文化審議会第8期文化政策部会(第8回)議事録

1.出 席 者

(委員)

宮田部会長,田村部会長代理,青柳委員,小田委員,加藤委員,後藤委員,佐々木委員,里中委員,高萩委員,堤委員,坪能委員,西村委員,増田委員,吉本委員

(事務局)

後藤政務官,坂田事務次官,玉井文化庁長官,清水文部科学審議官,合田文化庁次長,戸渡審議官,清木文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,大木政策課長,滝波企画調整官,他

2.議事内容

【宮田部会長】 定時になりましたので始めましょうか,よろしくご審議のほどお願い申し上げます。 何はともあれ,先生方のお力をいただきましてきょうまでこぎ着けました。きょうを区切りとしたいと思っております。よって,きょうはご発言におきましては形のあるもののみをお話ください。今後どうあるかもしれないというような話は来年でも再来年でもやってください。もう今ここまできたら頑張ってくださった先生方のお気持ちをどうしても形に残したいという信念で動いていきたいと,かように思っておりますので,よろしくお願い申し上げます。意味のある2時間にしたいと思います。ご協力のほどお願い申し上げます。
 きょうはやっぱり時期柄,大変お忙しゅうございます。酒井,鈴木,富山,浜野,山内,山脇の6人の先生はご欠席でございます。
 それでは,7回の部会の審議,その後に皆様から事務局にお寄せいただいたご意見等も 踏まえまして再整理をして詰めをやりたいと思っております。よろしくご審議ください。
 世の中,ちょっといろいろ風が吹いているようでございますが,文化においては揺るぎないものでありたいと,かように思っております。よろしくお願い申し上げます。それでは事務局のほうで,ひとつお願い申し上げます。

【大木政策課長】それでは,政策課長でございますが,前回のこの場でもっていろいろご意見をたまわりまして,ある程度きょうを少なくとも最終的な詰めの場というふうに見込んで,短期間で仕上げなければならなかったものですから,各委員におかれましてはドタバタと事務局からいろんな紹介をさせていただきまして,また,たくさんいろいろご検討をいただいて,その上でもってご意見をお返しいただいたという,こういう手続を一回踏んだ上できょうの資料を用意させていただいております。てにをはでありますとか,ほぼ問題のない文言の修正を除きまして,各委員からいただいた意見を少しずつご紹介しながら資料の2に即しまして,順番にお話をさせていただきたいと思います。
 まず,資料の2を1枚めくっていただきますと,「はじめに」というのが1ページにございまして,これは特段いじっておりません。それから2ページからが,これが中身のある部分でございますので,順を追ってお話をいたします。
 まず,2ページのところで第1といたしまして,これは宮田部会長にも大変お力添えをいただきまして,こういう総論的な文章をご執筆いただいたわけでございますが,この部分につきまして幾つか意見が出てきておりますので,お話をさせていただきたいと思います。
 まず,この第1のところ,2ページ全体でございますが,この全体を通じてということで後藤委員から,「文化は国民の権利であることを第一に明記する必要があると,文化を創造し,享受するのはすべての国民の権利,そのことを抜きにして文化振興は語れない」という,こういう総論的なご指摘をいただいております。この中では盛り込んでおりませんが,あとのほうに出てまいりまして,そのときにご紹介いたしますが,次のページの第2の1というところのリード文を新たに設けておりますので,そこの中に趣旨を盛り込ませていただいております。また後ほどご紹介はさせていただきます。
 2ページに戻っていただきまして,第1のところの2番目のパラグラフでございます。「文化芸術は経済・外交と密接に関連している」というそこの部分でございますが,これにつきまして加藤委員から,「国による総合的な文化振興の推進が必要である旨のその記述を明記すべきではないか」というご指摘がございまして,そのパラグラフの下のほうでございますが,その旨入れさせていただいたところでございます。
 なお,この中でたくさんの方からご指摘をいただいておりました「文化省の創設」ということも文言として入れ込んでおるところでございます。
 その次の3番目のパラグラフ「文化は国家なり」という部分でございますが,これにつきまして,やはり加藤委員からでございますが,「戦略的に文化振興を図るべきであるというようなことを入れるべきである」というようなご指摘がございました。
 それから後藤委員からは,同じくそこの部分で創造産業の部分でございましょうか,輸出という文言を海外発信ということを発想させる意味で使っておったわけですが,輸出という文言を使いますと,クリエイティブ産業の果実を国内において国民が享受することも必要だという,そういう視点が抜けているのではなかろうかということで,そういった観点から若干文言の整理をさせていただいております。加藤委員のご指摘を受けました部分につきましては,一つは第2パラグラフの「文化芸術は経済・外交と密接に関連している」というところの一番下の部分でございますが,「文化芸術の振興を国の政策の根幹に据えて」という一文がございますことを受けまして,こういったところで一応読み込めるのではなかろうかということで,特段直接的な直しはそこの部分はいたしてございません。
 それからもう一つ,加藤委員からのご指摘で第3パラグラフの2ページの一番下のところですが,「アートマネジメントを行うべきであろう」という文言がここにあるわけなんですが,この文言は少しいかがなものかということで,それに変えて「戦略的に文化振興を図るべきである」という言い換えでご意見をいただいたわけでございますが,「アートマネジメント」のほうは,これはむしろ宮田部会長にちょっとご意見をうかがったほうがよろしいのかもしれませんが,一応「アートマネジメント」という文言自体は残したまま,文章も元のまま,したがって直してございませんが,趣旨は第2パラグラフのほうでもって読めるだろうということで,そのままにさせていただいております。
 それから後藤委員の部分につきまして直したのは,第3パラグラフのところの上から4行目当たりでしょうか,「文化芸術振興と連動する創造産業の発展に大きく期待が寄せられつつある」という文言にしてございます。その中に「輸出」という言葉を使っていたのですが,「輸出」という言葉を除いて創造産業の発展への期待と,これは国内的なものも,国外的なものも読み込めるということでこういう表現にいたしてございます。
 それから田村委員からご指摘をいただいて,3ページ以下の第2のところの重点施策のうち,各論的に幾つか併記していろんなことを書いた中でもって,第2のところのリード的なものとして整理し直すべきではないかというご指摘をいただきまして,それぞれのところの冒頭部分にリード文を設けてございます。
 まず,3ページのところの第2とありまして,その下,1とあって「六つの重点戦略」とございますが,その下のリード文が細かく分けますと4つのパラグラフからなっているということで,非常に事々しくて長いということで短くできないかという,こういう実はご指摘を田村委員からまずいただいたのと,それと並行して後藤委員からは,この中につきましても前のご指摘と同じように「国民が文化を創造し,享受する権利」というようなことが書けないだろうか,あるいは「文化というものが結果として経済や外交に寄与するのであって,経済や外交のための文化創造ではない」というようなニュアンスが出ないだろうかという,こういう修正意見もいただいております。それから高萩委員からは,「魅力ある日本文化をアピールし」というような概念がその中に突っ込めないだろうかという,こういうご指摘もございまして,率直に言いまして短くというご要請と,それから部分修正というご要請とかなり錯雑しておりまして,それで実は弱ってしまったのですが,田村先生には大変申しわけないのですが,文章は短くしておりません,申しわけありません。
 それでちょっと直させていただいたのが,後藤委員のご提案の趣旨につきましては,1のところの最初のパラグラフと2番目のパラグラフの両方に出てまいりますが,最初のパラグラフの3行目ですが,「経済力・外交力の向上につなげる」という文化の発信を通じて「つなげる」ということで,経済・外交に寄与するというニュアンスを出したつもりでございます。それからその下のパラグラフでは1行目から2行目にかかりまして,「国民が文化芸術を創造し,享受することができる環境を整える」ということで趣旨を入れさせていただいておるところでございます。
 それから高萩委員からいただきましたそのアピールということを,文言的に盛り込めないかということに関しまして,「魅力ある日本文化のアピール」というご指摘でございましたが,それにつきましては文言は直接に修正はしてございませんが,ニュアンスといたしましては第1番目のパラグラフの3行目に,「日本文化の発信を通じて」という「発信」という言葉,それから4番目のパラグラフのところの下から2行目に,「国際社会における我が国の魅力や存在感を高め」というキーワードとしてはここに入れ込めさせていただいておるというところでございます。
 それから第2の1のリード文の2番目のパラグラフでございまして,これも後藤委員からの指摘でございましたが,どんな表現になったかといいますと,「国を挙げて文化芸術を振興する機運を醸成する」というような文言が実はなかに含まれていたのですが,これが後藤委員からのご意見では,「国を挙げて文化芸術を振興する機運を醸成する」というふうに書いてしまうと,「挙国一致で文化の重要性を理解せよと国民に向かって言っているようにもとれるので」というようなご指摘があったものですから,そこの部分は文言を削除いたしまして,その上でうまくつながるように改めておるところでございます。それがちょうど2番目のパラグラフで「まず」から始まるパラグラフの2行目当たりにかかわる修正でございます。
 それから高萩委員からは,この中に文化芸術政策を専門とする文化省を独立させるというようなことで入れ込めないかということでございましたが,文化省の創設に関しましては冒頭の2ページ目のところに既に入れ込んでございますので,ここにはもう一回入れるということはいたしてございません。
 それから第2の1の3番目の「次に」から始まるパラグラフでございますが,この中にかかわる意見といたしまして,後藤委員から「補助金が少ないことが問題なのではなく,アーティストの保障や支援の仕方,国民が文化を享受する仕組みが十分に検討されていないことが問題である。予算さえふえれば何かがよくなるとは思えない」と,「また,この財政状況で予算だけが倍増することにもじくじたるものを感じる。まずは長期的な展望や基本的な仕組み,次にそれを実現する手段としての補助金,税制,著作権の在り方というふうにトータルに考えないと中期目標に対応するものにはならない」ということでございます。
 これは前回来ちょっとお話をしてございますが,かなりこれは短期間でもっておまとめいただいたものでございます。したがいまして,こういう政策パッケージとしての全体像が文化芸術振興基本方針というものに,そのままストレートに生かせるようなパッケージとして構造的に整理されているか,されていないかと言われれば,まだもちろん十分でないところはあるだろうなというふうに認識をいたしております。
 そういうことも含めまして前回にもお話ししましたし,それから今回もまたあとでお話ししますが,今後の検討課題ということで答申にまとめ上げる作業は少なくとも今年度いっぱいとか,そういうスパンで考えなければいけませんので,夏以降も当然外からの意見も聞きながら,次のステップとしてさらに検討を深める段階に入ってまいりますので,そうした中できちっとこういったご要請も踏まえて,まさに中期目標というのは5年を見越した振興基本計画であると思われますので,工程だとかそれから達成目標だとか,そういうことも含めてきちっと政策のツールの体系ということにも留意しながら整理をさせていただくということでいかがかなということで,特段ここにそれを,構造を変えてみたりとか入れ込んだりとかということは,今回はいたしてございません。
 それから高萩委員から同じく3番目のその「次に」から始まるパラグラフのところで,「各省庁間の連携をとりまとめる総合調整機関の設置を検討する」という文言が入らないだろうかというお話がございました。ニュアンスといたしましてはその「次に」のパラグラフの一番末尾のところで,「関係省庁間の一層の連携強化は欠くことができない」ということで,少し文言を補強して強めに書いてございます。連携強化というものがやっぱり順を追うステップとしては,やはりひとつあるのだろうと。それから文化省の創設というのは冒頭のところで出てまいりますので,ある種それの中間段階ということなのかもしれませんが,一応「連携強化」ということでもって,そうしたことが読み込めないかなというようなことでニュアンスを出したつもりでございます。
 その次からが(1)から(6)まで,1のところでタイトルの「六つの重点戦略」というふうにしたものが順次出てくるわけでございますが,これも田村委員からそれぞれリード文があるわけなのですが,そのリード文がもう少し短くならないかというご指摘があったわけでございますが,申しわけございませんが,先ほどと同様な理由でこれについてはちょっと修正意見等も入ってきてしまいまして,どうしたものかなということで短くしきれないまま,そのままほぼ残しているという状況でございます。お許しをいただければと思います。
 一番最初の(1)のところの3ページの下のところのリード文でございますが,これにつきまして高萩委員からインセンティブという言葉を裸で使っていたのですが,それは経費の削減だろうとか,収入の増加であろうというそういうニュアンスを出したほうがいいんじゃないかと,それから同じく次のページの四角の中の一番上の黒四角でもって囲ったところ,4ページの冒頭部分でございますが,これもインセンティブという言葉が裸で使われておったのですが,これがある程度イメージが湧くようにそれぞれ自己収入の増加等のインセンティブでありますとか,経営努力のインセンティブでありますとか,内容がちょっとわかるような表現に書き改めたつもりでございます。
 それから4ページの四角の中に既に入っておりますが,2番目の黒ひし形でございますが,これにつきましては3名の委員から同じところについてご意見をいただきまして,申しわけありませんが,ぐしゃっとまとめさせていただきました。
 田村委員からは,「寄附税制の拡充等により国,地方,民間,個人など社会を挙げて文化芸術の投資を拡大する」という表現がよろしいのではないかと。それから後藤委員からは総論的にこれは税制を扱ったところでございますので,「文化にかかわる税制による支援は寄附税制のみではない,美術品のストックをふやすための税制の活用もある。そうした政策課税としての文化税制についても検討すべき。また,寄附税制についてはこれ以上の拡充は必要なく,むしろ対象となる法人認定の問題や寄附を集める美術館等の体制の充実を考えるべきなのではないか」というご指摘でございました。それから高萩委員からはこれは修文意見でございまして,「寄附税制の拡充を目指し,企業,民間,個人などよりの」──などからのという意味だと思いますが──「などよりの資金面の援助を求めるとともに専門家,アーツNPOの活用による「新しい公共」による文化芸術活動を支援する」という,こういう修文出ございました。
 それで後藤先生からの部分につきましては,これも「寄附税制について,より多角的に」という先ほど来のツールをどういうふうに体系的に整理をし,それをどういう工程でもってどういうふうに中期的に目標として設定をしていくかという,こういうことであろうかと思いますので,これはちょっと改めてまた追加的なご検討をということになろうかと思いますが,ほかの先生方お二人からの意見をとりあえず事務局でもって,ちょっと折衷案として何ですがまとめさせていただきました。読み上げますと,そこのページにありますように,「寄附税制の拡充や文化芸術資源の活用を促進する税制の検討等を通じて,企業等の民間や個人からの文化芸術に対する投資拡大を促すとともに,NPO法人等「新しい公共」による文化芸術活動を支援する」という文言に今案としては掲げさせていただいておるところでございます。
 それから3つ目のひし形の部分につきましては加藤委員から,これもちょっとアーツカウンシルを審査評価という修飾語だけでもってアーツカウンシルというものを語っていたわけでございますが,専門的な審査,専門性を持った審査なのだということ,あるいは適切な振興プログラムを開発する機関として新たな仕組みとして設けるのだという,こういうニュアンスが出せないかということで,これも少し書き足させていただいて「専門的な審査・評価を実施し,支援策をより有効に機能させる機関として,新たな「日本版アーツカウンシル(仮称)」の導入に向けた検討」云々という具合に丁寧に書かせていただいておるところでございます。
 もう一つは,一番下の「国立の美術館・博物館や劇場について」と,ひし形で始まる一文でございますが,これにつきまして3名の委員からご意見をいただいております。
 まず,田村委員からは,文化施設には地域的な偏りがあるというニュアンスが出せないだろうかというご意見でございます。それから高萩委員からは,やはり地域ということを念頭に置かれて,地方の要望をよく汲み上げながらこうしたものの役割,機能,分担を明確にしたいとか,そういう手当が必要なのではなかろうかと,地方の要望をよく汲み上げてと,いずれも地域的にアンバランスがあるのでそれをというようなニュアンスだろうというふうに受けとめさせていただきました。それから,後藤委員からいただいたのはもう少し総論的でございまして,青柳委員から前回お出しいただいた意見についてもう少し意見交換を丁寧にしてはどうだろうかと,それから美術品のストック増加に税制を活用できない理由は相続税のせいだとばかりは思えないと,現物寄附の控除をするのが日本の税制なのでそれを活用することも考えられるし,もっと既存の制度を活用するにはどうしたらいいのかといった議論も必要だということで,この美術館・博物館という観点から少し総論的なご意見をいただいております。
 田村委員と高萩委員からいただいた部分につきましては,地域的な配置状況も踏まえ,役割機能に十分留意するんだというようなニュアンスをその文章の中で出させていただくことで,その地域的な問題ということをこの中に溶け込ませたつもりでおります。後藤委員からのご意見につきましては,これも先ほど来の話と同じになってしまって恐縮ですが,この根っこにある表現につきましては美術のワーキンググループの意見まとめの中に関連した記述もございますので,これはこれでこの程度の表現でもってお許しいただくとして,これも要は政策ツール,支援のための政策ツールという切り口でもって今後整理すべき課題として,後ほどの議論の中でもって深めていただければということで,特段ここに後藤委員の意見は反映しておらないというところでございます。
 以上が(1)の関係です。
 (2)の人材のところにつきましてリード文につきましては,もとより田村先生からもこれも以下同様でございますが,もう少し短くというご指摘がございましたが,特段修正意見という形ではいただいておりませんが,その四角の中の一番最初のひし形のところでございますが,吉本委員から,若手という切り口で要素として入っているのが,「海外での研修成果を還元する機会」,これが1つでございます。それから「国内での研修機会を」というのが2つ目の要素,それから3つ目が「顕彰制度」というこの3点構成でもって実は文章をつくっておったのですが,それに対して「顕彰制度」の前に「奨学金」という文言を入れたらどうかというご指摘をいただいております。
 そこで先ほど吉本委員に確認をさせていただきましたが,その「奨学金」という意味合いは,日本育英会の奨学金のようにある人に渡して,それで自由にという感じではなくて,吉本委員のお考えではむしろ海外研修でもって渡航費だとか,それから滞在費だとか支給しておりますが,そういったニュアンスだということだそうでございますので,それを踏まえた形で今回の資料の中では,これは微修正でございましたが,今まで挙げた要素が海外研修の成果の還元と国内での研修機会と,それから顕彰の3点セットだったものを,1点目として海外研修そのものの充実,2点目としてその成果を還元する機会を充実,3点目として国内での研修機会,そして研修制度という形でもって4点目という形で既存のいわば渡航費とか滞在費を渡しているものについても充実するんだというようなニュアンスをここで出させていただいておるところでございます。
 (3)でございますが,これは子どもを重視すべきというご意見の多かった子どもの部分でございます。その中で原文では「文化芸術の裾野を拡大するとともに」という文言がリードの中に入っておるわけでございます。子ども対象の事業,文化芸術の裾野を拡大するという位置づけをこの中で書いておるわけなのですが,加藤委員のほうから削除意見をいただいておりまして,あとでも出てくるのが,「親しむ機会」でありますとか,「コミュニケーション教育」等でございますが,それが感じとして裾野の拡大というのにちょっと直結しないというようなご指摘だったのではないかと思うのですが,削除意見がまいっておりますが,これはむしろ後ほどご議論をいただいたほうがよろしかろうと思いますが,裾野の拡大あるいは言い換えれば将来の観客層の育成,将来の観客層というのが少し事務的でしたら,文化芸術のサポーターになるような人たちの育成,あるいはプレイヤーそのものになる人たちの育成とか,多分そんなニュアンスでもってこれは使わせていただいておりまして,それを残す,入れるにしてもちょっとご判断をこの点はいただければというふうに思っております。原案ではとりあえず削除をせずに原案のまま残しておるところでございます。
 それから(3)の四角の中の一つ目の黒ひし形でございますが,高萩委員からは,子どもの成長に合わせた鑑賞機会なのだと,それから田村委員からは,多彩な優れた芸術なんだと,「発達段階に合わせた」というのと,それから「多彩な」というこの2点の修正意見がございましたので,それを踏まえた形でもって一番目は,「子どもの発達段階に応じて,多彩な優れた芸術の鑑賞機会」というふうに文言を修正いたしております。
 (4)でございますが,リード文は微修正しておりますが,大きな変更はございません。それから(4)の2つ目のひし形のところで,「文化財の公開・活用」の中に「調査研究」ということも含めてはどうかというようなご指摘が佐々木委員からいただいておりますが,これにつきましてはリード文の一番下の行に「調査研究機能を充実するとともに,以下の取組を進める」というような整理がなされておりますので,ちょっとリード文との間のすみ分けでもって,もう一回四角の中に「調査研究」を入れるということは避けさせていただいて,原案のままとさせていただいております。
 それからここの部分につきましては加藤委員から,3つの黒ひし形があるのですが,その4番目としてということだろうと思いますが,要素として1つは「文化資源の活用を促進する税制」,それから「法的規制の弾力的な運用を検討する」というこの2つの要素を盛り込んだ一文を黒ひし形を付して四角の中に入れ込んだらどうかというご指摘がございました。実は税制の話は整理分類論もあるのですが,前のところで「支援の在り方」ということでちょっと横串的に書いた(1)の,具体的には4ページの上のところなんですが,この四角の中で税制の話は入れ込んでございます。後藤委員からもご指摘がありますように,これはこのままでというよりも少しツールを今後整理していく中でもって,またいろいろ表現が変わったり,具体的に変わったりしてまいりましょうが,とりあえず要素としてはそこに入れ込んでありますということが一点です。
 それからもう一つは,この「法的規制の弾力的な運用を検討」という意味合いですが,加藤委員がまず念頭に置かれておるのは,これは一つの例といたしまして,例えば文化財として指定されている建造物ではなくて,それ未満のもの,そこに至らないが非常にいい建物,日本建築でいい景観を形成しているようなものを何かよくしようというふうにした場合に,網がかかるのが建築基準法で,指定物件ですと建築基準法から逃れられるわけなんですが,建築基準法の枠の中に入ってしまって一般家屋と同様の扱いになると,何かよい改変を加えようとしても非常にそれができにくいのだというようなご指摘がございました。
 それで何とかそういうことを書けないだろうかということで,検討をいたしたわけなのですが,その辺「法的規制の弾力化的な運用」というのを一般的に書くかということも考えられるのですが,ちょっとそういう具合に根っこがかなり個別具体にある話でございますので,それにつきましてはワーキング等の玉の中でもってこれが十分かというと,まだまだちょっと十分でないところもございますので,一般的にあとのほうで直したところはまたご紹介させていただきますが,ここではなくてワーキングの報告を並べた中に少し書き出させていただいて,そしてこういったことに限らず,一般的な文化資源を活用する上で今のようなことも含めて,この法的規制がちょっときついんだということがあれば,少し追加的なご議論等も含めて答申の中でもって,もう少ししっかり書くのであったら書くというようなことも考えられるのではなかろうかということで,ここはそのままにしてございます。これだけではなくて,多分指定管理者制度の話なんかもその一部になるのだろうなというふうに勝手に事務局のほうでは思っておりますが,そんなことも含めて,あとでまた一般的に直したところはご紹介をさせていただきたいと思います。
 (5)は観光振興,地域振興の部分ですが,各委員から幾つかございまして,一つは要素として「地域資源の発掘,活用」,それから「新たな創造拠点形成」というようなものを要素として盛り込みながら,あとは2つ目の四角の中の黒ひし形を付けた部分について記述の順序を入れ替えるなり少し整理できないだろうかということがございましたので,その趣旨に対した形でもって整理をし直してございまして,「地域の文化芸術資源の発掘,活用に関し,創造都市の取組等新たな創造拠点の形成を支援するとともに,地方芸術祭,アーティスト・イン・レジデンス等による地域文化の振興を奨励する」というような書きぶりにしてございます。
 (6)では,浜野委員から,いきなり東アジアが出てきてちょっと唐突な感じだというご指をいただいておりますが,これはやっぱり政権における重点だということで,そういうご紹介がありながらここに入れ込んだ部分でございますので,申しわけありませんが,原案のままとさせていただいております。
 以上が重点戦略の部分の直しでございます。
 それから重点戦略ではなくて,各論的なそのあとの7ページ以降の具体的施策について幾つか直してございます。7ページの(1)の[1]の3つ目,一番最後のところの○でございますが,これは高萩委員から先ほど来の意見とも一致しますが,地域の意向をよく汲み上げながらこういうことやるんだというようなニュアンスが必要だということがございましたので,一番末尾のところでございますが,「望ましい在り方について,地方その他の関係機関等を含めた検討を行う必要がある」ということで,地方の自治体なり何なりというようなニュアンスをここでもって出したつもりでおります。
 8ページをごらんいただきますと,一番下から2番目の○でございますが,青柳委員からのご指摘で,メディア芸術というところの注釈的な形容詞といたしまして,「マンガの原画等のメディア芸術に関する貴重な作品や」ということで,アーカイブの具体的イメージが湧くような表現を追加してございます。
 9ページにまいりまして,一番最後の行ですが,これはワーキングの意見のとりまとめの中に実際記載されておりますものですから,青柳委員から意見をいただきましたが,直してございません。青柳委員からのご意見は,国と企業が共同して海外に映画を売り込むという表現があるわけなんですが,これはちょっと文化政策とは異なるような意味合いに感じられるので,そこのところは適当な記述にしたほうがいいのではなかろうかということでご意見をいただいたのですが,ワーキングの意見まとめの中に同様の表現がございますので,事務局レベルでは原案どおりの記述にさせていただいております。
 それから前回の会議で青柳委員のほうから政策提言的な資料をいただき,ご紹介させていただきました。大変に詳細で中身のあるものだったのですが,申しわけありませんが溶け込ませる段では10ページの下から2番目の【ですが,
 国立の博物館は,各地域の博物館の学芸員等専門職員の資質向上や,作品の貸出し等ナショナルセンターとしての機能を一層果たしていくことが求められる。そうした機能を適切に果たすとともに,国民共有の貴重な財産を充実するためには,自己収入の増加やそれを円滑に運営に充てることができる仕組みの導入等,現在の制度の在り方や運用の見直しも検討する必要がある。
 という文言を一つ追加させていただいております。これは意見のまとめに関連する記述がございまして,そちらとも整合しておりますし,佐々木委員からもこれについては賛同の意見をいただいておるところでございます。
 それから12ページへとんでいただきまして,[2]の「くらしの文化の担い手・団体の育成・支援」のところで,3つの○で構成されていたものに○を一つ付け加えまして,加藤委員からいただきました,先ほどあとに送ると申し上げました部分で,規制の緩和みたいな話なんですが,それについて少し一般的なものになってしまいましたが,こういう形でいかがかということで付け足させていただきました。
 街の文化的景観を構成する町家や古民家等伝統的な建築物の保存・活用を促進する方策や,都市計画において公共事業費の一定割合を文化的側面に割り当てる「 Percent for Art」等についても,関係省庁による連携のもと検討すべきである。
 という文言を入れさせていただいております。ちなみにこの「 Percent for Art」に関しましては,後藤委員からのご意見を踏まえて追加させていただいたものでございます。
 というのが,報告書自体の文章の直しということでございます。ちなみに15ページをちょっとごらんをいただきたいと思いますが,「今後の検討課題」のところ,少し要素を付け加えて丁寧に書いてございます。四角の中をごらんいただきますと,1つ目のひし形が,「第2次基本方針の実施状況の評価を行うこと」,これは従来どおりです。それから2つ目のひし形が,「第2に記載した重点施策の達成目標及び工程スケジュールを明らかにすること」という書き方だったのですが,それに先ほど来の後藤委員からのいろんなご意見等もございますし,まだ積み残しているものがある可能性がございますので,「必要なものについてはさらに検討を深めるとともに,その中で達成目標及び工程スケジュールを明らかにすること」というような,より丁寧な文言にしてございます。
 あと,全体にかかわる事柄といたしまして,これはむしろ部会長にちょっとご工夫をいただくことなのかもしれませんが,後藤委員からは,
 中期目標のためのワーキングのあとの議論が全体の議論に戻って今年度の予算要求に絞られたので,中期目標と今年度の予算要求との関係がよく見えない印象を持つ。長期の目標,基本的な仕組みの見直し,それがあっての予算要求や税制,著作権とのトータルな政策手段の見直しになるのではないか。予算のみ倍増しても仕組みが悪ければ焼け石に水,中期目標は何なのか,そのために現行の仕組みをどう変えるのか,そのための手段として補助金,税制,著作権との政策手段はどう使うのかという整理が必要である。また,委員会での議論が一方通行スタイルで議論になっていないが,もっと議論するスタイルになるとよい。
 こういうご意見をいただいております。前段の部分につきましては,ちょっとこれはどちらが先かということで大変申しわけないのですが,中間報告ということでとりあえずのものという体裁をとらせていただいておりまして,答申に向けてより緻密な議論が必要だろうということで,先ほど来のお話にこれは戻るわけでございます。
 それから後段のほうにつきまして委員会の議論の進め方につきましては,むしろ部会長に少しお考えいただきながら,どうするのかということをご検討いただければ幸いに存じます。
 最後に全体的に浜野先生から,インセンティブ,マッチンググラント,アーツカウンシル,コミュニケーション教育,アーカイブなどの英語のカタカナ表記が気になると,これは何とかならんのかというご指摘がございまして,限界はございますが,私どものところには国語課という課もございまして,そうしたところにもちょっと協力してもらいながら全体のチェックを入れておるところでございます。
 ちょっと長くなりましたが,せっかくいただいたご意見でございますので,丁寧にご紹介したほうがよろしかろうと思いまして,大変失礼いたしました。

意見交換: 第2-文化芸術振興のため重点施策

【宮田部会長】ありがとうございました。先生方,本当にありがとうございました。大変なご尽力をいただいて,まとめの文章をいただきました。ありがとうございます。これが最後の部会となりますが,先ほど後藤先生のほうからもございましたが,なかなか意見交換というよりも一方通行になっているというご指摘は私も重々感じております。さに,はからんや,これをまとめるという作業も頭の中にあるものですから,ご無礼の段,お許し願いたいと思います。
 まず,お手元にあるものの時間配分を考えますと,もう10分超過しておりますが,それは無視をさせていただいて第2の1.重点戦略について約40分ほど,次に第1の基本理念について15分ほど,最後に今後の検討課題,その他,全体を通してのご意見で25分ほどというふうに目安でございますが,ご協力をいただきたいと思います。なお,前回同様ご意見をいただく際には修正文をご提案をいただくなど,なるべく冒頭に申し上げましたが,具体的にということをご協力願いたいというふうに思っております。本当に先生方,ああ,そうだな,そうだなと思うことがいっぱいよくご指摘いただいております。
 それでは,進めたいと思います。
 まず,第2の1.重点戦略等々について先生方のご意見をいただきたいと,かように思っております,いかがでしょうか。

【高萩委員】1と2に関わることなんですが,1の「基本理念」を宮田部会長にお書きいただいているので,私としては文化政策部会,部会長宮田亮平とお書きになって書かれるのかなと思っていました。私としてはそのほうがいいんじゃないかと思っています。もし,そうされるのであれば,ぜひ第2の「六つの重点戦略」の中の地の文のほうで,文化省の件は入れていただけないかなと思っています。ただ,いろんな理由で中間報告なので部会長の個人名が入るのはむずかしいということでしたら,どっかに入っていればいいのですが。その辺はいかがなんでしょうか。

【宮田部会長】すみません,ありがとうございます。先般のときにもちょっとつたない文章を書かせていただきましたが,実はこの部分を何度も何度も読み返しますといろいろと出てくることがいっぱいございまして,実は今朝まで……滝波さん,ご苦労さんでした。やたらもうメールだらけですみませんでした,朝も直せという感じで。
 高萩先生,ありがとうございます。この全体の流れはこのままなんですが,はじめのもっと前に昨年のときにも書かせてもらいましたが,ちょっとそんなような文章もあとでご提示させていただこうかなと思っていたのですが,先にいうのもちょっといやだなと思っていたものですから,これでも私,遠慮深いほうなものですから,(笑)そんなこともまたあとで見ていただけたらと。

【高萩委員】この前に一文つくったのですか。

【宮田部会長】この前は全くページ外にひとつ載せたいなということで。

【高萩委員】わかりました,それではこれは地の文になるということですね,1番は……了解しました。

【宮田部会長】というのは,ここまでもってきたものをまた崩しますと,またこれは大変な作業になってくると思ったものですから,ここ数日,滝波さんに送ってあるものはその前にというような気持ちで書かせていただいたものです。ありがとうございます。
 あと,いかがでしょうか。

【田村部会長代理】前に先生がお書きくださるのでございましたら,基本理念というところに比較的きちんと書いていらっしゃるので,私はやはり六つの重点施策によるリードのところはもっと簡潔に,同じ言葉が何度も何度も出てくるような感じがするために,どこを読んでもどこなのだろうかという気がいたしましたので。ちょっと過激なのかもしれませんが,私はこのぐらいでいいだろうと思って提示させていただいたものをちょっとご紹介させていただきます。
 第1の文化芸術振興の基本理念のもとで,あるいは目指してでも結構ですが,
 国際社会における我が国の魅力や存在感を高めるため,また教育,福祉・環境・観光・創造産業など,幅広い分野にかかわりを持つ文化芸術振興の重要性に対する国民の理解を醸成するため,そして将来の文化省創設への布石のためにも,諸外国に比較して極めて貧弱な文化予算を大幅に拡充し,国家戦略として文化芸術立国の実現を目指す姿勢を鮮明に打ち出すべきである。そのために当面以下の六つの重点戦略を強力に進めたい。
 というふうに,私はここに書かれていることは中にも前にも書かれているのではないかという感じがしましたので,そのように思いましたのですが,はっきり書かないと結局何なのかわからないというのが,私の正直な気持ちです。

【宮田部会長】ありがとうございます。この田村先生のお話に関していかがなものでしょうか。物事というのはあるときはくどくだが,あるときはスパッといったらいいというこのメリハリが必要ですよね。里中先生のお仕事でも多分その辺は一番大事なところではないでしょうか。

【里中委員】 すみません,本当に感想なんですが,今のすごくわかりやすかったです。

【宮田部会長】 ほかにございませんか。もし今のお話で,里中先生からのお話もございましたが,少しここのところはご検討ください,よろしゅうございますか。
 ほかに……青柳先生どうぞ。

【青柳委員】2点あるのですが,1つは,5ページの4のところの「文化芸術の次世代への確実な継承」で四角の囲みの中の一番最初のところに「文化財の修理や防災対策を計画的に進める」と,これは今いろいろ認定制度,指定制度などがありますが,ヨーロッパなどではハザードマップをつくり出しているんですね,ですから国の中にどういう文化財が分布しているかという,一種の所在台帳をつくると同時にその地域で気候が文化財に悪いところだったらそこに赤を付ける,それから治安の悪いところだったら赤を付ける,それから自然災害が起こりやすいこの地域だったら,水害が起こりやすいとかあるいは地震が起こりやすいとか,あるいは火山の噴火が起こりやすいということで面的に文化財の保存というものをやっているんですね。やっぱり今,日本の保存のシステムというのは点と線なんですね,ですからもっと保存を面的なものにしていってハザードマップをつくって,それで本当に分厚い三次元的な保存政策を推進するということがこれからは必要なのではないかという気がします。それが1点です。
 それから第2点は,さっきもう既にコメントがございましたが,(6)の「文化発信・国際文化交流の充実」のところで,最初にポーンと舞台芸術が出てくるというのは何かすっきり飲み込めないと,例えば今まで日本の文化発信,国際文化交流で一番活躍してきたのは伝統工芸なんですね,ロンドンやパリの万博であれだけ活躍して,日本が生糸以外に外貨を稼いだのは工芸だけなんです。そして人気があったために従事している人口も日本には非常に多いのですが,それが今は中国,ベトナムの活躍で土砂降りになっているんですね,がまだ質は守られている。そしてこれを文化発信に持っていけば既にもう実績はいくらでもあるのですし,成功はしているのです。ですからここに舞台芸術という固有名詞が出るのだったら,そこに伝統工芸とか美術工芸という固有名詞も入れて,やっぱりこの発信のための中核になる最も大きなポテンシャルを持っているところですから,舞台芸術よりもはるかに,ですからそれをやっぱり入れておくべきではないかなと思うのです。

【宮田部会長】私の専門の分野でございますから,これまた言いにくかったところなんですね。これは私,パリ万博,シカゴといろいろ見ても本当に世界中が仰天したものでございますのでいかがでしょうか。これはぜひとも……舞台芸術よりもとは言いませんが,並記した表現の仕方というのは大事なことかなと思っておりまして,ひとついかがでしょうか。これもぜひ,大変私はすばらしいことだと思います。
 加藤委員どうぞ。

【加藤委員】今の青柳先生のお話はまことに最もだと思うのです。(6)のところは舞台芸術だけではなくて,もっと幅広くジャンルを何ものにも限定しないというのが一番いいと思うのですが,それとは逆に今度は(4)の部分は,文化芸術,文化財というふうにあって,それを次世代へ確実に継承していこうというのですが,この中を読む限りどうしても有形文化財のことしか含まれていないのではないかなと,それを少し無形の文化財,今度は逆に工芸,その他というものでない文化財に対する配慮というか,そうしたものの保存ということも非常に危ぶまれている現状ですから,そういう意味ではここに有形無形というような表現を入れ込むことで,これはリードの部分で多分十分だと思うのですが,少しカバーできるのではないのかなというふうに思います。

【宮田部会長】ありがとうございました。

【大木政策課長】すみません,加藤委員からこの文言の修正意見をいただいて,実は直したのですが,ちょっと文言の修正ということで先ほどご紹介するのを省略させていただいてしまったのですが,(4)のところの冒頭で「文化財は」となっていたのを「有形及び無形の文化財は」というふうに直させていただいております。冒頭でもって直してその後は全部裸で使っているという,こういう整理に一応させていただいてはおります。

【宮田部会長】加藤先生,よろしゅうございますか。

【吉本委員】内容的なことではなくてちょっと意味の確認なんですが,先ほどの青柳委員の意見と関連して(6)の四角の中の2つ目のポチでフェスティバルという言葉が使われていますが,美術のほうはビエンナーレ,トリエンナーレという言い方のほうが一般的ですよね。しかしこのフェスティバルという用語にはその美術分野も入っているというふうに私は勝手に理解しているのですが,そういうことでよろしいですか。外部から聞かれたときにどうなんだろうというのがやはりあると思うので,この部会としてはこの言葉をそういうふうに使っているんだという共通理解があればこのままでいいと思うのですが。

【大木政策課長】書いている側といたしましては,フェスティバルという一般名詞にしてございますが,美術でいえばビエンナーレ,トリエンナーレと,それから音楽でいえば何とか音楽祭,国際何とか音楽祭と全部包括するものとしてとらえております。

【宮田部会長】よろしゅうございますか。
 大変活発な意見をありがとうございます,いかがでしょうか。
 それでは,また重複してもかまいませんので,次に進ませていただくということでよろしゅうございますでしょうか……どうぞ。

【田村部会長代理】今回それ程取り上げられてはいなかったのかもしれませんが,(2)の「文化芸術を創造し,支える人材の充実」というところに,「国立の劇場にソフトを」という項をどこかに,「将来は」というぐらいの感じで入れられないのかと思っております。と申しますのが,目指すところがないとそれは海外流出の人材の育てるだけになってしまうと思うのです。例えば静岡にはSPACがございます。オーディションして全国から人材を育てています。でも,そのときに頂点を目指すような世界に向けて目指すようなものでなかったら静岡で育てたとしても,ただ東京に流出する人材を育てているということになってしまい,結局は静岡には育たない,としても。きちんとした頂点のソフトも存在しないということになってしまうというような話もございます。音楽ではもう世界に皆様出て活躍していらっしゃいます。バレエダンサーもきちんとしたバレエ団がないために,ダンサーの寿命は短いのでその方たちがベストの状態で活躍できる姿を日本人が見られないという状態になっていると思うのです。もし新国立劇場なり国立劇場に劇団なりバレエ団があったらば,そこを目指して,そこで最高のものをつくるという,それがいわゆる支えていく人材も,それから担っていく人材も育てる,もしかしたら一番大切なことではないかなとちょっと思っております。

【青柳委員】僕も今の田村委員のお話と同じで日本の文化行政や文化制度の中に欧米にあるコンセルヴァトワールという存在がないんですね,唯一あるとしたら宮内庁にある一部のところだけなんですね,ですからもうちょっと今,田村委員がおっしゃったようなキャリアスルーというかキャリアパスができるようなコンセルヴァトワール的なものをどこかに安全弁として付けておくというのは重要なことだと思いますね。

【宮田部会長】それは昨年のときにも,その前の年かな,いわゆる教育機関がきちっとしなければいけないと,私座長をやらせていただいているのに何で芸大でつくらないんだと,ずっとその話で1年終始した記憶があるのですが,やはりそういう支援と同時に私どもがやらなければいかんというか,発信しなければいけないと思いますね,肝に銘じております。
 そんな意味でいきますと6ページの下のところにでもあえて大学間交流とか東アジアのことに対して大学などがもっともっと積極的にこの文化に対して進めていかなければならないというようなことを書かせてもらっておりますが,この辺にもう少し一つ入れていきたいですね。

【大木政策課長】今のに関連してちょっと参考までに申し上げておきますと,舞台芸術にかかわってということでございますので,後ろに具体的な政策なり,それからワーキングの報告なり出ているのですが,その中で今のとぴったりとはいきませんが,類似の話としましては7ページの一番下の○のところでちょっと全然違いますが,今の枠組みの中で人材育成やその研修所がございますので,そういったところを活用してというようなちょっとシャビィーな事柄なのかもしれませんし,ぴったりくるものはないのですが,もう少し一般的な事柄といたしましては,4ページに戻っていただきまして上のほうの四角の中の一番末尾のところに,「国立の美術館や博物館や劇場について,地域的な配置状況も踏まえ,地方のこれらの文化施設との役割・機能の分担にも十分留意しつつ,今後のあるべき姿を含め,より柔軟かつ効果的な運営を行うことができる仕組みを早急に検討する」ということで,これは独立行政法人などというものをちょっと意識しながら,いろんな見直しが行われている中でどうあるべきかということを包括的にここは入れているつもりでございます。
 ですから,ちょっと今ご紹介したこの2つはいずれも帯に短したすきに長しなんですが,関連する事柄としてはそういうことだというご紹介だけちょっとさせていただきたいと思います。

【堤委員】質問させてください。コンセルヴァトワールというのはどういうものなんでしょうか,どういうふうに使っていらっしゃるのでしょうか。

【青柳委員】その国によっていろいろ違いますが,大体ハイカルチャーの部分でしっかりとその国で保持,保存していくべき,継承していくべきというところで芸術家たちを給料を払いながら保障していくというそういう組織でございますね,コンセルヴァトワールという名前がついていたり違う名前の場合もいろいろございますが,機能的にはそういうものの大体国家組織でございます。

【堤委員】どうもありがとうございました。というのは,例えばフランスの場合はパリ,コンセルヴァトワールとかスペリオールというのがあって,これはいわゆる音楽のほうでざいますが,今度はイギリス,英語でコンセルヴァトリーというと,いわゆる植物の保存とかそういうのをコンセルヴァトリーと。ですからコンセルヴァトリーとコンセルヴァトワールの一致がまず必要じゃないかと思います。そうでないとおのおのの考え方が一つずつちょっと違ってきてしまうのではないかなという気がします。

【青柳委員】国際的にはコンセルヴァトワールというときには,その国の古典芸術等をきちっと国家的に守っていくということで一致しております。英語のコンセルヴァトリーなどというと,例えば別荘のマナーハウスの中の日光浴をするところもそれに当たりますが,が英語でもコンセルヴァトワールといったら,今私が申したような意味でございます。

【堤委員】どうもありがとうございました。

【宮田部会長】勉強になりました。(笑)僕,コンセルヴァトワールという意味を少し考えを変えていましたので,ありがとうございました。

【坪能委員】質問です。人材の育成とそれから子どもと若者を対象にした育成と,ちょっと一緒になっていて散っちゃったかなという印象ですね。私は前から申し上げてきたのは芸術文化の人材育成というのは,もうこれは子どものころから始まっているというようなお話をしたと思います。それで今見ていますと,(3)の子どもや若者の中で,「文化芸術を通じたコミュニケーション教育をはじめ」とあるのですが,このコミュニケーション教育というのは,これは社会教育のほうのことを意味していらっしゃるのかしらというのが質問で,もう一つは,そのあとに「……をはじめ,学校教育における芸術教育を充実」ということで,これ2つあるのか,それとも学校の中でのコミュニケーション教育ですか,またそのコミュニケーション教育というのは具体的にはどういうことをイメージされてお書きになったのか,お聞きしたいのです。

【大木政策課長】 ここでいうコミュニケーション教育というのは,実は文化庁と文部科学省の初等中等教育局の連携政策といたしまして,主として演劇を通じて,一般的に芸術教育といいますと単なる芸術的な素養だけではなくて,感性を磨くとかそういう言葉で語られるのですが,演劇という分野でもっていきますと,今子どもたちに非常に欠けているといわれているコミュニケーションを育てるために,これは教科の縦割りにはちょっとなかなかおさまらないのが演劇でございまして,例えば総合的な学習の時間とかそういうところを使いながら,実際に演劇を職業としてなさっているような専門性の高い方々が学校に行ってという授業が今始まりつつあると。ですから今年度の予算でもって既に一定の経費がとれておりますので,そういうのを念頭におきながらコミュニケーション教育という言葉を使っております。
 それから後者のほうの「学校教育における芸術教育を充実」というのは,まさにこれは音楽でありますとか美術分野でありますとか,いわゆる芸術系の教科と呼ばれているもの全般につきまして充実するというような意味合いでございます。後者のほうがより包括的というか……ちょっと違うのかもしれないですが,そういう意味合いでございます。

【坪能委員】両方とも学校の中での教育と理解してよろしいのですね。

【大木政策課長】そのとおりでございます。

【坪能委員】ありがとうございました。

【西村委員】事務局に一つ確認なんですが,この全体は3年前に出た第2次基本方針のある意味見直しですよね,見直しという性格を持っていると。で,今回「六つの重点戦略」というのが今回出ているわけですが,前回も六つの重点的な取り組むべき施策が出ているわけですね,それで見出しを見る限り同じように議論をしてきて大体同じようなことが書いてあるわけですが,今回,前になくて唯一新しいのは(1)の「支援の在り方の抜本的見直し」というのが新しいわけですね,これはある意味競争原理を働かせてやるというような感じに読めるわけなんですが,つまりこの文章の性格なんですが,前回そういうのが出て,今回そこが新しいということになると,そこが目玉だというふうにマスコミ的にはとられるわけですが,それでいいんですかという質問です。

【大木政策課長】ちょっと事務局にということでございますので,私がお答えするのがいいのかどうかわかりませんが,お答えさせていただきますが,基本的にこれは答申にどういうふうに仕上げていくのかということは多分ご議論がある話で,このままの体裁でいいのか,それから少しそれが変わってくるのかと,これが閣議決定を伴う文化芸術振興基本方策というものにまとまっていくといたしますと,この重点だけではなくてより包括的な文化芸術全体の振興施策の体系というのが,多分後ろのほうにくっついていくようなイメージに最終的にはなってくるのかなという感じは事務局としてはいたしております。実際に前回はそういうつくりになってございます。
 マスコミのことはコメントしにくいのですが,もちろんこの六つの柱は前回のと似たようなものもありますし,ちょっと違ったものもありますが,それを立てていろんな説明資料でもってご説明していく中で,多分六つの柱の骨自体では一般的過ぎて,私が例えば新聞を書く立場だったらちょっとなかなか打ち出しにくいかと,その中で個別の玉が幾つかあるのだろうと思います。その重点支援施策の中に黒いひし形をつけて書いてございます。そういった中から取り出して,これが重点だというような書き方をするのかなというふうに,私は個人的には推察いたします。

【西村委員】たしかに具体的にはそうだと思うんですね,ただいま言われました(1)の「支援の在り方の抜本的見直し」のところを単純に読むとインセンティブを与えて競争させて,それでもって支援を見直すんだというふうにもとれなくもないですね,だからそういうふうなことを我々は余り議論していないと思うんですよね,つまりそれがここでの非常に大きな見直しであるというよりも,それぞれ積み上げてきたものを大事にすべきだというような議論が大きかったのではないかと思うんですよね。ですからそれが六つの重点施策の頭にきて,なおかつ,その最初にインセンティブが働くようにするのだと書かれると,それが全体としてのここでの,8回にわたって議論したニュアンスかなといわれると若干違うような気もするのです。最初にくる柱の一本目かなといわれると,書きようもあるのかもしれませんが……そういう印象だけです。

【小田委員】私は逆にこれまでの8回の,私が出席させていただいた議論の中で来年に向けて,当面具体化すべき,重点的に対応すべき,それを抜本的に見直しをしながら文化省に格上げと,文化予算の充実と,それが私は総意の意見であったというふうに思っておりますので,こういう表現で私は結構かというふうに思います。

【宮田部会長】ありがとうございました。どうぞ。

【西村委員】私は別に文化関係に予算をふやすべきだということに関して,もちろん何も反対はないのですが,何かそこに競争原理を働かせてやるというような議論は,余りここでは議論していないのではないかなという気がちょっとするんですね。ですからそこのところにスポットが当たると,ややニュアンスが違うのではないかなと思ったということで,そこを慎重にうまく理解してもらえば問題はないと思うのですが。

【宮田部会長】ありがとうございます。競争的ってそんなに……。

【玉井文化庁長官】誤解があるのでしょうね。

【宮田部会長】ええ,ちょっとその辺誤解のないようにしながら……どうぞ。

【玉井文化庁長官】多分ここの部分はワーキングでもずっと議論になってきましたが,要するに赤字補てんを前提としている仕組みになってしまっているのではないかと,じゃあ,努力したら逆に助成金が減ってしまうような,そこに問題があるのだろうというところが一番のメインのところだったと思いますので,西村先生のようなちょっと誤解を受けられるのだったら書き方を少し工夫すればいいのかな,何か競争で原理のほうに切り替えていくという趣旨ではたしかなかったと。

【西村委員】私は外の人がこれを読んだときに,そう読まれるかもしれないので気をつけてほしいということなので,ぜひ何かうまい表現にしていただければと。

意見交換: 第1-文化芸術振興の基本理念

【宮田部会長】慎重な意見ありがとうございます。ちょっとそこも練ってみます。
 良いご意見を先生方からいっぱいいただいておりますが,また戻っても結構ですので,次の第1のほうの「文化芸術振興の基本理念」について,お気づきの点も含めてご発言というふうにしましょうか。
 それと先ほど田村先生からもお話いただきましたが,サブタイトル,キャッチフレーズというご意見等もございましたし,第2の1番では「文化芸術立国の実現を目指して」とかって書いてありますが,このことに関しまして私ちょっと総括の意味で,部会長という肩書もあるので少し頑張らせてもらいまして,まとめの文章のようなものを用意させていただきました。それとキャッチフレーズもこれは結構考えるとおもしろいんですね,はまってしまいまして,そんなのも先生方に見ていただきながら……ちょっと紙をお配りいただけますでしょうか。

(宮田部会長よりの資料,配付)

【宮田部会長】少しお時間いただいてお読みいただけたら幸いかと思いますが,これは先ほど高萩先生からのお話がございましたが,ページの前に冊子で,それから西村先生の不安になるようなお気持ちなども結構カバーできるようにそれも含めてちょっと書いてみたのでございます。
 3ページにわたりますが,1,2ページはこんな状態,3ページにはキャッチフレーズも入れてございます。
 六つの重点施策についても私なりの考えというかまとめ,重点施策そのもの,それからワーキングの先生方が心血を注いでくださったものの中身を云々ということは,あえて書いてございません。要約して多くの方にわかりやすく伝えられるというには,こういう感じがいいのかなという意味でちょっと書かせていただいております。

【後藤委員】すみません,キャッチフレーズについてではないのですが,理念のところに私の意見を先ほど紹介していただいたのですが,やはり何か日本の国力のための文化と言いたくなるのは予算をふやしてほしいということで,わからないでもないのですが,別に国のための文化創造をしているわけではないので,やはり文化というのは国民の基本的な権利なんだと,それは文化を創造し,享受する両面においてすべての人の権利であるということが,先進国というか民主主義の国の常識なのだということで,やはりそこから出発していただきたいなという気がするのです。そうじゃないと何かやはり国力のための文化というふうになると,戦前のナチスドイツみたいになってしまってもいけないし……ちょっと言い過ぎかもしれませんが,やはり国民のための国民の権利としての文化のために,文化振興をするんだということで,だからこそ税金で補助金とかを要求する根拠にもなると思いますので,それはぜひ落とさないでいただきたいなというふうに思います。
 それから,Japanese Identityというふうにおっしゃる気持ちもわかるのですが,やはり日本の中にも多様な方々がいらっしゃいまして,今国際的には文化の多様性ということが非常に重視されるようになっていますので,何かこれも国民ひと色みたいなふうにとられないように,うまく文化の多様性ということも打ち出せたらいいかなというふうに感じます。
 それから,先ほどの西村先生のご意見ですが,これはインセンティブというのは,ここで議論していたのは,主に「新しい公共」の議論だったと思うんですよね,「新しい公共」というのは国の予算だけではなくて民間の資金も引き出すということで,より文化に対するサポートを豊かにするということを意味して「新しい公共」ということは,みんなで議論をしてきたと思うのですが,その「新しい公共」になるためには文化団体が寄附を集めるようなインセンティブ,寄附を集めるとそれが赤字を補てんするのではなくて,より自分のところの文化活動が充実するようなインセンティブになるように設計するということでつながっていたと思うのですが,やはりこのインセンティブだけが最初に出てくると,で,そのあとに審査評価体制の不十分さといったというふうに出てくると,やはりこれは何か競争的資金なのかというふうにもとられかねないので,その「新しい公共」と一体としてのインセンティブというか民間資金をより引き出しつつ,引き出したところがより豊かな文化活動ができるようなインセンティブなんだということが,もうちょっと仕組みとしてわかるように書いたほうがいいのかなというふうに思いました。
以上です。

【宮田部会長】ありがとうございます。Japanese Identityというのはあくまでもまだきっかけでございまして,3ページ目にいろいろと書いてございますので,その辺も含めて見ていただきたいと思います。
 それから,今後藤先生がおっしゃったことは全く私もそのとおりでございまして,これを書くのに当たって何かないかなと思ったら,イギリスの哲学者でジョン・スチュアート・ミルが,「国家の価値とは結局はそれを構成する国民の値打ちにほかならない」と書いているんですね,まさしく国家といってもやはりそれは一人一人の人間そのものにあるんだというような話でございます。私はとてもそれはいいことだなと,先ほどもちょっとドイツの話など出ていましたが,私も全くそのとおりだと思っておりますし,国民一人一人がきちっと教育を受けるということがすごく大事なことで,それがあるから文化も芽生えるのではないかなという気がしておりまして,国の理想の実現は根本において「教育の力にまつべきもの」と,これは教育の基本法の中にも書いてございますので,私も教育に携わる一人としてその辺のことはよく気をつけながら前へ進むというときに,ときとして誤解されないような考え方で動いていきたいと,かように思っております。
 ほかに先生の中でぜひどうぞ,いいご意見をいただけたら幸いだと思っております。堤先生,お願いいたします。

【堤委員】僕は先生のおっしゃったことに本当に賛成でございます。やはり一番もとになるのは個人だと思いますし,特に芸術や文化の場合には個人というものが一番もとになりまして,その個人の活動によっていろんな大きなものも一緒にできてくる,そして特に若い人や子どもたちも結局その文化に触れるとか,教育に関しましてもやはりマスとして文化なり舞台芸術なり何でもいいのですが,そういう経験を与えるのではなくて,そういう場に触れさせることによって,その若者なり学生たちや生徒たちに個人として育っていってほしい,そういうことがやはり一番基本ではないかなと私は思いますので,今の先生のご意見に大変うれしく思いました,ありがとうございました。

【宮田部会長】ありがとうございます。ほかに先生方……坪能先生どうぞ。

【坪能委員】まず,いただいた文言はどれもすばらしいと思います。文化庁が今までに文章でもってお出しになったキーワードの中で私が気に入っているのは,「みんなでつくる」というのは非常に気に入っています。それは市民参加であり,みんなで文化を築いて育てていくのではないかということもありまして,例えば「みんなでつくる日本文化力」でもいいです,「国際文化力」でもいいのですが,その後ろのほうはいいのですが,それも今までの経緯からすると,古い言葉ではなくて新しくてよろしいのではないかなと思ったのが私の意見です。
 以上です。

【宮田部会長】ありがとうございます。この件に関しては私の席から見て右側の人たちには,もうぜひご意見,アイデア等を含めていただきたいと思いますが,どうですか,いかがでしょうか。全員お話をいただければと。
 それではちょっと気楽な部分で3ページ目のキャッチフレーズなどはいかがなものでしょうか,これは結構笑っているのですが,実はのっけはアイデンティティの漢字版でして,却下します。(笑)自分で言ってなんですが,一番好きだったのですが……やっぱりこれはだめだな。あと,「凛として文化」,「凛として文化芸術」とか「凛として日本文化」,「文化の力・日本の力」とか,「文化芸術維新」,「文化復興」,「文化・芸術国家へ」,余り国家国家というのは言わないほうがいいですね。
 「文化芸術大国日本へ」,「ときめきの国日本へ」,「求められる日本・発信する文化」,「心にときめきを,文化に煌きを」,「ときめく心,きらめく文化」,「響き合いときめき合う文化の国,日本」,「爆発するときめきへ」とか,このぐらい書いてみたのですが,先生方まだほかにも何かございましたら,ぜひぜひ。
 こういうのを書いてみると,キャッチコピーを書くコピーライターの人たちというのは大したものだなとつくづく思いますね。気楽に読んでいるのですが,例えば「でっかいどう,北海道」とかね,うまいものだなと思っておりますが,何かそんなことでいかがですか。

【玉井文化庁長官】これだけ出される部会長もすごいですよ。

【宮田部会長】いや,一つ出すと結構ぱらぱらと出てきたものですから,増田先生どうぞ。

【増田委員】私もこういうの好きなんですが,今考えたのは,「一人の文化・地域の文化・そして日本の文化」という,「そして」が入るか入らないかはわかりませんが。

【宮田部会長】一人の文化?

【増田委員】一人の文化・地域の文化……。

【宮田部会長】地域の文化……それで。

【増田委員】「そして日本の文化」です。

【宮田部会長】あっ,「そして」……なるほど,ありがとうございます。何かきっかけをこうやってつくると,どんどんいいアイデアが出てくるなと思ったのですが,加藤先生,青柳先生いかがですか。

【青柳委員】これは国のあれと通じるのでそれが何かというので,僕は願わくば日本がまずたくましい,もっと筋肉質の国であってほしい,それからしたたかであってほしい,そして善良であってほしいと,これは北欧の国の考え方と通じるのですが,そういう国家間の下にこの文化がどうあるべきかということで,今その「一人の文化」とか何とかおっしゃった,僕も全く同じで,例えば今ここで思いついたのですが,この文化の大切は,「文化を振興し,充実させることは個々人の,それから地域社会の,そして国の存在目的の一つである」というようなことだと思うんですね,だから今の一人の何々と全く同じあれですが。

【宮田部会長】ありがとうございます。基本は先ほど堤先生からもありましたが,個があり,地域があり,国があり,そして日本があり,アジアがあり,世界があり,地球がありというふうな中にあるところのもので,国境を超えてつくれるものは文化芸術かなという感じがしているものですからね。
 さあ,ほかにございますでしょうか。
 ちょっと時間が過ぎてきましたので……西村先生どうぞ。

【西村委員】どれがというわけではないのですが,そうしたボトムアップが感じられるような言葉はやっぱり大事だと思うんですね,それでちょっと文章のほうに戻るのですが,2ページの基本理念のところ,先ほど後藤先生からありましたが,3番もちょっと気になって,「文化は国家なり」と言っていて,なおかつそれは「鉄は国家なり」の類推から出てきているという,これもやっぱりもう少しボトムアップで最後に国にいくような感じの表現や基本理念に少し変えていただいたほうがいいんじゃないかなという感じがしております。

【宮田部会長】ありがとうございます。そんなことからいくと,僕は実は一番最初に浮かんだのは,「文化が国の杖となる」,これが一番最初に浮かんだ実はキャッチだったのですが,それは文章の中に入れてしまったものですからキャッチにならなくしてしまったのですが。
 里中先生どうぞ。

【里中委員】今のお話なんですが,私は国家とか国とかという言葉を強調する意味もあると思ってここに来たんですよね,なぜならばこれまで国の政策として文化芸術というのは,何だかゆとりがあればそっちにお金を回してあげてもよくってよみたいなことではないですが,文化芸術とは個人も国も経済的にゆとりができて初めて手を出していい分野だみたいな,何となく過去100年間ぐらいそういうものが漂っていたのではないかなと,そんな感じがするんですよ。ですから,「文化は国家なり」とここまで言い切られちゃうと,今度は本気だなというのが伝わってきて,すごく説得力があるなと,私はかえってそう思ったんですね。
 で,「鉄は国家なり」といってこうなったと,悪いことばっかりじゃないんですよ,それで頑張ってくることができた時代もありますが,価値観を変えなければいけないと,国がその視点を変えたんだということが,ありありとわかるという意味では日本とか国家とか,国とかという言葉が出てきたほうが,むしろ目が覚めるような気がいたしました。もちろん,個々の人間が集まっていてこその一人一人の人の幸せとか充実感とかがあってこその文化芸術だと思いますが,それを国が後押しするんだというのが,本気度の強さが感じられましたので,余り削ってしまってもいかがなものかなと感じました。

【宮田部会長】ありがとうございます。どっちも私が粉かけたものですので,やさしさと攻めと両方自分の中にあるなというのをつくづく感じておりますが,ありがとうございます。
 実はキャッチフレーズはやりだすと,二日でも三日でも皆さん楽しくやらざるを得なくなってきますので,この辺で最後決めたいというふうに思うのですが,いかがなものでしょうか。

【吉本委員】これは多分,言葉から受けるニュアンスが皆さん違うのでなかなか決めにくいと思うのですが,私は今里中先生がおっしゃった「文化は国家なり」というのは,非常にストレートでわかりやすいのではないかなと思いました。「国家」という言葉を使うとちょっと抵抗がある部分もあると思うのですが,それも一つなのかなと思ったので,意見を言わせてもらいました。

【田村部会長代理】たしか福沢諭吉は,芸術か文化かは,国の光であるというふうに言っていたと思うのでございます。

【宮田部会長】あっ,いいですね。国の光……いいね。

【田村部会長代理】エディケーションは発育と訳していらした方でございますので,教育ではなかった。たしか国の光というふうにおっしゃっていたような……。

【宮田部会長】文化は国の光である。

【吉本委員】すみません,これは全く個人的な印象なんですが,ちょっと何か宗教っぽい気が私はするんですが。(笑)

【宮田部会長】実は「鉄は国家なり」で数年前に首相官邸で,鉄の輸出よりもアニメの輸出のほうがもう数十倍も多くなっているので,その国家ということをもっと大事にして,文化というのは大事にしなければいかんというのを僕はしゃべった記憶があるのですが,だからこそ文化というものをないがしろにしないで,むしろ産業であるという意識をちゃんと持ってくれということを当時の首相に申した記憶があります。
 実は,「文化は国家なり」といって我が舎で話をしたところ,「学長,そんなに右寄りだったんですか」と言われた記憶もあるので難しいなと思いながら,決して私は右でも左でもございませんので。
 大木さん,どうしようか。(笑)

【大木政策課長】すみません,この時点でもって今までのところいろんなご意見が出た中で,ちょっとご判断を部会長にいただかなければならないかなと思う部分を,私なりに言わせていただいてよろしいでしょうか。

【宮田部会長】はい,どうぞ。

【大木政策課長】2ページ目に関しまして,文化というものを軸に据えて国家なり,国民といった関係をどういうふうに考えていくのかというようなのが問題意識で,後藤先生からは,文化の創造享受を権利として位置づけるべきであるという,こういうことを前提に記述すべきであるということ。それから西村先生もそれとほぼ同じようなご発想だと思いますが,国からまずということではなくて,ボトムアップに通じるような言葉でもって,全体をちょっと整理したほうがいいんじゃなかということ。それに対しまして里中先生と吉本先生からは,国家なりというのもこれは意味があるんじゃないかという,こういう相対立するいろいろご意見がございまして大変悩ましいのですが,また,少しちょっと考えさせていただいて部会長にご判断をいただかなければ最終的には収まりがつかないかなという気がいたしております。
 それからついでで申しわけありませんが,3ページにまいりまして1の「六つの重点戦略」のところはリードが長いということで,田村先生から具体的な文章のご提示がございまして,それを踏まえてセコンド意見が様々な先生からございましたが,これは端的に決め事だと思いますが,短くしたほうがよろしいのか,その前提でもって部会長に整理をしていただくのがよろしいのか,それから原案程度の長さがよろしいのかというようなことを,またご判断をいただかなければならないと思います。
 それから,1の(1)に関しましては,西村先生からインセンティブなり,非常に競争的な環境というものを前面に打ち出した記述が,ここは舞台芸術をかなり念頭に置いたところであるにしても,ちょっと目立つ。それよりも今のやり方を継続的にじっくり落ち着いてというようなニュアンスのほうが少なくともワーキングはともかくとして,この政策部会では強かったのではなかろうかという,こういうお話もございましたし,後藤先生のほうからは具体的にインセンティブというものを,「新しい公共」と結びつけるような形で表現記述すると,大分感じが変わってくるのではなかろうかというお話もございましたので,これもちょっとご判断を最終的に部会長にいただく感じかなと思っております。
 それから,これはどういたしましょうかという感じなのですが,4ページの(2)のところなのですが,その中で田村先生からのご意見で,国立劇場にソフトをと,すなわち人材のきちっと,要は張りつきのある,組織を持ったそういう国立劇場というものを念頭に,それに関連しては青柳先生からは,人材育成のそのシステムとしてコンセルヴァトワールのご紹介もあったりとか,そういうことなのですが,ちょっとザザッとワーキングの議論等を見てみて,そこまで突っ込んだやりとりというのがなくて,かなり国立劇場に特化した各論的な事柄になってまいりまして,しかもある程度息の長い検討課題だろうというような気も個人的にはいたしておりまして,そうしたときに,ここの前のところ結構急いでドタバタと概算要求を念頭におきながらやっている部分でございます。そうしたほうがよろしいのか,それとも答申までの間に少しそうした観点もとっておいて,舞台芸術中心にちょっとご議論を深めていただく,その上でもって最終的な記述を考えていくほうがよろしいのかということのご判断になってくるかなという感じが,ちょっと直感的にいたしました。
 それから青柳先生からのご指摘で5ページの(4)のところのいわゆる文化財にかかわって線というか点である文化財を面的にとらえという,そういうコンセプトが5ページのところの記述では全然見られないのだが,それについて相応の項目の追加なり記述の追加なりということが必要ではなかろうかというような受けとめ方をいたしましたが,議論は一応ワーキングのほうでしておられるようでございますので,その辺どうするのかちょっと部会長と調整させていただきたいと思います。
 同じく青柳先生からのご指摘で,6ページの(6)の国際交流のところで伝統工芸,これもワーキングの中では議論があったというようなことのようでございますので,どういう表現が突っ込めるかどうかということは少しまた検討させていただいて,また部会長とご相談させていただくと。ざっと今まで拝聴していた感じではそんなところかなという気がいたしましたが。

【宮田部会長】ありがとうございます。今大木さんからざっとですが,お話をいただきましたが,それ以外に……加藤先生どうぞ。

【加藤委員】一つ部会長に質問なんですが,質問というかおたずねしたいと。2ページの一番下に「言わば国家的視点からの「アートマネジメント」を行うべきであろう」という,これは部会長が特にこの表現を使いたいとおっしゃっておられて,私は何か全体のトーンがすごく,格調がこれは低いというわけじゃないですが,格調高くきて,いきなりこの用語になっているのが何か唐突感があるような気がしたのですが,いや,そうではなくて「文化は国家なり」と言った以上,同時にボトムアップ的な要素をそれぞれ国民すべてがというところをうまく入れ込むためにこの用語をあえて使っておられる,そんな包括的な意味合いがあるという理解でよろしいでしょうか。

【宮田部会長】加藤先生からいただいた文章も私読ませていただいております。「アートマネジメント」そのものを消した状態で書かさせていただいているのですが,それはそれできちっとできているのですが,実は「アートマネジメント」に関してはほかのところにもちょっと書いてあったりするので,それとかぶるといやだなという気持ちがちょっと私の中にあったものですから,最初は加藤先生よりにふっと一回考えたのですが,またちょっと戻っちゃったという感じがしておりまして,少しトーンダウンしたかなという感じはちょっと私も突っつかれるとそのとおりだなという気持ちもややあるのですが,先ほどの議論の中にもあったように,「国家」と言い切っているときにというふうな先生方のお気持ちも考えるとこのぐらいでまとめたほうがいいのかなと,ちょっと揺れながらだったのですが。

【加藤委員】すみません,ありがとうございました。そういう意味ではこの三段目に「文化は国家なり」というふうにあるところはいいかと思うのですが,全体のキャッチコピーとしてこれが出てくると,逆にやっぱり唐突感があるかなと思います。むしろ先ほどお示しいただいた表の中でいうと,「文化の力・日本の力」ぐらいがわりあいと普通の言葉ではありますが,文化には力があり,まさにそれが日本の力だというぐらいのキャッチコピーがむしろふさわしいのかなという気がしたので,それはあくまで私の意見です。
 もう一つ,今大木さんのほうで幾つか課題を出していただいた中に,(1)の助成の方法について抜本的に見直すんだという部分については,先ほど玉井長官からもご指摘があったとおり,赤字補てん等,それだけに限らないのですが,そうした現場サイドから見ると今まで行われてきた助成制度について非常に大きな危惧があって,これはもう現場は悲鳴をあげているところだと思うんですね,そういう意味で,私もささやかながら文化の助成活動をやっているものですから,そうした人たちの声を聞くとこの部分は,表現は多少お考えをいただいてもいいかもしれないのですが,これこそ実は非常に画期的な具体的重点施策なので,これをぜひ,消えないようにしていただきたいのです。
 これが一番冒頭にきていることに,むしろ私は今回の提案の中で非常に意味があることだというふうに理解をしているので,ここで言っているインセンティブは他と競争しろと言っているわけではなくて,そもそも助成金をもはやもらいたいという気持ちすら起きないぐらい,この助成金の制度はいろいろと制度設計上不備があるということを言っているわけで,という内容だと思うのです。だからそこのところをインセンティブという言葉を使うのがいいかどうかは別にして,この精神というかこの重点施策が曖昧にならないように,ぜひしていただきたいなというふうに思います。

【宮田部会長】ありがとうございました。

【吉本委員】今,加藤委員からこのキャッチフレーズのことについて「文化の力・日本の力」ということで,私はさっきは「文化は国家なり」という案がいいんじゃないかと申し上げたのですが,その「文化の力・日本の力」が私としては何か2番目にいいかなと思っていましたので,発言させてもらいました。
 それからもう一つ,この重点施策の(1)番のところはまさしく加藤委員のおっしゃったとおりだと私も思います。それから,先ほど西村先生からこの第2次基本方針と六つの柱は全然変わらないじゃないかというご意見がありました。この第2次基本方針のときは田村さんと私は一応メンバーだったもので,ちょっと説明になってしまうかもしれないのですが,一つにはやっぱりこれできて3年しかたっていないので,重点施策はそんなころころ変わるわけがないというか,むしろ変わってはまずいんじゃないかという気が,まずいたします。
 それからこの2次方針をつくったときの文章を,今回のと読み比べていただくとよくわかるのですが,この2次方針の文章の最後は「重要である」とか,「必要である」とかというそういう書き方なんですね,でも今回は例えば(1)の四角の中を見ますと,「開始する」とか「導入する」とか,もうかなり具体的にこれをやるんだということが記述されていまして,たとえ第2次基本方針と柱立てが同じだったとしても非常に具体的な内容が盛り込まれていると思うんですね,そこに第2次基本方針と今回の経過報告でまとめたものでは,かなり本気度の違いというのが現れていると思いますので,その辺はぜひ,今後政策を推進するときに文化庁さんとか我々も強くアピールをしていくべきところではないかと思います。

【宮田部会長】ありがとうございます。後藤先生どうぞ。

【後藤委員】すみません,先ほどの繰り返しになるのですが,ヨーロッパの国々が戦後文化政策を本格的に確立し,文化予算の位置づけを一番最後ではなくて,かなり優先順位を上げてきたということの背景には,やはり福祉国家として文化の権利をすべての国民に認めていくというか,そこを保障していくということが考え方の背景としてはあったかと思います。例えばスウェーデンが1970年に行った国会決議を見ますと,福祉国家であるスウェーデンは安全とかそれから社会保障だけではなくて,すべての国民に文化的な環境を提供するんだということを高らかにうたって,それで文化予算をふやしていったというふうなことがありますので,やはり一人一人に権利を保障するというのは弱い言い方のように聞こえますが,実は一番強いし,一番お金がかかることなんですね。
 だから私の気持ちとしては,文化予算の優先順位を上げるべきだし,文化がすべての政策の根幹になる,それは環境政策と並ぶようなベーシックな政策として位置づけられるべきだし,文化省になるべきだというふうに全く思っていることは一緒なんですが,その根拠としてやはり国民の文化的な権利に基づいてお金を要求していくんだというほうが根拠が明確ですし,そして言葉は弱いようですが,実は一番大きいことを要求しているというふうに思います。「文化は国家なり」というのは,たしかに言葉のインパクトとしては強いかもしれないが,じゃあ,その中身は一体何なのかというふうに例えばパブリックコメントにかけたときに,非常に誤解される方もいらっしゃるのではないかなということを,ちょっと危惧いたします。

【宮田部会長】ありがとうございます,いろんなお話をいただきました。
 私,一つだけ。ここは今のようなお話も全部考えると,「ときめきの国日本へ」と,明日に向かっていくというのが一番自分は好きなんですが,そうすると今の後藤先生のお話とか,それぞれの先生方のお話をすべて包括できるかなとちょっと思っているのですが,ご参考までに。

【青柳委員】今の皆さんと大体同じなんですが,今この日本,あるいは日本の社会というのが定量的な物差しから定質的な物差しに移行していると思うんですね,ですから今までずっとGDPの拡大とか何とかで量的な拡大だけを目指してきたのが,もうインドや中国,ブラジルなんかと競争してもそれを追い越すことはなかなか難しくなってきた。しかし一方で,非常に等質で伝統的な文化を持っていてすばらしいものがたくさんあるところで,質を高めていくポテンシャルは世界を見ても日本以上にあるところはないと思うんですね。だから質の進化もしくは質の拡充,充実ということがこれからの国家目標になっていくと思うのですが,そうすると,個々の人間が高齢化になるのも,個は60年,80年と質の拡大になるんですよね,そういうふうに質から見れば今は高齢化社会であり少子化であるというのも,みんなその質を充実あるいは拡充には益しているんですね,ですから量から質へというようなことなど先生のすばらしい五感で考えていただければいいなと思うのですが。

【宮田部会長】いきなりいいなあと思って聞いていたら,最後にドカッとふられましたが,(笑)ありがとうございます。
 どうでしょうか,すばらしいご意見をいっぱいいただいたのですが,この辺で……失礼しました,佐々木先生どうぞ。

【佐々木委員】一つだけ質問なんですが,例えば今の日本の文教予算ですね,文教予算というのは,いわゆるその年度の国家予算の大体どれぐらいというふうなことの暗黙の了解があるのでしょうか。(笑)

【玉井文化庁長官】暗黙の了解があるわけではないので,予算というのは本当に必要なものは何かということを一つ一つ積み上げて,結果として幾らになるというのが予算の基本的には仕組みでありますので,そうすると,みんなやっぱりそれだけに必要なものが,それも洗い直ししながら結果としてみると,これぐらいになると。ただ,そのときにどうしてもでこぼこがありまして,それは最後枠が決まっているものですから,どういう優先順位になるかと,これはもうまさしく政治的な判断の世界になるということであります。

【佐々木委員】私も最初にこの会で発言した記憶があるのですが,やはり日本の文化行政なり文化国家としての安定性というのは,やはり国家予算の安定性ということに当然結びついていくわけで,やはり年間の予算の……私は前にも言ったのですが1%ぐらいは,やっぱり文化予算に使うべきだというふうな一つの方向性というものを何とかして出せないのかなという,それは国家予算全体が大きくなろうが,小さくなろうが,やはりその1%ぐらいは国として確保するんだというところで,初めて国が文化というものをきちんと考えてますよという姿勢が示せるのではないかなというふうに思っていまして,そういうふうな方向を何か検討できないのかなという,そういう気がするのです。

【宮田部会長】ありがとうございます。1%フォーアーツのお話でございました。先ほど国家という言葉と個人という言葉が出てくると,国家が出ると個人は潰れるようないろんな施策もあるかもしれませんが,やっぱり文化ということにおいては国家ということを言ったとしても,それは決して潰れることではなくて,個の集積が大きな国家であるということを再確認したいと私は思っております。
 ありがとうございました。今年度の先生方には本当に感謝申し上げます。とてもいい議論が構築されたのではないかなと思っております。
 どうでしょうか,いろいろありましたが,7日の文化審議会に答申というか答えを出さなければいけないので,今後はちょっと事務局と先生方のお話は全部メモってございますので,私ども協議しながら頑張っていきたいと思いますが,ご一任いただけたら幸いかと思うのですが,よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【宮田部会長】ありがとうございます。到りませんが,頑張ってみたいと思います。
 きょうは何か世の中が騒がしくなっておりますが,何か向こうのほうのマスコミの方も午前中にお会いした方もおりますが,実は我が舎で,大学と地域連携というスカイツリーをターゲットにしながら台東区と墨田区と東京芸大とで大きな社会連携をやっていこうと,3年計画でというのでちょっと記者会見をさせていただきまして,世の中どう変化しようが文化に揺るぎないものでありたいという話を私させていただいたのですが,この会も全くそのとおりでいきたいなというふうに思っております。
 それでは,いかがいたしましょうか,玉井文化庁長官,恐縮でございますが,ごあいさつをお願いしたいと思います。

【玉井文化庁長官】ありがとうございました。2月に諮問をさせていただいて以来,本当に密度の濃い,しかも本当に皆様方それぞれに忙しい中をこうやって時間を割いていただいて,審議経過の報告というところまでをお願いを申し上げました。やはりもう少し時間をかけてじっくりとやらなければならない面はまだまだたくさんあると思っております。多分きょうの議論も,さらに今後の議論につなげて深めていかなくてはならない議論もたくさんあったと思っております。同時にもう目の前にそろそろ概算要求の時期がきているものでございますから,そういうことで大変申しわけなかったのですが,こうした急ぐ議論をお願いしてしまいました。
 にもかかわらず,こういうご議論をいただいたことは本当にありがたく思っております。あとは部会長のところでもう少し整理をしていただいて,来週の総会への報告という形になってこようかと思いますが,そのあと私どもはこれに対して各方面からご意見をうかがわねばならない,それから本当に概算要求の作業に入ってまいります。その上で,また議論を再開していただいて,多分夏以降の議論になると思いますが,できれば年度内に最終的な答申という形にして,それが第三次基本方針に反映されていくと,こういう流れを考えているわけでございますが,ただこの概算要求でもかなりのものはぜひ,これだけのご議論をいただきましたから,精いっぱいの努力はさせていただきたいと,かように思っております。本当にありがとうございました。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 それでは,最後に事務局から今後の予定並びに確認いただきたいことをよろしくお願いいたします。
 それによって,あとは第8回の文化政策部会を閉会としたいと,かように思っておりますので,よろしくどうぞ。

 

(2)その他

【滝波企画調整官】ありがとうございました。ただいま部会長からもお話ございましたとおり,部会としてはいったんここで区切りとさせていただきまして,来週の7日の日に文化審議会の総会が予定をされております。そこの場におきまして部会長から,この部会としての報告をいただくというふうな予定を考えてございます。その後は一般向けの意見募集ということをさせていただきまして,先ほど長官からもお話がございましたとおり,概算要求の作業に私ども事務方のほうでは当たらせていただきまして,その上で夏以降に議論の再開をしていきたいというふうに考えております。
 以上でございます。

【宮田部会長】本当に先生方,何度も申し上げますが,ご議論をいただきまして,お時間をいただきましてありがとうございました。これにて文化審議会第8期文化政策部会,お開きとさせていただきたいと思います。感謝申し上げます。ありがとうございました。

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