【土肥主査】  別の議論になりますね。

【畑委員】  御意見としてはということであれば,それはそれでもいいかと。

【椎名委員】  よろしいですか。

【土肥主査】  はい,どうぞ。

【椎名委員】  僕自身もある意味同意できるのは,共有機能,例えば共有ボタンというのがないとしても,例えばURLを送ったり,パスワードを送ったりということで事実上共有できてしまうようなサービスが混然一体となってあるというのが現実だと思うんです。そうなると,先ほど主査におまとめいただいた,タイプ2から議論しましょうということが事実上難しくなってしまうのではないかと思いますが。

【土肥主査】  この機能の問題については,本小委員会においてもこれを著作権法上どう見るのかというところの議論がかねてからあったところであります。「共有しない限り」というふうにしてこの文から「機能」を取ったとしても,機能を著作権法上どう評価するのかというのは残るわけでありますので,少なくとも津田委員,河村委員がおっしゃった御意見をまとめる形の中では,ここは「共有しない限り」というふうにさせていただいて,機能については別途議論したいということでよろしいですか。

【津田委員】  僕はそれで構いません。

【浅石委員】  すみません。

【土肥主査】  はい。

【浅石委員】  機能というか,「共有しない限り」というふうになりますと,河村委員,本当によろしいんですかというのは,利用者の責任で,自分がやったら駄目ですよということを言っているに近い形になりますけれども,それで本当によろしいんでしょうか。要するに,自分が共有してしまったらもうこの話はないですねというふうにも読み取れてしまいますが。共有しない限り自由に使えるんだから,共有してしまったら,もう自由に使っては駄目ですよと。それは責任は個人の人たちがするかしないかという分野に入りますよと。機能の場合は,どちらかというと設計した事業者さんの方の部類じゃないですか。そこは今後の議論に入るのかもしれませんけれども,「共有しない限り」というふうになりますと,よりエンドユーザーの方たちの責任となり,ユーザーの方々がしたかしないかというふうに思われるような書きぶりになるのではないかなと懸念するんですが。

【河村委員】  よろしいですか。

【土肥主査】  どうぞ。

【河村委員】  多数の利用者と共有しない限りということであれば,つまり,今,利用者,消費者が行っている私的な複製行為というのはそういうものですから,不都合はないと考えられます。

【土肥主査】  ここは意見をまとめているところでありまして,全体の総意でやるという話ではなくて,そういう御意見があったと。御意見を出された方が,これであれば自分の真意に合うと。そしてまた,他の委員も,「機能」を仮に取ったとしても,機能については,これは別途当然議論するわけでありますので,外すということで行きたいと思います。
 それでは,ほかにございませんでしょうか。
 はい,どうぞ。

【龍村委員】  議論が若干混乱しているようにも拝見しますが,要は,理念形としての純粋な形でのロッカー型サービスであるタイプ2についてどのように評価すべきかと,これをまず議論しましょうということですよね。

【土肥主査】  はい,そこをまず検討したいということです。

【龍村委員】  それで,その点は私的使用の領域であることは認めるべきだという議論があるわけですが,その場合には,私的録音・録画補償金に相当するような補償金制度などと抱き合わせということでもなく,その辺りはクリエーターへの還元も視野に入れるとした場合,どういう配慮をイメージされておられるものでしょうか。

【津田委員】  僕のイメージでは,少なくても私的複製が私的複製である限りは,補償金とは切り離しておくという理解です。

【龍村委員】  そこら辺のバランス論は大きな論点だとは思うのですが,そこは全く切り捨ててしまうという発想なのでしょうか。

【津田委員】  そのバランスの話は今後の議論なのかなというふうに考えています。

【土肥主査】  恐らくまずはロッカー型サービスというのが30条の私的複製の中に収まるということがあるとしますと,その後で,今おっしゃったような補償金の問題という次の話になりますので,まずは私的複製として捉えることができるのかどうか,そこを先にやらせていただければと思っております。

【椎名委員】  よろしいですか。

【土肥主査】  はい,どうぞ。

【椎名委員】  ちょっとまた分からなくなってしまったんですけれども,タイプ2に対する意見ということで整理をされているということは,タイプ2というのは,共有機能を有しないという定義ですよね。

【土肥主査】  はい。

【椎名委員】  ところが,ここで「ユーザーが共有しない限り」ということが入っているということは,共有機能があり得べしということではないんですか?機能の問題は別途議論をする?

【土肥主査】  機能については,本小委員会の冒頭の方でも出ていたところでありますので扱いたいとは思うんですけれども,共有という意味についてなんですけれども,30条というのは,私的範囲という,一つの人的な範囲で利用を認めていますので,必ず1でないといけないということにはなっていないと私は認識しているんですけれども。

【椎名委員】  1という?

【土肥主査】  要するに,30条の問題として,この純粋ロッカー型サービスを捉える場合に,ある程度の,いわゆる条文上の表現でいうと,「個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」という範囲内において利用するということに関しては,それはもともと30条の私的複製の範囲内の話ではないかという意味です。

【椎名委員】  じゃ,私的な領域での共有機能を含むタイプ2という理解ということ?

【土肥主査】  いや,それはこれからの話ですけれども,30条というのはもともとそういうものではないかなという,そういう認識です。
 よろしいですか。

【椎名委員】  多分,私的複製ということで物理的なメディアに複製したものが共有されるとかというようなことに比べて,例えばクラウドサービスを介した共有というのははるかに影響が大きいと思うんです。そういうような意味合いから,そこはよく見ていく必要があると思っています。だから,その範囲でのものを含むタイプ2なのか,いやいや,例えばカナダとかイギリスの法律が例示しているように全く共有を許さないのか,そこら辺ははっきりしておく必要があるような気がしてならないんですが。

【土肥主査】  それはコアですから,コアになるものは純粋型ということになりましょうから,個人的,家庭内というようなものよりも更に限定されたものということになるんだろうとそれは思って思いますけれども,30条というのはもともとそういうある程度の幅があるということを常に我々は頭の中に置いておかないといけないんじゃないかなということです。

【椎名委員】  うーん,分かりました。

【土肥主査】  ほかにいかがでございましょう。
 どうぞ御遠慮なく。要は,理想的なのは,純粋ロッカー型というものに関して,一般ユーザーの方,それから,事業者側の方,権利者側の方,これを30条の私的複製の問題であるというような御了解が得られれば,それがまた一つの合意ということになるんだろうと思います。もしそういう御了解を得られない,ちょっと疑義がある方については,今の段階で意見をお示しいただければと思っております。
 今子委員どうぞ。

【今子委員】  3ページ目の法的に明確に切り分けることは困難であるという見解についてお話をさせていただきたいと思います。もともとこの見解は私が以前にお話ししたものかと思いますが,まず誤解のないように説明させていただきたいのは,Dropboxとか,一般的なユーザーアップロード型のクラウドサービスについては,私は全て私的使用目的の複製と整理されると考えておりまして,事業者は,コンテンツの複製や送信の主体には当たらず,サービスを適法に提供しているものだと考えております。実際このようなサービスについて権利者から許諾を得るということは現状なされていません。
 一方,将来は様々なクラウドサービスが登場することになると思いますが,そこについても切り分けずに,許諾の対象とすべきと考えているわけでもありません。むしろタイプ2は,基本的に切り分けとか,許諾とかいうことは必要ないのではないかと考えています。仮に将来の特定のクラウドサービスについて主体の認定に争いがあるような場合には,訴訟によって個別具体的に解決を図っていくべきではないかと思っています。
 タイプ1とか3とかというようなサービスではなくて,ユーザーがコンテンツをアップロードするタイプ2のクラウドサービスについて許諾を得なければならないというふうにしてしまいますと,もはやクラウドサービスは提供できないことになってしまうのではないかと危惧しております。
 なぜなら,仮に権利者団体と契約をしたとしても,契約を望まない権利者や,団体に属さない権利者もいらっしゃいますし,外国の権利者もいて,全ての権利者と契約するというのは現実的には難しいと思っております。一部の権利者から許諾を得ても,サービス全体が適法となるわけではないので,事業者は,契約していない権利者からの訴訟リスクが残ったままで,一部の許諾を受けた権利者に対する支払とか義務だけを負うことになってしまうということになります。また,前にどなたか御指摘されていましたが,世界中のクラウドサービスの中で,日本の事業者だけが契約上の義務を負うということになってしまいますと,競争上非常に不利になってしまいます。
 この小委員会における本件の議論の目的は,クラウドサービスを発展させるということだったと思いますので,目的にそぐわないような結果とならないように慎重に議論を進めていただければと思っております。以上です。

【土肥主査】  切り分けが難しいということはよく承知をしておるところであります。そうすると,切り分けなければいいということになりますか。つまり,著作権法でいうと映画の著作物のように,映画の著作物には視聴覚的効果をもって媒体に固定されているようなものも含むというような形であれば,それは切り分けてなくて内包するという形になるわけですけれども,そういう,切り分けないでこれこれも含むような形で理解をしていくということであれば,委員としてはよろしいということになりますか。

【今子委員】  今御説明いただいた点,よく理解ができていないんですけれども,私が言いたかったのは,切り分けが難しいから全て契約で対応する等ということではなくて,仮に特定のサービスについて争いがある場合には,個別具体的に訴訟で解決を図るべきなのではないかということです。

【土肥主査】  訴訟で解決を図っていただいてももちろんいいんですけれども,これだけは大丈夫だというふうに言ったとしても,外は禁止しているわけではなくて,これは大丈夫だというふうに含めて考えるというふうなそういう取扱いも可能なんではないかなと愚考しましたので少し申し上げてしまいました。
 ほかに何かございますでしょうか。
 先ほどちょっと申し上げた,30条というのはもともとそういうものも含んでいるという意味は,タイプ2の中に限定して含めるというだけではなくて,タイプ4の方に漏れにじむものも考えられるということで整理していただいても構わないと思います。要するに,30条というのは,タイプ2の中に完全にきれいに収まるということでもないので,そこは30条という話と,我々のいわゆるタイプ1,タイプ2,タイプ3,タイプ4の整理は必ずしもきちっと収まるわけではなくて,にじむところも当然あるという意味でございます。
 どうぞ丸橋委員。挙手されたと思いますけれども。

【丸橋委員】  汎用ロッカー型で,純粋抽象的なクラウド上のロッカーについてどうかというところから議論をスタートされていること自体は,それはそうだと思います。問題となるのは,今子委員も言いましたとおり,事業者が付け加える付加価値がどれほどこの先制限を受けるかというところが事業者にとっての関心事ですので,ベースとして,ユーザーの自由度を確保するということについて,今までのところそれほど大きな,現在のリアル社会での30条相当のものをユーザーの行為主体として認めるという前提であれば,それのパラレルな法制を考えようということについては賛成いたします。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 畑委員どうぞ。

【畑委員】  タイプ2ロッカーは,ユーザーが自分でコンテンツを出し入れするタイプということで,ユーザーの行為に着目すれば,利用行為主体が個人であり,30条の範囲内ではないかという主張もあるかとは思うんですけれども,ただ,今回のロッカーサービスについていえば,その場を提供し運用しているのはやはり事業者さんであり,そこに,先ほども丸橋さんの言葉にもございましたけれども,度合いの濃淡はあるにせよ,やはり何らかの事業者の関与があるわけです。
 コンテンツに対する関与あるいは場に対する関与,それにより生業としてサービスを提供されておるという点において,なかなかタイプ2の中でもサービスの切り分けが難しいということもありますが,そうであれば,事業者関与という側面から,何らかのライセンス契約ということで広く網を掛けるという方向が解決策として現実的ではないかなと,我々レコード協会では考えておるところです。

【土肥主査】  分かりました。
 順番なので,椎名委員に述べていただいて,その後,丸橋委員にまた戻します。

【椎名委員】  今,畑委員のおっしゃったことに関連するんですが,もうちょっとストレートな言い方をすると,例えば僕がサーバーを用意してネット上にコンテンツを上げて自分で使うという行為においては僕が便利なだけですけれども,事業者が営利活動としてそういうものを提供する,そこで利益を上げるという意味で,私的複製とはやはり切り分けるべきなんだと思います。
 前回も申し上げましたけれども,やはりある程度コンテンツの訴求力からの果実を手にするという場合に,対価の還元の話と関係してしまうのかもしれませんけれども,そこで利益を手にする者が一定程度対価を還元していくという考え方に立つならば,やはり誰ももうけることがない私的複製と同一にそれを論じることはおかしいだろうと。契約が困難であるとかいう話がありますけれども,それを契約上の問題にすれば,今度は共有範囲とかそういったものが契約上のレイヤーの話にできるわけです。何か無理やり切り分ける必要もなくなってくる。だから,これを私的複製と強弁することには僕は反対です。

【土肥主査】  丸橋委員どうぞ。

【丸橋委員】  畑委員の御発言にもあったとおり,コンテンツあるいは場の関与,そういうところに着目して,だから,契約だというロジックには反対です。これはタイプ4の議論で私は繰り返しワーキングチーム時代から述べているところですけれども,場の関与あるいはコンテンツに対して直接コンテンツの中身について関与していないものの責任というのは,間接侵害法制の方で救えばいいと思っています。以上です。

【土肥主査】  権利者側の御意見,それから,事業者側の御意見もあるんですけれども,今ちょうどアカデミアから挙手がございましたので,奥邨委員お願いします。

【奥邨委員】  若干誤解してしまっているかもしれませんけれども,皆さんの御意見を伺いながら,資料2の3ページ,「私的使用目的の複製と整理されるべきとする見解」のところを改めて読んでみますと,とりあえず一つ目の矢印マークで,ユーザーが主体だということを考えるべきとあるわけです。それを前提として,あと,二つ目,三つ目の矢印マークが続いているという形の一つの塊なのかなと思います。そうしますと,ユーザーが主体ということを前提に置いた議論としての整理ということであれば,やはり機能に着目するんではなくて,先ほど主査がおっしゃったように,ユーザーの行為が,どうなのかということに注目することになってきます。そうすると,それは今回のタイプ2うんぬんだけではなくて,いわゆる30条の解釈の話にストレートに当てはめるということなのかなと思います。
 一方で,今,椎名委員がおっしゃった部分というのは,これは共有の話とはまた別に,私的使用目的の複製というのはいかにあるべきかという,少し別の方向からの御意見ではないでしょうか。共有かうんぬんかということはちょっと横に置いて,そもそも私的使用目的の複製というのは自分で完結すべきではないのかという,極端に言えばそういう御提案だと思います。
 もともときれいに整理して議論してきたわけじゃないと思うんですけれども,今日の皆さんのこれまでの御見解を伺うと,ユーザーが主体ということに関しては,畑委員からもあったように,どうだろうかという御意見もありますけれども,この「私的使用目的の複製と整理されるべきとする見解」という見出しの部分のまとまりでは,ユーザーを主体とした場合は,機能うんぬんではなくて,ユーザーがどういう行為をしているかということで見ていくということではないでしょうか。それが30条に当てはまるかどうか,という議論になっている。
 その先に,更に椎名委員から御意見があったような観点をどう考えるか。それは最初,龍村委員がおっしゃったような形のバランスの問題になるのかもしれないですし……。

【土肥主査】  それは次の問題ということで。

【奥邨委員】  少しずつ整理をしていかないと。伺っておりますと,ここの「私的使用目的の複製と整理されるべきとする見解」という見出しの部分一つの中で全ての議論が行われているかのような気がちょっといたしまして,このままでは少し混乱するかなと思いましたので発言いたしました。もし誤解があれば,また教えていただければなと思います。

【土肥主査】  ちょうどアカデミアから続いて挙手がございますので,大渕委員お願いします。

【大渕委員】  基本的には今,奥邨委員が言われたのに近いのですけれども,いろいろなことがかなり混ざって議論になっているので,このようなものを整理するのもアカデミアの仕事だろうということで。
 一つ大きいのは,最後のバランスについては最後に考えるべきことなのですが,やはり出発点は,我が国の30条については,この基本線は,我が国の法制の特色で,最近論文に書きましたけれども, 30条の1号,2号,3号という例外的な部分を除いた一番コアのところを見ると,要するに,30条肯定の要件というのは基本的には二つしかない。
 一つは私的使用目的であるという,これは,私的使用のための複製ですから当然要求される要件ですけれども,それ以外には,「その使用する者」が複製することができるという,使用者と複製者が一致するという原則であります。これは,要するに,立法例を見ますと,この30条的なものについて分量で制限したりとか,手段で制限したりという立法例はありますけれども,我が国の法制というのは,1号,2号,3号の例外を除きまして,要するに,私的使用目的での使用者が自ら複製をすれば,分量・手段等の制限なく,権利制限が成立するというのが基本であります。
 そのような意味で,主体というのは,先ほど言われたところに関係してきますけれども,この議論の極めて重要な出発点であります。要するに,認定の仕方は人によって違いますが,まずここで,大きな座標軸としては,ユーザーが主体なのか,事業者が主体なのかということを決めないと,あとの議論が混乱してきてしまうということであります。
 それに関連していうと,もう一つ,そのためにこのマトリックスが四つに切ってあるのは,コンテンツ提供というのは,私は主体に結び付いてくると思いますけれども,それ以外に,共有かどうかというのは,先ほど主査が言われたとおりに,もともとが本人だけでなくて,一定の範囲の者を当然30条は予定しております。この現行法を根本から改めない限りは,「個人的に又は家庭内その他それに準ずる限られた範囲内」という範囲内の人というところとそれ以外のところで切れておりますけれども,それと,先ほどの点にも関連して,要するに,共有というのは複製した人以外の人が使用するわけですから,先ほどの我が国の30条の基本のところから外れてきてしまうということであります。
 以上のように,ポイントは,まず主体を決めなければいけない。ユーザーか,業者かを決めなければいけない。それから,共有ということになってしまうと,現行法を改めない限りは,使用者イコール複製者という原則から外れてきてしまいますので,法30条は不成立となります。だから,そこのところは押さえた上で議論を整理しないと大きく混乱します。もちろん先ほどの限られた範囲がどの程度かというのは人によって広かったり狭かったりしますけれども,そういうところに争いがあるのはどの法律問題にもあるのですが,基本線を整理しないと議論が混乱してしまいます。そこを押さえた上で最後にバランスを考えるという形で議論を整理していく必要があると思っております。

【土肥主査】  利用の主体ということに関して,大渕委員は今,そこを決めなさいと,こういうふうにおっしゃったわけですけれども,この場合に,事業者が間接的には利益があるんじゃないかということと,利用の主体との関係をどのようにお考えになりますか。

【大渕委員】  主体というのは基準なので,出発点であり,利益を受けるかどうか等とかいうのはもっと後の段階で考慮されるべきものであって,出発点としての主体というのは,基準自体として純粋に定められるべきだと思っております。その点については,論文で書きましたので,御覧いただければと思います。
 主体に関しては,コピー機でコピーをするという場合には,純粋に自然科学的に見れば,複製ないし印刷という物理的作業をしているのは機械のわけですけれども,誰もコピー機が複製行為主体だと言う人はいないと思います。ここでは,ボタン押しというものが非常に重要になってくるわけです。すなわち,人間がボタンを押して機械に作業をさせているという点が主体認定においては非常に重要となってきます。
 歌を歌うというような,機械を用いない場合には,現実にこれは口を開けて歌っている人以外にはあり得ないので,本来は,主体の認定というのは特に問題にもならないのですけれども,機械を使う場合についてはいろいろ問題になってくるだろうと思っております。
 その関係からいうと,ユーザーとサービス提供者がいた場合に,サービス提供者の方がボタンを押せば,そのサービス提供者が行為者としか言いようがないので,これは置いておきます。他方で,ユーザーがボタンを押す場合については,間接侵害の関係で,1,2年前に審議会でも御説明して,そのときのペーパーが今でも文化庁のホームページに載っているかと思いますが,ジュークボックス法理というものがあります。
それは,皆さん,ジュークボックスというのは御存じかと思います。ジュークボックスの機械を操作している人は客ですが,客が主体だから権利処理しなくていいと思っている人はいなくて,ジュークボックスで音楽の録音再生をしている場合の再生(演奏)の主体というのは,ジュークボックスを設置している店だという点はあまり異論がないと思います。
 これから演繹(えんえき)していくと,ジュークボックス法理3要件と呼んでいるものですけれども,先ほどのコンテンツ提供が誰かというところに非常に結び付いてくるところですが,ジュークボックスの場合に店が主体になるというのは何でかというと,店の方が契約してコンテンツを提供して,ユーザーがボタン押しさえすれば,コンテンツがユーザーの手に渡るようにしているからであります。これに対応して,ジュークボックス法理3要件というのは,(1)業者のコンテンツ提供性と,(2)ボタン押しさえすればコンテンツが自動的に流れる機器であるという意味での自動化機器性と,(3)業者が機器も提供していることという3点であります。
 このように考えていくと,今日も話題に出かかっていますけれども,ロクラクⅡの事案が近いかと思います。ロクラクⅡの事案の場合には,最高裁はロクラクのサービスを提供している業者が主体だといって,あれについてはいろいろ議論があるところですが,私にとっては特に驚くような判断ではない。要するに,(1)アンテナを設置してコンテンツを取得して提供している者は業者だし,(2)ボタン押しすればすぐ複製コンテンツがユーザーに行くという意味では自動機器性も満たされているし,(3)機器自体は業者が提供しているということで,ジュークボックス法理3要件が3つともきれいに満たされて,同法理が成立するので,業者主体が肯定されることとなります。この意味で,私はあの最高裁の判決には特に異論はなくて,基本的に賛成であります。
 いろいろイメージしているところはあるかと思いますが,ここでは,純粋なロッカーサービスだというように考えていただいて,機器は業者が提供しているけれども,ユーザーの方がコンテンツを自分で入手したものをロッカーに入れて出すだけということで考えた場合には,先ほどのジュークボックス法理からいうと,コンテンツ提供をサービス提供者がしていませんから,その一点だけで,即,ジュークボックス法理成立が類型的に否定されますので,業者主体ではなく,ユーザーが主体ということとなります。
 ほかのことはまた後で考えるとして,純粋に誰が行為をしているのかという観点から見て,先ほどのように考えていくと,純粋のロッカーサービスというのはどこまでかというのはまたいろいろあるかと思うのですが,以下のようになると思われます。まず,議論を整理するためには,理念型的に――現実の世界でどの程度あるか分からないけれども――,コアの部分を定めてから議論すべしということとなると思われます。それは,そうでない限りこの議論は整理できないと思われるためであります。そして,コアの純粋ロッカー型として考えた場合には,先ほどのように,やはりユーザーが主体であると解されます。そして,このように,ユーザーが主体であれば法30条の適用があるということとなると思われます。その上で,あとは,純粋ロッカー以外に,どこまで広がるかという形で議論していくのがよいのではないかと思っています。

【土肥主査】  龍村委員どうぞ。

【龍村委員】  現行30条は,本文柱書きのほかに,1項1号,2号等の除外規定もあるので,それは使用される機器の側(がわ)からの限定を加えている結果になっている面もあるかと思います。その辺が30条の本質を逆に照らし出していると解釈される余地もあり,どのような機器や技術を用いてそれを実現しているのか,機器の規模であるとか,椎名委員がおっしゃるような,有償サービスかどうかという点もトータルに見て,古典的な私的使用が,現代の高度情報社会の中では限定的に規定されているという解釈の余地も残るのではないか。その意味で,コインロッカーと類似するとの素朴なイメージで捉えるだけでは済まない解釈の余地を30条1項1号は,現状,持ってしまっている。
 現に,素朴に1号を読む限りは,万人が公衆用自動複製機器に該当しないと読むかというと,該当すると読む向きも結構あるのではないでしょうか。もしその辺が曖昧と考え,これを私的使用の範疇(はんちゅう)に明確に入れたいというのであれば,ここを改正しないとすっきりしないように思います。その辺が曖昧なままであれば,現行法上は安全サイドに理解して,やはり契約処理をしておくべきだと判断する事業者がいる以上は,契約処理しておくべしという流れになるでしょうし,あるいは1号を改正してしまうのか,どちらかになるのではないでしょうか。

【土肥主査】  機器の問題はあるんですけれども,何分,もし事業者が主体ということになりますと,もうこれ,30条の問題から出てしまいますので,まずはユーザーが主体なのかどうか。

【龍村委員】  30条柱書きの点はユーザー主体ということは前提で。

【土肥主査】  つまり,複製をやっている主体はユーザーなのかどうかですね。ロクラク2を大渕委員も御紹介いただきましたけれども,複製の対象,複製の方法,複製への関与の程度,そういったことを総合して考慮せよというのが最高裁かと思います。
 それから,複製の環境を整備するにとどまらずというふうに言っていますよね。だから,環境を整備する段階はまだ最高裁も,主体は事業者ではないと考えているからああいうことになるんだろうと思うんですけれども,長谷川委員,恐縮なんですけれども,主体について,お聞きになっておられてどのようにお考えになるのか。ロッカー型サービスについてですね。

【長谷川委員】  主体の問題というのは,今,主査が判例を御紹介していただいたとおりですので,本当に機械的,それは機械っておかしいですけれども,機械的に決められれば分かるんですけれども,どうも結局,総合判断,いろいろな事情を考慮して判断するというのが最高裁の立場だという前提でいうと,そこを切り分けるというのは非常に難しい。特に今後どういう技術が進んでいくのか分からない状況の中で,今の段階で明文の規定を置くというのはかえっていろいろな弊害も生み出しかねないということを考えるとなかなかちょっと怖いなというのがある。
 やっぱりそこは大渕教授がおっしゃったように,典型的な場合を念頭に置いて,それは許されるのか,許されないのかというところをまずはっきりさせて,そこをどこまで広げていくのかというふうに行くのが今の段階では無難なのかなと考えているんですが,そのぐらいしかちょっと今のところ申し上げられないんですが。

【土肥主査】  切り分けるって,ここから外はアウトで,ここから内側がセーフというふうなそういう切り分けは難しいと思うんですけれども,これはセーフだということを言うことは別に切り分けてないんじゃないかと思うんです。つまり,こういう行為は私的複製目的,私的複製に入るということを言ってやるということは,別に外を切っているわけではなくて,それは許されるんだということですよね。

【長谷川委員】  はい,その限度ではそのとおりです。典型的な本当の汎用ロッカー型というのはどちらなのかというところで,少なくとも典型的な汎用ロッカー型についてはもう許されるんですよというのが皆さんの総意であれば,それでそこはオーケーですと整理した上,その外は今後の議論とする,つまり今子委員がおっしゃったように,あとは個々の具体的な事実関係によって裁判で決めていくというのも一つのあり得る選択肢だろうなとは思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 では,岸委員どうぞ。

【岸委員】  私も,この主体,基本的にはユーザーが多いと思うんですけれども,なかなか画一的にはばっさりと決めにくい面があるよなと。加えて,やっぱり実体的に考えると,これもアナロジーになってしまうんですけれども,じゃ,実際の世の中の商取引はどう行われているかと。基本的なことは契約がなくて,ある意味では法律をベースに行われているわけですよね。例えば個人がお店で買う場合なんか契約書なんかないわけです。それを超えてやっぱりある程度になって契約必要という段階で契約を結ぶよねと。
 だから,やっぱり実際の世の中の商取引はそういうものだよなと考えると,今回の問題についても,基本的には法律上の整理でできるものがあれば,それは契約は要らないよねと。ただ,この部分はすごくやっぱりどうしても範囲が決めにくい。さっきの議論でいえば,ボトムラインで,これは個人でやっているから絶対大丈夫だよねというのはこれは多分合意ができるはずだけど,じゃ,上限どこまでかというのはすごく難しい。現実の商取引はそういう法律でカバーできていないところはやっぱり契約でやるよねというのを考えると,どうしてもボトムラインのところはできても,法律でカバーできるのか,契約が必要なのか,あとは空白が残ってしまうわけですよね。
 だから,その部分をどう対応するかというと,これは事業者の判断が当然大事になって,裁判でやる場合もあれば,契約でリスクヘッジする場合もあるということはあるんですけれども,少なくとも法律でカバーすべきものと契約でカバーすべきものとおのずと違いますから,その中で本来は法律だけでできる部分が明確に切れた方がいい。でも,そこが切れないという段階では,多分こういう場での議論というのは,少なくともここはセーフだよねということぐらいで終わってしまうし,その後,じゃ,法律でカバーできる範囲をきっちり決めましょうといったら,もっと時間が掛かる話ですし,それやるのかいいかどうかも個人的に分かりません。そういう現実を踏まえて,法律でカバーする部分,契約でカバーする部分がおのずと分かれるよねということは意識に置いておかないとまずいのかなという感じはします。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにはいかがですか。
 松田委員お願いします。

【松田委員】  権利者と利用者の意見が相当出たところで,ある程度,それ以外の者が発言する時期に来ているんだろうと私は思います。私的使用の範囲内で答えを見出そうという方向性は決して間違っていないと私は思います。そのときに主体論が出てくるのはそのとおりだろうと思います。純粋にロッカー型のサービスを想定した場合に,主体は私はサービス提供者ではなくて,個人だろうと思います。この点は,典型的なロッカー型とロクラク2の判決との関係は違うものだと認識できると思います。ロクラク2がここまで影響しないと私は思っています。ロクラク2の判決というのは,最高裁はそこまである意味では慎重に考えて,あのケースとして認定したと,判断したというふうに読むべきだろうと思います。
 ということになりますと,典型的なロッカーサービス,タイプ2は,個人が複製をする。その複製をするメディアは,今まではDVDやCDでありましたけれども,これがサーバーになっている,こういうことですよね。一体,CDとサーバーが法の評価として同じぐらいの価値を持つのかどうかということが実は今,論点になっているんだろうと私は思います。
 CDやDVDだって,たくさん売り出されれば,実態として著作権に影響します。その点は置いておいても,サーバー型のサービスが今,かなり普及するというか,当たり前の技術になってきたということは認めざるを得ないんじゃないでしょうか。それから,そこでコピーをして個人がコンテンツを楽しむという,技術によった文化というものを作るべきなのか,促進すべきなのかということの議論の中では,CDやDVDが売り出されたときと同じように,私はサーバーを普通の道具として見るべきではないかなと思っております。そうなると,30条の適用にかなり近いところで典型的なタイプ2は評価できるのではないかと私は思っております。
 私はロクラクにも関与した弁護士でありますが,それと今回の議論とは全く違うんだと。最高裁もそれを意識しているんだと。それから,社会的にサーバーをどう評価すべきなのかと,こういうところで考えていただきたいと思います。その後のサーバーの利便性による評価というのは,これは個人的な複製主体の結論をひとつ置いておいても,その後まだ議論すべき点はあると思います。それは何かというと,先ほど龍村委員が言ったような問題であります。私の意見は以上です。

【土肥主査】  いろいろ御意見を頂戴いたしました。主体に関して,これはユーザーであるということはほぼ一致しているんじゃないかと。

【椎名委員】  いや,一致してないと思う。

【土肥主査】  いやいや,椎名委員がおっしゃるのは,龍村委員が言われるようなその次の話だと私は承知しておりますが……。

【椎名委員】  いや,そうではなくて。じゃ,ちょっとだけ。

【土肥主査】  はい。

【椎名委員】  龍村委員のおっしゃった自動複製機器というものについて条項があるわけですね。複製主体がユーザーであるとしたときに,公衆用設置型自動複製機器の条項との関連はどう理解すればよいんでしょうか。

【土肥主査】  公衆用自動複製機器については,今,松田委員が御提案あったように,そこを議論してくれという,今,そういう御提案ですので,それを受けて議論したいと思います。

【松田委員】  今の私の価値観でいいますか,評価でといいますか,それで現行30条を考えるとすれば,1号の公衆の使用に供する目的で設置された自動複製機器,これをどう考えるかです。特にこの中で公衆という言葉だと思います。

【土肥主査】  ここが次の話だと思っておりますので,その話をさせていただければと思います。この点について御意見ございますか。
 畑委員どうぞ。

【畑委員】  先ほど椎名さんも言われましたけれども,一致ということではなくて,利用行為主体を利用者と仮定した場合,公衆用設置型自動複製機器の問題の議論が必要なら,そこに議論を移していくということであればよいかと。

【土肥主査】  で,いいということですね。駄目ですか。

【畑委員】  つまり,利用主体が利用者個人であるということで先ほど土肥主査が一致というふうにおっしゃいましたので,そこは必ずしも一致してないと。

【土肥主査】  一致してないという,そういう。異議があると。

【畑委員】  ただ,公衆用設置型自動複製機器を議論しないとこの問題が進まないということで,そこに議論を移すということについてはよろしいかと。

【土肥主査】  若干の異論があることは承知をしておるんですけれども,しかし,大勢としてはそういうことかなというふうに私は伺ったというわけであります。公衆用自動複製機器とサーバーとの関係,この点についての御意見を残す時間で頂戴したいんですけれども,いかがでございましょう。
 松田委員どうぞ。

【松田委員】  極めて法律の解釈論的な意見で申し訳ないんですが,この機器は,サーバーがどのような領域で誰のコンテンツをどこにためますよというようなシステムができたとしても,サーバー全体としては公衆に提供されていると私は思います。そのサーバーを使うために特定の人だけしか使えませんよという会員制度みたいなものを使ったとしても,その会員に入ることの契約が自由であれば,申し込めば入れるというようなものであれば,これはもう公衆機器だと私は思っています。ですから,立法的にはこの部分の改正をすることが必要になるだろうとは思っております。

【土肥主査】  大渕委員どうぞ。

【大渕委員】  これも論文にも書いたし,記憶では,少し前の,これの前身のワーキングチームでしたか,あれを立ち上げたときの法制問題小委員会で発言いたしましたけれども,法律の条文というのは,文言だけで決まるわけでもなくて,立法趣旨も考え,立法経緯等も考えて判断すべきものであるというのが一般論であります。その観点からいうと,貸しレコード店等が問題になったときのあの当時できた立法経緯から,当時はサーバーというようなこういうものが想定されていなかったわけでしょうし,その上,文言からしてもやはりそれが表れているのではないかと思われます。
 要するに,結論的には,本件のサーバーのようなネット上提供されるようなものというのは,類型的にこの1号に当たらないという見解が近時はだんだん有力になってきているように思います。そもそも立法の経緯は,サーバーを入れようといったことはさらさらない当時の状態でありますし,それは文言にも表れていて,「設置されている自動機器」という文言にも表れているように思われます。ここでは,高速ダビング機器が当時想定されているのであって,誰もサーバーをネット上設置しているという日本語を使う人がいないことにも,一端に表れているように思われます。立法趣旨からしても,立法目的からしても,現行法の解釈論としては,ネット上提供機器は1号には入らないというように考えるのが,先ほどの趣旨からいって妥当と思っております。
 このように,私は解釈論的にも,現行法上,1号機器にはネット上提供機器は入らないと思っていますが,法制問題小委で申し上げたのは,その説以外の説がないとは思っておりませんので,いろいろな意味で,この点につき立法上明確化を図るというのは大いに意義があることであります。この委員会の中でもこれは一つの大きな項目になるのではないかと思っております。

【土肥主査】  今,奥邨委員が御発言あるんじゃないかと思うんですけれども,どうぞ。

【奥邨委員】   いや,そういうつもりはなかったんですが,アイコンタクトがあった形になってしまいましたので,せっかくの機会を頂きましたので,発言させていただきます。研究者というのは若干酷なところもございまして,7年前にMYUTA事件判決が出たときに,そこまで書かなければよかったんですけれども,いろいろ考えたら公衆用設置自動複製機器の問題もあるんではないかということを判例評釈に書いてしまいまして,そのときには一応,当たらないというふうに解釈すべきではないかと結論づけました。というのも,仮に当たるということになりますといろいろな機器が当たってしまうのですね。従来考えていた高速ダビングマシン以外のものが入ると解釈してしまうと,今度,不都合なものを外すのが非常に大変になってきますので,そもそも余り広げるべきではないだろうというようなことを規定の趣旨,立法経緯,それから規定ぶりなどから書きました。
 ただ,先ほど松田委員からありましたように,まねきTV事件最高裁判決を見ますと,誰とでも契約するということで公衆に当たるという辺りがどうなるのかという問題が,7年前はそういうことは思いもつかなかったんですけれども,出てまいりました。その点は,ちょっと悩んだところではあるんです。ただ,まねきTV事件で問題となった自動公衆送信装置の場合は,これは公衆に送信するという機能が装置に対して定義されているのに対して,公衆用設置自動複製機器の場合は,法律文言としてのひとまとまりは自動複製機器ということであって,複製の機能の単位で見ればよいのではないか,ですから,両者は若干差を付けて考えるということもあってもいいのかなと条文の構造も見つつ思っております。
 あとは,若干へ理屈的なところかもしれないのですが,例えば家具・家電付きのアパートなんかを考えてください。部屋だけでなくて,家具や・家電も借りるというタイプです。アメリカなんかでよくありますよね。日本でも最近いろいろなところにあると思います。そういうアパートで,DVR,録画機器も家電として置かれているわけです。当然アパートですから誰でも契約できる。
 そうすると,そのアパートに設置してあるDVRは公衆用設置自動複製機器になって,それでテレビを録画したら,それは私的使用目的の複製として例外扱いにはならない,30条1項1号で外されるのでしょうか。やはりそれは幾ら何でもちょっとと思うわけです。とすると,やっぱり1号については文言を余り厳密にとらわれるのではなくて,従来あった高速ダビングマシンみたいなものに限った方が,思わぬ波及は少ないんではないかなと思っています。7年前に,該当しないと言ってしまったが故に,それを維持している面はあるんですけれども,そういう説明は付くんではないかなと思っています。
 ただ,大渕委員からもありましたように,この問題,もちろんいろいろな御意見があるという部分でしょうし,具体的に断言するのはなかなか難しいという御意見も認識はしています。以上,とりあえず私として思っているところを申し上げた次第です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 今,浅石委員が挙手されましたので,その後に大渕委員。

【浅石委員】  公衆設置目的の自動複製機器が貸与のときに作られたということであれば,30条1項柱書き自体は,クラウドサービスなんていうのは全く予定していなかった部分でございますが,そちらが貸与のときにできたということであれば,30項1項柱書き自体,そもそも論から考えていかないと整合性が合わないんじゃないのかなと私は思います。
 それで,公衆目的の設置自動複製機器という部分については,私は汎用性があって,当然クラウドのロッカーについてはそれに該当すると私は思っています。しかし,立法趣旨が貸与のときだからということであるのであれば,やっぱり30条1項柱書き自体が, 45年改正のときでクラウドなんてなかったわけですから,そもそも論から話す必要があると思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 大渕委員どうぞ。

【大渕委員】  1号の点と主体の点が両方関係しているので御説明させていただければと思います。先ほどロクラクという話,これは非常に大きな,重要な判決でありますが,その担当調査官が柴田義明判事という若手の人です。ロクラクⅡについては理論構成が分からないということであまり評判も良くないのではないかと思いますが,調査官解説などをよく見ると,ジュークボックス法理を最初に出した論文もきちんと引用していただいて,恐らくそれが基本の考え方となってあの判決になっているように思われます。
 その柴田調査官が,今,どこか地方で判事をやっておられますけれども,最近,青林書院で『知的財産訴訟実務体系』という本が出て,そこに主体論について書かれている論文があって,なかなかよく勉強して書いておられるなと思っております。恐らく思想は一緒だと思いますけれども,ロクラクⅡについては,業者の方がコンテンツを提供しているという点を重視して,あれは業者が主体だと。それに対して,逆にロッカーサービス的なものについては,非常にいろいろ悩まれた上で,これは一般的にユーザーが主体と考えることとするというように明言しておられて,よく勉強されているなと思いました。
 その方が,併せて1号についても,ネット上提供されているようなものは1号の機器とはいえないとでも解することとなろうかということを言っておられて,やはり基本に流れる思想としては同じものがあるのではないかと思っております。現行法としても主体はユーザーだし,1号機器というのはネット上提供されるものは入らないというのが,現行法の趣旨,目的に合致するものだと思います。ただ,この点については,裁判所の判決が出て,最高裁で判例として固まるまで待つということもできませんので,疑義があるのであれば,このような機会にきちんと明確化しておくということは非常に大きな意義があると思っております。

【土肥主査】  ほかにありますか。長谷川委員,今のお聞きになっていかがでございましょうか。

【長谷川委員】  一般論になりますけれども,調査官解説は調査官の私見でありますので何とも言えないんですけれども,その程度で,あんまり個人的な意見はここでは述べられない。

【土肥主査】  分かりました。
 ほかには。
 今日,一般ユーザーの方の御発言がほとんどないんですけれども,特によろしいですか。これまでのところの。時間的にもあと10分ぐらいになって,だんだんお尻の方が迫ってきておりますが,もしあれば。よろしいですか。
 では,河村委員どうぞ。ちょっと手を挙げられたように見えたので。ないですか。なければもちろん結構なんですけれども。

【河村委員】  普通の市民,消費者として当然こういうことができてしかるべきだと思っていたことについて,その分野の専門家の方たちから専門的な言葉で解説していただいたかなというふうに感じました。

【土肥主査】  そうですか。ありがとうございました。
 津田委員もよろしいですか。
 丸橋委員どうぞ。

【丸橋委員】  先ほど大渕委員の方から,環境を整備するにとどまらずというキーワードをお聞きしたんですけれども,クラウドといいますか,インターネット自体がもう複製の前段階の環境は整備されているんですね。ですから,自動公衆送信装置ってインターネットそのものだと言えばインターネットそのもののわけで,じゃ,インターネット全体に補償金掛けるんですかという話にするのか,もうちょっと狭い範囲が普通に考えられるんではないかというところをきちんと議論するのか,それで大分違うと思うんですけれども,その辺いかがでしょうかね。

【土肥主査】  どうぞ。

【椎名委員】  浅石委員のおっしゃったそもそも論の話で議論するべきなんだと僕も思います。自動公衆送信装置との関連とかよく分からないんですが,法文を見る限りにおいて,ユーザーは私的にコピーができますと。だけど,公衆用の設置型の自動複製機器については,これを用いてやる複製は私的複製に当たらないというふうに定義をしているんであれば,それは僕の解釈ですけれども,第三者の関与ということを見ているような気がするんです。第三者が関与して行うものは私的複製ではないという趣旨なんだったらば,やはりこれは公衆用設置型自動複製機器に当たるんではないかと思うので,そこのところをもっと議論していただきたいなと思います。

【土肥主査】  畑委員どうぞ。

【畑委員】  椎名委員の意見と似たようなところではありますが,公衆用設置型自動複製機器が設けられた趣旨,ただ立法趣旨はアカデミアの方たちほど深くは私は研究はしていませんけれども,やはり第三者の関与とそこの利益性の問題なんだろうと思うんです。そこを考えた場合,果たしてネット上で提供されたものが公衆用設置型自動複製機器に当たらないという整理でいいのかという点についてはやはりまだ疑問があるというふうに思っております。

【土肥主査】  ほかにございますか。
 杉本委員お願いします。

【杉本委員】  若干感想なんですけれども,できれば私としては,法解釈の話は法解釈の話で非常にいいはいいんですけれども,ロッカー型クラウドサービスの基本的な部分の解釈をするということに余り時間を掛けない方がいいような気がしています。今回のこの会議体の趣旨に関しても,もう少し発展型としてより良いクラウドサービスを提供するためにどうしたらいいんだという話をしているわけじゃないですか。そうすると,どちらかというと,基本的なところの解釈というよりも,拡張されたときにどういうサービスがあって,それに対してどういう処理をしていかなければいけないのかといったところの議論にもう少し時間を掛けていかないと,例えばの話,今日の時間というのは余り生産的じゃなかったかなと思うんです。
 なので,そこは最低限,現状の技術を鑑みるに,それは押さえられるべきところは押さえられるべきというところで,言葉があんまり良くないんですけれども,さっさと処理をしてしまって,むしろそれを拡張したときに何が起きて,それがエンドユーザーというか,利用者によってどれだけ利用しやすいということですかね。それがもしかしたら法解釈につながるものがあるのであればそこはきちんと話をしていかなければいけないんですけれども,やっぱり理想的なクラウドサービスの創作環境において,それをどういうふうに我々が合法的なものとして提供できるのかといったところに対してもう少し想像力を働かせていかないと,余り場としての意味をなさないような気がします。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。

【河村委員】  よろしいですか。

【土肥主査】  河村委員どうぞ。

【河村委員】  すみません,反論するようですが,建設的じゃなかったとは私は考えていません。といいますのは,そういうところは置いておいてどういうビジネスができるかという視点があるのは分かるのですが,私は本質的な部分の位置付けをきちんとしないままにそこに行くと,私がこの間の発表でも申し上げましたが,利用者,消費者の権利が一方にやはりありますから,何もかも与えろと言っているわけではなくて,本来あるべき権利とかその位置付けがきちんとされた上で発展的なビジネスとかのことを考えていかなければ,いつまでたっても支配力を持てない個々のユーザーたちは決められた規則や技術的な制約に縛られることになりますので,その本質的な部分の位置付けをこうやって時間を掛けて議論していったことはとても良かったと私は考えております。

【土肥主査】  ありがとうございます。

【杉本委員】  いいですか。反論じゃないんですけれども,私が言いたいのは,この時間が無駄だという話をしているのでは全然なくて,どちらかというと,河村委員のおっしゃっていることの側(がわ)の話です。僕が言いたいのは,どちらかというと,エンドユーザーにとって最良のサービスと最良の仕組みを提供するためにはどうしたらいいかという話に対してもう少し時間を費やすべきだという話をしているので,多分ここにいる誰よりもユーザー視点で話をしています。

【土肥主査】  マトリックスの汎用ロッカー型の右側に,タイプ2でもいろいろあるということは当初から認識をしております。いろいろなバリエーションといいますかね,多様なサービスというところのうち,皆さんの御意見を受けてこういうものを作っておりまして,これは議論いたします。これは今日はもう無理ですけれども,この次にはそういうところを議論したいと思っております。

【杉本委員】  それと,すみません,ちょっとだけ。誤解のないように話をしておくと,僕は権利処理に対してそれがビジネスだという話をずっとしているのではなくて,適切に権利を処理するために,権利処理という行為は必要かもしれないということですけれども,それに対して対価が伴うとか,それをビジネスにするということは一言も言ってないです。

【土肥主査】  はい。
 右側の方に行けば行くほど,いわゆる機能の問題,それから,相当の対価の問題が出てくるんだろうと思います。しかし,本日のところはコアの部分についての議論に特化させていただきました。次回以降,また右側のところを話させていただきたいと思います。
 太佐さん,何かありますか。

【太佐氏】   本日代理出席ということで発言は差し控えておりましたが,今日拝聴いたしまして一つやはり思いましたのは,今そこにある現実ということでございます。IT技術の昨今の動向というのは,もう止めようがなく,クラウドであり,モバイルであり,ソーシャルであり,ビッグデータでありといったものが現実のビジネスとしてそこに存在しております。
 その一方で,今日御紹介したとおり,海外においては着々と立法制度が整えられて環境が整っている中で,特にクラウドというのは,冒頭申し上げたとおり国境を越えてしまうものですので,日本だけが取り残されるということだけはやはり避けるべきだろうとは思っております。一事業者としての利益がどうこうというところはさておき,そういったところの視点も踏まえて御議論いただければと思っております。飽くまで本日だけの参加という立場で言うのも申し訳ないのですけれども,一言申し述べさせていただきます。

【土肥主査】  いえいえ,ありがとうございました。我々もそのように認識しておりまして,前年度のワーキンググループ以来継続して集中的にこの問題をやっておりますので,少しお時間頂ければと思っております。
 先ほども申しましたように時間が来ておりますので,特に御意見があれば別ですけれども,本日はこのぐらいにしたいと思っております。よろしいですか。
 それでは最後に,事務局から連絡事項がありましたら,お願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  次回小委員会の日程につきましては,改めて調整の上,追って御連絡したいと思います。
 それから,本日もうすぐ19:00を過ぎようとしておりまして,お帰りの道順がふだんと違いますので,御紹介します。19:00以降は2階の正面玄関の方が閉鎖されておりますので,恐れ入りますけれども,1階まで一度エレベーターを使って下りていただいて,出口までお願いしたいと思います。事務局の者が御案内いたしますのと,あと,お手元にも帰り道順というのを配付申し上げておりますので,それも御参照ください。

【土肥主査】  お帰りの順序という,こういう紙がございますので,どうぞ迷わないようによろしくお願いいたします。
 それでは,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第4回を終わらせていただきます。本日はありがとうございました。

―― 了 ――

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