文化審議会第8期文化政策部会(第12回)議事録

1.出 席 者

(委員)

宮田部会長,田村部会長代理,青柳委員,小田委員,加藤委員,後藤委員, 佐々木委員,里中委員,高萩委員,坪能委員,富山委員,浜野委員,増田委員,山内委員,吉本委員,福原文部科学相参与,平田内閣官房参与

(事務局)

近藤文化庁長官,金森文部科学審議官,吉田文化庁次長,芝田長官官房審議官,小松文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,大木政策課長,滝波企画調整官,他

2.議事内容

【滝波企画調整官】 開会に先立ちまして,資料の確認のほうからさせていただきたいと存じます。各委員の机の上には資料を配付をしてございます。議事次第がございまして,その下に資料1として答申・第3次基本方針の構成(案)という資料がございます。それから,資料2としまして基本的視点の変遷と書いたA3判をとじたペーパーがあろうかと思います。それから,資料3としまして重点戦略に関する整理一覧表という資料がございます。その後ろには資料3別紙ということで,重点戦略に関する整理一覧表-検討の進め方-というふうに書いたペーパーがございます。それから,資料4としまして配慮事項等についてというペーパーでございます。その後ろには,それの別紙[1],別紙[2],別紙[3]というものがそれぞれついておろうかというふうに思います。それから,最後,資料5としまして当面の日程及び進め方というふうな資料がございます。その後ろには参考資料1番,この会議の名簿,それから,参考資料2番,意見募集及び関係団体ヒアリングにおける主な意見の概要のペーパーがございます。
 それから,本日は福原文部科学省参与のほうより,本日付の読売新聞のほうの新聞記事の参考配付がございましたので,お手元にお配りしてございますので,よろしくお願いします。
 資料に過不足等がございましたらば,お申しつけをいただけたらなというふうに思いますけれども,特にないようでしたらば,部会長のほうで議事の進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【宮田部会長】 どうもすみませんでした。ちょっと人身事故とかがございましたので遅くなりました。
 さて,ただいまより12回文化政策部会を開催いたします。ご多忙のところ,ありがとうございました。酒井,鈴木,堤,西村,山脇の5名が本日,ご欠席でございますが,議事に入らせていただきたいと思います。
 前回の9月29日,答申に向けた論点別の審議に入っております。本日は前回に続きまして,重点戦略の在り方,政策目的,戦略目標の在り方ということでございます。その辺を重点的にご審議いただきたいと,かように考えております。よろしくお願い申し上げます。ちょっときょうは長うございます。大変申しわけございませんが,区切らせていただいた中で,中身の濃い先生方のご意見をいただいて,答申に向けていきたいと,かように思っております。
 議題1でございますが,基本的な視野という部分においては約20分,議題2,審議で重点戦略の在り方等々につきましては90分ぐらいと,そして,議題3,配慮事項等について30分というぐらいの感じで約2時間,長丁場でございます,恐縮でございますが,ご協力ください。
 それでは,議題1に先立って,基本的な部分において事務局から全体構成,作業工程とあわせて意見交換のしやすいようにご説明をちょっとお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【滝波企画調整官】 それでは,議題1番,基本的視点の変遷等についてのご説明をさせていただきます。
 資料でございますが,資料1番,答申・第3次基本方針の構成(案)というふうな資料でございます。この資料は前回にも同じものをお配りしておりますけれども,改めてお配りをしております。
 左側に6月に出しました審議経過報告の柱立て,右側には第2次基本方針の柱立て,そして,真ん中にはこの部会においてご審議いただいている審議の内容の答申,最終形としての答申・第3次基本方針(案)の柱立ての案を提示をしてあるものでございます。このうち,本日,この部会の中でご審議いただきたいというふうに思っておりますのが,赤で囲いました第2,文化芸術振興のための重点施策の部分,その下には2ポツとして特に配慮すべき事項等,それから,第3のその下に点線書きのところで別添と書いていますが,ここでアンダーラインを引いております重点戦略の戦略目標,評価指標・基準(例)というようなところ,この部分について本日はご審議をいただきたいというふうに思っておるところでございます。
 なお,それの2ページ目のところをお開きをいただきますと,今後のこの部会においてご審議を賜りたいと思っております内容の作業工程というのを少しイメージ的に書いてみたものを用意してみました。本日は10月20日,第12回の部会でございますが,基本的理念,重点戦略,政策目的・戦略目標(別添)の部分,それから,配慮事項等の部分,このあたりの部分を中心に本日はご議論いただきたいというふうに思っております。次回,第13回の折には改めて重点戦略部分,配慮事項の部分,それから,基本的施策の部分といったところのご審議を賜りまして,それ以降は意見の整理という形で,答申に向けた審議をしていくというふうな流れを事務局としては想定をしておりますので,その点を念頭に置きながら,ご審議を賜れればありがたいなというふうに思っております。
 それから,資料2番,基本的視点の変遷ということで資料の準備をしたものを用意しました。この資料につきましては,まだお見えでありませんけれども,今,ご到着されましたけれども,前回の部会の中で後藤委員からのほうからも少しご指摘のあった点を踏まえまして,ご用意したものでございます。このペーパーの2ページ以下につきましては,前回の部会の中でも配付したものでございますけれども,その前段として1ページ目の資料を今回,改めて新たにご用意をしたというものでございます。ここでは,これまでの第1次基本方針,第2次基本方針において,どのような基本的視点というものを提示をしておったかということを少し振り返ろうということで,各基本方針の記述を抜粋したものを用意をしたものでございます。
 第1次方針は,平成14年12月に策定をされておりますけれども,そこでの基本理念というふうな部分でございますけれども,この部分はアンダーラインを引いていますけれども,文化芸術振興基本法第2条に掲げられた8つの基本理念にのっとって施策を推進していくということが書かれておりまして,そこの第2条に掲げられている8つの基本理念をそのまま,文字に書き起こしていったというような内容になっておるものでございます。
 それから,平成19年2月に策定をされました第2次基本方針につきましても,基本的な考え方は同じでございまして,基本法第2条に掲げられた8つの基本理念にのっとって施策を推進していくということについては同じでございますけれども,その際に,第1次基本方針の策定後のさまざまな諸情勢の変化といったことを少し振り返っておりますことと,それから,基本的視点として,ここの記載の1つには文化力の時代を拓く,2つ目には文化力で地域から日本を元気にする,そして,3つ目には国,地方,民間が相互に連携して文化芸術を支える,こういったような視点を提示をして,少し1次方針よりも踏み込んだ内容で記述をしておるというふうなことかというふうに存じております。
 なお,この間に文化を取り巻くさまざまな出来事であったり,あるいは施策が展開されてきております。そのことについて一番右側の点線の右側の部分に書いております。印が2種類ございますけれども,丸印がいわゆる事業というか,施策を書いた部分,それから,ひし形につきましては,それ以外のさまざまな制度のスタートであったり,あるいはさまざまな施設が開館をしたりといったような事柄を記載をしたもので,少し分けて書いたものでございます。このような事柄がこの間に行われてきたということかというふうに思っております。
 なお,ご参考までに平成14年12月に1次方針が策定をされておりますが,このときの文化庁長官は河合元長官でございます。平成19年2月のときには,河合長官は確かご病気で倒れられたかと思いますので,その後,長官がかわっておりますけれども,この議論の端緒になっていたのは河合長官時代に諮問があって,審議をしてきたというふうな経過があったというふうに存じております。
 議題1の関連の説明につきましては以上でございます。よろしくお願いをいたします。

【宮田部会長】 ただいまご説明がございましたが,平成14年12月からのものと19年2月からのものというのがここに書いてございますが,同時に先ほどのご説明にありました第3次基本方針の構成等々について,先生方のご意見等がございましたら,どうぞ。
 特にこれに関しては,ここにある赤でくくってありますここを中心にしていきながら,左右に振り分けてあります矢印を総合しながらごらんになると,私どもがここまで進めてきた政策に対しての考え方等が,割にグラフィック的によく見えるのかなという感じがしております。
 それでは,また,ご意見等々あるいは何かございましたら前後しても全く構いませんので,少し一歩前へ進めさせていただいてよろしいでしょうか。
 では,ただいまの全体構想も念頭に入れていきながら,本日の審議を進めていきたいと思っております。その前にちょっと私は遅く来たものでばたばたしてすみませんでした。これはおめでとうございますと申し上げて……。

【福原文部科学省参与】 どうもありがとうございます。

【宮田部会長】 大変,拍手を。
 いいですね,日本文化会館。懐かしい。私どももここで随分,いろんなことをさせていただきました。やはり国際的なこういうことというのはとても大事なことだと思います。いわゆる文化力が動くということですね。ありがとうございます。こういうご提案とか,こういう皆様,いろんなことが先生方はあると思います。こういうときにどんどんお持ちいただいたら,年頭にもご本などがございましたらというふうなことを私は申し上げましたけれども,ちょっとここへきて少し少なくなったなと思っていたときにいいのがありまして,ありがとうございました。
 さて,それでは,議題に入りましょう。重点戦略の在り方,政策目的や戦略目標の在り方について,前回より審議に入っておりますけれども,いかがでしょうか。この前のときに吉本委員が大変すばらしい評価のことについてご発言いただきましてありがとうございました。お二人,同時に福原先生がリーダーをしております検討会のほうにもご出席させていただいて……。

【福原文部科学省参与】 国立文化施設。

【宮田部会長】 そうでございますね。そこでも非常に両者が両輪のようになって発信していきたいと,かように思っておりますので,その辺も含めて戦略目的,政策目標等々について審議したいと思っております。重点戦略に関しての整理の一覧表がございますので,6つございますが,その辺を時間を区切りながらご意見をいただきながらということでやっていきたいと思いますが,いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。それでは,事務局からその件についてちょっとお話しください。それで進めていきたいと思います。

【滝波企画調整官】 それでは,資料3でございます。これをお手元に置いていただきたいんですけれども,この資料3につきまして少しご説明を申し上げたいと思います。
 この資料につきましては,本日の部会に先立ちまして,各委員のほうにもこれの一つ前のバージョンでごらんに入れて,ご意見も少しいただきながらつくったものでございます。今,部会長からもお話がありましたように,前回の部会の中で,吉本委員からも評価の体系ですとか,評価指標に関してのご発表も賜りましたので,そこでのご意見というものを参考にさせていただきながら,こういった形で重点戦略に関する整理一覧表という形で,資料のまとめをしてみたものでございます。
 これは横表になっていますけれども,その後ろに別紙と書きました検討の進め方というふうな資料もございますので,これもあわせてごらんをいただけたらというふうに思いますけれども,検討の進め方の別紙のところに少し書きましたように,1番の趣旨のところですけれども,答申に向けた論点別審議の中で前回,9月29日から今回,それから,次回にかけまして,重点戦略の在り方,政策目的・戦略目標の在り方について,重点的なご審議をいただきたいというふうに思っております。
 そこで,時間が限られておりますので,効率的,効果的に進めたいということを考えまして,前回の吉本委員のご発表も踏まえながら,そして,かつ答申の最終形といったことも念頭に置きながら,6つの重点戦略というものが既に審議経過報告の中で打ち出しをされておりますので,6つの重点戦略ごとに政策目的・戦略目標,そして重点施策,そして具体的施策あるいは評価指標・基準といったものを体系化をしまして,一覧表の形に整理したものが資料3でございます。
 ここで,前回の吉本委員からのご発表の中にもございましたように,この意味するところを少し書き込んだのが2の検討の進め方のところでございます。
 1つ目に政策目的・戦略目標につきましてですが,戦略目標というのは使命を達成するために必要とされる優先度の高い目標であるということでございましたので,ここでは文化芸術振興基本法第1条及び第2条に掲げられている目的,基本理念といったことを念頭に置きながら,この事柄を書いていこうというふうに思っておりまして,資料3の横長の表の中でいいましたら,重点戦略1でいえば,最初のところに丸い箱で書いた部分に相当するものが,ここの政策目的・戦略目標に相当する部分というふうに思っております。
 それから,(2)の重点施策でございますけれども,審議経過報告の中では24本の重点施策が掲げられました。それを基本的にはベースにすることと考えております。そのうちでやや夏の概算要求につなげるということをかなり意識した議論をしてまいりましたので,いささか近視眼的な表現ぶりとなっている部分もあったかと思いますので,その部分につきましては,ここの横長表の中でチェック印を付した部分ですけれども,その部分につきまして少し記述の見直しをさせていただきまして,おおむね5年間を見通した答申・第3次基本方針に記載すべき案文としては,こんな文体ではないかというものを一番左の答申・第3次基本方針(案)というふうな列のところに記載をしてみたものでございます。あと,そのほかの観点から何らか見直しをすべきではないのかなというふうに思われる点については,アスタリスクの印をつけまして同様に記載をしたものにしてございます。
 なお,空欄の部分も何カ所かございますけれども,これについては審議経過報告の際の記述から,今は直ちに見直す必要はないだろうというふうに思いましたので,そこについては空欄のままにしてあります。
 それから,(3)具体的施策(例)に関してですけれども,これについては各重点施策に対応する具体的施策を例として記載をしております。これについては9月8日から審議経過報告明けの議論を再開していますけれども,9月8日に概算要求等への反映状況ということで少し議論いたしましたけれども,その際に掲載したような事柄をベースに記載をしてございます。ただし,これはあくまで例示であるということでございます。
 前回の部会の審議の中でもやはり議論が出ておりましたけれども,評価体系を余り精緻にし過ぎてしまうと,マイナス面があるんじゃないかというふうな指摘もあったというふうに思いますので,ここでの具体的施策という部分,それから,後に述べます評価指標・基準につきましては,例示にとどめようというふうに思っております。必要に応じて内容を更新をしていく,年度ごとに例えば更新していくというふうなことで,よろしいのではないのかというふうに思っている部分でございます。
 それから,(4)評価指標・基準(例)という部分,横長表の一番右側の列ですけれども,ここの部分につきましては,重点施策の進捗状況を点検する際の評価指標あるいは評価の基準といったものを例示をしたものにしてございます。その際に定量的な指標と定性的な指標があろうかと思いますので,そのことを念頭に,なるべく有効な指標が設定をできるといいなというふうに思っておりますので,ここではまだ例示ですし,まだ,十分,こなれていない記述ぶりのところもあろうかと思いますので,その点についてのご指摘をぜひいただきたいというふうに思っております。
 それで,横長表ですけれども,重点戦略ごとに記していったものでございまして,1ページ目が重点戦略1番,文化芸術に対する効果的な支援,ここの表題も少し実は変えておりますけれども,この部分についてまとめたものにしてございます。先ほど申し上げたような考え方で,一番左側の列に答申・第3次基本方針の見直し後の案は,こんなイメージではないのかというものを書いたものにしてあります。2列目には6月の審議経過報告をそのまま書いております。3列目に具体的施策(例)を書いておりまして,一番右側の4つ目の列には評価指標・基準(例)ということで,事務局のほうで考えた案を幾つか記載をしております。事前に各委員のほうにも,お示ししたものとほとんど変わっておりませんので,ご意見がございましたら,ぜひ,お寄せいただきたいなというふうに思っております。
 2ページ目は重点戦略2番,文化芸術を創造し,支える人材の充実という部分でございます。ここについては,おおむね審議経過報告のときの記述から変える必要はほとんどないのではないかというふうに思っておりますけれども,上から4つ目のひし形については,少し案文について重点戦略5,6と同様に,前文の部分で記載していくということでよろしいのではないのかというふうに,事務局としては考えておるものでございます。
 それから,下段は重点戦略3,子どもや若者を対象とした文化芸術振興策の充実という部分を記載してございます。ここについても夏の審議経過報告のときの記述ぶりから,基本的には変える必要はないのかなというふうに思っております。なお,重点戦略3については,夏のときもそうでしたけれども,ひし形が2つしかないということについてどのように考えていくかということも,あわせてご検討いただけたらありがたいなというふうに思っております。
 それから,3ページ目が重点戦略4,文化芸術の次世代への確実な継承という部分でございます。ここの部分につきましては,夏の審議経過報告の際の記述ぶりが少し大ざっぱだったのかなというふうに思いましたので,もう少し中身を込めた形で書き直しをしてみたものにしてございます。1つ目,2つ目のひし形がそのような形で書きかえをしてみたものにしてございます。3つ目のひし形については,やや近視眼的な部分があった部分について見直しを図っております。
 それから,下段の重点戦略5,文化芸術の観光振興,地域振興等への活用についても同じでございますけれども,ここでは夏の審議経過報告の際には1つ目と2つ目のひし形を分けて書いておりましたけれども,内容的に似通っているかなというふうに思いましたので,ここの部分については今回の提示させていただいている案では,一つに一本化してみようかなという形に直しております。それから,3つ目,4つ目のひし形については,それぞれ修正を施しております。
 それから最後のページ,重点戦略6番,文化発信・国際文化交流の充実でございますけれども,ここについては1つ目,2つ目,3つ目のひし形は,基本的にはそのままでよろしいのではないかということ,4つ目のひし形については少し文章がざっくりしていましたので,もう少し中身を込めた形でしてございます。5つ目,最後のひし形については,やや個別の施策にまで踏み込んだような書きぶりになっていたのかなというふうに思いましたので,少し今回,提示させていただいている案の中では,表現を5年間を見通した内容にしますとともに,具体的な施策に当たる部分については,3列目のところに中身を記載していくというふうな形で整理をしたものにしてございます。
 一応,資料3はこのような形で今回,お示しをさせていただきましたけれども,何回も申し上げますけれども,最終的な答申になるのは,一番左側のひし形の提言事項に該当する部分が答申の本体になってくる部分,そして,2列目については夏のときの記述をそのまま書いたものですので,最終の答申のときにはこれはなくなるということ,それから,3列目,4列目については,先ほどの資料1にございましたけれども,答申本体に附属する別添の形で,重点戦略の戦略目標・評価基準等の別添を表の形式で記載する際の記載内容に相当してくるというふうな整理で考えておりますのでお願いします。
 以上,資料3についての説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】 ありがとうございました。
 資料3の1ページ目の下から2番目,美術品の国家補償制度を速やかに導入という線においては,数日前ですかね,新聞にも出されておりましたけれども,大変な先生方のご努力によりまして議会決定された,もう決定に近い……。

【滝波企画調整官】 新聞報道もございましたとおり,今,臨時国会が開催をされておりますけれども,そこの中に政府として提案できる方向で今,準備を進めております。

【宮田部会長】 ありがたいことですよね,これは。美術館等々をお持ちの方,それから,新聞社の方々等も大変ありがたいなというようなことでございました。このような感じで確実に積み上げていくというふうなのは,まさしく重点戦略であるというふうに思いますが,今の資料3を含めまして,いわゆる左側にあるひし形の中から構築していきたいというふうに思っておりますが,いかがでしょうか,先生方。ここはこうではないだろうというふうなことがございましたら,ぜひぜひ,今,お伝えいただけたらと思います。どうぞ,お願いいたします。

【後藤委員】 重点戦略というふうにはならないと思うんですけれども,最初のころ,随分,文化省ということを議論して,ほとんどの委員の皆さんで文化省というのは一致したと思うんですね,意見が。それはどこに盛り込むんでしょうかと。何か戦略とも言えないんですけれども,でも,やっぱり大事なことですから,何らかの形でちゃんと文章に残したほうがいいなというのがまず1点です。
 それから,基本的視点の変遷をまとめていただいて,何かすごく丁寧にまとめていただいて,お仕事を何かふやしてしまったようで申しわけなかったし,ありがとうございましたと思ったんですけれども,第2次のときには随分,文化力の時代を拓くというふうなことで,結構,この文化力というのを新しいキーワードにして,全体の記述がなされているような印象も受けるんですけれども,今回は何がそういうふうな新しいキーワードというか,そういうのになるんだろうかと。やっぱり,満遍なく重点施策をまとめるというよりは,何らかの今の時代に合ったコンセプトを打ち出したほうがいいのではないかなというのが2点目です。
 それから,もう一つ,私は暮らしの文化のワーキングに入っていたんですね。そうすると,暮らしの文化のところはほとんど今までの施策にないことを全部,拾おうみたいな感じでやっていたので,こういう形の重点戦略にまとめられると,何か余り入ってこないような感じがしていて,実態調査に着手する,で終わってしまっているんですが,例えばパーセント・フォー・アートということで技術分野になりますけれども,パブリックコメントとしても結構たくさんパーセント・フォー・アートについては意見も出ていたと思いますので,何かアーティスト・イン・レジデンスだけじゃなくて,パーセント・フォー・アートなども盛り込んでいただけるといいのかなということと,もうちょっと暮らしの文化のところで出されたようなことを具体的に書けないものかというふうにちょっと思いました。調査だけだとちょっと弱い感じがして,ワーキングをやりました立場からは何かその辺を。
 以上,3点です。

【宮田部会長】 ありがとうございました。
 そうなんですよね。文化力という言葉を使ったときに,青柳先生が名詞に何とかかんとかという話がどんと出たときに,それから急に何かしょぼんとしちゃう感じがちょっとあったんですが,それはそれとして,何かそういうちょっと旗印みたいなものというのが必要かなという,一個の言葉,提言みたいなスローガンのような感じというのは,後藤先生,ありがとうございました。ちょっと欲しいなと思います。それと同時にパーセント・フォー・アート,以前にありました,途中で消えちゃいました,大変うまくいきそうで違った方向に動いちゃったというのは,あれは指導力になさだなと思って,とてもいい法案だと私は思っていたんですが,もし可能ならば暮らしの文化のほうでそれをご審議いただけたら,私も入れていただけたらありがたいなという感じがしております。
 今,後藤先生からのお話がありましたように,どうですか,先生方もいろんなそれぞれの5つの柱のパートの中からご提言あるいは力説なさったようなところが,ここはというふうなところがございましたらどうぞ。いかがでしょうか。佐々木先生,どうぞ。

【佐々木委員】 国家補償制度の件なんですけれども,この段階ではやはり展覧会における国家補償制度ということに限定をされているわけですね。

【宮田部会長】 新聞紙上ではそこまでは読み取れなかったけれども,どうなんですか。

【佐々木委員】 といいますのは,実際,なかなかこれは大変な問題で,国家補償制度を広く解釈しますと,例えば美術館,博物館などで現実にいろんなものをお預かりしていると。そういったものに対して全然保険がかかっていないわけですよね。従来,国立美術館,博物館時代は,いわば自動的に国家補償がカバーしているような,そういう認識ですべて進んでおりますけれども,これが独立行政法人になってしまいますと,それが明らかに切り離されてしまっていると。そうすると補償の根拠が全然ないわけなんですよね。
 ですから,非常にこれは考えてみれば物すごく怖いことで,私どもは重要なもの,非常にたくさんの重要文化財も寄託を受けておりますけれども,そういうものに対して,一々,これは国家補償はカバーされていませんよなんて言えませんので,そのままきちんとお預かりをしておりますけれども,実際はこういう国家補償制度という場合には,もっと広くもし解釈できるならば展覧会の際だけではなくて,やはりそういう国立施設がお預かりをしているものに対してもカバーするという,そういうことがやはり理想的というか,そうあってほしいというふうに思うわけですね。
 もちろん,事故を起こすということは絶対にないと我々は自信を持っているわけなんですけれども,そういう前提で個人の所有者は安心をして寄託をされる。しかし,これが国家補償制度そのものでカバーされているんだということが明示されますと,非常に安心して寄託を受けることもできるし,ますます寄託を受けたものを活用していくことができるという,そういう善循環になっていきますので,やはり国家補償制度というものの意味をどこに限定していく,本当に展覧会だけにするのか,あるいはそういう国の施設にかかわるものに対しては,そういう国家補償制度がカバーしていくという制度にしていくのか,その辺はちょっとお考えいただきたいと。非常に重要な問題であるだろうなというふうに思っております。その点が一つ。
 それから,もう一つは寄附税制の拡充,今後,寄附税制がうまく展開しますとさまざまな大きな動きが出てくるわけなんですが,具体的施策というところの上の丸が寄附税制の拡充,それから,下側のほうに文化芸術資源の活用を促進する税制等の検討と,この税制等の検討というふうに漠然と表現されているわけですけれども,実際,我々の立場からいいますと,つまり,博物館,美術館の立場からいいますと,これは実際には相続税に直接かかわってくるという問題なわけです。
 つまり,国宝・重要文化財を例えば美術館,博物館にお預けいただくと。お預けいただくときに,お預けいただく限りは相続税というものは免除は難しいかもしれませんけれども,猶予するとか,そういうような制度があれば,随分,寄託というものも制度が充実していくだろうというふうに思うわけですね。ですから,この税制等の中に,そういう具体的な相続税のようなものを含めたものとして理解をしておけばいいのかどうなのかという,その辺もちょっと議論をしておいていただきたいなというふうに思うわけです。

【宮田部会長】 ありがとうございます。
 国家補償のほうというのはどうなっているの,国家対応。

【関文化財部長】 1点目の国家補償の法案のほうでございますけれども,私が理解している範囲で申し上げますと,現在の法案というのは我が国のいろんな展覧会の特性,私が申し上げるまでもございませんけれども,いろんなところからものを借りてきて,それで企画展,特別展をやるという,そういったときの補償,それについて国が一定の限度で負担をするということで考えておりますので,その意味では,ここのタイトルにありますように展覧会における,そこで美術品に損害が発生した場合に国が補償すると,こういうスキームとして考えておるところでございます。
 佐々木理事長がおっしゃられました美術館,博物館,国立の施設が寄託を受けている問題については,私も現状として問題があるということは十分承知しておりますけれども,この議論につきましてはむしろ国立の施設の問題かと存じますので,議論の場といえば,福原先生に今,座長をやっていただいています国立文化施設の在り方,あちらのほうで議論していただくとすれば,仕切っていただく話ではないかというふうに思っております。

【福原文部科学省参与】 それは今の私どものアジェンダというか,審議予定の中には入っていないんです。ですから,改めてそのことをどこかで話し合いするようにしておきたいと思います。
 それから,余計な話なんですが,文化力の議論が後藤先生からありましたね。私は文化力というのはもう使われてしばらくなんですが,いまだにそれが何をあらわすか,よくわかっていないんですね,お互いに。ところが,外交力,政治力,軍事力というのは間違いなくあるんですね。ですから,文化力も間違いなくあるんですが,それが一般にうまく伝わらないところがあるので,そうであったら,文化何とか力と修飾をして使うということはどうなんでしょうか。ただ,文化力というと私たちはわかるつもりで使っているんですが,浸透しないんですよ。関西元気力みたいなあれもありましたし,あれも文化力なんですよね。なんですが,やっぱり依然として抽象的な言葉になってしまうので,文化による発信力というような意味を含めて,あるいは行動力というような意味を含めて何か新しい言葉をつくるということは考えられますね。

【宮田部会長】 そうですね。ありがとうございます。
 佐々木先生,よろしゅうございますか。その辺のところですみ分けをしていると。同時に,両輪があるということは大事なんだなということ,軸点があることも大事だということを確認をいたしました。ありがとうございました。
 小田先生,どうぞ。

【小田委員】 重点戦略5番目の観光振興,地域振興への活用と,私の立場上,今,地域主権の確立,あるいはこれから審議をされておる一括交付金の問題を含めて,やっぱり国と地方の役割分担,その中で日本の文化を底上げをしていくという意味では,各地域の文化に対する振興策というのは非常に重要である。観光振興は地域振興をやった上で,そういった資源の発掘ということになるというふうに思うんですけれども,そうしますと,地方でいいますと文化を底上げをしていこうと思えば,組み合わせがある意味では点在をしている。そのことをひとつ点から線にネットワークを結んでいく。それによって地方の文化力といいますか,地域振興を図っていく,そういう組み合わせというものが必要ではないかというふうに考えております。
 そういった意味合いで,それぞれの地方にはそれぞれのよさと文化資源があると思いますので,それをどう組み合わせていくのかと,こういうことができれば地域振興等への活用の中の具体的な施策の中に,ひとつ盛り込んでいただければありがたいというふうに思いますし,今まで私がこの部会の中で申し上げてきた点をできればお願いしたいというふうに思います。そういう意味合いで,地域振興をやっぱり図っていく,こういうことが重要やと。何回も申し上げるのはやっぱり底上げをしていく,そういうことが非常に重要だと。文化そのものは,難しいことは私はわかりませんけれども,生活そのもの,暮らしそのもの,その延長の中での文化振興という考え方をいたしておりますし,実態はそうであるというように思っております。

【宮田部会長】 今,小田先生のお話の中で……。

【加藤委員】 追加でよろしいですか,今の。

【宮田部会長】 ちょっと。1番に限らず,今,小田先生は5番のほうにもとんと飛びましたように,この際,1番から5番まで全部合わせて,いい皮切りをしていただきまして,進行を私のかわりにやっても結構。
 では,加藤先生,どうぞ。

【加藤委員】 今,小田先生がおっしゃられたことに私も非常に賛成なんですが,5番のところで表題が文化芸術の観光振興,地域振興等への活用となっているのを,順番からいうと文化芸術の地域振興が先にきて,その後,観光,せっかく産業というのもその枠の中にあるので,もしそれを入れるとしたら,地域振興,観光・産業振興等への活用というような表題に変えたほうが,筋からいってもまず地域振興を図って,その結果,それが観光や産業につながっていくという展開が読みやすいような気がしますので,こう順番をちょっと変えるだけでも大分違うんじゃないのかと。

【宮田部会長】 ありがとうございます。
 滝波さん,ちょっとメモっておいてください。
 吉本先生,どうぞ。

【吉本委員】 事務局のほうでこの戦略目標を重点施策の上位目標ということでまとめてくださったので,すごくわかりやすくなったと思います。ただ,ここに書かれていることは,何をやるかという政策の内容と,何を達成するかという目標とが混在をしている気がするんですね。例えば重点戦略1でいうと,効果的な支援は何を行うかという施策の内容で,それは何を達成するために行うかというと,四角の文章の中の最後のほうにある文化芸術水準の向上を図り,広く国民が享受できる環境を整備するためにこれをやるんですよね。
 だから,戦略目標といった場合は何を達成するかということを前面に出したほうがいいような気がします。例えば重点戦略1は,文化芸術活動に対する効果的な支援を通して芸術文化の水準を向上させるといった出し方のほうがいいような気がしますし,それと同じように見ていきますと,人材の育成のところはちょっと難しいんですが,例えば重点戦略3のところも,これは子どもや若者を対象とした文化芸術振興策の充実なんですけれども,そのことを通じて例えば四角の文章の中は,文化芸術のすそ野を拡大する,とありますが,私はこの施策はすそ野の拡大が目標ではないと思うんですね。ですので,コミュニケーション能力をはぐくむ機会を充実することによって,文化芸術を通して将来の日本を支える人材を育成するとか,何かそういうふうにしたほうが重点戦略や目標,何のためにこれをやるのかというのが見えてくると思います。
 同じように,重点戦略5のところは今,いろいろご意見があったんですけれども,文化芸術を活用するのが目的ではないので,文化芸術を通して地域振興,観光振興を図るというふうにしたほうが目標がわかりやすいのではないかと思います。それから,重点戦略6のところも文化発信・国際文化交流の充実というのは,これは何をやるかということなので,目標は四角の中にありますように,対外イメージの向上と諸外国との相互理解を促進すると,これが目標ですから,このまま使うと長くなっちゃうんですけれども,何かこういうことを通して,これを達成しますというようなことに統一をしていったほうが重点戦略というか,戦略目標の書き方に相応しいと思います。
 そして,目標を書くことによって一番右側にある評価指標というのが生きてくるので,これも厳密にやり過ぎるとちょっと大変なんですけれども,例えば1ページ目の一番上にあります自主公演数というのがここに挙がっているんですけれども,確かに基礎データとしてはとらなければいけないと思いますし,新しい助成制度では公演の数は団体の自主努力によってということなので,これで評価できるかもしれないんですけれども,助成の予算がふえないと公演数がふえないということだってありますよね。
 だから,ここはむしろ,今度の重点支援に関する概算要求では,トップレベルの支援でいいますと93団体とか,14施設133件というようなのがありますので,そういう支援したところを対象に,例えば統一の観客へのアンケートとかをとって,見た人たちが公演の質をどういうふうに感じたかというデータを助成した団体から提供してもらって,集計を文化庁でまとめて行うというような工夫もできるかと。要するに重点支援をしている団体からのデータを吸い上げることによって,政策目標に相応しい評価指標をつくっていくような仕組みも,この助成の枠組みの中に入れていってはどうかと思います。
 以上,2点です。

【宮田部会長】 ありがとうございます。
 文化芸術のこう5つの柱がありますけれども,弱点というのはみんな重要なんだけれども,みんな並べると,結局,だれをとって,どれをとっていいかわからない,だれがどれをとっていいかわからないというふうになるということは,今,吉本先生がおっしゃって,まさしくそのとおりだね。かといって,どれを切るかというのも,これまた,大変難しい話なんですけれども,どこかで重点という言葉があったときには英断を下して,こことここは絶対に通すんだというふうな強さも,ある意味では必要かなという感じがしていますね。
 私どもの大学でもそうなんですが,全部の科から一斉に手が挙がるわけですね。でも,それはできません。そのときにやはり今回はここですよ,今回はここですよ。だけれども,待ちも大事なんだというふうなことも,よくすみ分けをせねばならんときというのはあるわけでございますけれども,さて,いかがでしょうか。里中先生,お願いいたします。

【里中委員】 重点戦略6のところなんですが,これまでほかの部分といいますか,我が国が国内において努力して,いわゆる文化力を高めて,それによって我が国が誇りと豊かな心を持つということは,本気で頑張ればできると思うんですね。ところが重点戦略6の一番下の段に,ちょっと表現が今回,緩くなっていますが,もともと東アジア各国の参加を得て芸術都市を定め云々とありますよね。
 これが余りにも具体的過ぎ,かつ急ぎ過ぎということで左側の将来的な東アジア共同体の構築をも年頭に,東アジア地域における文化芸術活動を推進するということになっておりますが,ここの部分は我が国だけで果たしてできるのかどうか。そのときに果たして近隣諸国が協力という形でしてくれるのか,それとも,もしかしたら芸術都市はうちだというような動きにならないか,大変政治的なことも含んでおりますので,表現が難しいと思うんですね。ですから,書き方として東アジア地域における文化芸術活動を推進するというと,いい意味でとらえても余計なお世話だと言われるかもしれないし,うっかりすると何を威張っているんだとか,頼まなくてもうちでするとか,ちょっといろいろ出てくると思うんですね。
 すみません,何か非常にわかりやす過ぎる言葉で申しわけないんですけれども,ですから,東アジアの中で特に文化芸術活動,それを大切に思っている国としての何かモデルになろうというようなことだったら,国内事情だけで何とかなると思うんですね。だから,ちょっと危ないなと思いました。東アジア文化芸術会議,いいんですけれども,東アジア共同体というのもとてもいいことだと思いますが,政治利用される,何かその材料にされて,何か大東亜共栄圏かみたいな何か,結構,そういうのはあると思うんですよね。だから,ちょっと難し過ぎて私にはよくわからないんですけれども,少し何か波乱含みの表現かなというふうに思いました。ただ,構想そのものが誤解されないように,うまく国内の意欲と使命感と情熱だけで何かできるというところまで持っていけるような形にまとめておいたほうがいいかなと。何か今さらなんですが,本当に申しわけないんですが,よろしく。

【平田内閣官房参与】 ちょっとその点について,これは以前もご説明を申し上げたかもしれませんが,5月に鳩山政権時代に鳩山前総理がアジアフォーラムの席上で,この東アジア各国の参加を得て芸術都市を定めて,芸術祭のようなものを持ち回りでやったらどうかという提言をなさいました。里中先生がおっしゃるように,まさに日本はこれまで過去の歴史的経緯もあるので,非常に遠慮をして奥ゆかしく,こういう提言を一切してきませんでした。してこなかったことがやはり日本のプレゼンスを低くしてしまったのではないかと。ですから,こういった構想を日本から提言しようという初めての試みなので,もちろん,ご異論はあると思いますし,ご議論していただくのはいいと思いますけれども,提言しないとどんどんプレゼンスが低くなります。
 今,ここにあるのは韓国の光州が今度,国立劇場をまたつくるんですけれども,この国立劇場の名前は国立アジア文化殿堂です。ここをアジアの演劇交流のハブにすると韓国政府は言っています。そして,ここに多くのアジア各国から留学生を招き,劇団をつくり,ここからアジアの演劇をつくるんだということを国策として提言しております。日本は過去の歴史的経緯もあるから,そういうことはやらずに,まだ,あと二,三十年はやらずにおこうというのも一つの見識だと思います。
 ただ,そこのところはやはりご議論いただきたいと。本当にそれで大丈夫かどうかということです。ずっと守りの状態で,中国や韓国はどんどん提言をしてきますからイニシアチブをとられてしまって,それで大丈夫なのかどうか。やはり私たちは私たちの今ならまだ日本の国力はそんなに見劣りする状態ではないので,今ならまだこちらから提言をして,先手を打って,そういったものを参加を促すような機構がつくれるんじゃないかということなんですけれども。

【宮田部会長】 どうぞ。

【里中委員】 もちろん,本当にそのとおりだと思いますし,過去にいろんなことでいろんなアイデアが出ても,こういう文化庁とは関係のないところでさえも,韓国,中国が何か言うと我が国は遠慮しなければいけないみたいな,そういうのがあったんですね,いっぱい。ところが本当に参与がおっしゃるように,先にどんどん近隣諸国はやっております。
 そのときに私の経験です,私の分野の経験では日本に何も聞かずにぶち上げちゃうんですね。やっちゃうんですよ,アジアの中心地だと,ひいては世界の中心地だと一方的に言ってしまうわけです。そういうPR能力といいますか,そういうのはすごいなと思いますが,日本は本当に今のお話にありますようにずっと遠慮してやってきたと。その遠慮するときに私が気にしたのは,東アジア各国に参加を得てとか,協力を得てとか,一緒になってとかというと,何かあるんじゃないかと思うんですよ。
 だから,乱暴かもしれませんが,我が国内で決めたことだと言い切れるような形で,ばんとやれたら一番いいなと思っております。本当に奥ゆかしくて,みんなで仲よく一つの文化を守り立てていければいいんですが,今や各国とも文化が経済効果を生むということがわかっておりますので,中心地だということで欧米に対するPRも含まれているんですよね。だから,では,どうなさるんですか。例えばこれを言って,中国や韓国が何を言うんだといったときの対応の仕方というのは,考えておかなくてよろしいんでしょうか。

【平田内閣官房参与】 そのために外交能力のある文化庁長官になっていただいたと思っております。

【宮田部会長】 今,それを僕が言おうと思った。
 里中先生,ありがとうございました。
 数年前に私どもの大学の話で恐縮ですが,芸術文化教育関係ということで,私が学長で提言をいたしました。アジア芸術サミットというのをやりました。大変多くの東アジアのもちろん,それからドイツも来てくれましたし,ほかの西欧の方々もおいでいただく,学長の先生方,提言をし,サミットをし,これからはアジアから,今までは西洋文化だった,今度はアジアからいくんだという提言をしましたところ,大変反響が多くて,今,先生がおっしゃっていることはスタートする段階で私は議論しました。でも,やるしかない。やった後にどちらかといったときに,やはり風が強いほうに必ずくるから,まさしく成功しております。逆にある意味,今はもう大変です。あらゆる国から来ますし,同時に今度はオファーがあるので,私一人ではとてももたないので,それ専用の今,教職員をつくって対応していくようにしているというのをやっていますので,先生,どうぞご心配なさらないでください。
 同時に,昔を振り返るならば岡倉天心がアジアは一つ,Asia is oneというのをつくりました。それでも,結局,利用したのはほかの国でもないし,日本人そのものがそれを違った方向で理解した過去の経験がございますよね。その辺だけは注意しておけば,非常に私も文化庁の中で,この提言というのはとても大事で,この議論がすごくまた波及していくと思いますので,私は前へ進めていきたいという気がしておりますし,今,平井先生がおっしゃったみたいに,ね,校長,いかがですか。

【近藤文化庁長官】 私も例えば政治経済面で東アジアをリードするとかいうようなことではなくて,東アジア共同体構築,これはみんながやろう,やろうと基本的には言っている話ですから,それを念頭に置きながら,文化芸術分野では日本ができる貢献をするんだと,それによって東アジア地域の文化芸術活動がより活発になっていく,それを通して相互理解が深まる,そういうことを日本としては進んでやっていくんだということで,まさにソフトパワーをソフトに発揮していくというメッセージであって,余り懸念を持たれる必要はない。これぐらいのことは言っていって,これはある意味で日本人自身へのいいメッセージになると思いますし,これがマレー訳されて,あるいは韓国に訳されて,何か余計な誤解を生むとかいう懸念も持つ必要は私はないような気がいたしますね。ですから,基本的にはこのラインで私個人的には間違いないんじゃないかと思います。

【里中委員】 よろしいですか。参考までに,すみません,長くなって申しわけないんですけれども,私自身が15年ぐらい前から東アジア漫画サミットという漫画を中心とした東アジア5地域で協力して,一緒に企画して展示会をやるということをやっております。その中で漫画に関しては日本が先輩だし,抜きん出た力を持っておりますので,みんな,お手本として立ててくれるんですよ。
 立ててくれるんですが,しかし,漫画家とか作品は立ててくれて,漫画は日本がリードすべきだし,これからもリードしてきたしということは十分認識していながら,ふと見ると韓国も中国も世界の漫画の中心地はうちだと大変大きな施設を建てて,欧米に呼びかけて具体的な動いているわけなんですね。はっと気がつきますと,日本の作品も全部,そこに集められて,全部といいましても印刷物ですけれども,欧米からの研究者とかをそちらに集めようということで,はっと気がつくと,今度,漫画の発祥地とうたっているわけなんですね。
 幾ら何でもそれはちがうんじゃないかと言いましたら引っ込めましたけれども,いろんなことでいつもみんな仲よくやっているんですが,いろんなことがありますので,こういうのはいいけれども,遠慮しているうちに何かよそにできて,しかも全部,アジア的文化の根源はここであるというふうに先にPRされてしまったら,ちょっと不利だなという懸念は持っておりますので,すみません,余計なことで時間をとりましたが,参考までに失礼しました。

【宮田部会長】 よくある例です。私どもの大学そのものも,今も芸術の教育系の部分でのハブになっておりますが,当然,似たようなことはいっぱいありますし,先生がおっしゃるのはよく経験しておりますが,しようがないですね,これはね。
 どうぞ。

【福原文部科学省参与】 ちょっとずれた例かもしれませんけれども,国際交流基金でアジアのキュービズムという展覧会を企画して,ベトナムですとか中国ですとか,たしかタイも入っていたと思うんです,それと戦前の日本のキュービズムの流れをくんだ作家の展覧会を日本でやって,それを今度,パリの日本文化会館へ持っていくという話があったんですね。みんな,おっしゃるように大変心配して,フランスの美術館でやるんだったらいいんですが,日本文化会館でアジアのキュービズムをやるということになると,日本中心だといって反発がくるんじゃないかと随分,心配したんですね。
 ただ,考えとしてはアジアに戦前のことですけれども,ほぼ同時に各国が横並びで偶然に同じキュービズムの画法を学んだ連中があったということをその展覧会で見せたんです。それについてはどこからも結局,問題がなかったですね。ですから,日本が中心であるという言い方をしないで,日本が編集してアジアのものをお見せするということについては,余り問題がないんじゃないかと私は思うんです。いずれにしても,日本でアジアのことを編集したり,発信したりするということは,そう遠慮しなくてやるべきだと思うんですが,やっぱりそのやり方とその後の処理の仕方を間違えないようにするということは,必要なんじゃないかと思っています。

【宮田部会長】 ありがとうございます。
 どうぞ。

【吉本委員】 今の件に関連して,私もこれは入れていったほうがいいと思うんですけれども,そのときに原案だと東アジア芸術創造都市(仮称)というのがあって,これは欧州文化首都をある種のモデルにしていたと思うんですが,修正案になると何をやるんだか全然わからないんですけれども,原案のほうがいいような気がする。何かこういうふうに修正された意図はあるんですかね。何か東アジアにおける芸術文化活動を推進するって,何をやるんだろうというのが何かわからないんですけれども。

【滝波企画調整官】 先ほどご説明しましたように,具体的施策にかかわる内容のことが含まれているのかなと思いましたので,その部分を3列目のところに書き出していった関係で,ちょっとこんな文章になってしまったということでありますので,そこは改めてご議論いただけたらと思います。

【加藤委員】 東アジア芸術創造都市,確かに具体的な施策だといえば言えるけれども,これ自体,明示しないと逆に何を言っているのかよくわからないので,ここはたとえ具体的施策に見えても,こういうことを中心に進めていくというふうに言ったほうが,この部分はかえってわかりやすいんじゃないですか。

【宮田部会長】 あと,どこでやるんだというのが書いてないから,そのぐらいのこともはっきりするぐらいの一歩踏み込むのがあっていいんじゃないですか。

【後藤委員】 ヨーロッパ文化首都だと持ち回りですよね。だから,そういう関係でイメージしているのであったら,アジアを持ち回りでネットワークをつくるということですね。どこかが何かイニシアチブをとるとか,ヘゲモニーをとるとかいうことじゃなくて。

【平田内閣官房参与】 そうです。鳩山総理のスピーチは,そういう持ち回りの芸術祭から,いずれ欧州文化首都,あれは期間が長いですから,そういうものに発展するような総合芸術祭を提言なさったんです,そういうものをアジア持ち回りでやりませんかということで,そのスピーチはニカイアさんからも大変評判がよく,逆にだから皆さん,やりましょうという雰囲気になったんですね,そのときには。

【宮田部会長】 最初に誰かがスタートしなければできませんからね。

【平田内閣官房参与】 そうなんです。そこに関しては,だから,鳩山総理は菅政権が続いていれば,そのことに関しては日本がまずお金も拠出しますよという意思表示をなさったと。

【宮田部会長】 どうぞ。

【近藤文化庁長官】 先ほどの里中先生のご懸念を解消する意味でも,例えばこういうことをやるんだということで安心感を与えるんだよ,具体的なことがあったほうが。ですから,今の吉本さんと同じ意見で,この辺のことはむしろ具体案にちょっと落としたほうがいいかもしれませんという感じがいたします。

【宮田部会長】 ありがとうございます。
 坪能先生,どうぞ。

【坪能委員】 6つに別れている重点戦略,それと,それに対する具体的な施策というのは,本当によくまとめていただいているというか,皆さん,努力なさったことだと思うんですが,次世代の育成に関して新進芸術家研修,若い人を育てようということ,その人たちとそれから文化財等の伝承を大切にしていく,それからあと,子どもたちにいい芸術環境を提供すると。それによって国際的な交流や発信,文化芸術として,これは全部,やっぱり人なわけですよね。そうすると6つに分かれて,それぞれの具体的な施策に出てきているのは,ほかと全部リンクしていくはずなんですよ。
 現在,こうやって見ていますと,とてもよくこれだけのものが具体的に必要だとわかるんですが,それを何も統制するとか,包括して何かをやるというのはないんですが,人材育成というキーワードがあったら,人材育成をどういうふうにこの6つの中で束ねていくかというもう一つの何か中継点というか,中枢になる部分をいわゆる権力ではなくて,よくまとめていって交通整理してくれて評価してくれて,あるいはそれを宣伝してくれて,そこにまた皆さんが参加できるような何か一本がないと,それぞれがまたばらばらに具体的におやりになって,それで,総合的に何か文化力は高まったかなという,少しぼけるような気が私はしているんですが,全部,これは共通していると思いますが,東アジアもそうだと思いますし。

【宮田部会長】 平田先生。

【平田内閣官房参与】 今の坪能さんのご発言と関連してなんですけれども,恐らく今回の第3次基本方針で一番違うのは,やはり今までも重点支援,重点支援と言ってきたんですけれども,劇場法のことも含めてやはりきちんとストックをつくっていこう,文化を公共財として考えて,公共財をふやしていこうという考え方に,今までとは転換されているところが一番大きいんだと思うんです。僕はこれをしょっちゅう言っていて,それも一流の経営者である福原さんの隣で言うのは申しわけないんですけれども,経営学の教科書の一番最初にフローとストックがあるんだと出てきますよね。それで,どんな企業もフローをできるだけ活性化して,その間に少しずつストックを積み上げていって,企業を大きくしていくわけですよね。
 ところが,まず日本は芸術の世界でもフローしかない。とにかく使い捨て。そして,それに乗っかって今までの文化政策もフローに対する支援しかない。だから,3年,5年の期限を切って,それで終わりになってしまう。要するに継続した支援がないというのは,ストックをつくっていくんだ,公共財をつくっていくんだという概念がもともとなかったからだと思うんですよね。そこを多分,変える第3次基本方針なんだと思うんです。だからこそ,劇場法があり,国立文化施設の見直しがあり,アーツカウンシルをつくろうというような提言が出てきているんだと思うんです。その中で人材もそうですよね。
 だから,評価の基準としてどれだけ多くのプログラムオフィサーをつくれたのかとか,それから,私たち演劇とか舞台芸術の世界でどれだけ再演演目がふえたかとか,どれだけ海外にその作品を持っていって繰り返し上演されたかとか,要するに劇場がレパートリーを持っていくということが大事なんですね,私たちにとって。その作品がどれだけ観客動員をしたかではない。何年も続けて再演されたか,あるいはその作品がほかの人によっても上演されたかとか,生み出した人材が海外に行って演出家,指揮者として活躍しているかどうかとか,そういうところが本当はこれからの評価基準になっていかなくてはいけなくて,そこを評価できるような仕組みができれば,まさに新しい第3次基本方針になるんだと思うんです。そこのところの文言を前文に入れるのか,もう一個,坪能さんがおっしゃられたように串刺しで何かやるのか,何かそのところをやはり考えていくんだね。

【宮田部会長】 同時にこの間の会議,一昨日ですか,僕が大概,あ,そうだなと思ったのは,どんなにいいものがあっても,それを導引するための中間の部分,ここが欠けているとそれが文化にならないというお話をなさっていただきまして,表現は少し違いますけれども,なるほどなと,そこも私どもの中にはすごく大事なことであるなと。美術作品が例えば私どもの美術家,美術作品ですばらしいのをやっている。だけれども,それは無償です。それじゃ来ないですね。そこにもう一つの伝える何かというのが必要,よって,人が来ると。だから,来た人が感動することによって,人間の違う人材もまたふえていくというふうな何かそのようなお話が,それもこの中に入ってくると思う,先生の中のお話ともまたつながるのかなという気がしますね。ありがとうございます。これとこれですね。まさしくありがたいお言葉です。
 いかがでしょうか。ちょっと高萩先生が早かったんですが。

【高萩委員】 最初に「文化力」に代わる言葉をという話があったと思うんです。多分,第2次から第3次にかけての一番大きな違いというのは,文化芸術の取り扱いだと思います。今までは,文化芸術を育てるとか支えるという格好で,かわいそうだから支えてあげましょうという感覚が非常に強かった。途中,多分,第3次の議論を始めたころから,むしろ,文化芸術の力を使って社会を活性化しよう,成長戦略に入れよう,などいろんな言い方もありましたけれども,社会に役立つ文化芸術の力みたいなちょっと視点を変えた形で持っていくのがいいのではないかということになってきました。今はどちらかというと文化芸術の力,文化芸術が持っているものをもっと社会のためにうまく使っていきましょうというふうになっていると思うので,ぜひそういう視点が入ればいいかなと思いました。

【宮田部会長】 ありがとうございました。
 その件に関しては青柳先生なんかはいかがですか。

【青柳委員】 私は例えば学術審議会なんでも去年か,おととし,学資力という言葉を使ったんですよね。それで読売に書いて,そんなばかなことがあるかと,つまり,卒業に必要な単位をきちっと取っているかどうか,そういうことをきちっとはかるべきで学資力という,つまり,名詞に力をつけるのは無理があるんですよ,日本語で。だから,外交するというような動詞を名詞化したものに力がつくのは日本語として認められる。だけれども,もともと名詞だったものに力をつけるというのは,日本語としてかなり強引な使い方なんですね。ですから,今,おっしゃったように文化芸術の力とか,そういうふうに言えばいいのに,わざわざはやり言葉のように力がつきさえすればいいということで大変乱れていますね。ですから,もうちょっと知恵を使うべきだとまず思います。
 それから,ついでになんですけれども,文化芸術というのはいろいろな影響力のある分野もあれば,あるいは逆にエンデンジャラス,今,もう消えゆこうとしているようなものもあるんですね。そういうさまざまな複雑なものの集合体が文化芸術なんです。ですから,そのことを常に我々は意識しながら集合体として,よりコンプレックスとして相互作用の中で,それが充実していくようなことを図るのが恐らく文化政策の最も基本だと思いますね。そして,その後に,あるところでは文化芸術の力を使って社会を活性化したり,あるいは充実をさせたり,あるいは個人の生活に幸福感をより多く与えたり,あるいは世界の平和に貢献するものにしていくということが付随的に出てくると思うんですけれども,そこの順序やあるいは文化芸術が持っている強さと一方での脆弱さというものを,我々は常に認識しておく必要があるんじゃないかと思いますね。

【宮田部会長】 ありがとうございます。
 浜野先生,どうぞ。

【浜野委員】 前回,青柳先生がおっしゃったことの繰り返しですが,資料3の評価例が出てしまうと,量的なものだけで文化がはかられてしまうという印象を与えないでしょうか。例えば,映画監督について調べたら大半が大学の教員で生計を立てています。ですから,映画監督というのを量的に測ると副業化していて,生計を維持させる産業でなくなっている。能についても定量的研究をしていますが,芸術として量的な側面だけで測られるのはどうなのかと思います。
 今,平田先生のご発言と宮田先生のご発言で納得はしましだが,観客よりも実演者のほうが多いものでもやらなければいけないことはやるべきだと私は思います。観客を育てなかったツケが回っていると思いますが,この例は量的なものだけで測ると誤解を与えるのではないかと思って危惧します。やはり量的ではかれないものもはかってあげなければいけない。
 フランスの女優,ジャンヌ・モローがフランス政府の映画支援を批判したことがあります。フランス映画がだめになったのは,政府のお金をもらうために,政府側の評価者に評価されやすいようなシナリオを書くから,フランス映画は一般大衆客ではなく評価者に目を向けて映画を作るようになってしまった。
 評価というものは,評価を受けやすいものに実態を歪める可能性があります。我々は研究者だからいつもそんなことばかり気にしているので,誤解のないような表現にしていただきたい。これは希望ですが。

【宮田部会長】 ありがとうございました。
 評価についてはどうされる。

【吉本委員】 まさしく,今,浜野先生がおっしゃったことは前回も議論になった部分で,この例示の出し方を工夫したほうがいいと思うんですね。例えば一番上からいいますと,公演数とか寄附件数とかありますけれども,これは評価のための指標というよりは,実績だと思うんですよ。だから,例えば一番上の項目でいうと,さっき平田さんがおっしゃっていたように,重点支援をした団体から海外で公演する作品が何件あったかという,これは数なんだけれども,質的な変化をあらわす指標になりますよね。
 だから,表にすると全部を埋めなければいけないような感じになるんですが,あえて実績をあらわすような単純な数字はとってしまって,質的変化を把握できるシンボリックなものを例示として入れておくという程度にしたほうが出し方としてはいいような気がします,とりあえず,例示という出し方をするのであれば。そうじゃないと,本当に数字を伸ばすためには,それこそ予算がたくさんなければいけないとか,数字を伸ばすことが目的化するという危険性も当然あるので,ここは本当に気をつけるべきかと。何を出すかというのは精査して出さないと,これが答申として出るとそのまま残りますから,それで評価するということになると大変危険な気がします。

【宮田部会長】 ちょっと,増田先生が先に,今のに関連しているのであれば,ちょっと増田先生,よろしいですか。

【後藤委員】 今のに関連するんですけれども,先ほど吉本さんがおっしゃった重点戦略の上の枠で囲ってあるところは政策目標なんでしょうと。下に書いてあるのは政策手段というか,戦略というか,何をするかということで,だから,目標と何をするかということがごちゃごちゃになっているということをおっしゃって,私もそのとおりだなと思って見ていたんですけれども,そうすると,ここの評価は何をするかというと,目標に対してそれが達成できたかどうかということを評価しなければいけなくなるので,公演数とかじゃなくなってくるわけですよ。
 そうすると,どれだけ芸術文化が向上したのか,それから,広く国民が享受する環境ができたのかということを評価するということになると,評価指標が全く異なってくると思うんですね。今のままだと,何か観客動員数とかになっちゃっていて,やっぱり実績の単なる数値化したものに過ぎないので,上の大きいところが目標で,それを達成するために下の戦略があって,上の目標がどういうふうに達成されたかということをちゃんと評価するというほうがすっきりすると思うんですけれども。

【吉本委員】 先ほどの動員数で,まさしくこの間,話していたポピュリズム,人気のある事業だけをやるみたいになっちゃうので。

【増田委員】 前回,欠席して吉本さんの議事録を読ませていただいて,まさに,今,話しているようなことがあって,数字の評価だけじゃなくてもうちょっと別な評価ということと,それから,評価のための計画に寄り添っていっちゃう危惧が話に出ていましたけれども,平田参与の話にもありましたような何か数字じゃない,ここにはメディアの方もいらっしゃいますけれども,そういうところでどういう取り上げ方をされたかというようなことを勲章評価というか,私たちは紙なんかだと感応評価という言い方があります。紙の厚さが何ミリというんじゃなくて,これはやわらかい,肌触りがいいとか,そういう評価もあるんですけれども,そういう系統の何か具体的なことが,私にはなかなかアイデアがなくて,きょう,出てくれば話が出てくるのかなという感じがしたんですけれども,なかなか難しいところなんですね。
 株式なんかだと特定銘柄を押さえて,それのトピック指数とかなんとかという形でしていますよね。こういうのは特定銘柄じゃないけれども,こういう全国紙の中で,それぞれ文化,歴史関係のところの記事を充実してもらうように頼んだ末に,そういうところでどういう取り上げ方をされたかというようなことも評価の中に入れて行くようなことは可能なんでしょうかね。

【宮田部会長】 大変私の個人の一例で恐縮なんですが,たまたま増田先生のすぐ後ろに朝日のアカダさんが来てくれていて,非常に熱心な鋭いペンを走らせてくれる人なんですけれども,私はいつも自分の横に1カ月の文化について書いてある新聞から週刊誌とか,それから,テレビ欄などをファイルにさせているんです。同時に,我が社のファイルにさせているんです。これだけなかったら,うちは芸術発信をしていないんだよとみんなに言っているんですね。この量だと。その前に取り上げるということは,アカダさんの目みたいにおもしろさがなければ取り上げてくれませんからね。おもしろさは何かというのは非常に単なる世間受けではなくて,きちっとしたものだとか,同時に世間受けのもの,両方があります。そういうものも全部,色分けしながら,私はファイルしているんですけれども,ただ,今,大学を評価してくれるのは,そういうものでは評価してくれないんですよ。とても矛盾しているんです,今は。
 その中で評価という言葉で,この間のよその先生のお話で,なるほどと思うところと矛盾するところと両方がきちっとあるというのが私もわかったので,どうしていこうかということは,この後に印象評価もくるし,こんなものがメジロ押しでくるので,どうしようかなと思っていますが,増田先生,何と言いましたか,やわらかい,かたい。

【増田委員】 感応評価という。大変官能的というとまた別な意味になってきますけれども,大体,人間の五感を言葉であらわして,その言葉を最終的には数値にまた置きかえるんですけれども,出発点は感応評価という言い方があります,物に関しては。

【宮田部会長】 平田先生,何か,どうぞ。

【平田内閣官房参与】 舞台芸術のことにちょっと偏ってしまって申しわけないんですが,ここに書いていただいたような基準例は,恐らく劇場法あるいはそれに近いものができて,支援の対象がきちんと定まっていけば,僕は市場原理が働いて公平な競争が働いて,いい作品が地域で買われて回るようになりますから,勝手に行われるようになると思うんです。だから,これを国が評価する必要はなくて,まさに質だけを評価する,あるいは人材育成とか国際交流とか,そういうものを短期間では評価できないものだけを国が評価すればいいように恐らくなると思うので,中間的にはもちろん,こういう数字は例えば事業仕分けとかのためには必要だと思うんですが,本当に国が評価しなければいけないのは何なのかということをもう一つ別に定める必要があるんじゃないのか。これは美術でも企画展なんかは同じ原理だと思います。ちゃんとしたマーケットでやるのが国の仕事で。

【青柳委員】 恐らくこのポイントになるのが3番目のところのアーツカウンシルだと思うんですね。それで,ただ,ここに専門的な審査・評価と書いてあるんだけれども,専門的って普通,ピュアレビューですよね,同業者評価あるいは専門家評価。と同時に,もう一方で包括的な,アーツカウンシルが非常にいいのはコモンセンスが働いているんですよね。ですから,それをどう入れるか。だから,ちょっと相反するんだけれども,専門的かつ包括的な審査・評価を実施し,そして有効に機能させるため,新たな審査評価・推奨の仕組みをと,そこまでやることがカウンシルの仕事なんですね。ですから,そこをちょっと文言を。

【平田内閣官房参与】 僕はそこは思ったので,調査研究を入れてもいいかと思ったんですね。

【宮田部会長】 どうぞ,富山先生。

【富山委員】 重点戦略2のところですけれども,無形文化財や文化財を支える技術・技能の伝承者を支援するという,これを充実させていくということですが,どういうことをお考えですか,具体的に。無形文化財や文化財を支える技術・技能の伝承者に対する支援を充実するというふうに書かれていますけれども,これはどういうことを考えている。

【滝波企画調整官】 具体的施策の3列目のところに書いているような事柄が具体的な中身だと思いますけれども,無形文化財の伝承者であったり,民俗文化財の伝承者あるいはそれを活用する方法,文化財保存技術もそうですし,そういったものの技術・技能の伝承者に対して支援を充実,書いてあるとおりなんですけれども,それぞれの文化財,各分野における伝承者が活動しやすくなるように支援を行っていくというふうな趣旨で書いております。

【富山委員】 実際,私どもがこういう仕事をやっていますと,例えば高校を卒業して間もなく,いわゆる集団就職で来られて,お琴をつくること,私より5つぐらい上の方ですから,もう50年以上,修行なさって,つい最近,廃業なさいましたけれども,結局,そういうものをずっと伝承していくという方が極端に今は減ってきています。
 この前もちょっと自分の三味線をつくろうと思って,いろいろ見に行ったんですけれども,この胴は最後の一つですからねと,向こうの三味線屋が言うわけですよ。どうしてかといったら,三味線の胴をつくる人の胴師というんですけれども,その人が病気になってしまった。これから先,同じような胴をつくるのに,何年かかるか,わからない,病気は多分治らないだろう。そのほかに,そういうような同じような技術を持っている人がいるのかというと,もう今はいない。だから,新しく,今,胴をつくっている人を育てていくよりしようがない。
 三味線という楽器は,皆さん,ご存じないと思いますけれども,胴をつくる方は胴をつくる,さおをつくる人はさおをつくる。それで,それを総合的に組み合わせる人はそういう仕事をする。ですから,胴をつくる人,さおをつくる人,それをまとめる人というのはみんなばらばらです。我々も随分,そういうことで三味線をつくるような,そういう技術的なことをきちんとやっている人たちをある程度,バイオリンをつくる人たちはマエストロとか,そういうようなある程度の技術を持った人たちを指定して,そういう人たちに補助をするという,そういうことをイタリア政府もやっていますが,そういうようなことはできないのかということを盛んに申し上げたことがあるんですけれども,ただ,お三味線という楽器はそういう関係で,一つの楽器をつくるのに,結局,3人ぐらい,最低でも人が要る。そういう関係で非常に指定することが難しいと言われています。でも,そういうこともひっくるめまして,例えばそういう技術を持った人,ある程度の技術認定者というような形で指定していただくような,そういう制度ができないかなと。
 そういうことを少しやっていただいて,ある程度,ご褒美を差し上げていただかないと,これから,こういう仕事に入ってくる方はほとんどいなくなるのではないか。ほとんどのところはやはり親がやっているからお子様がやっているような状況ですので,これから先,そういうことを考えますと,ある程度,そういう制度を充実していっていただくことがどうしても必要ではないかなと思っています。そういうことに関して,少しはちょっと考えていただけるとありがたいと思っています。
 以上です。

【宮田部会長】 その件に関しては。

【関文化財部長】 今,富山先生からご指摘のあったことは私どもとしても全くご指摘のとおりであろうというふうに思っております。それで,現在,23年度の概算要求において,いわゆる重要無形文化財,それから,選定保存技術,そういった形で我々は今まで支援をさせていただいているわけですけれども,それの拡充ということを考えております。その拡充のポイントはまさに先生が言われた点なんですけれども,すそ野を広げるというようなこと,それから,なるべくは団体をつくって,今,先生がおっしゃった例えばわざを伝える人,それから,楽器なら楽器をつくる人,そういったものをなるべく組織的に一体として保護ができないだろうかという方向で,今,概算要求をしておるところでございます。もうちょっと詳しく申しますと,今まではともすれば一定のわざのレベルに達した人は保護するけれども,そこに達しないと保護しないというような割り切りをしていたんですけれども,そのすそ野をもっと広げられないかと。例えばそういったことを今,概算要求の中で取り組んでおるところでございます。

【富山委員】 ぜひ頑張ってやっていただきたいと思います。

【宮田部会長】 ちょっと全体を見ないと私は長としての仕事が,田村先生はまだ何もお話になっていないので,ちょっと強制しちゃいます。

【田村委員】 第1次基本方針を決めますときに,あのときは文化審議会が検討しておりました。そのときに委員の方が強くおっしゃったのは,一体,文化庁の文化政策は何なんですかということでした。文化庁が本当にどういうおつもりなのかというのが大きいと思います。文化政策部会を何度か取材もさせていただいてまいりましたし,参加もさせていただきました。2001年に「文化芸術振興基本法」ができているわけです。それまでは「文化財保護法」だったわけですね,日本の文化は。文化振興,国民のための,国民が豊かな文化環境になるようにという法律ができたのが21世紀に入ってから,それは法律ができたことで,文化庁が,国がそれを保障したという意味では本当に一歩前進だったと思います。でも舞台芸術のワーキンググループでも,最後にたしか入れさせていただいたと思いますが,文化の持つ,芸術文化の持つ力が大きいのだということを多くの皆様が共有していない,気づいていないということが一番,現状をあらわしているのではないかと思います。
 そのためにはどうするかということですが,ここに書かれている6つの重点施策はもちろん大切ですが,一番問題なのは一極集中であるということだと思います。それを解決していくにはどうするかということが大切で,そういう意味で,文化省という言葉,これも第一次のころから時々出ていました。でも,必ずそのときにこれは無理でしょうねと委員の方がおっしゃっていたというのが現実です。今回ぐらい「文化省」にしてくださいということを各委員が強くおっしゃったのは初めてです。そういう意味で,それはきちんとどこかに後藤委員がおっしゃったように書いていただきたいと思います。
 また,今,国立の文化施設の在り方についての検討会議事録は第1回目のが公表されていましたので,拝見させていただきましたけれども,国立の文化施設がどうあるかということや,日本の国の文化振興のために非常に大きな力を持つのではないかと思っております。例えば各地方の劇場や音楽堂が本当に創造発信できるようなものになるということはとても大切であり,そのことに反対するものでも何でもないのですが,国が要するに各地域を視野に入れた活動ができないような状態になっているということのほうが,問題だなと思っています。例えば日本は残念ながら,子どものためのいい舞台作品が多くあるとは言いがたいと思っています。
 でも,新国立劇場が2003年にノヴォラツスキーさんというウイーン国立歌劇場から芸術監督がいらして,初めて子どものためのオペラ作品ができています。そして初めて去年,子どものためのバレエ作品ができています。でも,残念ながら,子どものための演劇は10年以上たっているのに,一つもつくられていないというのが現実でございます。子どものための作品ばかりではなく,国でつくられたものがどれだけ全国を回っているかというと,残念ながら全くできていないのが現実でございます。国が果たすべき役割というのは,そういうところにもあるのではないでしょうか。国立の文化施設の検討会の内容は,ここではよく知ったほうがいいのではないかと思います。

【宮田部会長】 ありがとうございます。
 福原先生が今,非常にさくさくと,次のときにはまたヒアリングがございますね。まとめて方向性をはっきりとつくっていただくと。

【福原文部科学省参与】 まだ,始まったばかりですから,そういう意味ではちょっとそうなんですが,そこでさっきからのお話がございました評価の問題,それから,評価を一つには,今,定量的な評価しかしていないんですが,もっと定性的な評価の方法はないかというようなことが議論されていますけれども,問題は私たちは定性的な評価を要求するんだけれども,それを判定している財務省なり総務省なりというのは,定量的な評価しか見ないんですよね。
 そういう日本の文化をどうするかということ,もう一つは外部評価の委員会みたいなのは,結構,厳しくおやりになるんですが,評価の結果というのは何も生かされない。プラスでも加点になりませんし,マイナスだったら多少,減点がきくぐらいで何にもならないですね。あれだけの努力をして,そのために膨大な資料をつくって評価したというのは,一体,何だろうといって,本当に悲しくなるわけですね。その辺はこれから検討していきたいというふうに考えていますので。

【青柳委員】 一つ。今,田村先生がおっしゃったことというのは非常に重要で,やっぱり我々の日本社会の時代認識だと思うんですよ。この間,朝日か何かにさる人が書いておりましたけれども,坂本竜馬がこんなに人気があるのは青年期のあれで,我々はどうもまだ青年期を願望しているところがある。思考停止しているんですよね。だから,ああいうどうでもいいような人をもてはやして,ぎゃあぎゃあ言っているだけであって,だけれども,我々は既に成長期を経て円熟期,老境とは言いませんけれども,成熟期に入っているんです。
 そうであるにもかかわらず,時代認識として日本社会全体がまだ成長できるんじゃないかというような,社会全体が青年期にあるような錯覚を持っているんですね。だけれども,実際には青年期は終わっていて,本当に成熟期だし,円熟期で,そして,どう我々の個人や社会の生活を充実させていくかに入ってきている。だからこそ,文化というものが非常に重要になっているんです,もうキーポイントになっているんです,日本社会にとって。そのことをやっぱり我々は参与たち,偉い人たちがいますから,そういう方に時代認識をどうするのかということをやっぱり日本を動かしている方々にきちっと認識してもらう。いつまでも青年期ではどうしようもないんです。それが一つ。
 そして,そういう時代認識の中でだったら,今,田村先生がおっしゃった文化庁の仕事あるいは文化政策というものが,いかに重要であるかということをきちっと位置づけることができると思うんですね。最初に,平田参与がおっしゃっていたストックとフローなんですけれども,今までずっと走りながらきていて,やっぱりフローだけをやってきた,大学でもそうです,フローばっかりで。だけれども,一方で,我々は日本社会の日本文化というは式年遷宮みたいにフローというストックという特殊なストックも持っているんです。ですから,そのことをやっぱり文化の中できちっと認識していくことも重要で,欧米型のストックを今からやろうとしたって,竹に木を接ぐようなもので無理がありますよ。そういうことも文化のコンテクストとしてきちっと解きほぐして考え,そして,それを文化政策の中に入れることがこの文化政策の社会との親和性を高めることだと思いますね。

【宮田部会長】 日本らしい文化というのが今,ストックの中にという言葉で,青柳先生,田村先生,皆さんに大変おもしろいお話だろうと。ありがとうございます。
 どうぞ。

【近藤文化庁長官】 評価,これは議論しても切りがないんですけれども,一つはOECDという国際経済機関においてもさんざんその議論が出まして,どうやってOECDの活動を加盟国が拠出金を出していますけれども,みんな,厳しくアメリカとかイギリスに言われたわけですね。そのときに,今,我々がいろんなここでやっているような議論,作業をして,そこで,後で吉本さんに教えていただきたいんですが,当時はインパクトとアウトカムとアウトプットというかな,大きな目標については達成されたかどうかはそんなにはかれるものじゃないと。しかし,やったことがどれぐらいのインパクトがあったかというのは,ある程度,定性的に言えるだろうと。
 他方,それをやるための中期目標,短期目標があり,特に短期の目標はいつまでに何かをするという明確な狭い目標ですから,それはアウトカムとして具体的に観客数がいいかどうかは別として,そういう形であらわせるんじゃないかという,そういう区別をしたことを覚えているんですが,今,日本での流れ,特に仕分けとかも含めた流れがそういう区別をしているのかどうか,それに今の我々の作業を合わせるべきかどうかというのが1点と,もう一つは昨日,ある別の会合で某仕分けの張本人と自分で言っていた人が言っていましたが,文科省の説明は非常に下手であったと,文化は定量化できないということは相当程度わかっている。定性的な説明が非常に下手であったと,もっと工夫の余地があったのではないかということを言っておられました。多分,そういうことだろうと思うので,定性的な言い方で,しかし,より説得力のあることを考えていかなければいけないし,それを頭に置いて評価の指標・基準と書いてありますが,そこを設定をしたほうがいいんだろうと思う。
 そこで,今,指標とここは書かなくてはいけないのかと,タイトルのところで。評価の手法とか,基準はいいのかも,指標と言った途端にすぐ数字がないとだれも満足しない。我々から指標とここに書く必要があるのかなというのが,過去の議論の経緯を私は知らないので,とんちんかんなことかもしれませんが,あえて,我々から指標と書かないで手法とかいうふうにしたほうが,次に書くこととの整合性がとれるかなという,ちょっと印象があります。

【宮田部会長】 数字ではかれない文化と言っていながら,その中に数字で書けと言っているような実に不思議な指摘でございます。大変ありがとうございました。
 議論伯仲,とてもすばらしい議論をいただいているわけですが,もう一つ……どうぞ。

【吉本委員】 アウトカムというのが評価の中でよく出てきまして,アウトプットというはまさしく実績数字で,公演を何回やりましたとか,その結果,お客さんが何人来ましたとかいうことなんですけれども,それに対してアウトカムというのは,例えば公演でいうと,それを見に来たお客さんたちがその場で何を得て,例えばあしたからまた頑張って生きようと思ったとか,あるいは人生に悩んでいた子どもがシリアスな芝居を見て生きる意味を考えたとか,要するにまさしく定性的な効果で,それをアウトカムという言い方をよくします。だから,アウトカムのほうがはかるのは難しいというふうに言われています。
 インパクトというのは,ちょっと私も正確なところはよくわからないんですけれども,この間の評価の説明でいいますと,文化芸術を振興することによって,例えば教育的な効果があるとか,あるいは経済波及効果のようなこともいろいろ言われますので,政策や事業によって何か派生的にいろいろほかの分野に波及していくような効果のことをインパクトと言うのではないかと思いました。
 ここに出ているのは,ですから,まさしくアウトプットの指標になっていますから,今,長官がおっしゃられたのはまさしくそのとおりで,ここは評価の何か考え方とか,評価の何か進め方とかぐらいにする方がベターかと思います。例えば指標をとるのも助成をした団体からそれこそ観客満足度みたいなのは非常にわかりやすいアウトカムだと思うんですけれども,そういうものをとる仕組みも考えるというようなことを入れたほうがいいですね。確かに基準・指標と書いちゃうと,数字を集めますということが前提になっちゃう気がします。

【宮田部会長】 ありがとうございます。
 整理一覧表というのもございますので,その辺も含めて今の議論の中からちょっと別紙になるわけですか,滝波さん,それも先生方,ごらんになりながら,ちょっと議論を進めていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。いいですか。この辺も,今,こういう会議,熱の入っているときですと,時々,漏らすことがあるので,後でこれはと冷静になったときにでも結構でございますので,滝波さんのほうにお伝えください。また,前に議論が戻っても結構でございます。
 それでは,議論3の配慮事項,第2,文化芸術振興のための重点施策において,6つの重点戦略に続く部分となるわけでございます。その位置づけや主な論点について,事務局から説明をいただいて,あと,残っている貴重な時間をその部分での意見交換にしたいと,かように思いますが,よろしくお願い申し上げます。

【滝波企画調整官】 それでは,資料4に基づきまして,配慮事項について少しご説明を申し上げたいと思います。
 第1次,第2次のそれぞれ基本方針の中で,文化芸術振興に当たっての配慮事項というものをそれぞれ書いておりまして,今回の第3次基本方針の検討の中でも配慮事項について,一度,ご議論いただいておく必要があるのかなというふうに思いましてこの資料をつくっております。
 資料4の1ポツで趣旨と書きましたけれども,1次方針,2次方針において,それぞれ,今,申し上げた留意すべき事項であるとか,配慮事項といった部分について書いてありますけれども,その後の2次方針策定後の国内外の動向であるとか,先般の意見募集あるいは団体ヒアリングの結果などを踏まえまして,今般の第3次基本方針の中で配慮事項等として,どのようなことを盛り込んでいくのかということについて,ご検討いただきたいという趣旨でございます。
 2ポツで検討の方向性と書きましたけれども,答申あるいは第3次基本方針(案)の中で,どういうふうに位置づけるかという点ですけれども,まず,第2の重点施策という部分の中で,6つの重点戦略に続く項目として盛り込んでいこうというふうに考えておりますことと,それから,基本法の各条文,8条以下ですけれども,に対応する基本的施策という部分,これを後日,ご審議いただくこととしておりますけれども,その中にも配慮事項に関連する事項が含まれているということがありますので,そういったことを考えて特に配慮すべき事項等というふうな形にして,重点施策にかかわるものだというふうな位置づけにしたらどうかというふうに思っております。その際,先ほど申し上げましたように,2次方針における配慮事項ということをベースにしながら,基本方針との対応ですとか,先般の意見募集,団体ヒアリングの結果などを踏まえて,検討いただくということがいいのではないかというふうに思っております。
 具体的な検討を進めるに当たっての論点としては,3ポツにかきましたような3つの事柄について考えておく必要があるかなと思いました。1つには今,申し上げた2次方針策定後のさまざまな動向の変化,あるいはこれまでの部会審議の中で出てきたようなご意見なんかを踏まえて,新しく盛り込んでいく必要がある事項はないのかどうかという点,それから,2つ目に基本法との関係を含めまして,文化芸術振興に関する基本的施策との関連の中で,何らか整理をすべき内容はないかとかいう点,そして,3つ目に同じく重点施策(重点戦略)に対応する戦略目標等の中で,あるいは工程表との関係の中で,配慮事項に関して検討すべき事項はないかどうか,このあたりのことをご検討いただく必要があるというふうに思っております。
 別紙[1],[2],[3]ということで,今,申し上げたようなことに関連する資料として,参考資料的なものを用意しておりまして,別紙[1]と書きましたのは現行の2次方針と,それから,一番最初の1次方針のときに配慮事項に関してどんなような記述があったかというのを比較する形で,横表に対比する形でまとめたものでございます。2次方針に関していいましたら,配慮事項そのものとしては第1の3ポツの(2)という項目の中で,2つありまして,1つが芸術家等の地位向上のための条件整備という項目,それから,2つ目に国民の意見の反映等というふうな項目がございます。それから,2ページ目に飛びますけれども,現行の2次方針の中では第2が基本的施策というふうに位置づけられていますけれども,その中で配慮事項に関連する事項として,関係機関等との連携,それから,政策形成への民意の反映,こういったような事柄が関連する事柄として書かれているというふうなことになっております。その具体的な記述ぶりを表の形式でまとめております。
 それから,別紙[2]は,法律本体ではどのようなことが書かれているかということを抜き書きで書いたものを用意しております。今,申し上げたような事柄のもととなっているのがこの基本法ですけれども,基本法の第2条の中で第2項のところでは,「文化芸術の振興に当たっては,文化芸術活動を行う者の創造性が十分に尊重されるとともに,その地位の向上が図られ,その能力が十分に発揮されるよう考慮されなければならない」という記述がございます。また,同条の第8項においては,「文化芸術の振興に当たっては,文化芸術活動を行う者その他広く国民の意見が反映されるよう十分配慮されなければならない」と,こういったような記述がございます。
 今の基本理念に関連する基本施策の条項の中では,例えば16条のところで芸術家等の養成確保に関する要配慮事項という事柄が書かれておりますし,第32条については関係機関等との連携に関して配慮すべきだということが書かれております。また,第34条については政策形成への民意の反映といった事柄も同様に書かれておるということでございます。
 それから,別紙[3]は先ほどもご説明した部分ですけれども,先般の意見募集及び関係団体からのヒアリングの中で,配慮事項に関連してどんなようなご意見が出されていたかというものを抜き書きで書いたものを用意しております。これも参考にしていただけたらありがたいというふうに思います。
 以上のような点を踏まえまして,今回の第3次方針の中でどのような配慮事項を書いていったらいいかということについて,ご審議いただけたらありがたく存じます。
 以上でございます。

【宮田部会長】 ありがとうございました。
 この辺も含めまして,また,しばらくご議論いただければと思っております。約20分ほどございますので。
 それから,先ほど里中先生,手を挙げられていて,そのまま進めてしまって申しわけございません,よろしゅうございますか。

【里中委員】 非常に細かい問題で,かえって申しわけないのでいいです。

【宮田部会長】 そうですか。どうもご無礼をしました。
 どうぞ,後藤先生。

【後藤委員】 質問なんですけれども,なぜ,この配慮事項というのをわざわざ重点戦略のところと区別して,具体的施策とも区別して書く必要があるのかというのがちょっと私はわからなかったんですね。どういう一体,位置づけになるのか,この配慮事項というのは,それを教えていただきたいんですけれども,なぜ必要なのかということと,どういう意味があるんですか。

【宮田部会長】 これはどういうふうにしましょうか。

【滝波企画調整官】 なければないでいいのかもしれませんけれども,基本法の中では一応,配慮事項ということが明示されておりますし,1次方針,2次方針,それぞれ配慮すべき事項ということが一応書かれております。必要ないというご意見はもちろんあるのかもしれませんけれども,今回,第3次方針をつくるに当たりまして,何らかそういったものが必要だというのであれば,1次方針,2次方針の際の書きぶりも少し参考にしながら,現状を踏まえた配慮事項というものをやっぱり書いていく必要があるのかなということで,今回,このような資料を提示させていただきました。

【平田内閣官房参与】 恐らく,今回,一つあるとすれば文化庁内だけでは処理できない問題,要するに国際交流基金,地域創造,官公庁等との連携というのが今回,強く打ち出されると思いますし,これは内閣全体の方針でもあります,縦割りをとにかく廃して新しい施策をできるだけ進めるということですので,それは,今,お聞きすると配慮事項に入るのかなと思います。

【宮田部会長】 ありがとうございました。
 吉本先生,どうぞ。

【吉本委員】 今の平田さんの意見に関連して,文化省を打ち出すというのがありまして,私もぜひ打ち出してほしいと思うんですけれども,現実問題として考えると,文化庁だけが独立して省庁になるというのはあまり現実的ではないと思うんですね。例えばイギリスは文化・メディア・スポーツ省,それはブレア政権のときに文化遺産省とかいう古臭い名前だったんですけれども,それを改組しています。それから,たしか韓国は文化・観光,スポーツが入っているんでしたっけ,それから,シンガポールはたしか情報・コミュニケーション・文化省となっていますので,そういうふうに幾つかが一緒になっているんですね。
 ですから,文化と親和性のある領域があると思いますので,例えばスポーツでもいいかもしれないし,観光でもいいかもしれないし,何かそういうところと一緒に省にすることによって,今の政権が何を重点としているのかというのを明確に打ち出していく。何かそういうことも配慮事項のところにあわせて書けば,より現実的になるんじゃないかなというふうに思います。

【宮田部会長】 ありがとうございます。
 自民党の時代の話で恐縮なんですが,安倍政権のときにアジアゲートウエー戦略会議で,そのときに初めて先生といろいろお話しした,私は文化のほうで7人の中で出席させていただいて,そこで,私は文化財産省をつくってくださいという言葉をつくりました。それは,文化そのものは日本の国の財産であるということで,財産というのはいわゆる下世話なお金の問題ではなくて,非常に精神性ももちろん含めた上での財産省をつくって,その中には包括的にはスポーツやいろんなものも含まれるんですよという提言をさせていただいたことがございます。
 その後は,アジアゲートウエー戦略会議もすぐなくなったものですから,そんなことがあるので,その余波というわけじゃないんですが,先ほど申しましたが,アジア芸術サミットというようなのを行わせていただいたりとかもやっていますけれども,そういうふうに先ほどの後藤先生のお話に対するお答えになっているかどうかは別としても,やはり平田参与のお話からくれば,私どもが今,お話ししている,議論していることはいわゆる文化庁の部分だけではなくて,大きく日本をどうしていきたいというふうな話に発展しているのではないかなという気がします。
 いかがでしょうか。

【吉本委員】 その上で,1次方針,2次方針で入っている配慮事項なんですけれども,2次方針の配慮事項は,芸術家の地位向上と国民の意見の反映ということで,これは1次方針を引き継いでいると思うんですけれども,何か,芸術家の地位向上に配慮しなければいけないと書いちゃうと,今,芸術家の地位向上への配慮が足りないんじゃないかとか,あるいは国民の意見を聞くって当たり前のことですよね。ですから,もうここは書かなくていいんじゃないかというふうに私は感じたんですけれども,ぜひ,そのあたり,皆さんのご意見を聞きたいと思って発言させていただきました。

【宮田部会長】 それは青柳先生のお話から聞いてもそうですよね。いつまでも青年期じゃないんだ。

【吉本委員】 言いわけっぽくなる気がしますね,配慮事項と入れちゃうと。この2次方針のとき,職業という言葉を入れるのに苦労して,ここに入ったんですね,雇用という言葉を重点事項に入れられなくて。

【後藤委員】 私はやはり配慮事項みたいなところに,配慮すべきこととして何かを書くというよりは,文化省みたいなことはばんとトップに書くというか,重点戦略の冒頭に書くぐらいのほうが特別に配慮しなければいけないというような正確じゃないような気がするので……。

【吉本委員】 私が言ったのは,文化省をつくるのを配慮事項に書くということじゃなくて,文化省をつくるというのは頭に出すんですけれども,でも,文化だけでは難しいんじゃないかということを配慮事項に書くという。

【後藤委員】 それならわかります。
 施策の基本的な考え方の流れをつくっていただいたので,ずっと読んでいたんですけれども,やっぱり,今回,新しく入っているのは先回までは文化力といって地域振興までだったんですけれども,今回はそれプラス産業振興,観光というようなことが入って,より強く文化と産業あるいは文化と観光というふうな考え方が入ってきていますし,あと,外交もそうですけれども,そういうのがより強く打ち出されていたりとか,あと,新しく入っているのが暮らしの文化だったり,アーカイブの構築というようなことで,結構,第2次にはなかった新しいものが入っているんですけれども,それは,つまり,文化政策の対象が非常に広がっているということを意味しているので,吉本さんがおっしゃったことと同じことなんですけれども,文化政策の対象が広がりますので,従来の文化庁の政策の範囲をもっと広げて,産業とか観光とか外交にも広げて,それを統括するような文化省が必要なんですということを冒頭にばんと書くということがいいのではないかと思います。

【宮田部会長】 ありがとうございます。
 そうすると,小田先生のおっしゃりたいことも包括されてきますね。
 たまたまですが,経産省のある大きな会議に出席させていただいて,隣に,この話はしたかな,ワタナベ,もとのトヨタの会長さんとご一緒だったんですけれども,お話ししているうちに,何かこの話は文化庁でしたほうがいいですねみたいな話,逆にもったいないなという話を随分,経産省でしているとかというような,ちょっと,そこも縦割りだなという感じがしたんですね。いろんなお話をするんだけれども,これは書かなくていいかね,人の話が出てこないんですよ,あっちは。ここは人の話は出るんだけれども,経済,いわゆる密接したものの部分での,だれでも皆さん,お財布をもっていますよね。その部分の話が出てこない。だから,それが一体となったところで人間というのは成り立っているんじゃないかなみたいな部分をもうちょっとここで出したらいいのかなという感じ。
 そうすると,文化省,いわゆる新しい言葉をつくって,僕は文化財産省とは言っているんですけれども,何か大きな力みたいなのがこの中にどんと出ると,先ほどの文化力ではない何かの旗印というものもつくれるんじゃないかという,脱線しますけれども,旅という字がございますよね。旅という字は旗のもとに人が集まって前へ進んでいるという字なんですよね。それが語源なんです。すごくすてきな字なんですよ。何かそういうものをこの会の中から新しいことを進めていくというふうになったらいいのかななんて思う。
 ちょっと脱線しましたけれども,また,ほかの先生方のお話に。
 さて,その辺のことも含めましていろんな論点がございますが,いかがでしょうか。どうぞ。

【吉本委員】 今のことに関連して,きょう,たまさか近藤長官からちょっと預かった資料で,イフカという文化庁やアーツカウンシルの国際協会のようなところがあって,そこの発行する小冊子があるんですけれども,その表紙にまさしくキーワードが書いてあります。それはThe arts mean the world to us,つまり訳せばどうなるんですかね,芸術は私たちのすべてだとか,我々の世界ですみたいなことだと思う。何かそういうのを考えられるといいかなと思ったので,ちょっと目の前にこれがあったので,つい,紹介させてもらいました。では,何と言えばいいのかというのはなかなか難しいですけれども,先ほどから成長期が終わって成熟時代だという意見もありますので,例えば,文化芸術から新しい日本が始まる,みたいな言い方もあるかなというふうに思いました。

【宮田部会長】 ちょっとアイデアをほかからももらいましょう。そういうのの名人がちょっと何人か,知り合いがいますので,ちょっと聞いてみます。そういうのも大事かもしれないですね,より人を引きつける。わかりました。ありがとうございます。
 今,後藤先生もお帰りになりましたが,2時間半はきついよ。だんだん意味がなくなってくる。ここまで。
 それで,次のことについて事務局からちょっと話して。

【滝波企画調整官】 ありがとうございます。
 きょう,予定をしておりました3つの議題に関する意見交換,本当にありがとうございました。
 次回でございますけれども,次回は資料5番の資料をごらんいただければと思いますが,第13回として11月8日,(月)に,3F1の特別会議室のほうで,本日の議論の続きということを基本的には考えております。今,2時間半はどうかという話もございましたので,少し考えますけれども,基本的には本日のご審議の続きという形で進めてまいりたいと思います。本日,出されました意見を踏まえて,少し整理したもので改めてお示しさせていただきたいというふうに思っております。
 以上,どうぞ,よろしくお願いします。

【宮田部会長】 少し早目に終わりましたけれども,どうぞ。

【里中委員】 宿題で,みんなでいい名称を宿題で持ってくる。

【宮田部会長】 どうして,きょうは平田先生もそうでしたけれども,里中先生,最後に早く切り上げたのはその意味があるということを私は言おうかと思っていた。落ちをとられてしまいました。ぜひぜひ,皆様,お知恵をいただきたいと,かように思っております。それから,傍聴している人もただで傍聴しているんじゃなくて,お知恵をどんどんいただけたら,ぜひぜひと思っております。よろしくどうぞお願いいたします。
 それでは,本日はこれにて,ありがとうございました。

18:16 閉会

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