第6期文化審議会文化政策部会第1回議事録

1. 日時

平成20年6月4日(水) 10:00~12:00

2. 場所

文部科学省13階 2,3会議室

3. 出席者

(委員)

池野委員 唐津委員 高萩委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 富澤委員 三林委員 宮田(慶)委員 山内委員 吉本委員 米屋委員

(事務局)

青木文化庁長官 高塩文化庁次長 尾山文化部長 吉田長官官房審議官 清水芸術文化課長 他

(欠席委員)

尾高委員 パルバース委員 宮田(亮)委員

4.議題

  1. (1)部会長等の選任
  2. (2)文化政策部会における検討課題について
  3. (3)その他

【清水芸術文化課長】 ただいまから文化審議会文化政策部会を開催いたします。本日は委員改選後初めての会合ということでございますので,しばらく私が議事の進行をさせていただきたいと思います。
 それでは,初めに文化政策部会の委員の先生方をご紹介させていただきたいと思います<座席順(あいうえお順)に紹介>。なお,宮田亮平委員,尾高忠明委員,ロジャー・パルバース委員は,本日はご欠席でございます。続いて,本日の会議に出席しております文化庁の関係者をご紹介させていただきます<青木文化庁長官,高塩文化庁次長,吉田長官官房審議官,尾山文化部長>。それでは,会議に先立ちまして,お手元の配付資料の確認をさせていただきます<配布資料の確認>。それでは,ここで本文化政策部会の部会長をお選びいただきたいと思います。選考方法につきましては,文化審議会令第6条第3項の規定によりまして,部会に属する委員の皆様の互選により選任するということとなっております。どなたか,部会長についてご推薦をお願いしたいと思います。
 <部会長の選任> ※部会長について,宮田(亮)委員が委員の互選により選出された。

【清水芸術文化課長】 宮田(亮)委員は今日ご欠席ですので,第2回以降,部会長から進めていただくこととし,本日は,事務局の高塩文化庁次長が進行をつとめさせていただきます。

【高塩文化庁次長】 力不足でございますけれども,本日進行をつとめさせていただきます。昨期以来,本当に皆さんには大変お世話になりまして,ありがとうございました。大変立派なアートマネジメントの報告書をいただきまして,今期は芸能実演家ということでお願いをしたいと思っている次第でございます。ぜひ先生方のご協力をよろしくお願いしたいと思います。最初に,今日は今年度第1回ということでありますので,青木長官からご挨拶を申し上げたいと思います。

【青木文化庁長官】 本日は,大変お忙しい中をご出席いただきまして,まことにありがとうございます。
 第6期の文化政策部会でございますが,大変お忙しい中,委員をお引き受けいただきまして,まことにありがたく存じております。前期に関しましては,アートマネジメント人材育成及び活用についてということで,今年の2月に皆様の審議経過を報告してまとめさせていただきまして,それをホームページ,あるいは都道府県,文化芸術団体,また大学等に周知いたしました。これがいろいろな形で議論の対象になり,また1つの指針になったと思っております。
 今期は,今次長が申し上げましたが,文化芸術の継承,発展,創造に関する人材の養成などに関しましてご審議をいただきます。これもまた,大変充実した内容のものができ上がると期待しておりますが,何とぞよろしくお願い申し上げます。私のほうも,この審議会においてご議論いただきました内容を文化政策に活かしてまいりたいと思いますので,何とぞ自由闊達に,ご意見を述べていただきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございます。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。それでは,事務局で用意した2から8の資料について,清水課長から説明をお願いします。

【清水芸術文化課長】 <資料2から8の説明>

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。今日は,特に,資料2及び3にございますように,この文化政策部会での検討の進め方及びヒアリングの案についてご意見をいただきたいと思います。それ以外に,第1回ということでございますので,実演家の育成について,各先生方から自由闊達にご意見をいただきたいと思っております。
 ちなみに,資料7にありますこの2月にまとめていただいた審議経過報告,これは最終報告ではございませんけれども,こういったまとまったものがございますので,現在もアートマネジメント研修は国として実施して支援しておりますけれども,国・地方公共団体・大学と役割分担も明快にしていただきましたので,特に国の全国規模の研修や,大学への支援,それから情報提供といった予算に絡む部分については,概算要求に反映させることとしたいと思っております。こういった委員の先生方にまとめていただいたものを踏まえて,文化政策に着実に反映させていきたいということで,アートマネジメントにつきましては,第一歩を踏み出しているわけでございます。
 今日の芸能実演家につきましても,先ほど資料5を中心に説明しましたように,文化庁として色々なことをやっているということはおわかりいただけたと思うのでございますけれども,こういったもので事足りるのか,これらの充実なのか,さらにはもう少し新しい視点から抜本的なことが必要なのか,そういうことをぜひ先生方から様々にご示唆をいただくということをお願いしたいと思っております。
 先生方はもうその分野の専門家でございますけれども,スケジュールとしては,各分野3人ぐらいずつ,音楽といってもオペラ,オーケストラ,様々の分野の,しかも,実演家もおれば,色々マネジメントの担当の方もおりますけれども,そういう方々の生の声をまず聞くというようなスケジュールにしたいということが我々の原案ということでございます。
 それでは,このスケジュールも含めて,ぜひ実演家の育成について,現在の文化庁の施策についてでも結構でございますので,ご意見をお聞かせいただければと思っております。

【富澤委員】 今後,専門家の皆さんの意見を聞いて進めていくということは全く賛成です。これは私から要望というかお願いですが,例えば資料6の2ページにアメリカとイギリスとの比較が出ておりますけれども,これを見ると,日本も芸術家が30万人ですか,そんなに各国と遜色ないなというような気がしますが,欧米だけじゃなくて,出来れば議論を進めていく中でお示し願いたいのは,アジアです。特に中国,それから韓国あたりの状況がわかれば,ぜひ調べていただきたいということです。
 私は,中国に何年か前に行ったときに,中国の場合は芸術学校が,各省ごとにあり,幼少時からその学校に入って,多分四,五歳ぐらいの小さい子どもから入って,芸術文化教育を受けているそうです。その芸術文化教育もかなり幅広く,京劇であるとか,雑技であるとか,そういう伝統芸能の分野だけではなくて,西洋音楽,ピアノであるとかバイオリンであるとか,あるいはバレエであるとか,西洋芸術に至るまでかなり幅広くそういう教育を受けているようです。そういう機関が充実しているという現場を二,三見たことがあるのですけれども,育った人たちが多分長じて芸術家になっているのだと思いますけれども,中国の芸術がどういう仕組みになっているのでしょうか。あるいは,中国の場合共産主義ですから,俳優なども国家一級俳優とか,そういう称号もつきますけれども,そうではなくて日本と同じような状況にある韓国の状況はどうなっているのでしょうか。近隣,かつ今後ますます親密さが増していくであろう二つの国の実情というものがわかったら,今後の議論の中でぜひ示していただくようお願いしたいと思います。

【高塩文化庁次長】 中国はデータが難しいと思いますけれども,ただ青少宮みたいなところで,非常に幼児期からやっていることは聞いております。韓国は,ご承知のように国立の芸術学校が,日本でいうところの新国立劇場がやっている研修所的なものが,学校として大学のような形で設置されております。また,青少年,小さいあたりからもあるのかどうかも含めて,可能な限りのデータは調べたいと思っております。

【富澤委員】 ぜひよろしくお願いしたいと思います。これまでの議論の中でもあったかと思いますが,これからは文化の競争がますます盛んになってくると思います。それは決して悪いことではなくて,お互いに文化で競うというようなことは,大きな国と国との関係の中で重要になってくると思いますので,ぜひそういう実情を知ることによって,我々の参考にしていきたいという意味からお願いしたいと思います。

【高塩文化庁次長】 可能な限り調べたいと思っております。
 他に,先生方から実演家について日ごろお考えのことを,厳しいご意見でも是非よろしくお願いします。

【池野委員】 今回芸能実演家ということで,芸術家というところに音楽,演劇とともに舞踊が入っているのは非常に心強いのですが,それに関しまして今まで思っていたことが幾つかあります。その一つに,日本には芸術大学はありますけれども,その中で例えば国立の芸術大学などでは,音楽と美術の学部はあるのに,舞踊学科というのは,伝統芸能を除いた現代芸術として,そういった科がありません。常にそれについては民間の団体からもそういった要望というものを常々出してはいるのですが,それが全く無視されているのか,あるいは色々予算的に難しいということなのか,よくわからないんですが,全くそこに舞踊という発想がないというのが,私自身もそうですし,それから実演家の方々も,やはりそこに関しては非常に不満を持っているのではないかなと常日ごろ感じておりました。
 平成9年度に新国立劇場が開場して,その後にバレエに関しての研修所が出来て,多少そういった専門教育に関する部分というのが,そこで補足的に進む,本当に最初の第一歩かと思うのですけれども,特に舞踊は,ほかの音楽も関係してくるかと思いますが,非常に小さいころからの教育が大事になってきまして,今研修所というのはプロになる直前くらいの準備段階の人を受け入れるというところになっていると思います。
 ただ,非常に長い目で見ますと,ああいった年齢になってからでは,ちょっと遅過ぎるというようなご意見も多々聞かれております。
 今私が最初に言った,まず芸術大学に舞踊科がないという現状と,それからまた基礎教育をどう考えていくかということ,この2つが両方ともうまく機能していかないと,将来的に日本における舞踊芸術家のきちんとした基盤というものが出来ていかないのではないかと考えております。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。少しご説明をさせていただきますと,芸術大学に,舞踊学科を作って欲しいというご要望は随分昔からございますが,なかなか難しいのが現状でございます。
 国立の学校を作るというのは,それは特に幼児期から作れば,バレエの場合,非常に理想的なのですけれども,現下の情勢を鑑みて難しいということで,それの1つの代替になるかどうかわかりませんけれども,新国立劇場のバレエ研修は隔年採用で研修生を受け入れていたのが,毎年の採用となりました。高校生というのは毎年卒業していきますので。そういう形で,一歩前進はしていると思います。

【吉本委員】 今,ダンス,舞踊の話があったのですけれども,同じ状況は演劇についても言えると思うのです。これも新国立劇場のほうで最後,3つ目の研修所が出来ているということなので,それなりの取り組みが行われているのだと思うのですけれども,この実演家等の芸術家の育成を考えたときに,例えば高等教育とか,それから幼児期からやったほうがいいとか,いろいろなことがあると思うのですけれども,その育成のプロセスは分野によっても違うと思います。それから,研修などを受けた後どうなっていくかという,実際仕事について仕事の中でキャリアパスを作っていくというようなプロセスが見えにくいと思います。例えばこの演劇学校に入って,そこで頑張っていい成果を残して,次にあそこに行ってというような,何かキャリアパスというのがなかなか描きにくいのが日本の状況なのではないかという気がするのです。
 それで,先ほど海外の例もぜひ調べてほしいという話がありましたので,とりわけ韓国などは本当にその辺が充実していると思いますので,高等教育など教えるという意味合いのところだけではなくて,そこで学んだことを生かして,実際にどういう形で芸術家というものが社会に出て,それで活躍の場を持って,そこでは当然実力が問われて,ある種の優れた芸術家がさらに社会に出ていくというような仕組みになっていると思うのですけれども,そこが日本だとなかなか見えにくいのではないかなというふうに私は思いますので,もし海外のことを調べるのであれば,そのあたりのキャリアパスのようなものがどうなっているかというのも含めて調べていただけたらと思います。
 それで,先ほどのご説明の中で新国立劇場の研修所を卒業した方々の現在の状況というので,オペラの方は大体海外でもう一回研修して,その後色々活躍しているという話や,バレエの方は新国立劇場で契約を行っているという話,演劇の方はそれぞれのプロダクションと契約といるという話がありました。それぞれの分野によって仕事の成り立ち方が違うので一概には言えないのですけれども,バレエの研修所を出た人は新国立劇場と契約出来る道があるというと,とりあえず次のステップが見えると思います。そのあたりのキャリアパスのようなことが,国の人材育成の政策の中でどういうふうに描けるのか,あるいはそれが政策の中に取り込めるのかどうかというあたりが,僕は重要なポイントではないかなというふうな気がしています。
 それで,質問が2つあるのですけれども,資料2の検討内容のところで,芸能実演家等に関する人材育成ということで,この「等」の中には脚本家だとか振付家が含まれている,あるいは,伝統芸能系の芸術家,あるいはメディア芸術系の芸術家については別途検討ということだったのですけれども,美術家とかはどうなのでしょうか。今日は宮田(亮)先生がいらっしゃっていないので,宮田(亮)先生がいらっしゃったらその辺も気になるのではないかと思うのですけれども,美術作家というのは芸術家の人材育成の中に含まれないのかどうかというのが質問の1点目です。もう一つは,資料7の審議経過報告と,資料8の,パブコメの意見ですが,審議経過報告は,前期の政策部会の最後に出た資料のままなのでしょうか。審議経過報告はパブコメの意見が反映されていない状態なのでしょうか,その2点質問させていただきます。

【清水芸術文化課長】 まず,後段のほうについては,今日のお配りした審議経過報告はそのままであります。むしろ,いただいたパブコメなどを含めまして,最終報告までの間に追加すべきところなどについては,ここでご議論いただいて入れていきたいと思っております。
 それから,美術家につきましてはやはり状況もかなり違うということもございまして,今年の審議については,芸能実演家ということで焦点を絞ったらどうかと思っているところでございます。

【田村(和)委員】 今日が初めてということなので,事務的な進め方についてお伺いしたいのですが,今の吉本委員のご発言に非常に共感するところがあるのですが,1つはキャリアパス,つまり逆に言うと,支える側から見ると,どのステージにサポートしていくのかというのが,非常に今ここで議論しているベースになっている話自身が固定しています。言われたとおりの話をしているのだけれども,そのあたりを本当にどういうふうに見るのかということが,つまりそれははっきり言うと,一人一人のアーティストにとってみたらライフスタイルの問題だと思うのだけれども,そのあたりの話を出来る限り見えるような議論をしていただきたいなということで,特にヒアリングのところが,わりあいに分野では先ほどメディア芸術と,それから無形文化財的な話というのは省くということだったのですけれども,どうも音楽,舞踊,演劇ととってみましても,今のキャリアパスやそういう話から見たら,もっともっと広がれば,いろいろなバラエティがあると思うのです。何かそのあたりをかなりリアルにつかめるようなヒアリングをしていただけないか,対象者を選んでいただけないかなというのが,私として非常に気になっているところです。
 特に,音楽,舞踊,演劇をとりまして,ここに「等」とも書いてありますけれども,この中で非常にマージナルな領域もあります。ですから,これを一体どういうふうに見て,しかもその中の縦軸には,今度はキャリアパスみたいなものがどういうふうに入ってくるのかということが,非常に限られた機会ですけれども,どういうふうにお選びになるのかというあたりを,できる限り多様性を持った方,そういう方をお選びいただきたいなと思います。お話を逆に言うとお選びというのは,むしろお話を聞きたいなというのが要望です。
 それから,もう一つは,何か最初にちょっと書いてあったと思うのですけれども,アートマネジメントの人材と一緒になって,最終的にはレポートを作られるということですが,そうなりますと直接的な方,それから間接的な領域の方と,文化芸術に関する人材の総論化になると思うのです。
 そのときに,第二次の基本方針では文化力という話を明確に出していますから,人材の問題というのを正面からもう一度取り上げて,正面から議論するような,トータルに考えていけるような,国の政策としては本当に人材,しかも人に対する投資というのは,これは福祉やほかの領域でも非常に難しい問題になってきていますし,財政的には限度があるところですけれども,これをどういうふうに有効にしていくのかということを文化政策として最終的にきちんと出していただくようなことをお願いしたいなと思っています。以上です。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。

【高萩委員】 昨年から参加させていただいています。先ほど高塩さんのほうから,今年の予算にも反映させますというようなことを言っていただいたので,ある種やった価値はあったかなとは思えてうれしいです。しかしこういう形で,対地方公共団体に向かってとか,色々な方面へ意見としては出ていっても,少しは参考にするのだろうと思うんです。私は今地方公共団体の文化財団におりますが,地方には,この審議経過報告はとても届かないと思います。どういうふうに影響されるかというと,目の前の議員さん相手にしたり,目の前の団体を相手にしているわけです。
 そう考えますと,ここでやるべきことは本当に国がやることに特化すべきと思います。国が何か少し動き始めるということがあれば,地方もそれに伴って動いていくということもあるし,民間も動いていくと思います。特に文化のことは最初に青木長官がおっしゃったように,アジア全体の動きは非常に早いのです。先日,中国からダニー・ユンという人が来て,中国の状況について我々に説明してもらいました。中国は先ほど富澤さんもおっしゃいましたけれども,1,000劇場作るといっていて,多分中国は1,000の劇場を作ると思います。色々な事情で地方に劇場の整備をし始めているみたいです。そうすると,かなりの勢いで文化行政が動き始めていて,日本が今までのスピードでゆっくり動いていくと,追い越されちゃいけないとかそういう問題じゃないかもしれないけれども,色々なところがうまくいかないなくなっていくと思うのです。
 国がかなり早いスピードで今まで出来なかったことを実現させれば,それに伴って地方とか民間も動き始めるのではないかと思います。出来れば,今後は,論議をもっと絞って,国の,特にここは文化庁の審議会ですから,文化庁にすぐこれを反映させることが出来ないだろうかという話をしたほうがいいのではないかなという気がいたします。
 先ほど,確かに大学には自治があってなかなか新しいことが出来ないのだとおっしゃいました。前に宮田(亮)さんとちょっとお話したときに,別予算がつけば簡単だとおっしゃっていました。予算の中でやれと言われるから出来ないのだと。それこそ東京芸術大学にはっきり別予算をつけて舞台芸術系の第3学部を作ってくれと言えば,教授会関係なく出来るのだと思うのです。東京芸術大学では,第3学部の話というのは何回か起こっていて,常に実現していない。それは大学に向かって予算の中で作ってくれと言うからできないですけれども,国の施策としてある提言がなされればやらざるを得ないのではないかと思うのです。そのくらいの強い意見がもし言えるならば,ぜひそういう形でまとめられればなという気はします。

【山内委員】 一言,二言だけ申し上げますが,先ほど次長から,大学でなかなか新しいものができないのだと,必ずしもそういうわけでもないのでありまして,やはり今の限られた予算措置の中で,どこかをスクラップ・アンド・ビルドしなければいけないということが一つと,それから新設のものは実際にいろいろな純増という形で,新しい学科や専攻を作るというのは,大学においては今,内在的努力ではほとんど難しいのです。
 さきほどおっしゃったように,こうしたところでのある種の意見,答申として,問題意識として出していき,それを文化庁が取りまとめて省全体の新しい政策として打ち出していくという,ご努力を一方においてしていただければ,先ほどのようなご発言と今の委員の方々の問題意識がかみ合って,道筋としては非常にいい方向に行くのではないかということではないかと楽観的かもしれませんが思うのです。
 いずれにしても,大学は新しいことがやりたいのでありまして,それにどういう弾みをつけるのかという問題だと思います。
 それから,先ほど技術に関してどう扱うのかというご発言もございましたけれども,検討内容の芸能の実演家ということになっているわけですね,関する人材。例えば,現代音楽などの実演家はわかるのですが,例えば現代音楽の作曲家というような範疇は日本は非常に大きな成果を得てきている分野ですけれども,現代音楽の作曲家などについて,あるいはほかの創作舞踊,あるいは新しいオリジナルな演劇の戯曲を書く人たち,あるいは新しい舞踊の新作を作る人たち,このような人たちが実演家の範疇に含まれるのか,含まれないのか,特に現代音楽などという例はわかりやすいので触れたのですけれども,そのあたりどうなのかということが気になります。
 それから,最後に一つ,これは全くうれしい間違いだったんですが,今の若い芸術家,若くとは限りませんか,平均での収入を,私はゼロを1つ勘違いしていまして,最初見たとき,なかなか結構いい処遇を受けているんだなと思って心強く思ってしまいました。これは非常に低い収入で何と貧困なことなのかと非常につらい思いがいたします。
 これをどうやってかさ上げしていくかと,底上げしていくかというような問題なども少し私たちとしても考えてはどうかという印象を受けました。誤解をしていたゼロが1つ増えるというところまではいかなくても,もう少し何とかなるのではないかなという気もいたしますが,そのあたりも事務局など皆様のご意見も伺いたいところであります。

【高塩文化庁次長】 どうもありがとうございました。

【宮田(慶)委員】 私は,今回初めて参加させていただきまして,今現在,私自身も新国立劇場の演劇研修所のほうで,まさに今ちょうど本番中で研修にかかわっているのですが,今,色々東京芸術大学での舞踊科の設置の問題とか,その話も何年も前から私自身も耳にさせていただいていますけれども,今こういう形で新国立劇場でオペラとバレエと演劇等が立ち上がって,せっかくこういう枠組みが出来た中で幅広い,例えば各ジャンルが何歳から育成を始めたらいいのかというような検証も含め,ここの可能性というのがまだまだ随分あるのではないかと実は思っているところです。
 研修制度としては,オペラが古いといってもちょうど10年です。平成10年からです。それ以前から二期会が持っていたオペラ研修所が継続する形でここにつながっていると思うのですけれども,まだまだやっと今スタートを切ったところで,演劇などに関しては初めての卒業生をやっと出したところでございまして,本当に右往左往して当たり前みたいな状態に,実情はそんな状態です。
 ただし,せっかく出来たこの組織といいますかシステムをどういうふうに成熟させていくかという課題があると思います。そして,例えば本当にざっくばらんな大つかみの話で言うと,演劇の場合の育成というのは何歳から始めればいいのかということは非常に難しいと思います。ある程度,精神的,肉体的に成長してからではないとスタートしてもあまり効果が出ないということであれば,やはり18歳でよいのかということもありますが,常々私見も含めて思っておりますのは,ぜひとも小中学校のころから,学校の授業に演劇教育を入れてほしいと考えております。それも,学校の先生が兼ねるのではなく,ぜひとも演劇界でキャリアを持った人間が,演劇の手法をもって教育の中にも入れるような形の演劇教育をいれてほしいと思います。これにはまた1つ別の教育をしないといけないかもしれませんが。演劇教育が出来る人間というのは,今日本に非常に少ないと思います。そのためのプログラミングが残念ながらないので,みんなロンドンやニューヨークに行って修得してきた人間がやっとそれに携わっているというような状態で,本当にその人材が枯渇しているのです。まず,そこも育てなければいけないと思います。
 しかしながら,それはもしかすると,俳優教育を受けた人間のほうが,何のためにそれが行われているのかというのがわかるので,そこから演劇教育に方向転換する人間が出てきてもいいのではないか,そういう人間が全国の小中学校にアウトリーチではないですけれども,行って授業を持つことができて,そこで初めてコミュニケーションツールとしての演劇であったり,いろんな日本語に対する意識であったりとか,そういうところからの教育でも,演劇が教育現場から入っていけたら,それが何よりの非常にベーシックな演劇教育というか,人材育成になるのではないかというように,演劇においては思ってはおります。
 そうすると,美術であるとか舞踊に関しても,現場の人間が教育の場に入っていくことが重要なのではないかと思っています。本当は理想的に言えば,小中学校のころに何らかの形で,美術の先生という形でなく入り込めると,本当に広い意味で人材育成になるのではないかと思っております。それが,そのままここのキャリアパスにどうつながるかはわからないですが,可能性の一つとして,例えば新国立劇場の研修所から育っていく人から教育に携わる人間が出てきても今後おかしくないと思っておりますし,そういう形での広い人材育成を受け入れるということと活用と両方になりましたが,そういう場としての可能性をここの組織で探っていくことができないかと考えております。
 例えば,バレエであれば,幼児コースが出来てもいいんじゃないかとか,演劇の場合でも,サマーセミナーという形で中学生のコースができてもいいのではないかとか,色々な形での拡大が出来るのではないかと思っております。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。

【唐津委員】 私も,また昨年から関わらせていただきまして,このアートマネジメント人材の報告書が出来ましたときに,自分で10部ぐらいコピーをいたしまして,関係者,それから行政の方々に持って歩きまして,こういったものができたんですよということで,国がこれだけのことをやろうとしているので,地方公共団体も何らかの方針をもう少し考えていくべきなのではないかということで,歩いて回ったのですけれども,やはり目の前の事柄に非常に右往左往しているというような状況にありますので,細かい文章まではなかなか読んでいただけないという実情がありました。  そういった中で,かなり衝撃的なショック療法のようなことがないと,なかなか地方までは伝わっていかないのではないのではないかと,文章だけではなかなか伝わっていかないということを改めて感じた次第です。
 ですから,先ほどから何回も色々な方からのご提言があるんですけれども,実質的に舞踊や演劇のコースが芸大で出来ないということが前提になるのではなく,そのような方向を目指しますということでも結構ですので,非常に思い切った提言を今後していっていただける方向で,せっかくの機会を活用できないかと思っております。
 今回は芸能実演家の人材育成についてということですが,昨年のアートマネジメントの人材育成のときには商業的ではない公立文化施設のような,比較的非商業的なところでのマネジメントの人材育成を検討してきたと思うのですが,芸能実演家の人材ということになると,彼らがどう就職が出来るかや,どう直接収入を得られるのかという,どちらかというと商業的なことも含めてのお話になってしまうのかと思うのですが,その点でここで語られている芸能実演家の定義がもう少しはっきり見えてきてほしいと思っております。
 といいますのは,例えば資料6のところに,わかりやすく言いますと,例えば音楽家というところは個人教授というのが出てきております。個人教授というのは,教えながら,例えば声楽家の方であれば,歌手としても活躍されているので,多分「声楽」が本業だと思います。ただ,それをまた後輩に教えていくという仕事になってくると思うのですが,例えばこれが舞踊家,バレエダンサーのような存在になってくると,どちらかというと踊りながら教えていくということは,だんだん教える側にシフトしていくことになるかと思います。ほとんど教えることが本筋で,踊るのが例えば年1回舞台に出るというような活動に規定されてしまうというのが日本の現状であります。
 それは,本人の意思として教えることを選ぶということもありますが,多くの場合,食べていくために教えながら踊り続けなければならないと思います。これを芸能実演家とみなすのかどうか,それとも,新国立劇場のダンサーとして契約して,一応プロのダンサーということで扱い,一人前のプロの芸能実演家として生きていくということをもって芸能実演家とするのかどうかは考えなければいけないと思います。当然,プロの芸能実演家を目指すという方向だと思いますが,ジャンルによって違うと思いますけれども,もう少しその辺の幅を明確にしていただきたいなと考えております。
 あと,今のことと少しつながるのですが,18ページの仕事の機会の増減ということころで,舞台,コンサート,ライブなどへの出演と並んで,企画のことや教えること,講演というような活動が併記されています。このあたりも,本業は舞台なのだけれども,色々な活動をしているのかというところ,もしくは好んでプロデュース的なこと,あるいは教えることにつきたいと思っているのかという,このあたりも非常にあいまいな状況があると思います。
 芸能実演家自身も,自分がどういう仕事についたらいいのかということを迷っている場合もあると思います。舞台には出たいけれども,食べていかなければいけないというところで迷っている,そういった状況もあると思いますので,この辺ももう少し明確にしていければよろしいかと思っております。

【高塩文化庁次長】 どうもありがとうございました。

【三林委員】 あまり参考にならないと思うのですけれども,さっきショック療法とおっしゃいましたので,それは文化省になって青木大臣になってもらって,どかんとやらないと浸透はしないと思います。だから,早く文化省にして,文化力をもっと国外に出すというのをやっていただかないといけないと思っております。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございます。

【米屋委員】 先ほどからキャリアパスということが出ていまして,私もその辺を明確にしていかないとといけないと思っているのですが,今日の資料6で日本芸能実演家団体協議会がまとめているものが一部使われていますので,ここの数字などをご説明しながらお話しようと思います。
 19ページの4-4というところに実演家の収入構成の推移というので,舞台等への出演,メディアへの出演,教授業,その他,不明というように,リソースが何であるかということの推移があるのですけれども,これは調査対象としましたあらゆる実演家の平均ですので,実はこの中で音楽家の中でも,オーケストラの団員とオペラ歌手では全く違った割合になっています。例えば伝統芸能の中でも,歌舞伎俳優と能楽師は全然違う構成になっております。
 そういったことが,ジャンルごとで傾向がつかめておりますので,まずそういったことを念頭にしてそこから出発するということが,検討のときには必要なのではないかなと思います。そのようなパターンについて,この報告書は,実は74年から調査を開始しておりまして,世界でも珍しい調査なのですけれども,5年に1度分厚い報告書を出しておりまして,これを皆さんに読み込んでいただくのはとても大変かと思いますが,上積みだけでもどういうふうになってきたかということについて傾向をつかんでから議論に入り,また,ヒアリングもお聞きしたいと思っております。
 それと,例えば先ほど宮田(慶)委員がおっしゃっていました演劇の俳優教育を受けた人が色々なことを教えるというのも,実は現代演劇で教授業は,最近までほとんど割合はありませんでした。ところが,前回の調査で少し出てきまして,これはワークショップのような形で指導を専門とする演劇人が少しずつ出てきているということが,統計的にも少し把握されているということかと思いますので,そのように職業のチャンスが色々あるということになりますと,舞台俳優を目指したけれども,やっぱり教えるほうが私には向いているというように専門化していくというようなこともあると思いますし,逆にオペラ歌手などですと,大学の先生と兼任をしている方が多いので,どうしてもステージだけに集中できないということや,ずっと兼任のままでやっているというようなことがなかなか変えられないなど,そのような問題点はジャンルごとに見ていけばわかるのではないかと思います。
 それと,同じく資料ということでは,新国立劇場の研修所をスタートする前に,研修所が色々調査をされておりまして,演劇のものに関しては私も読ませていただいたことがあるのですが,そういったこともぜひ共有して,その調査では諸外国の学校の事例など事細かくレポートしたものがありますので,そういったものも共有できたらいいのではないかと思います。
 それで思いますのは,演劇,舞踊については,国立の大学の中できちんとしたコースがないというのは,前々から私どもも要望を出してはいるのですけれども,現実的なことを考えますと,大学の中であるというのは象徴的なことなのですが,先ほど宮田(慶)委員がおっしゃいましたように,大学という枠組みにこだわらない高等教育というものを考えるのも1つの選択肢としてあっていいのではないかという気がしています。というのは,諸外国の,いわゆるコンセルヴァトワールは,大学の経済学部とか文学部などという学位を授与するようなところとは全く違った専門的な高等教育機関というのがありますので,こういった実演家の実技をトレーニングしていくものについては,大学の枠組みというのが,日本の大学の枠組みが合っているのかどうかということも検討の一つのポイントになるのではないかという気がしますので,一体何が求められているのかということをもう少し見ていけたらと思っております。

【高塩文化庁次長】 どうもありがとうございました。

【吉本委員】 次回からの進め方について,提案というか,こういうふうにしていただくといいなと思うことがあります。先ほど山内先生から現代作曲家の話が出ましたけれども,この芸能実演家等という「等」の中には作曲家とか脚本家などが入っているというお話だと思います。ですので,音楽,舞踊,演劇でそれぞれ3人ずつヒアリングをするという予定になっていますから,音楽分野ではぜひ作曲家の方,それから舞踊の分野では振付家の方,振付家の場合は現代舞踊はダンサーも兼ねているので,分けるのは難しいかもしれませんけれども,振付家の方,それから演劇の分野では演出家,脚本家の方という,実演家ではない,その「等」の中に入っている人たちが私は重要だと思うので,その「等」の中の人たちも必ず呼んでほしいというのがリクエストです。
 それと,それに関連して用語の問題なのですけれども,芸能実演家という言い方になっていまして,芸能という用語は,音楽,演劇,舞踊とは異なる定義になると思いますので,芸能実演家と言ってしまうとちょっとずれるのではないかと思います。ですので,例えばこれは実演芸術家とかいうふうに言い換えたほうが正確なような気がいたします。
 それと,もう一つ,これは情報提供ですけれども,アメリカのシンクタンクでアーバン・インスティチュートというものがあるのですが,これは政権と強く結びついて色々な提言をしているのですが,そこが何年か前に大規模な調査を行っております。この調査の中でアメリカの国民の意識として,芸術や文化が大事だと答えた人は90%以上いるのだけれども,芸術家が大事だと答えた人は2割か3割しかいないという結果が出て,それである財団を作って人材育成を始めているというようなことがあるそうです。その調査のタイトル,ちょっと今はわからないのですけれども,研究所に戻ったらわかりますので,先ほど海外の事情を調べるというときに,アメリカではそのような調査も行われていますから,その辺を参考にしていただけたらと思います。
 それで,芸術が好きな人でも,日本ではそのような意識があまりないと思うので,芸術は大切だけれども,実はそれをつくっているのは芸術家で,だから芸術家は非常に大切なんだというような意識を作っていくことが,文化政策部会などから出来るといいなと思いました。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。
 確かに,先生のおっしゃった「芸能実演家」について,文化芸術振興基本法では「芸能」というのは講談,落語,浪曲,漫談,漫才となっていますので,やはり「実演芸術家」と言い換えたほうがいいと思います。

【三林委員】 舞踊に関して,例えば日本舞踊の地唄舞の分野とバレエとの基本がほとんど同じです。それは,坂東玉三郎さんも自らきちんと実践しておっしゃっております。ですから古典を全く外すというのは私は反対です。今の日本における現代の演劇を勉強する人たちにとって大事なことだと思いますので,そこを切り離さないでほしいです。どこかで,接点を持っていてほしいという気がします。

【高塩文化庁次長】 わかりました。

【田村(孝)委員】 今のご意見について私も日本人が現代芸術に携わるという立場では,日本の伝統芸術というものは骨格からも,日常的な立ち居振る舞いからも,違うと思いますので,日本の芸術家としてどうあるべきかという意味で外せないのではないかと思います。
 それから,教育に関するお話,私は芸術教育が一番大切ではないかと思っております。国が用意できるのは,基本的な教育の分野ではないかと思っておりまして,芸術家になった方が活躍できる場,切磋琢磨して向上できる場というのは,どうしたら創出できるかという意味で,アートマネジメントが大切だと思っております。例えば音楽の場合でしたら,世界で活躍するチャンスはあるわけです。活躍している方もたくさんいらっしゃる。一昔前,私が音楽番組に携わっていたころから考えますと,バレエの方の世界での活躍はめざましいものがあります。それもやはり克服できるという段階に来ているのだろうと思います。バレエや音楽の場合,世界のトップレベルになれば,国境を越えていけると思います。演劇の場合は言葉の問題がありますので,簡単にはいかないだろうと思いますが。港区で開かれたアートマネジメント研修会で,世界で活躍されている日本の現代アーティストの方が,日本では芸術家が食べられないということはどうしたらいいでしょうかという質問を受けたときに,芸術のために日夜食べるものも食べず,お風呂にも入れず努力しているような人を,変な人だと見るのは日本人かもしれないが,外国ではそういうことはない。そこの違いはあるかもしれないけれども,芸術のために,例えば簡単なアルバイトをして収入を得てしまうようなことをする,そういう人のことは外国ではアーティストとは呼びませんというふうにおっしゃっていらっしゃって,簡単なものではないと答えられたのを印象深く覚えております。私も番組等で長年携わっていて実感しているところでもありましたので…。
 また,先ほど芸大にダンス,舞踊科を設置するのはなかなか難しいというお話がございましたけれども,ほかでも舞踊科が必要だ,教育の中に取り入れていこう,国立系の大学でそういうお考えをお持ちの方がいらっしゃるのも事実でございますけれども,なかなかそれが現実問題として結びついていかないというのが一方にございます。いつも思いますのは,オリンピックで行進するときに日本人はいつまでたっても美しくない。舞踊教育を小さいときから受けていれば,もう少し日本人の立ち居振る舞いも美しくなるのではないかと思います。単にバレエのプロのダンサーを育てるという意味だけではなく演劇と同様,コミュニケーション能力,表現能力を育てるためにも体全体で何を表現するかということは小さい頃からの教育が大事だと思うのです。
 宮田(慶)委員がおっしゃいましたように,新国立劇場の研修所で,もっと場を広げていくということも,一番手っ取り早い方法だと思いますけれども,そういうことも行いつつ,教育の中にどうやって取り入れていくかということを,国がぜひ提言していただければ大変ありがたいなというふうに思っております。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。
 私の知る限り,今回の学習指導要領を改訂しまして,中学1・2年生は武道とダンスが必修ということになりました。ダンスを必修にした際に,今の体制ではとても教えられないので,地域にいる,地域といっても都市部に限られますけれども,バレエ教師というものを活用するような施策を文化庁で初等中等教育局とよく連携してやってほしいという声もあるところでございまして,カリキュラムに入るというのは確かに大きなことだと思います。
 しかし,文化庁というのは,先ほど三林先生からも文化省というお話がございましたけれども,確かに文部科学省の一員でございますから,本来はもっと教育に発信していくべきで,第一次の基本方針を作ったときに,文化庁としては国語を強調しました。国語は,結果的に今回非常にカリキュラムでも充実しております。学習指導要領の改訂はある程度時期的に,何年かに1回でございますけれども,教育にどう取り組んでいくかということは重要だと思っております。

【青木文化庁長官】 今日はともかくご意見を拝聴することが重要だと思ってお聞きしましたけれども,1つだけ申し上げますと,先ほどからアジア諸国が色々なことをやっているということですけれども,私は1つだけ申し上げたいのは,アジア諸国が今日本の芸術家にとって大きなマーケットとなっていることです。特に,中国やシンガポールなどにもオペラハウスとかコンサートホール,ドラマシアターが出来てきて,そこへ日本は指導するアーティストの売り手市場としてもっと出ていく必要があるし,日本の国内でのマーケットは小さいかもしれませんけれども,アジアのマーケットを目指して,そこに人材を多く送り出していくことが本当に求められています。ですから,日本の場合,アジアの先進的な近代国家として非常に色々なことを築いてきましたから,経済ではその成果を出したわけですけれども,今度は文化で成果を出す時代が来たと思うので,そういう積極的なご意見を出していただきたいと考えております。
 高塩次長は,事務局としてやれることについてはきちんとするとおっしゃいましたが,委員の皆さんはともかくこれをやってくれこれをやってくれとご意見,ご提案を積極的に出していただいてそれをまた事務局で検討しながら具体的な施策として出していくことなるかと思います。ともかく今,あらゆる面で日本は非常に防御的になっているのではないかと思います。しかし,アニメや漫画,ファッションや食文化などは海外に積極的に発信されて受容されているわけです。必ずしも日本が言い出したわけではないんですけれども,これは文化芸術にとっては大変な好機だと私はとらえていまして,その意味で人材の早期養成とか早期教育とか,そのようなことも視野に入れて行わないといけないと思います。  この間も経団連のインターテイメント部会で申したのですけれども,東京からインスタンブールまでの広大な文化空間というのが今は出来てきているので,そこを目指していくような,欧・米はそのように戦略的にやっている気配もあるのですけれども,そのような意識をもって日本の文化芸術を振興していかないといけないと思います。ODAなどはほんの一部でも本当はそちらに使いたいものと願っているのですが,日本はどうも防御的過ぎるのではないでしょうか。日本のポテンシャルは中国とは比較にならないくらいあると思います。しかし,日本はそれを活用するのが意外と下手だと思います。国に対して意見していただけるのは委員の皆さんなので,世の中を動かすためにも,色々ご意見をおっしゃっていただきたいと思います。
 国策で芸術振興を行っている国ではフランスがすごいと思います。イギリスも結構やっていますし,それからアメリカはやはりすごいです。例えば,五嶋みどりさんの弟は6歳ぐらいからジュリアードに行って活躍しています。それでジュリアードからハーバード大学に進学しているわけです。そういう可能性があるので,そういうコンセルヴァトワールみたいなところに行っていた人が,日本だったら東京大学とか京都大学などに進学できるといった,そのような学生のアベニューも作るべきだし,それから先ほど米屋さんがおっしゃったように,芸術は大学だけを視野に入れる必要はないとも思うのです。大学だけが芸術家を養成出来ることもないと思います。
 必ずしも大学がアーティストの人材養成にとって良いというわけではないのです。だから研修所を非常に開かれたものにして,そういうものを作っていくような方向も出していただきたいです。

【高塩文化庁次長】 文化芸術の人材育成を含め,これまで政府の審議会等で様々な提言は出ていますが,提言はまとめるけれども,また次の会議が始まることを繰り返さないようにしたいと思ってはおります。先ほど田村和寿委員からございましたように,文化芸術において非常に重要な部分でございますので,ぜひお願いをしたいと思っております。

【高萩委員】 では具体的にどうするかというと,コンセルヴァトワールでも,僕はいいと思います。ただ,コンセルヴァトワールとしての教授陣などの充実がないと思います。もしコンセルヴァトワール方式に行くならば,カリキュラム編成をどう行っているのか説明をしていただいて,さらに充実をさせるためにはどうしたらいいかという話ができればと思います。
 それから,キャリアパスの問題。さっき吉本さんがおっしゃったことで言うと,卒業された方がどうするかということが問題です。今,比較的収入が低くとどまっているから,ドングリの背比べ状態になっています。しかも,日本のバレエカンパニーに,海外から団員が来るということはとても想像できない。つまり,日本で上演を仕事とするプロのバレエカンパニーが存在しないわけです。日本が今これだけの経済力を持ちながら世界が憧れるバレエカンパニーを持っていないということすらも不思議なぐらいなわけです,今日本のバレエカンパニーは東京バレエ団や牧阿佐美さんやいくつかありますけれども,アジアの都市で欧米のカンパニーでなく日本のバレエカンパニーを是非呼びたいと言っているところはかなり少ないと思います。
 では本当に国立でいっぱい作るのか,それはむずかしい,地方自治体にカンパニーを持った場合半分支援しますという考えがあると思います。地方自治体の劇場がバレエカンパニーを作るというのならば,国は半分支援しますというような提言を出せば,もしかしたら地方自治体がバレエカンパニーを作るかもしれません。日本人が入れないかもしれないぐらいの水準の非常に優秀なバレエカンパニーになった場合,アジアの色々なところが呼んでくれると思います。
 そのような刺激になる提言をしていかないと,動きが起こらない。今,アーティストはみんな困っています。少しでもみんなの収入を上げましょうと言って,みんなが少し上がるというのは,あまり状況を変えないだろうと思います。強い内容の提言が出来れば,特に田村(孝)さんなども静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」の館長でいらっしゃるし,地方のほうも頑張ろうと思うような提言ができればやりようはあるお思います。一地方だけではとても今の状況を動かせないと思います。それこそ,国がマッチンググラントするというやりかたなどが提言できるような新しく動きが出るような提言になれればと思います。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。
 ぜひ,私どもも新しいアイデアが欲しいと思っておるところです。文化行政の中で,相当大きく動かせる話も当然あると思います。その理念というのはバックボーンにあると思いますが。
 今やっている施策はすべてここ10年ぐらいの施策です。この新国立劇場のバレエ団についても,新国立劇場を作ったのは平成9年ですし,様々な人材育成にしろ,新進芸術家海外留学制度は昭和42年からやっていますけれども,色々とご批判もありますけれども,国全体の行政の中では文化行政というのは苦しいながらも,一歩一歩,流れに携わっておられる方はよくわかっているように,それなりに頑張っているところです。ただ,大きな飛躍がないことは確かですし,今の国の行財政,大学などみんなキャップ制のようになってしまっていますので,本当にそこは先生方のご提言で乗り越えたいと思っております。

【高萩委員】 ちょっと話がそれるかもしれませんが,人材育成に関して,思いついたことがあります。今我々が話していることは,芸術家になりたい人がいて,その人をどうしたらいいかという話ですけれども,大事なことは,これからの時代,クリエイティブな芸術家になろうという人を増やしていかなければならないとしたらという話をします。今の新しい感性のするどい人たちが海外のものに触れる機会というのが,日本は少なくなってきていると思います。
 特に演劇,バレエ,舞踊関係の海外カンパニーの来日はかなり減ってきています。特に最先端の芸術団体に関しては,一時期の80年代のバブルのころは,日本には多くのカンパニーが来ていましたが,最近は海外カンパニーのアジアツアーなどを見ていましても,日本を通り越して,韓国と中国に行ってしまうということなっています。商業的な公演はまだ相変わらず来ていますけれども,国際的なもの,それからアバンギャルドなもの,そのような第一線のものが今は減ってきていると思います。日本の芸術状況が世界に開かれていくためには,若い人がそのような第一線の公演に触れる機会を確保するべきではないかと思います。やはり見ることによって,このような表現があるのだとか,このような人たちがいるのだということを感じることが出来ると思います。テレビで見ることや情報で知ることとはまた違った感動が得られると思いますのでそういう機会の充実をさらに考えていただければと思いますので,よろしくお願いします。

【高塩文化庁次長】 国際芸術交流支援事業については海外公演はある程度行っておりますが,招聘は,国際芸術交流支援事業の予算約15億円の中で相当少ないです。また,国主導で行うフェスティバルのようなものは,音楽以外はやめたということです。

【田村(孝)委員】 静岡はほかの地域よりは先進的な文化政策をとっているところだと思います。それでも,私にもし小さい子があったら,ここでは育てません,と県に向かっても,企業のトップの方に向かっても言ってしまうくらい格差があります。格差というのは,私は所得格差ではなくて文化格差だというふうにいつも思っておりますけれども,それが現実です。
 地方に参りますと,今,地方の文化活動を活発にするという名のもとに,提供されるものの質というものが問われていないというのが現実です。そういう意味で,文化庁が行っている来日芸術型の文化交流使をぜひもっと増やしていただきたいと思います。 また,社会に対してアーティストが同関わるべきかを考える場がなかった,地方公共団体の文化担当の方のほとんどは議員や地域の方に,なぜ芸術が社会にとって必要かということを言葉で説明できないというのが現実のような気がします。説明ができれば,ああそうかと思う方,また,本当に感動出来るびっくりするようなものに触れられればそれに気づくということがあると思います。例えばNHKが昔イタリアオペラを呼んでいたころは,大阪でも公演していました。しかし,いつのころか世界のトップクラスの海外のカンパニーは大阪ですら公演されていないのが現実です。
 今,横浜では海外の引越し公演がされるようになりました。モーツァルト没後200年のとき,NHKでオペラを制作していたのですが,神奈川県民ホールで1日だけ公演しましたが,どうしようかと思うくらい売れなかったという経験があります。でも,今神奈川は変わりました。お客様が入るようになりました。やはり質の高い文化芸術に触れるチャンスを作っていく必要はいろいろな意味で大きいと思います。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。

【吉本委員】 先ほどの青木長官のお話を聞いてちょっと思ったことがあるのですが,確かに芸術家を育てて素晴らしいカンパニーなり何なりが出来,それを海外に派遣するとなれば,第二次基本方針の中でも言及されているように,経済などを支える原動力になるというような話があります。素晴らしい芸術家を育てるということが結局日本の産業や経済の面でも国力を高めることにもつながっていくということがあると思います。
 例えば,素晴らしいカンパニーの後援を海外に輸出できれば,例えばアニメなど海外に発信されている日本の文化のように貿易などで経済的利益をあげるもののひとつとなりえる,狭い意味そういう見方もあるでしょうし,それから先ほどから幼児教育などが出ていますけれども,宮田(慶)先生がおっしゃったように,演劇用的な手法を使って子どもたちに教育をすることでコミュニケーション能力を高めたり,想像力を養うようなことが教育の中で行われると,新しい産業を生み出す能力を持った子どもたちが生まれてくるというようなことが言われており,例えばイギリスなどはそのような取組を国が主導して積極的にやっています。
 審議事項のメインは芸術家をどう育てるかということなのだと思いますが,そのために色々な芸術的な教育の基盤を整備することで,日本の経済や産業を支えるような人材を育成することにもつながるというような,そのような広い議論が出来たらと思います。
 さきほど,高萩さんのおっしゃっていたことと関係しますが,人材を育成するといっても,アーティストになりたいと思う子どもがいないと人材育成以前の話になると思うんですね。されないので,子どものころにそのようなものに触れること,例えば学校に俳優が来て何かをやってくれてすごいと思うような感動を得ることなど,本当に小さな頃から芸術に触れる機会をつくるとことも最終的には芸術家を育てることにつながるという,幅広い議論ができればいいのではないか思いました。

【唐津委員】 先ほど,アジアに日本の芸術をどんどん紹介していくというお話が長官のほうからあったのですが……

【青木文化庁長官】 紹介しに行くのではなく指導に行くと先ほど申しました。演劇でも音楽でも,指揮者でもそのような日本のアーティストたちがアジア諸国のアート関係の人材育成で必要とされていると思っています。

【唐津委員】 ちょっと,話が長官の意図とはずれてしまうかもしれないのですが,韓国にLGアートセンターという劇場があります。例えばピナ・バウシュであるとかフォーサイスであるとか,現代のパフォーミング・アーツ,特にコンテンポラリーダンス等の国際的に活躍されているカンパニーを活発に招聘している非常に熱心な劇場です。そこに唯一日本で呼ばれたカンパニーがありまして,それが金森穣さんの率いる「ノイズム」というカンパニーです。日本でそのような優秀な団体を立ち上げて,ある一定の成果があがれば,アジア各国からも声がかかるということを証明したような事柄かと思います。
 そのようなことから,有識者として金森さんに来ていただくのも非常によいのではないかと思います。一方,芸術家の社会に対する関わり方というところで教育の不足を非常に実感しています。やはり芸術家は自分が舞台に立つということが目標になってしまいますので,自分が舞台に立つことで社会にどのように関わっていくのか,あるいは貢献していけるのかということを考える機会がほとんどないのです。
 自分がその舞台に立てればいいという考えだけですと,社会と舞台に立っている人間の間に断絶が起きてしまうことになります。
 こういったことも,例えばコンセルヴァトワールのようなところで技術教育とともに,社会に対してアーティストがどういうふうに関わっていくべきか,そういったマネジメント的な要素を持っているかどうかということがアーティストのその後のキャリアパスに大きく関わってくると思われます。
 金森さんについても,彼はルードラ・ベジャール・ローザンヌで専門教育を受けておられ,そこではダンス教育だけではなく演劇,音楽や芸術の政策的な授業もあるわけです。だからこそ,今日本で必要な自分の立場というものをきちんと考えて,その場所で自分の必要なこと,やらなければいけないことを明確に目標立てて実現出来ているのではないかと感じておりますので,そのような視点も今後,検討の材料に入れていただければと思います。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。
 今の話と,先ほど三林先生が言われた伝統に根ざした今の現代演劇や現代舞踊というのは,カリキュラムと言いますか,養成課程の内容の話だと思うんです。ですから,新国立劇場などのカリキュラムはきちんと整っていますから,そういったことについても紹介したいと思います。委員が今おっしゃったことも恐らくやっていると期待していますが,特に人材育成の中ではそのようなことについて踏み込んだ議論も当然必要だと思っています。

【三林委員】 さっき宮田先生がおっしゃっていましたが,先日,田中泯さんという舞踊家が「ようこそ先輩」というNHKの番組に出演されていて,その番組を見ていて,小学生が非常に衝撃的な感覚を感じたように見えました。今の教育の中で,知識を得る教育はしますが,感覚に関する教育は非常に欠落していると思いますので,俳優になるという意味ではなく小学生のときからそのような感覚に関する教育を取り入れたほうがいいのではないかなと思います。
 それは,舞踊など芸術的な事柄を教えないと得られないものではないかという思っていますので,宮田(慶)先生のおっしゃったことも含めて,もう一回検討していただきたいと思います。さきほどのダンスのお話も非常によいと思うんですけれども,さらにそこを強化をしていただきたいなと思います。

【宮田(慶)委員】 教育に取り入れるというとハードルがたくさんありますし,堅い話のように思われるのですが,私は単純に芸術やっている人間が格好よく見えたいという考えだけです。格好よく見えないと,高萩さんがおっしゃったように,目指す人間がいなくなってしまうと思います。そこで,今三林さんがおっしゃったように,頭が柔らかいうちにカルチャーショックを与えてしまうべきではないかという思いがあります。そうすると自分が普段経験していないもの,他者の考え方などといったものにもっとキャパシティを持てるようになっていくと思います。それは,非常に小さい子の教育のためにもいいと思うし,根本的に芸術を育てる心というか,スタンスはどうもその辺にあるんじゃないかなと思います。
 アーティストたちが他人がやることに対して敬意を払い,お互いが憧れ合って進んでいけると一番よいのではないかと思っています。些細な話ですが,例えば研修所の生徒はオペラとバレエと演劇が一緒なのですが,研修生同志がよい刺激になっています。他のジャンルが出会うことは滅多にないのですが,昨日もプレビューにダンスの生徒がみな見に来てくれていまして,やはりおもしろがっていました。そうしますと,同学年で入学して違うジャンルだけれども,こういうところで共通項があるということでお互いが非常に刺激し合うという,たったそれだけのことだけれどもよいことだと思いますし,本当にそういう意味で,物を作るって素敵だな,絵描くって素敵だな,踊るって素敵だなということに早く出会ってほしいと思っています。

【富澤委員】 新しいものを創造しようというときに,既存の組織などが色々やっても反対勢力もありますし,力関係で決まっていく部分もあると思いますので,なかなか難しいのではないかと思います。ですから先ほどの舞踊などで,今の大学教育の中に作れといってもなかなか実現しないのはそういう理由があるわけではないかと思います。そうではなくて,例えば舞踊などは大学生になってから始めても遅いんのではないかと思います。私は素人だからわかりませんけれども,もっと小さい,体の柔らかいときから,スタートさせないと遅いのではないかと思うのです。  ですから,今は個人の親が,個人の負担でバレエの学校に通わせたりして,そのような人材を育成しているわけですが,国ももう少し目を向けて,小さいときから舞踊の教育ができるような施設を作るなどのような発想のほうが,東京芸術大学に舞踊科を作れというより早いのではないかと思います。
 ですから,今度この文化政策部会で提言を作っていくに当たって,どうしても総体的な提言というのは,総合的な理念中心になりがちではないかと思うのです。もちろん国としてどういうふうに進んでいくかという理念は大事なのですけれども,その中で1つか2つ,具体的なものを創造していく,そういう道を開いていくということも大事なのではないかと思います。
 それは,実際に文化庁がおやりになるわけですけれども,そのときにもう少し具体的にこういうものを作ったらどうだろうかということを盛り込んで,文化庁が政策を実現していくときに後押しをするというふうに出来たらよいのではないかと思っています。そういう考え方で議論を進めていけば,新しいものがそこに生まれていくというふうに思います。私自身もそういう方向で議論をさせていただけたら思います。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。

【田村(和)委員】 先ほどから教育の場所とかそういう話が出ているんですが,もう一つ大切なところは地方だと思います。今,しみじみ考えてみますと,私は高萩さんと初めて知り合ったのは,東京の鈴木知事の最後のころに,江戸開府400年という事業で,東京ルネサンスという事業をやって,それの総合プロデューサーを私がやっていたんですけれども,あのときは信じられないぐらいに海外から色々な芸術家を呼びました。美術展は世界の7大博物館を呼んで,それからいろんな施設を作りました。
 確かに,考えてみますと,今若い人たちで元気な人たちというのは,あの景気のよかったバブル期に若い世代を育てた人が非常に多いと思うのです。  それから,もう一つ大きな動きというのは,群馬県の草津で国際音楽祭をやるなど,色々な自治体がそれぞれわりあい豊かな財政のもとに,色々な人たちを呼べたのです。これは,そのこと自身がいいとか悪いとかという問題ではなくて,失われた10年の間に,自治体がそのあたりをものすごく後退させてしまいました。結局,教育だけではなくて,地域の中で小さいシアターにとんでもないものを呼んだりするとか,そういうことにどれだけたくさんの人が触れたかのような感じがします。
 そういう意味で言いますと,今自治体の文化行政は非常に後退しています。しかも,考えられていることは,みんな貧相になっています。貧相というのはむしろコミュニティとか市民向けのほうに行ってしまっています。そういう話というのは,やはり何らかの影響がございまして,そういう意味では国が自治体と提携しながら,強いばねのある文化芸術サイクルを作っていく必要があるかなと感じています。
 そういう話がないと,先ほど三林委員がおっしゃったように,感覚とか身体性みたいなものがファースト・エンカウンターする場所が非常に少なくなっているのではないかと感じていまして,そういう意味ではシビルミニマムのような話ばかりにいっているのですが,やはり芸術文化というのはもう一つシビルマクシマムのような話にいかないといけないと思います。そういう機会を作ることというのが,長い目で見て,青木長官がおっしゃったように,指導者といいますか,我々に自負を作るのではないかという感じがしています。非常に大げさな話ですけれども,そのあたりで作り出すことも大切ですが,たくさんの若い人たちに芸術文化に触れてもらう機会をつくるということも大切なだと感じました。
 ですから,そういう意味では地方や自治体の文化行政に中に1つ大きな支えを作っていくことも大切かという感じがします。

【高塩文化庁次長】 ありがとうございました。
 人材育成だけではなくて,文化審議会の最初の諮問のような話にまで入っておりますが,あれもこれも重要なことは我々も重々承知しつつ,これは芸術家の人材育成ということをターゲット,それに関係するような範囲で議論を進めていきたいと思っておりまして,資料2と3の今後の進め方をご覧いただきたく思います,日程等はまた,若干審議の様子によってフレキシブルにやってまいりたいと思いますけれども,とりあえず,次回以降はヒアリング中心ということで,まず7月まで3回ぐらいを予定させていただければと思っておりますけれども,よろしいでしょうか。

【清水芸術文化課長】 <清水芸術文化課長から次回以降の日程等について説明>

【高塩文化庁次長】 フレキシブルに,各ゲストの都合も踏まえてやりたいと思っております。
 以上で第1回の文化政策部会を終わります。今日は本当にご苦労さまでした。ご協力ありがとうございました。

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