文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第3回)

日時:平成27年11月26日(木)
10:00~12:00
場所:文部科学省東館3F1特別会議室

議事

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)クリエーターへの適切な対価還元について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配布資料一覧

資料1
クリエーターへの適切な対価還元に関する主な意見(128KB)
資料2
クリエーターへの適切な対価還元に関する主な論点(案)(69.2KB)
参考資料1
著作物の適切な保護と利用・流通に関する小委員会委員名簿
(平成27年10月14日現在)
(68.6KB)
 
出席者名簿(55.2KB)

議事内容

【土肥主査】それでは定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第3回を開催いたします。本日は,お忙しい中,御出席をいただきまして誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますが,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 まず,このたび,著作権分科会の小委員会への委員の分属の変更がございましたので,御紹介をいたします。
 文化審議会専門委員,東京地方裁判所判事の長谷川浩二委員は,これまで本著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会に御出席をいただいておりましたところですけれども,今後は法制・基本問題小委員会に御出席いただくこととなりましたので,この点,御報告をいたします。
 次に,事務局に人事異動がございましたので,報告をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】御報告申し上げます。11月1日付けで著作権課専門官に大野雅史が着任しております。

【大野著作権課専門官】大野でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】よろしくお願いいたします。
 それでは,事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】お手元の議事次第の下のところをごらんください。資料1としまして,クリエーターへの適切な対価還元に関する主な意見,資料2としまして,この課題に関する主な論点(案),参考資料としまして名簿をお配りしております。
 落丁等ございましたら,お近くの事務局員までお知らせください。

【土肥主査】それでは,初めに議事の進め方について確認しておきたいと存じます。本日の議事は,1,クリエーターへの適切な対価還元について,2,その他となっております。
 早速,議事に入ります。クリエーターへの適切な対価還元につきましては,前回までの本小委員会において,委員の皆様より様々な御意見を頂いておったところでございますけれども,今回は,これまでの御意見を踏まえ,事務局において整理をしていただいた論点(案)について御議論いただきたいと思っております。
 初めに,前回の委員会及びその後の意見の提出において各委員から提出いただきました主たる御意見,これを改めてまとめた資料について,事務局から説明をお願いいたします。

【俵著作物流通推進室長】それでは,資料1に基づきまして,これまで出された意見を整理したものについて説明をしたいと思います。
 この資料自体は,前回のこの会でも皆様に御意見を頂いたところですが,その資料に前回の御意見と,その後に一部の委員から追加で御意見を頂いていましたので,それを加えたものを資料1として整理をしました。
 加えた部分について,簡単に説明をさせていただきたいと思います。アンダーラインを引いている部分が,前回の資料から加えたものになります。
 1の対価還元に係る基本的考え方の中ですけれども,最初のアンダーライン。ユーザーが支払義務者でメーカーが協力義務者であるという現行制度を前提として議論すると,ステークホルダーとして事業者の上げる利益が十分に考慮されない。
 その下になりますが,著作権法第30条1項が存在する我が国においては,音楽については,現在の販売価格の中で私的複製を見越した価格決定がなされているわけではない。
 私的複製に係る権利制限は維持することを前提として対価の還元について議論をする必要がある。
 私的複製がそもそも補償に値する行為であるのかどうか,その場合の私的複製というのはどこまでの行為を指すのか,ということを整理した上で議論を進めるべき。
 技術やビジネスの実態の適切な把握の上に法的議論が積み上げられるべきである。まずは事実関係を十分に認識することが重要である。
 本来,対価還元は市場において行われるべきであり,政策的介入や補正を行うのは市場の失敗が起きている場合に限られる。そのため,まずは,市場の失敗がどこで起きていて,それにどのように対応すべきかという現状を整理する必要がある。その際,コンテンツの提供の形態が多様に存在することから,ある程度類型化して整理することが適当。
 次のページになりますが,ここから2の対価還元を要する範囲という部分での意見になります。
 クリエーターとクリエーター以外への支払配分などの実態を把握すべき。
 昨年度のクラウドコンピューティングについての議論において,私的複製と定義された領域については,この小委員会の議論の対象となり得る。その場合,その手段を提供する通信事業者等も関係してくるのではないか。
 次に3の対価還元の手段のうち補償金制度の中ですけれども,下の方になりますが,消費者と権利者の利害調整というところから離れないと,この問題は解決しないのではないか。
 著作権法の立てつけとして,複製をするユーザーの行為を飛ばしていきなり,コンテンツを提供する事業者について議論するのは困難ではないか。
 補償金制度は分配先についてアバウトな見立ての上に設計されているという主張があるが,一方で,家庭内での複製行為に介入することは適切ではなく,どのコンテンツが複製されているのかを把握することはできないのではないか。
 続いて(2)契約と技術による対価還元の部分ですが,劇場用映画については,唯一,テレビ放送からの私的録画が制御できない現状にあるので,契約や技術により対価還元が適切になされるのであれば,これを実現してほしい。
 (3)その他の手段などですけれども,対価還元の手段として,例えば税制の優遇という方法もあるのではないか。
 その下です。新しいビジネスモデルについてのルール作りに関する権利者団体と事業者団体の話合いを促進するため,著作権法の紛争あっせん制度を拡充し,それぞれの団体が市場において一定のシェアを占める場合は,当事者の話合いの場で決まったルールを文化庁がオーソライズし,一般的なものとするという仕組みを作るべきではないか。
 録音と録画ではDRMの影響等の関係から同じ条件で語れるのか疑問。録音と録画を分けて,個別に議論していくという方法もあるのではないか。
 対価還元の手段を議論する上で,何らかの新たな制度を検討する場合には,その制度によって国内外のイコールフッティングが保たれるよう留意すべき。海外の事業者が特別に有利になるような制度を作るべきではないといった意見だったと思います。
 最後,その他の意見の中ですけれども,ダビング10のルールにより何らかの弊害があるのであれば,それが真にルールによるものなのか,メーカーのビジネス上の戦略によるものなのか,整理が必要。
 最後になりますが,ダビング10の議論は本小委員会の検討課題ではない。ルール創設当時の総務省デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会においても,対価還元が伴うものであると示された。これ以上の議論は不要であるといった意見が,前回の意見と,その後に追加で出された意見を加えて整理したものです。
 よろしくお願いします。

【土肥主査】ありがとうございました。ただいま,このクリエーターへの適切な対価還元に関する主な意見として,新たに追加されている部分についての説明を頂いたところでございます。ただいまの説明でありました内容が,委員の方々におかれまして,若干趣旨が違うとか,あるいは,より明確にするために補足等がございましたら,お願いいたしたいと思います。いかがでしょうか。

【河村委員】すみません,よろしいですか。

【土肥主査】河村委員,お願いします。

【河村委員】テレビ放送の録画のことなどが入っていますが,一つ質問したいことがありまして,例えば民放連からの委員の方とかにお聞きしたいと思っているんですが。今後放送される,4K,あるいは8Kの番組に対して,地上波の無料広告放送であっても,コピー・ネバーのようなものを掛けることが検討されているということは本当でしょうか。ちょっと小耳に挟んだ情報ですが,そういう方向であるならば,私的複製に関する対価の還元と非常に関係してくる話なので,その辺り,そういう話が進んでいるのかどうかということを,笹尾委員に教えていただければと思います。

【土肥主査】御指名ですから,いかがでしょうか。

【笹尾委員】御指名でございますので。4K,8Kに関しましては様々な,本当にいろいろな検討がなされている,正に真っ最中でございまして,今,河村委員がおっしゃったようなコピー・ネバーですか,その辺に関して議論がなされているかどうかも,申し訳ございません,私,全く把握しておりません。恐らく技術的な検討の中で,いろいろなことが検討されているのかなと思いますが,全く把握しておりませんので,確かなことは申し上げられない。申し訳ないですけれども,そういう状況でございます。

【土肥主査】ということのようでございます。この点について,どなたか,より何か情報があればですけれども,一番お詳しいはずの笹尾委員がそのように御回答ですので,この場では難しいのかもしれません。河村委員,よろしいですか。そういうことでございますので。

【河村委員】お答えは分かりましたが,その検討のいかんによっては対価の還元に大変関係してくることと思っております。

【土肥主査】そういうことで,はい。
 ほかに。特に追加とか,あるいは趣旨が若干とか,そういう点で御意見ございますか。
 奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】すみません,ありがとうございます。ちょっとだけ修正というか,補足です。2ページ目の下から二つ目の三角印のところです。多分これ,私の発言が基になっているんだと思うんですけれども。ちょっと記憶ははっきりしないんですが,全体で使っている言葉からいってもですし,多分私自身もそう発言したつもりなので。
 「コンテンツ」を提供する事業者となっていますけれども,ここは多分,「複製機能」を提供する事業者ではないかと。コンテンツの方は多分権利者さんになると思いますので,機能を提供する事業者についてという方が,趣旨としてははっきりするかなと思いましたので,そこだけ補足でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。よろしいですか。
 ほかにございますか。よろしいですか。
 1点だけ,私,質問させていただいていいですか。1枚目の一番下のところなんですけれども。対価還元は市場において行われるべきであって,市場の失敗が起きている場合に限られるというような趣旨かなと思うんですが,その限られる。
 例えば市場が存在しても,補助金というものを前提に市場にコンテンツを提供するようなことは許されないという趣旨でしょうか。ここなんですけれども。
 要するに,市場があったら,そこで全てコンテンツについての適正な対価還元が行われるので,補償金というようなものは存在しない,必要ないということなのか。あるいは,その市場が存在して,いろいろなコンテンツの提供の仕方があって,補償金の要らないような形で,ビジネスの中で全て決着がつくような場合もあるし,あるいはDRMを伴うような場合もあるし,これを掛けないで補償金の対象にしてコンテンツを市場に置くということもあると思うのですが,この点はどういうふうに考えておられるのかという,そこの質問なんですけれども。
 これ,委員の御意見だろうと思うので,委員の御意見として,どなたか説明いただければと思うんですけれども。

【岸委員】多分これ,私が言った意見を書いた意見を書いていると思うんですけれども,私の考えとしては,まさに今回の今出ていた補償金,これは市場の失敗を補正する措置だと思っています。要は,基本的には市場メカニズムで,この対価のやりとりは解決されるべきなんだけれども,多くの市場で,いろいろな要因によって,それが十分に機能しない場合がある。その場合は市場の失敗と言われますので,それを補正する必要がある。それが政策介入であって,まさにこれまでの補償金と全く別で,そういった市場の失敗を補正する措置なんだと捉えることができると思います。

【土肥主査】これまでの経緯として,そういう性格はあるのかもしれませんけれども。これからの市場を考えた場合に,いろいろなコンテンツの提供の仕方はあるんじゃないかと思うんですけれども,それはいかがでしょうか。

【岸委員】それは,正にそれを具体的にどういう取引かと,それがどの程度ちゃんと市場で市場メカニズムが機能しているかということを見て判断するべきでありますので,一概に今後,補償金とかそういったものは全然やるべきではないよね,代替手段があるからいいじゃないかということを言う気は毛頭ありません。

【土肥主査】分かりました。そういう趣旨ですね。
 ほかにございますか。
 それでは,主な意見として取りまとめていただいたところについては,このような御意見を頂いておるということでございます。
 あと,先ほど私がお尋ねした点について,岸委員からコメントございましたけれども,その趣旨を少し反映していただくようお願いいたします。
 それでは,論点(案)が出ております。この論点(案)について,事務局から御説明をお願いいたします。

【俵著作物流通推進室長】資料2に基づきまして,論点(案)について説明をしたいと思います。
 これは,これまでこの場で皆様方から頂いた意見を踏まえて,事務局として,こういった視点で今後議論をしてもらうのが適当ではないかという形で整理をしたものです。
 大きく三つに分けていまして,一つが私的録音録画に係るクリエーターへの対価還元についての現状,2が補償すべき範囲,3が対価還元の手段と。大きく分けると,この三つになるのではないかということで整理をしました。
 まず1についてですけれども,クリエーターへの適切な対価還元が必要であることについて異論はないものの,現状において,クリエーターへの対価還元が行われていない範囲があるのか否か,すなわち,いわゆる市場の失敗が生じているか否かについての検討が必要である。そのため,当該検討に先立ち,まずは,私的録音録画に係るクリエーターへの対価還元の現状について,コンテンツの流通に係る契約の実態や技術的な動向を踏まえて,コンテンツの種類,流通態様の差にも留意しつつ把握することが求められるということで,1点目について整理をしています。
 2の補償すべき範囲。これについては,1の現状把握,共有された現状把握に基づいて,クリエーターへの対価還元が適切に行われておらず対価還元のための制度的担保又は取組が求められる範囲があるのか否か,あるのであればそれはどのような範囲であるのか,について検討が必要である。
 3の対価還元の手段については,2の検討の中で補償すべきとされた範囲について,どのような手段で対価還元を行うことが適切か検討を行う。その際には,対価還元の担い手――これは具体的には,お金をどこから集めてくるのかということになるかと思いますが,対価還元の担い手,対価還元を機能させるシステムの設計――これはお金を集めてくる場合の制度的担保,これをどういった形でシステム設計をするかということになるかと思います。さらに,対価の分配方法などについて検討が必要。
 これまでの議論で,特に1の,まずは現状をきちんと把握をした上で補償すべき範囲,対価還元の手段について議論すべきだという意見が多かったと思いましたので,こういった1,2,3という形で,まずは整理をしました。議論のほど,よろしくお願いします。

【土肥主査】ありがとうございました。それでは,ただいま論点(案)について説明を頂いたわけでございますけれども,この点についての御意見を伺いたいと思います。
 これ,1,2,3と3点から構成されているものでございますので,分けて,まず現状の認識,それから補償すべき範囲,対価還元の手段。これを一括して議論してしまいますと,なかなかまとまりにくうございますので,まずは現状についてのまとめとして,この1の論点(案)でよろしいかどうか,この点について御意見を頂ければと思います。
 小寺委員,お願いします。

【小寺委員】まず,1の私的録音録画に係るクリエーターへの対価還元の現状なんですけれども。以前,資料として,権利者の皆さんから御提出いただいたデータというのはございます。やはり当事者の方からのデータも参考にはなるんですが,第三者といいますか,客観的なファクトを一回調査をした方がいいのかなと。それによって,我々も適正な判断ができようということだと考えます。

【土肥主査】ありがとうございました。確かに,どういう状況なのかという事実というところをきちんと認識することは,これからの議論にとって非常に重要だと思います。こういう点について,いろいろ御意見を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。
 椎名委員。

【椎名委員】第三者が調査した実態調査だったと理解しています。それを権利者側で読み解いたものを御披露したという意味であって,何か特定の考え方によった調査が行われたという理解はしておりません。
 今触れていただいたとおりに私的録音。あのとき録音に特化したお話をしたと思いますが,私的録音の影響がどういう形になっているかというようなことを,数字を伴ってお示しをし,それについて資料として提出をさせていただいたわけですけれども,私的複製に関する補償の必要がないという御意見に付随して,これまでデータとか,客観的な資料を示していただいたことがないんですね。
 そういう意味で,ここを議論していく上においては,我々はデータとして一つのたたき台をお出ししましたので,補償の必要がないという考え方を立証するような客観的なデータというものを是非お示しいただきたいなと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。椎名委員にかつて御報告いただいた私的録音の現状についてのデータは非常に重要なものと承知しておりますので,そういうものも当然必要なんですけれども。やはり小寺委員がおっしゃるように,現状,契約の実態とか,技術的な動向ということが出ておりますけれども,そういうことについては,短い時間で結構状況が変わったりいたしますので,我々が知るということは非常に重要かと,そのように思います。
 ほかにいかがでございましょうか。華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】この論点なんですけれども,映画製作者の立場から言わせてもらうと,まず1番,2行目ですが,クリエーターへの対価還元が行われていない範囲があるのか否か。あります。
 2ポツ,補償すべき範囲。テレビ放送からの録画。
 3,対価還元の手段。コンテンツの再生産につながる分配方法。
 以上です。

【土肥主査】先ほどお願いしたように。華頂委員におかれましても御協力いただければと思いますけれども。
 ほかに御意見ございませんか。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】なかなか発言しづらいところもありますが。今,この事務局でお示しいただいている資料に関して,先ほどもちらっとありましたけれども,私自身は,この1のところについては,価値評価を入れずにするのがよいかと。補償すべき立場からの資料であるとか,補償すべきでないという立場からの資料であるとか,そういうことではなしに。それはあくまでも2,3で,また議論をするわけですから。ここでは,より実態を客観的に把握していくということに,まずは努めるべきかと思います。もちろん,資料は,いろいろな立場の方が出されるべきだと思います。
 ですから,私自身は,椎名委員が先ほどおっしゃったように,既に出ている資料も非常に重要な資料であろうと思います。一方で,何もそれに限る必要もなくて,主査からもありましたように,時間も経過していますので,より新しい資料,更に先を見た資料,この前の範囲では入っていない資料等々を総合して,まず,とりあえず実情をニュートラルに把握するというところが,まずは出発点かと思いました。
 以上です。

【土肥主査】奥邨委員がお考えになっているところという現状の把握というのは,どこかの機関が調べてということなのか,それとも我々がじかに技術動向等のヒアリングを受けるとか,そういう時間的な落差のない,誤差のない,直接伺うというようなことをお考えなのか。どちらでしょうか。

【奥邨委員】すみません,そこまで思っていなかったんですが。もちろん何か出来合いのもので,そういうのが十分なものがあれば,それでも構わないと思いますし,また,この審議がどういうタイムスパンで許されるのかということもありますけれども,もし可能であれば,やはり,この場でいろいろな御意見を伺えるものについては伺うということがあってもいいのかなと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかに。
 例えば今,奥邨委員から御提案いただいた,この場で伺ってもいいのではないかというようなことについて,賛成の御意見お持ちの方おいでになりますか。榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】方法論としては,時間のスパンであるとか,予算であるとか,いろいろ御事情があると思うんですけれども,客観的な現状を把握をするということについては賛成です。方法論としては,可能なのであれば第三者というか,中立的な方が何か調査をしたものがあれば理想ですし,それが可能であれば,可能な範囲でしていただきたいですし。ただ,データがあったとしても,データだけでは意味が分からないということでは,ヒアリングみたいなものも必要ではないかなと思います。
 以前,権利者の方々が,コピーが膨大になされているというような,コピーの数とか量についてのデータは頂いたかなと思うんですけれども,その意味ですね。プライスイン論なんかの意味が分からないので,やはり,いろいろな流通経路で,どういう契約で今コンテンツが流通されているかというところが分かるような情報を調べるなり,ヒアリングするなりで把握をしていくことが,前提として必要ではないかなと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかにございますか。椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】数字ということで言いますと,我々の資料でもカバーできなかったところの数字というのがあるんですが,僕はこの委員会の中で,コンテンツの訴求力から複製手段を提供する方たちが上げる利益ということを盛んに申し上げてきました。その複製機器及び複製手段に関する市場規模なり,そういったところの数字も是非収集していただければありがたいと思います。

【土肥主査】椎名委員がおっしゃった今の利益とか,非常に微妙なことになってくるんですけれども。つまり,ヒアリングをして,どの程度御意見を頂戴できるのかというところはあるんだろうと思うんですね。例えば今のような点とか,あるいは契約の実態といっても,どのぐらいお話しいただけるのか,ちょっと想像はつかないんですけれども。

【椎名委員】よろしいですか。

【土肥主査】どうぞ。

【椎名委員】ヒアリングで実態をという意味ではなくて,客観的な統計の数字とかという意味で,そういう数字を把握しておきたいという意味です。

【土肥主査】松本委員,どうぞ。

【松本委員】アニメーションの業界だけでのデータ,我々が独自に調査したデータと,経済産業省側で出していただいているクールジャパンでの業界実態のデータがあります。その数字の部分からお話しするんですけれども,例えばアニメの制作をする我々コンテンツのプロデューサーがいます。その収入が10とします。そのコンテンツ,アニメーションの10の我々の市場規模を利用して,いわゆるメーカー,ライセンシーが商品を作る会社の市場規模が,約10倍の100になります。経済産業省の出している,クールジャパンの全体のコンテンツの市場の産業規模という数字が出ているんですけれども,20兆円とも言われています。
 ということは,単純に言うと,そのいわゆるライセンス商品を作っている市場が100とすると1,000ある。要するに10倍,10倍,10倍の市場になる。コンテンツが1とすると,最終的な録画機器ハードメーカーさんや,いろいろなコンテンツだけでのビジネスやコンテンツ回りを利用して事業展開する業界が,その100倍あるんですね。
 この実態を考えると,例えば我々はコンテンツ,アニメを作ります。その10の投資で作品を,先に作ります。それを作ることでテレビ放送局が放送します。テレビ放送局は放送,メディアを利用して,いろいろな,放送権料など,いわゆる放送局としてのリスクがありますね。放送するときのリスクが。次に,それを今度スポンサーという形でアニメーションの提供,いわゆる企業がつきます。その企業は,提供することで,おもちゃとか,ゲームとか,商品化することで5%とか10%のロイヤリティーを権利者に払います。還元しています。
 ところが,それを今度テレビ放送することでフリーに録画できます。最近は,2週間×24時間録画できますという商品も出ています。要するに,フリーに適当に録画したものをフリーに見られる環境に,もう商品,ハードの市場がなっているわけですね。
 ところが,そのハードメーカーは,先ほど言ったおもちゃだとか,食品とか,ゲームメーカーが払っているロイヤリティー的なものは一切払っていないわけですね。コンテンツから受ける利益。コンテンツを利用して,商品,商売になるハード機器メーカーさんは全く負担をしていない。
 この辺の実情を考えてもらえれば,数字が約1,000倍あるということを考えたときのデータを,もっと密にと言いますかね,シビアに関連業界全体で集めれば,数字の把握はできると思いますね。
 以上です。

【土肥主査】分かりました。事務局におかれましては,そういう可能な客観的なデータをひとつ集めていただいて,今,松本委員もおっしゃっておられますように,本委員会に出せるということでございますので,よろしくお願いいたします。
 ほかにいかがでしょうか。いずれにしても,現状について客観的に契約の実態とか,いろいろな動向を我々が共有するという必要性は皆さん,お持ちではないかなと思います。
 反対の方,おいでになりますか。御異議がないようでございますので,そういう方向で,事務局におかれましては調整いただきたいと思いますけれども,1は,こういう形でまとめてよろしゅうございますか。1ポツの私的録音録画に係るクリエーターへの対価還元についての現状という部分でございますが,これでよろしいですか。
 では,一応仮止めで,この1はこういう形で,今の時点では仮止めですけれども,了解をしたということで次に進みたいと思います。
 次に補償すべき範囲,これについてでございます。対価還元の必要な範囲があるかどうか。また,あるとすれば,それはどの範囲であるかについて検討が必要であると書いて,まとめてあるわけでございますけれども,この点について御意見を頂ければと思います。いかがでございましょうか。これは,これでよろしゅうございますか。
 御異議,御異論がないということのようでございますから,2はこういう形でまとめることに,仮止めですけれども,いたしましょう。
 では,最後の対価還元の手段でございます。対価還元の主体,その当事者,それからシステム,スキーム,それから分配方法等々についての検討が必要であると,案としてまとめていただいておりますけれども,この点について御意見はございますか。よろしゅうございますか。
 そうすると,全体として,これを仮止めではなくて,このクリエーターへの適切な対価還元に関する主な論点(案)のところから(案)を取ってよろしいかどうか,お伺いいたします。よろしゅうございますか。はい,どうぞ。

【榊原委員】1か2か,いずれの論点になるのか,ちょっと分からないんですけれども,プライスインされているのかどうかということについては,経済学の方の御意見を聞いてはどうかなと思います。ここにそういう,法律の専門家の方はたくさんいらっしゃるんですけれども,経済学の方の観点というのがないと,対価還元がされているとか,プライスインがされているとか,市場の失敗がされているかどうかということが,なかなか判断ができないと思うので,そういう基準であるとか考え方について,経済学の専門家の意見を聞くということが。言葉で書かれていないだけなのかもしれませんけれども,できればそういう観点も考慮いただければと思います。

【土肥主査】今の御意見といいますか御要望は,そういう専門家の方の意見をこの場で聞ける,そういう機会を作ってほしいということですね。分かりました。その点については事務局と,どういう形がいいのか,またどういう方法がいいのか相談させていただいた上で,そういう機会ができればと思います。
 華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】今のプライスインされているか,されていないかというのは,我々事業者がしていないと言えば,していないんじゃないですかね。私たちがうそをついているということですか。

【土肥主査】では,奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】これは,この前も思っていたのですが,まだ判決をきっちり読み切っていないんですけれども,プライスインというのは,事業者の方がしたという意識があるかどうかという次元の話とまた別に,次元が違って,経済学的に,結果としてというか,客観的な話として,そういうものが経済学的な意味で織り込まれているかどうかということかと。もちろん,華頂委員や,この前レコード協会さんの方からもあったように,私たち今していませんと,それはそれで十分,主観としていうか,意識としてというのは,それは十分考慮すべきだと思います。
 ただ,価格設定の実際的な影響が生じているかどうかという意味の,客観的な意味のという話だと思います。ですから,そういう次元に限って聞くというか。あくまで経済学の方に聞くということは,そういうことなのかなと私は理解しています。

【土肥主査】どなたに伺うかという点については,奥邨委員がおっしゃったように,少し考えた方がいいのではないかなと思っております。その点を含めて,事務局と相談させていただければと内心では思っておったところでございました。
 ほかにございますか。よろしゅうございますか。
 それでは,御異議がございませんので,この(案)という文字を取っていただいて,クリエーターへの適切な対価還元に関する主な論点ということにさせていただければと存じます。
 それでは,時間がございますので,論点1の私的録音録画に係るクリエーターへの対価還元についての現状の検討を行うに当たって,確実に把握すべき点とか,留意すべき点とか,ヒアリングが必要な項目についての各論といいますか,御意見,一部,今,榊原委員もお出しいただきましたけれども,それに関連して,あるいはそれ以外のことでございましたら,お願いをいたします。どうぞ。

【俵著作物流通推進室長】事務局として確認をしておきたいと思います。
 現状把握について,最初に少し議論があったように,まずは価値評価を入れずに事実関係の確認をするということでよいかどうか確認をいただきたいと思います。その中で,これも先ほど出ましたが,録音録画の実態調査については既に行われていて,権利者の方からも発言を頂いているので,これを否定するべきものではないと思います。これはこれで事実として踏まえた上で,更に確認が必要なことは,資料にも書いてありますが,コンテンツの種類や流通態様による対価還元の現状把握であり,例えば音楽であれば,CDがどういう形で流通をして最終的な対価が決められているのか,最近では配信のサービスもあるので,こういったものについてどうかといったようなことを把握するために現状確認を行うといったことでよいかどうか確認をいただきたいと思います。
 また,確認の方法としては,第三者的な調査になると時間が相当掛かると思いますので,できればこの場でヒアリングのような形で確認をした方がよいと思いますが,これでよいかどうか確認をいただきたいと思います。
 加えて,先ほど議論があった,コンテンツビジネスによってどういった利益が上げられているか。これは,参考情報として事務局で確認できる範囲で確認をするような形にしたいと思います。こういった進め方でよいか,その場合具体的にヒアリングをどういった方からしたらいいか,あるいは具体的にどういった内容を確認した方がいいかということについて,この場で議論いただけると,事務局としてはありがたいと思います。

【土肥主査】今,事務局から要請があったことも含めて御意見を頂ければと思いますが,いかがでございましょうか。
 河村委員,どうぞ。

【河村委員】この1番についてですが,今回,客観的なデータを集めて対価の還元に関する現状を把握しようということで期待していますが,いつも「私的録音録画に係る」ということが頭につくわけです。そうなってくると,今までみたいに私的録音録画の数が幾つであるとかという話になってしまうと繰り返しになってしまうので,この際知っておきたいと率直に思っていますのは,私的録音録画に係るというところに行く前にと言うとおかしいですが,全体としてクリエーターの方への対価の還元というのが,どういうタイミングで,どういう仕組みで行われているかということです。
 さっきアニメ関係の方の御発言で,10が100になって,1,000になってとおっしゃいましたが,そもそもクリエーターの方は,一般的にどういうタイミングで,どういうルールに基づいて対価の還元がされているのかということを把握した上で私的録音録画に係るというところに行くことで,今までになかった現状把握ができるのではないかと期待しているところです。是非そういうようなことが把握できるヒアリングなりを期待しております。

【土肥主査】ありがとうございました。この「クリエーターへの」というところですよね。
 何かこの点について御意見ございませんか。では,お願いします。

【末吉主査代理】ありがとうございます。今,河村委員が言われたクリエーターへの還元という観点からは,たしか今年の初めだと思いますが,アメリカのコピーライトオフィスが相当詳細なレポートを挙げておられて,アメリカにおける現況ではありますけれども,クリエーターへの還元が不十分なのではないかという調査結果が出ておったと思います。
 あるいは先ほどの松本委員の御発表にもつながるところなんですけれども,例えば経済産業省のメディア・コンテンツ課を中心として,クールジャパンの中長期的な新しい戦略ということを考え始めていて,その中で現況のコンテンツごとの市場分析を,松本委員も恐らくそういうところに関わられると思うんですけれども,詳細な市場分析をされているところでございます。
 現況の認識につきましては,そういった,ほかのお役所だったり,あるいは海外のお役所だったりというところのいろいろな調査レポートも,あるいはここまで,この文化庁におかれてのいろいろな調査の成果といいますか,そういうものも,もう一度集約をして,その中でさらに,どういうところをヒアリングしたらいいかというところを要領よく分析していただいて,相当絞った形で,それに付け加えていくと。あるいは,その全貌を把握する上で何が足りないのかというところも我々に教えていただいて補っていくような,そういう手法みたいなところを少し工夫頂いて,この審議を促進していったらいいのではないかと思います。
 以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。
 畑委員,どうぞ。

【畑委員】この小委員会で検討しているテーマは,クリエーターへの適切な対価還元ということですが,先ほど河村委員がおっしゃったコンテンツの創作から流通,消費者による利用という様々なステージで,どのようにクリエーターに対価が還元されているのか,まずつまびらかに把握した方がいいという御意見ですが,そこについて反対するものではありませんけれども,ただ,それをつまびらかにして,その各創作段階,あるいは流通段階における各々の,対価還元が適切なレベルかどうか,それをどうやって判断するんだろうと思ってしまうんですね。
 今ここで議論になっておりますのは私的録音録画であって,つまりユーザーの手元にコンテンツが行き渡る手前の段階までは,これは契約で処理をされて,そこについては問題になっていない。あるいは,この小委員会での課題にはなっていないと思います。
 そこは著作物の利用とその対価という観点ではなく,流通に乗る前までの段階は,クリエーターの種類によっては役務提供の対価という形で処理されているケースもあるわけで,そこについてはなかなか踏み込んで把握,議論はできないと思います。
 そういった面で考えますと,クリエーターへの適切な対価還元ということを議論しているのは,やっぱりユーザーの手に渡って以降の利用の話であって,その前の段階につきましては,対価の流れを把握することはこの場である程度可能だとしても,踏み込んだ検討議論にはふさわしくないのかなと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかに。松田委員,どうぞ。

【松田委員】今,皆さん方の議論を聞いておりまして,特に畑委員のお話ですと,最終的にユーザーに渡った段階における私的録音録画の問題を対価還元の問題として捉えれば良くて,そこに至るまでの流通におけるクリエーターの配分については,権利が,どういう形であれ行使されているということを前提にして,そこを検討する必要はないんじゃないかと,こういう議論のように私は受け止めました。そういうことですよね。

【畑委員】はい。

【松田委員】果たして,そうなんでしょうか。対価の還元を考えるときに,おおよそ三つ考えるべきだと思うんです。クリエーターが,例えば何かのキャラクターを創って,その後,出版,映画化,放送,公衆送信というふうに利用がなされて,多分これは何らかの形で最初の権利が及んでいて,契約というレベルで処理されているんだろうと思います。そして,その最後に出てきた話ですと,マーチャンダイジングがあって,マーチャンダイジングについては果たして還元されていないのではないかという松本委員の意見が少しあったのではないかと聞いていました。
 ということになりますと,クリエーターが権利を創造して,著作物を創造して権利化したときの流通過程におけるクリエーターの還元は遺漏がないのかどうかということは,これは一つの論点としてあり得るわけです。そこに立ち入るかどうかは,これはこの委員会の問題だろうと思います。むしろ主査において,そこのところを仕切っていただいてもいいのではないかと私は思っています。
 ただ,そこのところも入るべきだというのであれば,これはそれぞれのクリエーターを抱えている団体の方々が,どういう契約形態で,流通形態で,どこに遺漏があるのかということを指摘してもらうことで,かなりできるのではないかと思います。
 もう一つの対価の還元の問題は,まさに今の流通の流れ,マーチャンダイジングまで終わった段階で,私的録音録画の部分に至ったときに,それが果たして対価の還元としてなされているかという問題です。旧制度は今機能していないわけですから,これはないということになりましょう。
 ここでの問題は,第1の問題と視点が違うのは,私的録音録画というのは,権利の大きさを実は決めるところがありまして,権利の大きさが決まるということは,例えばシフトしますと,本来還元すべきでなくてもいい,還元しないでいい,いや,ここまでは還元すべきだと,こういう議論になります。この権利の大きさといいますか,権利は私的録音録画ですから,当然のことながら,30条その他の30条に絡む制度の組み立てによって権利の大きさが決まってきます。これは経済学者が本来検討すべきことではなくて,検討するとするならば,どういうふうにシフトした場合に,どれだけの対価の還元が必要かという過程的な議論が必要になるわけです。
 ここで議論しなきゃならないのは,権利の大きさとしての私的録音録画をどこのラインで引くかということをきちんと整理すべきことだろうと思っています。それはこの,正に審議会の議論だし,法律家の議論であるべきだろうと思います。それが2番目の問題として,最初の問題と違う問題があると思います。
 もう一つ対価の還元で生じるのは,これから先のことなんです。これから先,新しいビジネスが生まれるときに,どういうルールを作って,クリエーターまで納得するような制度をしていくか。これは,ほかの小委員会で問題としているところで言うならば,教育における補償金の問題になったり,それから柔軟な規定の問題になったり,ないしは私が意見を出しているような,あっせん制度の改革によって新しい制度を作っていこうという問題になったりするわけです。
 このクリエーターの還元については,実は三つの問題があると考えています。私は最初の1の問題と,それから私的録音録画の2の問題について,それぞれ資料を出してもらうことは大賛成だと思っております。
 特に1の問題については,権利者団体から,通常のビジネスの形態において,どこにクリエーターに還元が行っていないのかということを具体的に何か資料を出していただいて議論ができます。できれば,そこに数値を入れていただければ議論ができます。その上で本委員会において法制として対処すべき点があるかを検討することになります。第3の問題は,この委員会であまり立ち入らない方がよいと思います。
 そして,第2の問題に集中するとよいと思います。
 一応,意見として。

【土肥主査】ありがとうございました。
 畑委員,どうぞ。

【畑委員】先ほど松田委員のおっしゃった,流通過程で権利者,クリエーターの方に還元がなされていないケースもあるのではないかという点ですが,マーチャンダイジングの例を引き合いに出されましたけれども,流通過程でクリエーターに対価還元されているかどうかについては,これはまさに民民の契約に基づく部分ですよね。
 仮に今,例に出されたマーチャンダイジングの例で言いますと,私は専門家ではないので分かりませんけれども,仮にクリエーターに対価還元なりされない形でマーチャンダイジングが市場に流通されているとすれば,それは正規ライセンスを受けない,マーチャンダイジングという意味ではないですか。

【松田委員】そうじゃないでしょうね。

【畑委員】そうですか。私は,そういう理解をしていました。例えば露店で売っている何かのキャラクターの絵が付いているグッズとか,そういう正規ライセンスを受けないマーチャンダイジングということであれば,それは著作物の利用と保護という観点でなく,まさに海賊版へのエンフォースメントになろうかと思いますので,そういう観点であれば,ここの議論のテーマではないと思いました。

【土肥主査】はい。では,榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】音楽と映像は流通なり利用のされ方が随分違うという御意見の委員は多かったと思うんですけれども,実際ここの1番でもコンテンツの種類や流通態様と書かれているので,分けて調べる必要があるのではないかなと思います。
 音楽については,この場にはJASRACさんがいらっしゃるわけですけれども,それ以外にイーライセンスさんとか,ジャパン・ライツ・クリアランスさんとか,同じような団体というんですか,があるようで,私も余り詳しくはありませんが,契約条件などを見ると,随分違うわけです。ですから,上流部分のコンテンツの契約条件が違うということは,そのプライスインされているものが違うのではないかなと推測するんですけれども,その辺りを調べてみると,実際に下流の私的録画部分も入っているものもあれば,入っていないものもあるのではないかなと。
 これは主観的にどうかというよりは,契約条件として客観的にどうなっているのかというのをまず見て,それをその後評価をするということをしてはどうかなと思います。
 同じように映像についてですけれども,例えばWOWOW,それからスターチャンネル,スカパー,これらについても,細かい契約条件は私は承知をしていないんですが,外から見る限りはコピーフリー,コピーワンス,ダビング10もあるのかな,あとコピー禁止というふうに,いろいろ条件が違うので,当然のことながらコンテンツを調達するときにプライスインの有無などが関係しているのではないかなと思います。
 それが直接的に,最初の下流部分のユーザーの私的録音録画がプライスインされているかどうかという話であろうと思うので,これもそういう条件面を,呼んできてくださる方々なのか,よく分かりませんけれども,調べてはどうかなと思います。
 それから,ちょっと先の話に戻るんですけれども,経済学者の方のお話を聞いてはどうかと言ったんですけれども,できれば御検討いただきたいのが,慶應の田中辰雄先生ですね。理由は,著作権法学会で発表された経済学者の方は,私はほかに存じ上げていないというのと,あと私的コピーに関して論文を書かれているということなので,法的な部分は駄目だと思いますけれども,経済学的な部分は,聞く方としては適任ではないかなと思います。
 以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。
 奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】すみません。若干,今議論が出ていることと関係しますが,私の先ほどの発言を補足したいなと。経済学の方とおっしゃいましたけれども,経済学の方の意見については,先ほど松田委員からもあったように,あくまでもここは最終的には法的な価値判断をするわけですから,こういう言い方は失礼でありますけれども,判断の材料というか,資料として,まず伺うということはあっていいんだろうなと思いますが,その際には,プライスインという言葉は,私自身もまだよく分かっていないんですが,経済学的にはどうかというのもありますけれども,余り独り歩きすると,特にいろいろお立場によっても見方の違う言葉であろうと思いますから,せっかく経済学の方のお話を聞くときに,そこにこだわり過ぎる,フォーカスを当て過ぎるというのもいかがなものかなと思います。
 より重要なのは,やはり,資料の1番で,みんなで理解し合っているように,市場の失敗があるかどうかを経済学的にどう考えるのかというところがまず重点にあるわけです。それは別に私的録音録画に限って,そこだけを聞きたいということではなく,ここはあくまでニュートラルに,もっと広く市場の失敗があるかということを聞いているわけですから,そういうことも含めて幅広に,経済学の方であればどう捉えるのかというようなことを伺うことが必要なのかなと。
 余り何かにフォーカスし過ぎるというのは,既に何かのお立場を前提にということになるのではないか,ちょっとそこで議論が錯綜しないかなという心配を持ったということは思っております。
 以上です。

【土肥主査】幾つか問題が出て,御意見を頂いているわけですけれども。そもそもクリエーターに対する適切な対価還元がなされていないのではないかという,例えば末吉委員がアメリカの著作権局ですか,そこでの分析を基に提案されたことを受けて,いろいろ出ているわけですが,ここに我々の小委員会が入るというのは非常に難しいのではないかなと思います。
 畑委員の御意見は承知したところでございますけれども,特にここの点について椎名委員が一言も発言されないんですが,ここ,今の文脈で御発言いただけませんか。

【椎名委員】今,考えをまとめている最中だったんですけれども。要するに,総体として,例えば音楽で言えば音楽産業というものがあって,その中でコンテンツが生まれて,様々な経路をたどってユーザーの手元に届くと。その中で関係してくる要素としては,契約もあるでしょうし,DRMもあるでしょうし,そういう様々な分岐があったりするというところで,それが大きく対価がどういうふうに戻っていって,ここは戻っていないのかというようなことを検証するという趣旨が一番だと思っております。
 何かさっき聞いておりますと,多分,論点整理の中にクリエーターとクリエーター以外の取り分がどうのこうのというような部分がありましたけれども,今そういうところをどうこうという話ではないのかなと。

 音楽産業というものがあって,それがコンテンツを再生産していると。それがどういう形でユーザーの手元に届けられて,どういう契約によって行われている,あるいはどういうDRMがあるというところで,どういう対価が還元されているのかということを検証する趣旨だと思いますし,そのことは必要なことだと思います。

【土肥主査】ここのところが著作権者,あるいは著作隣接権者等への適切な対価還元ではなくて,クリエーターとなっているところなんですよね。ここが椎名委員に伺いたかったところですけれども,特にそういう点での御要望はなかったのかなと思います。

【浅石委員】すみません。

【土肥主査】浅石委員,どうぞ。

【浅石委員】そもそも論なんです。CRICの著作権情報専門誌「コピライト」でドイツとフランスの私的複製について紹介されていて,ドイツやフランスにおける私的複製に関して法的にどういうものなのかということについては理解はしやすいんですが,我が国における私的複製について,アカデミアの先生方に,日本で法的根拠が構築されているのかどうかをお聞きしたい。
 1で「対価還元が必要であることについて異論はないものの」となっていますが,そもそも私的複製自体が,本来は駄目なものなのか。その辺の議論というのが,この補償金の制度ができた時点から,もうひとつ定かではない。制定当時の審議会では,例えばメーカー悪玉論にはよらないからドイツのような考え方はしないんだというような御発言もあったかのように聞いております。一体,我が国における私的複製は法律上どういう位置づけになっているのかをお教え願いたい。
 前回は,別の段階でこういう発言したときに,神学論になるからやめてほしいというようなこともありましたが,そこのところの基本がなくて,技術的にとか,現在の実態把握等だけで果たしていいのかどうか。エンドユーザーと,それから機能を提供している事業者が,どういう法的な義務を負うのかというところが,権利者を含めた三者で,まあ,いいか,こういうふうにしましょうよという合意事項になっているのか。そうじゃなくて,もともと個人の複製行為は違法なんですよというところからスタートするのか。その辺の議論が,私は日本においては少ないというか,あるいは,されているんでしょうけれども,確立していないと思われるので,その辺を是非ご教授いただきたい。
 我々は,こういう実態になっているという,ことは出せるんですけれども,法的な,ところからスタートして,三者はどのような法的な位置にあるのかというところを是非御議論いただければ,あるいは教えていただければと思って発言をいたしました。

【土肥主査】今の点ですか。どの点でしょうか。

【椎名委員】さっきの話なんですけれども。

【土肥主査】では,浅石委員の御要望について,ちょっとお待ちいただいて,後で伺うことにしますけれども。では,椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】申し訳ない。クリエーターへの対価の還元ということを今ちょっと思い出していたんですけれども,これを言い出したのがダビング10のときのデジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会なんですね。コンテンツへのリスペクト,クリエーターへの対価の還元という言葉を使って,それを慣用的にずっと僕ら使ってきたような気がするんですけれども。その場合のクリエーターって,身を粉にしてコンテンツを生み出すという人もそうだけれども,例えばそれをアシストして,そのコンテンツを世の中に届けていくというような部分も含めて,それを再生産していく仕組みそのものをクリエーターと言っていたような気がするんですね。
 だから,何かクリエーター残酷物語みたいなことをほじくって,ここは対価が還元されていないのにおかしいじゃないかみたいな話に分け入ってしまうのは余り意味がないと思っていて。ここで言うクリエーターというのは,さっき音楽産業という言葉を使いましたが,再生産していく仕組みという理解をしていけばいいのではないかなと思います。

【土肥主査】はい。では,浅石委員がお尋ねになった点について,どなたか御意見を頂ける方はおいでになりますか。
 松田委員,どうぞ。

【松田委員】もちろん神学議論にわたらない範囲内で。日本の制度を作るときに随分議論しましたが,やっぱり少し原則論に立ち過ぎているところがあると思います。それは何かというと,私的録音録画をするのは誰かという視点で考えますと,まさに個人でありまして,個人が使用する場合のいろいろな機器の製造者につきましては,この者はコピーをするものではない,複製をするものではないから,協力義務という立場で法制化をしたという状況にありました。請求権は個人に対してあるけれども,機器メーカー等は協力義務。その協力義務がうまく動いているときには,私的録音録画の対価の還元がある程度機能するように制度化されている。こういう前提であります。
 なぜ原則論に立ったかというと,誰が複製するものかということだったと私は思います。しかし,そろそろ著作権法も,そういう議論では駄目になってきているんじゃないかなと思います。TPPでは,もうアクセス権についても,著作権法の中に取り込まなきゃならなくなってきているわけでしょう。
 これは何かというと,著作権法が本当に対価を取得すべき部分はどこなのかということを,複製だとか送信だとかという個別的な支分権の従前の概念からもう少し広げて,今の社会における禁止すべき権利は何かということを考えると,シフトせざるを得なくなっているのです。
 そうすると私的録音録画についても,コピーするのは誰,利益を取得するのは誰というようなことで,従前の議論だけではなくて,組み立てし直さなきゃいけないところまで来ているのではないかと思っています。
 直截に私言うと,個人的意見はちょっと早く言い過ぎなんだろうと思いますけれども,協力請求権という曖昧なものではなくて,請求権をきちんと法制できなければ駄目なんだろうなと思っております。
 多分,私的録音録画制度の根本的な議論はどの辺にあるのかというのは,日本の制度の曖昧さという点では,多分そこにあるんじゃないかなと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。この資料1のクリエーターへの適切な対価還元に関する主な意見の1ポツの最初の出だしのところですよね。現行法制定当時,45年前,私的複製に係る複製権を制限しても権利者への不利益は零細であった云々と,こういうふうにあるわけですけれども。あのときは30条1項の本文しかなかったのが,1,2,3号入って,しかも2項もできてと,そういう45年の間の時間の流れがあるわけでありますけれども。
 この出だしを読むと,複製権を制限してもと言っているわけですから,それは著作者に複製権はあると。ただ,それが昭和45年の時代は,まだまだ私的複製を認めても権利者への不利益というものはほとんど零細であった。そんなに対価還元が必要な,そういう状況ではなかったという認識で,これは意見を出していただいてまとめていると思うんですけれども。
 少なくとも私はそういうふうに認識しているんですが,いかがでしょうか。

【浅石委員】私も,そういうふうに認識をしています。そのときに,では,メーカーの人たちというのが,どういう法的な位置にいるのか。要するに,義務者ではなく協力義務という部分が,ドイツのように共同して,行為を行っているものと捉えていないのではないのかなと,若干引いているようなところがあるのかなと思っております。
 それと,やっぱり45年の改正で,私的複製は,そもそも自由なんだ,あるいは利用者の権利なんだというような方向に何か動いているのではないかなという疑問があり,今,主査がおっしゃっていただいた,もともと権利があるんですよというところからスタートしているのだとすると,では,現状の協力義務者であるメーカーの方たちというのは,法的には一体どういう位置にいるのですかと。要するに,エンドユーザーと一緒の行為をやっているというふうにみなしているのか。メーカーの法的な位置がどうもはっきりしないんですね。
 そこが,幇助者というか,エンドユーザーの方と同じにみなしているのか。そうではなくて,何かよく分からないところにいるのではないのかなというのが,私としては疑問なんです。

【土肥主査】では,榊原委員,お願いします。

【榊原委員】私の意見を言ったからどうという話ではないと思うんですけれども。確かに浅石委員がおっしゃるとおり,ドイツと日本は異なるというふうに説明をされてきていて。ドイツは最高裁で間接侵害でメーカーが敗訴をしたということが随分昔にあったと聞いております。他方で日本では,適法行為を幇助する人。現在メーカーだけじゃないと思いますけれども,いろいろな事業者がユーザーの行為を援助するという立ち位置なんですが,適法行為だろう。それの援助だと。
 ここで以前どなたかが御説明されていたような気もするんですけれども,権利制限規定は違法性阻却というのが通説だと思うので,そういう意味では,権利制限で認められている行為は適法行為だということになるので,その意味でも,そこを手伝う人という立ち位置だろうと理解をしております。

【土肥主査】はい。あと,どなたか御意見,この点についてございますか。
 奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】全体的ということではないですが,1点だけ申し上げますと,現行法の制定時の問題もありますけれども,旧法の時代もそうですし,ベルヌ条約もそうですけれども,基本的に複製権というのは満額100%,満月のような欠けることのない権利として存在するわけではないのでして,その始原から,基本的には権利制限とセットで存在する権利であるということは事実だと思うんです。それをいかに作り込むかという議論を私たちはしているわけであって,権利が100%あって,それが制限で減らされる云々ということではないのかなと。もともと複製権と権利制限はセットとして存在すると。じゃあ,そのときに,どう線引きするかの議論をしているということなのでありまして,権利制限する行為が悪い行為だとか,いい行為だということではなくて,それをいかに作り込むかという議論をすべきなのかなと思っております。

【土肥主査】浅石委員におかれましては,今の点について一言,さらにあるんじゃないかと思うんですけれども,よろしいですか。

【浅石委員】やっぱりドイツも,フランスも,憲法上の権利として,権利者の財産権なり,所有権なりと,表現の自由だとか,私的な範囲における不可侵だとかという部分ががちんこにぶつかって,それをどうやって調整するのかというところではあろうとは思うんですけれども,何でこの問題が発生したかというと,私的複製が30条を超える範囲になってしまっていると。それは個々人の自由を認めながら,束になった,この私的複製が日本国中で行われるようになったことについては,もう何らかの補償が必要な状況になっているのではないかといった問題意識があったから,と思うんです。そうすると,ちりも積もれば山となるの理論になり,この山をどういうふうにすればいいのかという話にはなってきているんだろうと思うんですけれども。
 ただ,エンドユーザーの人たちに対する議論はないんだろうと思うんですけれども,メーカーさんとか,いわゆるクラウドであれば事業者さんというような,そういう人たちが法的にどこに位置しているのかというところが分からないということと,それから本当に日本では憲法上の権利がぶつかった段階で,それの調整弁としてあるのかどうかというところも,いま一つ理解が私は乏しいので,そのところを議論していただいて,お教えいただければなと思っております。 特に,現状の,協力義務者というものはどういう法的な位置にあるのか。あるいは,どうあるべきなのかというようなところを是非御議論いただければと思っております。

【土肥主査】先ほどの1,2,3でいうと3ポツ辺りになってくるんだろうと思うんですけれども,順番からいうと,我々は,まず1から考えないといけませんものですから,浅石委員がおっしゃる,そういったことも時期が来れば議論をせざるを得ないというところだと承知をしております。
 本日のところは,時間の関係があるので,1ポツで現状認識,現状把握を確実にする上での留意点,そういったところで伺っておるところでございます。かなり頂いたところもありますけれども,ほかに出ていないところがあったら是非お出しいただければと思いますが,いかがでございましょうか。
 小寺委員,どうぞ。

【小寺委員】ちょっとこれは確認なんですけれども,ヒアリングなど行う場合の射程ですよね。そのときに,そもそも違法となる行為は,今回の議論の中で射程に入れないということでよろしいでしょうか。例えば海賊版の云々といった,ところまで,このクリエーターへの適切な還元でカバーするという,その射程はないんだということの確認をしたいんですが。

【土肥主査】まさにそういうことだと思うんですけれども,何か反対の御意見の方はおられますか。そういうことを含めるというような方は,おいでにならないですよね。

【松田委員】入れない方がいいですよね。

【土肥主査】はい。そういうふうに承知をしております。
 ほかにございますか。龍村委員,お願いします。

【龍村委員】現状把握・現状の分析も大事なことだと思いますが,最も望ましい制度が何かを考えるに当たって,先ほども話が出ていましたが,微に入り細をうがつってプライスインの有無を追求することが,この問題の最初の取っ掛かりのアプローチとして適切なのかは,どうなのかなという気もいたします。
 法律学の中で比較法という分野があると思いますが,諸外国の諸制度と我が国の制度を比べ,諸外国のスタンダードがどうなっているのか,諸外国においてそのような制度がある背景はどうなっているのか,日本と比べた場合どこが違うのかというようなことを検討する。諸外国と共通の制度でもあるこの問題の検討に当たっては,比較法的な検討の成果を参考にして制度設計をしていくということが必要だと思うのですが,私的録音録画補償金制度は,以前資料配布されましたが,諸外国でもかなり根付いているといいましょうか,一時,存続の是非について議論があった時期もありましたが,むしろ再評価のトレンドが出てきているのが,昨今の動きなのではないかと拝察します。
 また,逆に,諸外国において広く見られる私的録音録画補償金制度が,日本においては事実上機能していない状態にあるということなのですが,どうしてこのような状況になっているのか,その原因はどこにあるのかと,そういう観点で見てみることも必要なのではないかと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。外国の制度につきましては,事務局から出していただいたところですけれども,例えばドイツ辺りのところで止まっていたわけですね。例えば変化があったのかどうか。資料を出していただいたところから半年ぐらいたっているんじゃないかなと思いますので,また,その後の変更,変化等がありましたら教えていただければと思います。今日でなくていいんですけれども,次回以降の適当なときに出していただければと思います。
 ほかにいかがでしょうか。杉本委員,どうぞ。

【杉本委員】ちょっとこの流れの意見なんですけれども。私的複製に係る部分というのが,ここで今まで語られている部分として,契約行為で得られた収益の部分から外れて,その私的複製で収益性を毀損している,そういう機会損失をしているという感じで語られることが結構多いと思うんですけれども,やはり,これだけの私的複製の機会が多くなったりとか,いろいろなデバイスで流通するようになったりみたいなことを,ある種支えている部分にもなってきていると思うので。そこから,なかなか実態把握というのはとても難しいとは思うんですけれども,私的録音録画によって,逆にそれが収益性に還元されている部分というのもあるんじゃないかなと思っておりまして。
 それは私的複製を,例えば友人と聞いてもらうとか,あるいは共有する機会がどこかであると思うんですけれども,それは違法行為とは別の話です。あくまで私的録音の範囲の中で,そういったものがどういうふうに本来の契約行為に基づいた売上げに貢献しているかみたいなところも,是非把握する部分としては見たいなという欲求というかですね。そこの部分を結構見る時代になっているのかなというような気がしました。
 意見です。

【土肥主査】かなり難しい御要望なんですけれども,その辺,杉本委員におかれましては,およその何か心当たりみたいなところはありますか。つまり私的複製によって,要するに,いわゆる権利者にとっても収益性が確保できているといった点ですが。

【杉本委員】例えばですが,契約行為に基づいたメーカーの方々がプロモーション行為を行って,それに基づいて,基本的には売上げが発生するということが,時間軸としては正しいとは思うんですけれども,そういったところと外れたところで売上げが発生したりとかということが起きているのであれば,それは一つの兆しになるのかなという気はします。それを捉えることは結構難しいは難しいと思うんですけれども。ただ,そういうデータを解析するという行為をもってすることによって,ある程度の,それこそラフな状態かもしれないですけれども,兆しは読み取れるのかなという気はしないでもないですが。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかにございますか。椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】今,杉本委員御指摘の論点は,確かに論点としてはあると思うんですが,それって私的複製に限ったことじゃなくて,例えば放送でコンテンツが流れていくというようなときに,放送で音楽が流れることから副次的にその契約モデルに戻っていくようなことは,かつてからあったりするわけですよね。だから,それが私的複製領域でどれだけあるのかというのを見るのはおもしろいと思うんですが,だからといって,何か補償の必要性のネガティブ要因になるのかどうかというのは疑問だなと思います。

【土肥主査】ほかにございますか。
 華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】資料1の2ページ目の下から5行目でしょうか,アンダーラインの「消費者と権利者の利害調整というところから離れないと」という一文があるんですけれども,もうこのとおりだと思います。事業者と権利者,この利害調整に,現状という意味では絞った方がいいのかなと。随分前にも資料をもって御説明しましたが,事業者の皆さんは再生・録画機器,あるいは再生・録画機能,これを消費者に提供して事業を行っているわけですけれども,再生機器,機能の部分は,コンテンツホルダーと,いつの時代もウイン・ウインの関係で,これからもずっとそうだと思います。
 ですけれども,録画機能のところ,録画機器ですね。ここの部分は,やはりコンテンツをツールに事業者の皆さんはその事業を拡大,販売促進しているわけですから,そこの部分,きちっと捉えていかないとまずいんじゃないかなと。
 それで資料1の,先ほど主査からもお話があったように,1ポツのところですね。複製手段の発達・普及のいかんによっては著作権者の利益を著しく害するに至る機能あるいは機器,これが今どんどん発達して,ちまたにあふれているわけですから。我々の利益を害すれば害するほど利便性は上がるわけですから。そこら辺で,この補償制度というのは機能していかないとまずいんじゃないかなと思います。
 意見です。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかに,現状把握をする上で注意すべきことがありましたら。特にはございませんか。ないようであれば,今日のところはこれで終わりたいと思いますけれども,ございませんか。よろしいですか。よろしいですね。
 それでは,若干時間的には余裕がまだあるんですけれども,本日のところはこのぐらいにしたいと思います。
 1ポツに関する点で頂いた御意見に基づきまして,次回の検討の進め方については事務局とよく相談をして,できるだけ委員の皆様の要望を実現するような方向で,難しいのも多々あるわけですけれども,できるだけその方向で検討させていただきたいと思います。難しかったところは,是非御容赦願いたいんですけれども。
 それでは,事務局から連絡事項をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】次回の小委員会につきましては,改めて日程調整をさせていただきまして,確定し次第,御連絡したいと思います。

【土肥主査】それでは,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第3回を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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