文化審議会第8期文化政策部会(第13回)議事録

1.出 席 者

(委員)

田村部会長代理,青柳委員,小田委員,加藤委員,後藤委員,佐々木委員,高萩委員,坪能委員,富山委員,西村委員,浜野委員,増田委員,山脇委員,吉本委員,福原文部科学省参与,平田内閣官房参与

(事務局)

清水事務次官,近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,芝田長官官房審議官,小松文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,大木政策課長,滝波企画調整官,他

2.議事内容

【滝波企画調整官】皆さんこんにちは。少し時間前ですけれども,資料の確認からまず始めたいと思います。
 各委員のお手元には,本日の会議の配付資料を用意しております。
 まず,議事次第の下に資料の1番といたしまして,答申・第3次基本方針の構成(案)の資料がございます。それから資料の2としまして,重点戦略に関する整理一覧表,横長の表形式の資料でございます。それから資料3としまして,「第2 文化芸術振興のための重点施策」本文(素案)の資料がございます。それから資料4としまして,基本的施策(対比表)という表形式の資料がございます。それから資料5としまして,当面の日程及び進め方(案)の資料がございます。
 それから参考資料の1番としては,いつものとおり部会の名簿,それから参考資料2としまして,基本的視点の変遷に関する資料,それから資料3としまして,文化芸術振興基本法の条文のコピー,それから参考資料4としまして,意見募集及び関係団体ヒアリングにおける主な意見概要があろうかと思います。
 そのほか,机上参考資料としまして,いつものとおり6月に出されましたこの部会の審議経過報告の冊子,それから机上参考資料の2番としまして,文化芸術の振興に関する基本的な方針,第2次基本方針の冊子,それから机上参考資料3としまして,先月末に国会のほうに提出をさせていただいております展覧会における美術品損害の補償に関する法律案をお配りをしておりますので,お確かめいただけたらというふうに思っております。
 きょうの資料は以上ですけれども,もし過不足等ございましたら,お申しつけをいただけたらというふうに思います。特にないようでしたら,本日は部会長代理,田村先生のほうから進めていただけたらというふうに思っております。
 どうぞ,よろしくお願いします。

【田村部会長代理】それでは,ただいまより文化審議会第13回文化政策部会を開催いたします。
 本日はご多忙のところをご出席いただきまして,ありがとうございます。本日はご都合により,宮田部会長がご欠席ですので,私のほうで進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 なお,本日は部会長のほか,酒井委員,里中委員,鈴木委員,堤委員の4名がご欠席と承っております。
 それでは,本日の議事に入りたいと思います。前々回,9月22日から答申に向けた論点別審議に入っておりますが,本日は引き続きまして,重点戦略の在り方,それから政策目的・戦略目標の在り方について審議を行うとともに,新たに基本的施策の在り方について審議いたしたいと思います。
 お手元の議事次第に記載のとおり,時間配分の目安として,議題1,議題2,重点戦略と政策目的・戦略目標の在り方については一体的に60分程度,それから議題3の基本的施策の在り方について,50分程度を予定しておりますので,ご協力のほどよろしくお願いいたします。
 それでは,早速本日の議題に入りたいと思います。重点戦略の在り方と,政策目的・戦略目標の在り方については,前々回,9月29日より審議に入っております。それから前回10月20日には,重点戦略に関する整理一覧表と,配慮事項などについて多岐にわたるご意見をいただいたところでございます。
 本日はさらに整理一覧表を精査するとともに,重点戦略部分の本文,素案について審議させていただきたいと思っております。関連資料は事務局より事前送付いただいておりますが,整理一覧表の前回からの主な変更点,本文の内容について,事務局から簡潔にご説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【滝波企画調整官】それでは,資料に基づきましてご説明をしたいと思いますが,まず,資料の1番をごらんをいただきたいと思いますけれども,これはいつもの資料ですが,本日,ご審議いただきたいと思っておりますのは,真ん中の答申・第3次基本方針案のところ,赤で囲った部分でございまして,第2,文化芸術振興のための重点施策として,1.6つの重点戦略というふうに書いている部分,この部分を中心にしたいと思いますし,それからその下には2.として,重点戦略を推進するに当たって留意すべき事項という部分がございます。それからその下には,第3として,文化芸術振興に関する基本的施策という部分がございます。それからその下に,点線の薄いところがありますが,別添として重点戦略の戦略目標評価の進め方指標(例)という部分,ここの部分までを本日ご議論いただきたいというふうに思っております。
 そこで,まず第2の重点施策の1.6つの重点戦略の部分に関してですけれども,前回にもこれの1つ前のバージョンとして,資料2ですけれども,整理一覧表というものをご用意をしてご議論いただいたところでございます。
 本日,この資料2としてお示ししておりますのは,その際にお出しいただきました意見を踏まえまして,少し事務局のほうでも整理をし直して,各委員のほうにあらかじめ送付をさせていただいた資料になっております。主な修正点につきましては,この資料の中で赤字で書いた部分になっております。この部分について少し中心に説明をしていきたいというふうに思います。
 そこで資料2の一番右側ですけれども,評価の進め方・指標(例)というふうに書いております。ここの部分について,少し前回から変えた点が多くなっておりますので,恐らくこの辺を中心に議論をしていきたいというふうに思っております。前回,ここの部分は,評価指標基準例という言い方をしておりましたけれども,少し実績にとどまるような指標もありがちだということもありましたので,少しその辺を整理をしまして,評価の進め方・指標(例)というふうな表現に変えてございます。
 重点戦略の1番は,文化芸術活動に対する効果的な支援という部分でございますけれども,ここの中でやはりその評価の指標の部分がかなり実績にとどまるようなケースが多くあったということで,今回お示ししている資料の中では,特に※印で書いた部分ですけれども,例えば1つ目のダイヤ印につきましては,新たな支援の仕組みの有効性を把握・検証するということで,例えば支援対象団体に対するアンケート調査を行っていく。その中で調査項目の例としては,入場者数とか,寄附金収入の状況,そういったものを勘案してみたらどうかというふうなことを例として挙げておりますけれども,このような形で,実際の評価の進め方を書いていくというふうに少し修正をしております。以下,同様ですけれども,そのような修正を加えていった形の資料のつくりにしてございます。
 それから,上から5つ目のダイヤ印のところに,展覧会における美術品損害の補償に関する法律という表現が出ております。これは先ほど,資料の紹介の中でご説明しましたとおり,先月末に文化庁から国会のほうに法案の形で提出をした法案でございまして,これに基づきまして美術品の国家補償制度を導入するということと,適切な制度運用を図るというふうな目標を設定しようというものでございます。ここの評価の進め方や指標の例としては,展覧会の企画内容,作品の充実度,地方巡回展の状況等について,文化審議会において検証するというふうなくだりを書いております。
 また,美術品国家補償制度の導入に伴って,保険料がどれだけ軽減されたかということも大きな指標になるのではないかというふうに思っているところでございます。
 続きまして,次のページ,重点戦略2番でございます。文化芸術を創造し,支える人材の充実に関してでございます。ここの中では,政策目的・戦略目標の箱書きのところを少し文章を変えておりまして,後段のところですけれども,これらの取り組みを通じて,文化芸術を創造し,支える人材の育成・充実を図り,もって我が国の文化芸術の永続的な継承・発展を図るというような表現に修正をしております。
 それからここの中では,やはり先ほどと同様ですけれども,評価の進め方,あるいは指標(例)というところで表現を少し変えておりまして,例えば2つ目のダイヤ印に関しましては,優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業におけるアートマネジメント研修や,舞台芸術者研修への参加者数,あるいは参加者の満足度,文化施設におけるそれら研修の受講者率等の指標が考えられるかというふうに思っております。
 それから3つ目のダイヤ印につきましても同様ですけれども,※印でつけ加えておりまして,文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業に関する効果を把握・検証するといったような形で評価を進めていったらどうかというふうに思っております。なお,この重点戦略の最後のダイヤ印につきましては,夏の審議経過報告の時点におきましては,文化芸術の振興に当たって,大学等の関係機関との連携を強化するというふうなことが書いておりましたけれども,この部分につきましてはまた後ほどご説明したいと思いますけれども,関係機関との連携等については,重点戦略を推進するに当たって留意すべき事項という部分のところで記載をしていくというふうな整理にしたいというふうに考えております。
 次に重点戦略の3番ですけれども,ここにつきましても政策目的・戦略目標の箱書きの部分の表現を少し変えておりまして,末尾のところですが,次代の文化芸術の担い手や,鑑賞者を育むとともに,心豊かな子どもや若者の育成に資するというふうなまとめにしております。これらにつきましての評価の進め方・指標例でありますけれども,2つのダイヤ,それぞれ共通して言えることとして,次代を担う子どもの文化芸術体験事業の体験した子どもの数に加えまして,次代を担う子どもの文化芸術体験事業の実施によって,学校の教育活動等に与えた効果というものをアンケート調査によって把握をしていくということが考えられるのではないかというふうに思っております。その点の修正をしております。
 それから次のページでございます。次は重点戦略の4として,文化芸術の次世代への確実な継承という部分であります。ここにつきましては,2つ目のダイヤ印の評価・指標(例)のところで,先ほどと再掲になりますけれども,文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業に関する効果の把握・検証ということを評価の進め方のところに書き込んでおります。
 それから重点戦略の5番ですけれども,ここにつきましては,前回の議論の中でも少し,表題のところですが,見直しについての意見がございまして,地域振興,観光・産業振興等への活用というふうな表現に改めております。それに伴いまして,政策目的・戦略目標の箱書きのくだりの部分も対応して修正を加えております。また,同様に,最初のダイヤ印のところにつきましても,同じように表現ぶりを修正をしております。
 それから評価の進め方・指標(例)のところですけれども,ダイヤ印の1つ目,2つ目に相当する部分に関して,※印で文化芸術創造都市における文化芸術以外の分野への波及効果の検証というものを新しく追加をしております。
 また,先ほど申し上げたのと同様に,再掲ですけれども,支援対象の劇場・音楽堂における稼働率,自主公演数,運営体制,地域住民の満足度といったものも掲げております。
 続きまして,最後,重点戦略の6番でございますけれども,文化発信・国際文化交流の充実に関してでございます。ここにつきましては評価指標をかなり変えておりますけれども,最初のダイヤ印に関しましては,文化芸術の海外発信拠点形成事業により,支援した芸術家のその後の活動成果ということで,その支援を受けた後の活動成果というものを評価していくということをしたらどうかと。例えば,受賞歴等によって評価できるのではないかというふうに考えております。
 また,文化交流史のイベントがございますけれども,これの行ったイベントの参加者に対するアンケート調査ということも考えられるのではないかというふうに思っております。
 2つ目のダイヤ印に関しての評価の進め方ですけれども,支援対象となる国際芸術フェスティバルへの参加国数,参加芸術家数,あるいは参加者数といったものが考えられるのではないかというふうに思っております。また,メディア芸術祭への海外からの応募者の数,あるいはメディア芸術祭の来場者の満足度といったものも指標になり得るというふうに考えております。
 それからこの項目の一番最後のダイヤ印ですけれども,前回の審議の中で,少し答申案としての書きぶりとしては簡略化し過ぎではないかというふうなご意見もございまして,今回の文章としては将来的な東アジア共同体の構築も念頭に,東アジア芸術創造都市(仮称)や,大学間交流における活動等ということで,夏の審議経過報告における記述ぶりを基本的に活かしながら掲げるというふうに改めております。またそれに対応して,評価の進め方・指標(例)のところでは,東アジア文化芸術会議の参加者に対するアンケート調査を行うといったようなくだりを新たに追加して記載をしております。
 このような形で,重点戦略に関する整理一覧表については,改めて整理をし直したところでございます。これを文章の形に直してみたものが資料3でございます。あくまでこれは素案ということになりますけれども,最終的な答申,あるいは第3次基本方針ということを頭に入れまして,実際にどういうふうな書きぶりになるのかというのを書き出していったものがこの資料3でございます。
 つくりとしましては,先ほどの資料2の文章から基本的に抜いてきて書いておりまして,例えば先ほどの整理一覧表でいいましたら,重点戦略1でいいますと,この政策目的・戦略目標の箱書きがございましたけれども,この最初の箱書きのところを資料3でいうところの重点戦略1.というふうに書いた後ろのリード文というふうなところに,大体改めて書き出したというふうにしております。若干,文章の体裁を整える等の関係で,文字数が変わっておりますけれども,おおむねこの趣旨をそのまま書いたというものになっております。また,資料3のそれぞれ箱が書いてありまして,箱の中には重点的に取り組むべき施策として,ダイヤ印が幾つか並んでおりますけれども,このダイヤ印の内容は,先ほどの整理一覧表の一番左側の答申・第3次基本方針案のところに書き出していったものを,そのままここにはめ込んで書いております。
 このような形で最終的な答申になったときには,こういう姿になるだろうというのを想定をして書き出していったものがこの資料3でございます。したがって重点戦略1から重点戦略6までにつきましては,この整理一覧表の記述と基本的に同じものを書いておるというものになっております。
 この資料3の一番最後のページ,5ページなんですけれども,ここにつきましてはこの資料2の整理一覧表には記載のない部分でございまして,前回のこの部会の中で配慮事項に関してご議論をいただいた部分を新たにつけ加えて書いた部分でございます。前回の部会におきましては,配慮事項としまして,芸術家の地位向上のための条件整備,それから国民の意見の反映等といったことを,第2次基本方針ベースで書いておりましたけれども,そこの部分に関しましては,前回の議論の中で少し配慮事項というほどのことではないのではないかというような意見も多くあったかと思いますので,ここではその辺のくだりはやめにしまして,前回の議論の中でむしろ大きく出された意見として,横断的かつ総合的な施策の実施というふうなこと,例えばということでここに少し書いていますけれども,各重点戦略ごとに相互に関連する事柄というものがあるだろうということで,個別施策の企画立案段階からそうした相互の関連性に留意するということとともに,施策の横断的な実施を図るといったようなくだりを新しく書き込んでおります。
 また,それからもう一つの意見として,アーカイブの構築であるとか,くらしの文化であるとかといったような,文化政策の対象が広がってきているということを考えますと,人材育成,地域振興,観光・産業振興等への活用,文化発信,国際文化交流などを念頭に置いて,文化芸術各分野中心としつつ,教育,福祉,地域振興や観光・産業振興,文化外交など,幅広い分野との関連性を踏まえた領域横断的な施策の実施が求められているというふうなくだり,それからこのため,関係府省間の連携・協働をより一層強化するとともに,関係機関,関係団体等との協力を促進し,国家戦略として施策の総合的な推進を図るといったような事柄を新しく留意すべき事項として書き込んでおります。
 それからその下,(2)でございますけれども,ここに関しましてもやはり前回の部会の中で,特にPDCAサイクルの確立という部分に関しての意見があったというふうに思っておりますので,重点戦略に係るPDCAサイクルの確立ということと,この文化審議会において重点戦略に基づく施策の進捗状況を年度ごとに点検することとして,あわせて有効な評価指標の確立に努めるといったようなくだり,それから定量的な評価のみならず,定性的な評価も活用していくというふうなこと,その際には評価づくりの指摘もあるので,年度ごとに選択的な評価を行うということも検討するんだといったようなくだりを新しく書き込んでおりまして,このような形に整理し直しまして,タイトルとしても従来の配慮事項ということから少し変えまして,留意すべき事項というふうなことで,新しく書き込んだというふうな整理にしてございます。
 なお,前回お示しした配慮事項の中で,芸術家の地位向上とか,国民の意見の反映といったことがありましたけれども,ここの部分に関しましてはまた後ほどご議論いただきたいと思っていますが,第3の基本的施策という部分の中で,関連の記述を盛り込みことによって対応していきたいというふうに思っております。
 重点戦略に関しての説明は以上でございます。どうぞよろしくご審議のほど,お願いいたします。

【田村部会長代理】ありがとうございました。
 それでは,まず整理一覧表を精査する観点から,戦略目標,評価の進め方・指標の主な変更点を中心に皆様のご意見が反映されてこのような形になったと思いますけれども,これについてご意見などおありになりましたらお願いしたいと思います。
 加藤委員,お願いします。

【加藤委員】全体に非常に論点が整理されてきたと思うんですけれども,少し細かい点で申し上げてもよろしいですか。表現が幾つかもうちょっと整理したほうがいいのではないかと思う点があるので,それを2項目だけ申し上げますが,1つはいわゆる重点的に取り組むべき施策として挙げられている中の,一番最初の部分の文化芸術団体にとってより経営努力のインセンティブが働くような助成方法という,この経営努力のインセンティブが働くようなというのが,やっぱり意味がよくわからないというか。ここは,資料3のリードの部分の中に,赤字補填や,自己収入の増加等のインセンティブが働かないとの問題云々という指摘がうまくここに記載をされていまして,そうするとむしろこの施策の部分の中では,もうちょっと文化芸術団体にとって創造性を発揮するとか,あるいは継続的な組織の発展にとって効果的な助成方法,ぐらいの表現のほうがむしろここではわかりやすいのではないか。
 それから同じ項目の中で,1公演ごとの審査の積み重ねとしての年間の活動への総合的な支援というのも,何か意味がよくわかりにくいんですよ。それでこれも年間の活動への総合的な支援というか,年間の総合的な活動への支援というか,何かそういう言葉で十分なのではないのかなという気がいたしまして,一応,1公演ごとの審査の積み重ねという部分は,特にここに表記しておく必要はないのではないか。あえてどうしても表記するというのならば,公演というのは舞台芸術だけを想定していることになるので,むしろ近年のプロジェクト型のプログラムの推進の仕方みたいなことを考えると,もう少し幅広い用語,1事業ごとのとか,何かそういう用語に変えたほうがいいのではないか。いずれにしてもここの部分がちょっと一般に表現として理解しにくいかなというふうに思った点が1つでございます。
 それからもう一つは,3つ目の部分ですが,アーツカウンシルについて触れている部分なんですが,この中で新たな審査・評価の仕組みである日本版アーツカウンシルという定義づけがされているんですけれども,アーツカウンシルというのは,確かに審査・評価をすることによって,助成プログラムのより効果的な運用のために,新たなプログラムを開発するとか,そういうことに役立てるためのこうした審査・評価は当然やるとしても,さらにはそのプログラムそのものを開発するとか,あるいは助成金の交付のような仕事もアーツカウンシルにとっては非常に重要な柱なので,この定義だけでは少し不足なのではないかなというふうに思いまして,もうちょっとこのあたりをアーツカウンシルの定義をもう少し幅広く記載をしたほうがわかりやすいのではないかなというふうに思いました。
 以上でございます。

【田村部会長代理】ありがとうございました。
 前と文化芸術活動に関する効果的な支援というものの前のところがふえていまして,それと中とがダブっている感じがいたしますね。
 ほかにございますでしょうか。どうぞ。

【西村委員】ここのところ少し欠席がちだったので,議論が進んでしまっているんですけれども,文化財に関して少し申し上げたいと思います。例えば資料2の整理一覧表の重点戦略の4とか5に関連しているところなんですけれども,どうも書きぶりが文化財に関しては保存・活用を一層進めるというようなニュアンスで書かれていて,もちろんそれは大事なんですけれども,もう一方でやっぱり文化財のすそ野を広げるとか,いろいろなもの,さまざまなものの価値を評価して広げていくんだというところも入れていただきたいなという感じがするんですね。登録制度をたくさんやっていくとか,例えば最近ですと,記憶遺産だとか,新しい発想が出てきたり,地域全体を広く文化的な地域として評価するという歴史文化基本構想の発想もあるわけですから,それとか例えば,生活文化ですね。重点戦略5の中にくらしの文化という言葉があって,これはこれで非常にいいんですけれども,それは同時にそういうものを文化財,文化遺産としてきちんと評価していくということですよね。農村の生活の在り方なんていうのはそうですね。
 ですから,文化財という言葉がそういうイメージをもたらしているところはあると思うんですけれども,もっと広く豊かな日本の文化遺産をもう少し広く認めて,検証して,それを観光や産業や次世代へつないでいくというような,もうちょっと前向きの書き方をしていただけるともうちょっと広がりが出てくるのではないかなというふうに思います。
 以上です。

【田村部会長代理】ありがとうございました。
 ほかにご意見ございますでしょうか。
 増田委員。

【増田委員】前回のときに重点戦略6のところの,文化発信・国際文化交流の充実という言葉,そのまま目標の施策になっているので,戦略という言葉にはなじまないなという意見があったと思うんですけれども,これはそのままに固定されていますけれども,どういうお考えであれしたんでしょう。重点戦略6のところですね。10月20日のときには,このままでは別に,まさにこういうことなので,戦略というのではないのではないかと。充実するのが目標ではないかというようなお話が出たと思ったんですけれども。

【田村部会長代理】すみません,6のどこでございましょうか。

【増田委員】6の一番上のタイトルのところです。重点戦略6のタイトルの名前が,重点戦略6として文化発信・国際文化交流の充実という語句になっているのは,何々の充実というのは,それこそ目標であって,これは戦略用の言葉ではないのではないかという意見が出たと思いますけれども。

【田村部会長代理】滝波さん,いかがでございましょう。

【滝波企画調整官】もし,ふさわしくないようでしたら,このような形に直してみたらどうかということをおっしゃっていただいたら,それに応じてまた議論が深まるのかなというふうに思いますので,お願いします。

【田村部会長代理】これについて,何かご意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。単に充実だけではないということでいらっしゃいますよね。

【加藤委員】具体例があるわけではないんですけれども,考え方として国際的な文化交流の場面でいうと,これまではどちらかというと,海外の優れた文化を日本に紹介することが国際文化交流にとって非常に効果的というか,重要だという理解があったように思うんですが,それに対して,日本の文化を海外に発信をするという,それも古典的なもの,伝統的なものだけではなくて,現在のものを含めてというところまでは大分理解が促進されたと思うんですが,その両者をうまく結びつけて,何とか国外へというか,海外へ発信をしていくというのが,今の国際文化交流の中の最も重要な戦略になるのではないかなと思うんですが,その辺の表現はどういうのが一番ふさわしいかはともあれ,そういう考え方をもう少し打ち出していくのも重要な点かなというふうには思います。
 特に我々産業の世界にいると,輸出はもはや一番重要なのは当然のこととして理解しているわけで,そういう観点からいうと,文化だけがなぜ輸入を相変わらず重視しているのかがよく理解できないということもありますので,そうした点から見ても,ぜひ外へ発信をしていく,輸出をしていくという観点をうまく表現すると,もちろんそのことを通してあわせて真の国際的・文化的な理解を促進するということももちろん非常に重要な点だろうと思います。

【田村部会長代理】ただ,漫画やアニメのように,すばらしければ自然に海外に発信されているという,たしか韓国の方が言っていらしたのですが,いわゆる大衆文化が開放される前から私たちは日本の漫画で育っていますと,すばらしければ自然に発信されていくという考え方もあるかなと思いますが。

【加藤委員】もちろん,世界中に日本の文化がよく知られている分野というものもあろうかと思うんです。それは今まさにクールジャパンで理解をされているような漫画とかアニメとかに代表されるような新しいメディアとしてのアートというものは,大変よく知られていますし,それから継続したこれまでの努力によって伝統的な文化についても,相当な理解が進んでいるということは間違いないと思うんですが,しかしまだまだ実は我々から見るとというか,世界中から実はひそかに注目をされているにもかかわらず,日本側が発信の努力をしていない,十分果たしていない分野とか,活動とかというものも,少なからずあるかと思いますので,そういう点からいうと,まだここの,優れたものなら自然に理解されるという側面もあることは事実ですが,しかしながらやはり戦略的に発信をしていくということをもっとしないと,明らかに今,東アジアにおいては,韓国,中国は文化の世界発信ということを本当に国家戦略でやっている時代ですから,そういう中で日本だけが孤立するという点は否めないと思いますから,そういう意味では積極的なやはり発信戦略が必要なのではないかと思います。

【浜野委員】事実確認だけすが,田村先生がおっしゃった韓国でもいがらしゆみこ先生の「キャンディ・キャンディ」などの日本の漫画は何十年も前から人気がありましたが,日本製であることは隠されて,読者は知らなかった。日本の漫画だという認識が広まったのは最近です。各国は自国こそ,漫画を生んだ国だということで,韓国はマンファという漫画の発祥の地だと言い,国立の立派なミュージアムをつくっていて,日本にはないだろうということを言われるわけです。日本製の漫画が日本製だと韓国で正式に認知されたのは最近のことで,ちゃんと発信する努力をしないと,ただ消費されていくだけだと思います。

【後藤委員】今の発言とちょっと関連すると思うんですけれども,重点戦略5のところが,文化芸術の地域振興,観光・産業振興などへの活用というところですけれども,ここは地域振興ということなんですが,地域振興にしてもやはりグローバルなマーケットというか,そちらを意識をして地域振興したほうがいいと思いますので,5と6というのは実は非常に密接な関係があるというふうに思うんですね。そういう点でいくと,瑣末なことですけれども,一番左側のダイヤ印の真ん中のところで,地方芸術祭,アーティスト・イン・レジデンスなどによる地域文化の振興を奨励するとあるんですが,地方で国際芸術祭をやるということもたくさん行われていますので,地方でやるから「地方芸術祭」であるということではなくて,この「地方」をとって,「芸術祭」というふうなことでよろしいのではないか。むしろ地方で国際的なことを意識してやっていただくということが非常に重要ではないかなというふうに思います。

【後藤委員】今の発言とちょっと関連すると思うんですけれども,重点戦略5のところが,文化芸術の地域振興,観光・産業振興などへの活用というところですけれども,ここは地域振興ということなんですが,地域振興にしてもやはりグローバルなマーケットというか,そちらを意識をして地域振興したほうがいいと思いますので,5と6というのは実は非常に密接な関係があるというふうに思うんですね。そういう点でいくと,瑣末なことですけれども,一番左側のダイヤ印の真ん中のところで,地方芸術祭,アーティスト・イン・レジデンスなどによる地域文化の振興を奨励するとあるんですが,地方で国際芸術祭をやるということもたくさん行われていますので,地方でやるから「地方芸術祭」であるということではなくて,この「地方」をとって,「芸術祭」というふうなことでよろしいのではないか。むしろ地方で国際的なことを意識してやっていただくということが非常に重要ではないかなというふうに思います。

【田村部会長代理】今,世界を意識した地方での国際芸術祭ふえてきていますね。
 どうぞ。

【小田委員】奈良の発言に関連をいたしまして,地方芸術祭,私はこれでよろしいかというふうに思います。何回も申し上げていますが,やはり全体の国際的な日本文化という視点も大事でしょうし,やっぱり地域の芸術といいますか,暮らしの生活のやっぱり延長の中では,私は地方芸術祭,そして最後に地域文化の振興を奨励するということに結びつくものというふうに思いますので,私はこの表現でよろしいかというふうに思います。

【後藤委員】私の申し上げた趣旨が伝わっていないと思うんですが,私は地域文化を否定するつもりもないし,地域振興を否定するつもりもないんですけれども,地域振興をするのであればこそ,国際的な視野で地域振興をするということが重要な時代になっているのではないかというふうに思うんですね。日本国内だけを見て,日本の中の一地域,あるいは一地方というとらえ方ではなくて,例えばことし行われた瀬戸内芸術祭なども,国際というふうに意識して海外のアーティストとの関係を大事にしてやられたと思いますし,そういうふうなアートプロジェクトなどはもう既に国際的な展開を見せてやっていて,その場が地方であるという,それから地方の文化の振興,あるいは地域振興ということを意識しながら,そういうふうにグローバルに展開してやっているというところがふえてきているという意味では,その地域振興ということと,グローバルな視野を持つということが対立することではなくて,むしろ両立することであるということを申し上げたかったわけです。

【平田内閣官房参与】今の後藤委員のご指摘と小田委員のご指摘がとても重要で,これをあいまいにせずに,きちんと整理することがやはり非常に課題になるのではないかと。要するに例えば空港行政が99も空港をつくって,すべての空港をフルスペックでやって,全部国際路線を誘致しようとしてと,これは無理があるわけですよね。やはり地域振興は地域振興で自治体に大胆に地方分権をして,きちんとアイデアを出して競っていただくと。そして国際競争力のある演劇祭なり芸術祭というのはやはり限られますから,これを国が直接支援するものに関しては,やはり数を限って韓国がやっているように映画は釜山,美術展は光州というように,やはり重点的に支援をしていくということをはっきりしないと,これいつまでたってもやっぱり垂れ流しの印象が否めないと思うんですね。
 ここをはっきりやはりさせるということで,もうお互いのおっしゃっていることは,多分ここにいる委員の方はご理解いただけていると思うんですが,それを文言にきちんとやはり落として,はっきり区別させていく。ですからここでいうと,重点戦略5の中では,地方芸術祭のままでいいのかもしれません。そして逆にこの戦略6のところで,国際芸術祭については国が直轄で重点的に支援をしていくというような形の文言が恐らく必要になっていくのではないかというふうに思います。
 あと,もう加藤さんがおっしゃられたとおりで,もうこれは国際的な戦略がどうしても必要であるということと,それからもうこれも要するに国際競争力を持った,あるいは持つ可能性のあるものに,きちんと限って支援をしていくということ。例えば私たちがやっている演劇,舞台芸術のジャンルからいいますと,例えば若手はとにかくどんどん行かせたほうがいいと思うんです。今,若い方たちが海外に出ないということが問題になっていますが,しかし,何度も何度も続けて同じ劇団が全面支援をするのではなくて,例えば3回目以降の支援は完全に向こうの拠出額と同じだけ,要するに演劇祭に招待されたら必ずそれは正式招待ならお金が出ますので,その金額を支援するとかというように,いつまでも政府丸抱えではなくて,ちゃんと生き残ったものだけを,国際競争力のある生き残ったものだけをきちんと支援するというような階層化がやはり必要なのではないかというふうに思います。

【田村部会長代理】どうぞ,増田委員。

【増田委員】今,地域ということが出てきたので,ちょっと文化庁の方にもお伺いしたいんですけれども,私はちょっと不熱心なため,情報を把握していなかったんですけれども,9月27日付に,奈良の奈良新聞とか何かには発表されていたんですけれども,奈良県が文化財特区を何種類かこれから国に挙げていこうという形で,文化財修復特区,それから歴史地域整備特区,それから東アジア大学特区というふうに,文化関係は非常になじみのある特区を申請して,いろいろな法律や何かについても,軽減とか,緩和をお願いするような形で申請をしたというのが出ていたんですけれども,これはまさに奈良県が日本の中で中心的に文化財修復に関して,あるいは文化に関しては,自分のところが国の代表となっていこうという意気込みだと思うんですけれども,そこら辺に対して先月のあれでも,文化庁からはお話しありませんでしたけれども,文化庁としてはこれとの関係はどういうふうにお考えなんでしょうか。

【田村部会長代理】お願いします。

【白間伝統文化課長】ちょっと今の情報について,正確に詳細をまだ把握しておりません。恐らく特区の話ですので,内閣府等のほうに申請があったということが地元の報道等で載ったのではないかと思われますけれども,その詳細について,できましたら今度把握いたしまして,またご報告させていただきたいと思います。

【増田委員】これはもう既に奈良県のホームページに掲載されておりまして,概要等出ておりましたので,私も本当にきのう初めてこれにアプローチしたので,内容については把握しているわけではないんですけれども,ちょっと驚いたものですから,地域と国との関係で,こういう総合特区というのはかなり他省庁とまたがって,総合的な国の施策の中で行われることですので,その関係でこういうのが出てきたというのは大変いい衝撃でありました。ということです。ですから,文化庁がどの程度これと提携してやっていらっしゃるのかなという感じがしましたものですから,質問させていただきました。

【田村部会長代理】吉本委員。

【吉本委員】この資料2の一番右側の評価のことについて,何点か気がついた点があるので発言させていただきたいと思います。前回以降,事務局のほうでいろいろと工夫いただいて,随分いい感じになってきたと思うんですけれども,やっぱりこのアウトプットや実績をあらわす指標と,評価をあらわす指標というのがちょっと混在をしている気がいたします。
 例えば1ページ目の最初にありますアンケート調査というのはいいと思うんですけれども,入場者数とか,あるいは寄附収入の状況というのが,この一つ目の項目の評価になるのかなというのは,ちょっと微妙な気がいたします。例えばここでは助成を受けた団体がこれを受けることによって,作品の質がどういうふうに高まったのかとか,それを観客がどのように受けとめたのかとか,アンケートをするのであればそういった公演の質をはかれるような指標も入れてはどうかなというふうに思います。
 それから上から4つ目のところは拠点への支援になると思いますので,自主公演数はともかく,稼働率というのは貸し館も対象になると思いますので,違うかなと。だからここでは,例えば初演作品の本数とか,それからここでつくられた作品がほかの地域にもちゃんと巡回するものだったとか,あるいは将来的には海外から招聘を受けたとか,何かやっぱり拠点として行う中心的な作品が質的にもどのように高まったかというようなことを評価できないかなと思いました。
 それからその次のページに行きまして,ここもいろいろ出ているんですけれども,この中でちょっと気になったのは,重点戦略3のところの最初の項目の3つ目のポチ,黒字になっているところですね。目標とする巡回公演数及び派遣事業実施箇所数に対する達成度合いというのは,これは数値目標を設定しないとはかれないと思うんですよね。例えば5年間ですべての小学生が1回は体験しますとかいう目標を掲げて,それに対して1年目何%というようになっていくと思うんですね。だからこれは目標を出さないと評価できないと思うんです。その辺,目標は出す予定なのかどうかとか。私はできれば出したほうがいいのではないかと思うんですけれども,でも出すべきかどうかは判断の分かれるところでしょうし,工程表のようなことも含めてどうするのかというのはちょっと議論が必要な箇所ではないかと思いました。
 それとあわせて全体的なことで,これは留意事項の(2)に関係すると思うんですけれども,例えば支援をした団体にアンケート調査を実施してもらうにしても,どういうアンケートをするのかという設計が非常に重要になると思うんですよね。評価,特に質的な評価を行うためのアンケートをどうするかということも重要だと思うんですけれども,それにあわせて今も事業報告書というのを支援団体から出していただいていると思うんですが,その事業報告書とあわせて,この政策の目標が達成できたかどうかということを,文化庁が支援する形でアンケート調査等を行って,その支援した団体から政策評価を行うのに必要なデータを収集するというようなことも,この中に加えていってはどうかなと思います。
 それで,評価疲れというのが2段落目にありまして,これはまさしく独立行政法人とか,指定管理者制度の現場でも言われていることで,評価疲れしないような評価をしなければいけないと思うんですけれども,その次の行,選択的な評価というふうにあるんですが,重点戦略については,まだ評価疲れするほど評価していないのではないかというのが私の感想で,濃淡はあっていいと思うんですけれども,やっぱり重点戦略で6本挙げたものは,何がしかの評価を入れていくということをしたほうがいいのではないかと思います。後半議論するすべての政策について評価をやっていくというのは,さすがに難しいと思うんですが,重点戦略に絞って有効な評価を行うといったような書きぶりのほうがいいのではないかというふうに思いました。
 以上です。

【田村部会長代理】ありがとうございました。
 アンケートというのは,調査する側の見識というか,きちんとした答えが書かれていたとしても,それが評価されないというか,出てこないというのもあるような気がいたしますよね。

【吉本委員】そうですね。それと,芸術団体などでも独自にアンケート調査を既にやっていると思いますので,それをうまくそこと協力するというか,既にやっているものの例えば表側にはこの項目を入れてくださいというようなことにして,共通の項目をとれるものを入れたら,せめて文化庁が支援をしたものについては共通の指標というものが出てくるかなというふうに思います。

【田村部会長代理】ありがとうございました。

【平田内閣官房参与】今の吉本委員のご指摘に関連してなんですけれども,特に1番目の入場者数ですね。これは今回,発表になりました重点拠点,それから地域拠点の支援で,重点のほうには入館者数10万人という規定が入っていて,これは僕はカドオカさんにも直接申し上げたんですけれども,例えば演劇専用ホールの場合,年間入館者数10万人というのは,世界標準から見てもちょっと異常に高い数字なのではないかと。そうしますと,要するに文化庁の政策として,日本型の総合的な複合館をこのまま放置するのかということなんですよね。そうではなくて,どちらかといえば,音楽専用ホール,演劇専用ホール,使い方をきちんと限定して,創造拠点にしていきましょうという政策だったと思うんですが,これは入場者数だけをこういう高い数字で示されてしまうと,どういう政策を文化庁として打ち出したいのかよくわからなくなってしまうと思うんですね。ですから,施設ごとの入場者数などのきめ細かい設定がないと,非常に間違った政策誘導になってしまうのではないかという印象があるんですが,これ,高萩さん,しようがなかったんですか,10万人というのは。

【高萩委員】10万人という数に関しては,館に来た人の数だけではなくて,その事業がどのくらいの人に触れたかという数でいったほうがいいのではないかと思います。

【平田内閣官房参与】それイメージしているものはわかるんですけれども,そうするともう複合館が圧倒的に有利であって,要するにほかのこともやっている館,例えばYCAMみたいに図書館もあったらすぐ簡単に10万人行くわけですよね。一応,美術館,入場者は外すと書いてあるんだけれども,これ区別はできないですよね,はっきり言ってそれは。

【高萩委員】やはり公共のお金が入ってくるときに,どのくらいの人に触れたかということは大事です。ちょっと話がそれるのですけれども,今,日本の中では演劇に関しては,数で評価していくとすると,ロングランしかあり得ないんですよね。ところがロングランというのは役者のスケジュールや劇場のスケジュールなどから,かなり難しくなってきている。世界的にも演劇のロングランというのは少なくなってきている,ミュージカルはちょっと別なんですけれども。流れとしては世界的には公園や広場などでのパブリックビューとか,つくったものを触れる人の数をふやしていくという方向に行っている。やはり公共のお金,特に国のお金なんかが入ったときには,触れる数をふやしていく。どういう形で触れさせるか。本当に劇場に来た人だけの数をはかれば少ないかもしれないけれども,それをテレビで1回放送すれば物すごい数になってくる。それから地方公演をするとかという。その辺との複合的なことを,考えて欲しいと思っています。

【平田内閣官房参与】それもあれは入っている数字であって。

【高萩委員】今後,だからそこら辺を変えていこうということにはなっていると思います。

【平田内閣官房参与】全体の方向としては,専門館をふやすという方向はあるわけですよね。だからそこら辺との整合性がつくような評価の進め方・指標というものにしていかないといけないのではないかと思います。

【吉本委員】今の点に関連して,この評価指標のところをどのように書くのかというのは,この答申というか,最後閣議決定される文書に色を入れていくかということだと思うんですけれども,現実の問題を考えると,もう既に助成の公募とか始まっているわけですよね。ですから,この日本版のアーツカウンシルをつくって,まず審査・評価の仕組み,それだけでは不十分だという加藤さんのご意見もあるので,そこの記述を後で検討したいと思うんですけれども,これを導入に向けてということなので,何かその準備会のようなものをつくって,それでここに今,例えばアンケートの話とか出ましたけれども,具体的にどういうふうにそれを評価するのかというのも,今から始めないと私は何か間に合わないのではないかと思うんですね。
 ですので,例えばこの政策部会の関連では,そういうアーツカウンシルをつくるためのワーキンググループをつくって,まさしくこの評価をどうするかみたいなディテールな話はそこで議論しないと,この場ではやっぱり詰まらないと思うんですね。だからそういうこともあわせて,これがこの部会の審議事項になるかどうかわからないんですが,検討したらどうかということを提案したいと思います。

【田村部会長代理】最終的には私,今,平田参与がおっしゃったことは,文化庁の文化政策がどうなのかという問題だと思います。いわゆる文化芸術団体を重要視した文化政策をとるのか,さもなければ国民の文化環境が豊かになるという視点でとるのかという問題で,地方でいいましたら大体が複合文化施設であるということは事実でございますし,それがないとこの中にも書かれているような多彩な上質な芸術に地方は触れられないのが現実でございます。ですから,最終的には文化庁がどちらの文化政策をおとりになるかということだと思いますが,いかがでございましょうか。

【小田委員】そのとおりだというふうに思います。文化庁として国として,やっぱり国際的に発信をしていくと。当然,全体のやはり専門的な分野を含めて,文化振興の交流を図る。そして一方では,それぞれの地域といいますか,地方といいますか,そういった延長の中で展開をしていく。このやっぱり両面というものが出てくる。それがやっぱり国と地方との役割分担ではないかというふうには思います。そのことが両方のやっぱり振興が非常に重要ではないかというふうに考えます。例えば,私,こうして部会に出させていただきました。やっぱり東京で読む新聞と,京都へ帰った新聞は違うんですね。とり合い方が違うというふうに,もうつくづくそのこと,同じ朝刊,同じ夕刊を読ませていただいても,ひとつ違うということがもう常々,改めて感じたというふうに思っています。やっぱり東京と我々地域の関西と違うなという思いをいたしておりました。
 特に,全国版のそういう文化発信という視点と,地域の地方の文化発信というものは,多少の目的といいますか,趣旨がちょっと違うかなというふうに私は思っております。例えば,きょうの直近でいいますなら,11月3日は文化の日でございます。全国各地でいろいろな文化振興が行われているというふうに思いますが,具体的なこの関西地方のことを申し上げますならば,先ほども出ていましたが,奈良の平城京が1300年記念祭,今,とり行われております。そして,きのうですか,岡山では国民文化祭が開催をされました。無事閉会と,こういうことになったところでございます。そういったとり合い方が多少違うのではないか。
 京都は来年いよいよ国民文化祭,第26回目として開催をされると。それだけのやっぱり機運が盛り上がっております。岡山へ大挙いたしまして,来年に向けて実は文化協会の関係者に行っていただいた。それから,これもきのうでございます。熊本市で「古今伝授の間」と。水前寺公園がございまして茶室がございますが,それが400年ということで改築をされた。そのお披露目がございました。こういったやっぱり茶室で,かつゆかりのある,そしてそれだけの経過がある,茶室が京都から長岡京に,そして熊本に行ったと。それの改築がされたということが,ささやかな私はイベントであり,事業であろうというふうに思いますが,それぞれの地域にとっては重みを持っていると,こういうことを改めて感じたところでございました。あわせて京都では11月1日を古典の日に制定をしようということで,京都市を中心に展開をされました。この長岡京市とて,小さな町でございますが,そういった一連の伝統伝承事業の展開をさせていただいて,その制定に向けて取り組みをやっていこう,発信をしていこうと,実はこういうのをやらせていただいた。
 そういう身近な,ちょうど今,今月,まさに文化芸術の秋でございます。身近なところでいろいろな展開がされています。全国版,あるいは海外に対して,あるいは地域で,地方で,そういった展開がなされている中でのそういったことは,先ほどちょっと申し上げましたけれども,やはりそれぞれの役割分担をした中でやらせていただく。そういう意味では今回の答申の中で,新しい公共空間と,こういうことではっきりと位置づけをいただいておりますし,また地域振興と,そして観光・産業振興と,こういう中で改めてこういった位置づけをいただいたということは私は非常にありがたいというふうに思っています。身近な事例を取り上げながら,あえて申し上げたところでございます。

【高萩委員】今おっしゃっていただいたような地方に関しては,多分,市長がしっかりしていらっしゃるんだと思うんですね。私は東京におりまして,東京の中でも文化行政ははっきり言っていろいろなところのしわ寄せを受けていて,予算の措置なんかもかなり苦しい状況です。
 今回の基本方針というのは,日本の文化戦略というか,国家戦略の中に文化をどのくらい位置づけるのかというのをはっきり打ち出すところに価値があると思うんですね。それは去年の事業仕分けの中で,すべての施策が横並びに並べられて,今,何が緊急かということが問われた。文化がどのくらい重要なのか国が文化をどのぐらいの位置につけているかというのをはっきりうち出すことに価値があるだろうと思っています。それを地方にちゃんと示さないといけない。私は今,公共劇場で働いているわけですけれども,東京ですらやっぱり公共劇場の運営に関しては,何となく回っていればいいのではないかと思われています。文化が大事ということ。文化芸術が今社会の中でどのくらい大事かというのをきちんと打ち出せるということが,今回の戦略の一番の骨子だと思います。地方の中で文化事業が幾分やられていることとは別に,はっきり国として何かというのが出せることが大事だと思っています。

【平田内閣官房参与】ちょっと誤解があるかもしれないので,補足しておきますが,ちょっとこれは優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業に関しては,この委員会で細かく議論することではないので大変申しわけないんですが,僕が申し上げたのは,要するにあそこで述べられている重点拠点というのは創造活動であり,地域拠点というのは地域の活動なので,地域の活動については逆にそういう定量的な,高萩さんがおっしゃられたような10万人とかそういうものを逆に入れるべきだったと思うんですよ。重点拠点というのは発信事業だから,より定性的な評価が必要になると思うんですよ。それが今までここで議論してきた,例えばそこでつくられたものがその後,3年間,5年間のうち,どれだけ再演されたのかとか,どれだけほかのホールでも回ったのかとか,どれだけ海外にも打って出たのかというような,そういった重点的な支援ですよね。それも国策としての支援,今,高萩さんがおっしゃられたように。だから,10万人という指標はあそこに入れるべきではなくて,地域のほうに入れるべきだったのではないかというのが,それは各論のように見えるけれども,結構本質的な議論なのではないかというふうに僕は思っているけれども。

【近藤文化庁長官】私が余り発言すべき立場ではないのかもしれませんが,一つは先ほどの議論になった重点戦略後の地方芸術祭のところですが,これは私の感じを申し上げれば,ここはこのままにしておいて,6のほうに地域の特性を活かした国際的競争力のある芸術祭を推進するとか,そんなようなことを入れることで,この発信という要素も強まるし,戦略6ですね,いいのかなというのが一つと,もう一つはまた評価のところに行ってしまうのですが,冒頭,吉本さんおっしゃったように,ややアウトプットとアウトカムが混同しているところもあるので,どちらかというと,定性的にこういうアウトカムあるいはインパクトを求めると。その参考指標として,例えば入場者数とかそういったものも参考にするとか,そんなようなアウトカムとアウトプットをある程度書き分けて,アウトプットというのは入場者数みたいなものは,あくまでレベルの低いというか,目的に直接結びつくものではないんだということを,わかりやすく書き分けたほうがいいのかなという印象を受けました。
 それからもう一つは,アンケート調査,実は先週,東久留米の小学校で演劇がNPOの仲立ちで劇団が行って,12日間,子どもたち6年生と124人の子どもたちに演劇指導をして,12月に発表会をするんですが,その現場に行ったんですが,本当に子どもたちが生き生きとしてやっているし,不登校の子もそのときだけは出てくるというのを目の当たりに見たんですが,それをやっている先生に伺ったら,これはもうすばらしいと。
 そこでふと思ったんですが,そういう先生やNPOの方々にアンケート調査をすれば,これはすばらしいと言うに決まっている。アンケートのうち,85%がすばらしいと言いましたといっても,財務省はそれは当たり前でしょうと。それでは本当の調査にならないのではないかと。もうちょっと突っ込んだ,例えばある子どもの,これは個人情報の問題かもしれません。A君ならA君の3年間か5年間の行動をトレースして,引きこもりだった子がここへ出てきて,出るようになってきて,こうなったとか,そういうような少し中長期的な,少しより突っ込んだ調査というのを,単にアンケートをばらまいて回収するだけではなくて,どこがいいのか知りません。ニッセイがいいのかどうか知りませんが,お願いをして,少し中長期的なそういう説得力のある指標づくり,データづくりというのを今からやって,来年度予算には間に合わないと思いますけれども,再来年かその次ぐらいの年に要求をするときに使えるようなデータを今からつくるようなことができないのかなと。
 これはできるという確証があるわけではありませんが,やはりアンケート調査だけでは物足りないし,私が財務省の役人なら,それはやった本人はいいと言うに決まっているでしょうと言って,もうそれっきり聞く気にならないのではないかということを,実はその場で感じたので,ちょっとその辺は問題提起というか,委員の先生方のお知恵をぜひいただければと思って発言をいたしました。

【田村部会長代理】ありがとうございました。恐れ入ります。私,時間配分を無視いたしまして,素案の本文と,それから後ろについております留意すべき点,そこも含めまして,申しわけございません。そこの部分もさっきご発言はいただいておりますので,よろしくお願いいたします。

【増田委員】一つは先ほど申しました語句のことなんですけれども,重点戦略に対する整理一覧表の資料2のところで,各重点戦略1から6までの言葉は目標であって,この戦略の名前としてはいかがなものかという前回の会で意見が出たということを申しましたけれども,項目ということを考えれば,それぞれ1番から6番までの中で,4番だけが文化芸術の次世代への確実な継承と,項目名だけは書いてあって,これの支援とか,これの振興とか,これの充実とかという言葉がついていないところなんですけれども,それを参考にすれば,1番,2番,3番,5番,6番ともう,一番後ろの,1番は文化芸術活動そのままですし,2番は文化芸術を創造し,支える人材ということですし,3番は芸術振興策,それから5番は観光・産業振興等ということで,活用とか充実ということはとっても,項目としては成り立つのではないかなということを思いました。
 それからもう一つは,ただいまのアンケートのことに関してなんですけれども,我々この委員の方の中にいらしたら大変失礼なんですけれども,社会科学関係の学問では,アンケートとか調査というのは非常にいろいろな種類のことが行われまして,こういう目的のためにはこういうアンケートをつくって,こういう結果を得るのが成果があるんだという発表が幾らでもあります。思いつきなんですけれども,例えば学術振興会がやっている科学研究費の助成金の項目の中に,文化庁として希望することとして,アーツカウンシルで取り扱えるような文化活動の質的な評価ができるようなアンケートとか調査法に関する研究を募集するとかということにしないと,我々の思いつきではとてもとても間に合わないと思います。社会科学は本当にきめ細かく,いろいろな先生がいっぱい数をやっておりますので,ぜひそういう形で募集されたらいかがかなというふうに思いました。
 以上です。

【田村部会長代理】ありがとうございました。
 どうぞ,高萩委員。

【高萩委員】この評価の進め方の指標のところなんですけれども,多分別件でのっけることになるんだと思うんです。その場合,だれがどう評価していくのかというのがちょっとよくわかりにくい。1ページ目のところで展覧会の企画内容の作品の充実と地方巡回展の状況等について,文化審議会において検証するというのがあります。ここに文化審議会という言葉がぽっと出てくるので,そうするとほかのところはでは違うのかしら。

【滝波企画調整官】ちょっと誤解があったかもしれませんけれども,今おっしゃっていただいた展覧会における美術品損害の補償に関する法律のところで,評価の進め方として,これこれの状況等について,文化審議会において検証というふうに書いていますのは,主にイメージしていますのは,この法律の運用を行っていく際に,文化審議会のもとに専門の部会を立ち上げていって,そこのところで例の補償の在り方とか,対象展覧会をどうするかというふうなことを決めていくというふうなことを考えておりますけれども,そこのところで検証していくということをイメージをした記述になっております。
 当然,これのみならず,他の項目につきましても,先ほどの資料3でいいましたら5ページのところに少し書いていますけれども,5ページのところ,(2)で,PDCAサイクルの確立等というところに,上から4行目あたりでしょうか,このため文化審議会において重点戦略に基づく施策の進捗状況を年度ごとに点検するというふうなくだりを書いておりますので,この文化審議会,特にこの文化政策部会をイメージしておりますけれども,ここの場でこの重点戦略に基づく施策の実施状況というものを年度ごとに点検をしていただくというふうなことによって,着実な振興管理を図っていくというふうにしていきたいというふうに考えております。

【高萩委員】今のはわかりました。
 それで,もう一件,1番のところなんですけれども,こちらの素案になってきたときに改めて読んでみますと気づいたことがあります。一番の重点的に取り組むべき施策のところで,支援の仕組みを導入するというのが最初の◆になっているんですけれども,日本版のアーツカウンシルというのが新たな支援の仕組みの大元みたいな話になっているので,できれば日本版のアーツカウンシルの話を先に持ってきたほうが,良いのではないでしょうか。つまり,日本版アーツカウンシルができてしまえば,そこが前に出ている2つの部分を含み込んでいくような形になるだろうと思います。
 先ほど加藤委員がおっしゃったみたいに,新たな評価の仕組みをつくるだけではなくて,アーツカウンシルというのは前に吉本委員のほうから資料の提供がありましたように,文化芸術活動の擁護みたいなことも各国では含んでおります。そういうようなことも含めて文化芸術活動を擁護し,専門的な審査・調査を実施し,支援策をより有効に機能させる日本版アーツカウンシルの導入とかというふうにして,それを一番先に持ってきたほうが読みやすいのではないかと思いました。

【吉本委員】資料3に関して,細かな言葉も含めて気がついた点が何点かありますので,ちょっと発言させていただきたいと思います。
 まず,1ページ目の6つの重点戦略の1行目の後段から,諸外国と比較して極めて貧弱な文化予算を大幅に拡充しという,ここまで明確に記載が入るのはすごくいいと思うんですけれども,これは目標の数字のようなものは出せないんですかね。例えば5年で倍増するとか。これは最終的に閣議決定へ行くので,そこまで書けないだろうなと思いつつ,あえて発言をしているんですけれども,この大幅に拡充だけだとどれぐらいやる気なんだという,それこそ地方公共団体はきっとこの辺を見ているだろうなという気がしました。
 それから重点戦略1の1つ目の段落目の下から2行目の左側のほうに,民間や個人からの投資とこうありまして,これは意味合いとしてはリターンを求めない投資ということで書かれているんだと思うんですが,重点的に取り組む施策の2つ目のダイヤ印のところは,企業等のとなっていて,企業が投資となると,やっぱりこれはリターンを求める投資というふうに誤解されるおそれがあるかなと。むしろ,国や地方公共団体が予算を使うときに,足りない部分を補填するのではなくて,投資というニュアンスが必要だということだと思うので,この投資という言葉がこれが適切かどうかは,一度ご検討いただきたいなと思います。
 それからそのページの下の2つ目のダイヤのところの2行目の後半ですね。これはNPO等の芸術文化活動を支援するため,寄附税制云々とあるんですが,これはNPOを支援するためには具体的な支援を行わずに寄附税制等しか行わないように読めるんですけれども,例えばNPO法人等の新しい公共を担う団体に,文化芸術活動を支援するとともに,それらをさらに拡充するため,寄附税制云々というふうに,ここをNPOの人が読むと,NPOは支援してもらえないんだという誤解を与えるような気がするんですが,これ表現の工夫ができないかなと思いました。
 それからあと,次のページのダイヤの4つ目のところで,これは別途,国立文化施設の懇談会で検討が進んでいるんですが,より柔軟,効果的な運営を行うことができる仕組みというのは,これは現行の独立行政法人の制度ではやはり限界があるということがここの中に含み込まれているのかなというふうに私は読んでいるんですけれども,そういう語をやっぱりここには書けないかなというのは,書けるなら書いてもいいかなということでございます。
 それからその次のページの子ども関係のところの2つ目のダイヤなんですけれども,文化芸術を通じたコミュニケーション教育というのがあるんですが,これは文科省のほうで平田参与が中心になって検討が進んでいるんですけれども,教育専門の方からは,コミュニケーション教育というのが何かわからないという意見が結構出ているんですね。要するに教育現場でこれを理解するのが難しいと。ですので,これはこのままにして,例えばその前に「文化芸術によるワークショップ型の体験活動や」とか,あるいは「,」でもいいと思うんですけれども,それを入れたほうがより具体的なイメージが出るのではないかなというふうに思いました。
 以上です。

【田村部会長代理】西村委員。

【西村委員】今度の6つの重点戦略の特色は,私思うに,地域振興とか観光とか,産業の振興とか,文化外交とか,今までの文化庁の枠を超えた大きなものに,やっぱり文化が非常に意味があるんだということを強く言っているところが,6つのうち,2つまでそこを言っているわけですから,そこは非常に重要だと思うんですね。
 それが例えば資料3の重点施策の最後の5ページのところの,横断的かつ総合的な施策の実施ということで,そういうところと全部連携しながらやるんだと言っているんですが,やるときに今の体制でいいのかという問題がやっぱりあると思うんですね。今の体制でほかは全部大臣がいて,それぞれ予算を取ってきているわけですよね。ここはでは文化予算を文化として取れるかというと,これは言ってみれば大きな教育予算の一部ですよね。これは最初のときにこの政策部会の頭のところで,文化省にすべきだと。文化省として本気で政策の予算を取ってきたり,もしくは文化政策の専門的な人材を育成するような,国家にも,そういうような役割があるのではないかという話があったと思うんですね。
 閣議決定するのにそういうことは書けないでしょうけれども,何かもう少し組織としてちゃんと強化して,今言ったようなさまざまなところまで広がっていくような,そういう独立した組織なんだと,そこに強いきちんとした自主的にいろいろなことが判断できる,人事もできる組織をつくっていくんだみたいなところが背景としてあるような文章が必要なのではないかなと思うんですよね。ですから,単に連携してやりますというようにとどまらないで,もう一歩突っ込んだ表現をしていただきたいなと思うんですけれども。
 以上です。

【田村部会長代理】今回は皆様から同じような意見を申し上げていると思いますけれども,最終的には文化庁がどう判断なさるかということだと,この点については思います。文化省,今の状況ではなかなか難しいなというのが正直な気持ちでございますけれども。
 理念のところにどのように入れていただくかということもあるし,本当に留意すべき事項のところに書いていただくというのも,皆様が強くおっしゃればあるのかなとも思ったりいたしますが。

【西村委員】少なくとも政策部会が発言するものとしては,あっていいと思うんですね。それを受け取った文化庁の側がどう判断するかはまた別かもしれませんけれども,少なくともかなりの多くの方々がそういうふうに発言されたと思いますので,何かそれが反映されるところがどこかあるべきではないかなと思います。

【田村部会長代理】 ありがとうございました。
 坪能委員。

【坪能委員】重点戦略の3でちょっとお尋ねしたいとさっきから思っていたことは,地域の話がいろいろ出てきますが,学校や地域において,心豊かな子どもや若者の育成の場というのは,3つぐらい考えられていると思います。1つはここに文言出てきましたように,学校における教育だと思います。もう一つは社会教育という言葉もあるかもしれません。生涯教育かもしれませんが。
 3つ目は学校だとか文化施設だとか,あるいはNPO,大学を含めて連携によっての若者の育成ということを考えられると思います。そうしたとき,これはぼんやりこういうふうに書いておいて,これで皆さんがおわかりになるのかなということがあります。つまりどこがそれを引き受けるというか,どの場所を使って,学校なのか,文化施設なのかということがわからないことと,それから伝統文化や文化財に親しむ機会というのは,これは文化施設の対応でもまたちょっと変わっているかなと。
 いろいろなところが心豊かな子どもや若者の育成に協力していくというのはわかるんですが,こういうちょっとぼんやり書いておくほうがよろしいのかどうかというのをちょっとお伺いしたかったんです。
 以上です。

【田村部会長代理】ありがとうございました。
 実際問題として,学校の授業の中でも芸術教育というのは減っております。なかなか子どもたちが芸術に触れる機会というのが減っています。アウトリーチ活動などをいたしましても,それを簡単に引き受けてくださる教育委員会であったり,学校は少なく,なかなか難しいというのも,各地が抱えている現実のようでございます。それはやはり国か文化庁か,はっきりとその場を提供していただくということは大切かなと日ごろ感じております。
 どうぞ。

【浜野委員】資料3の重点戦略2ですが,西村先生が最初に言われたくらしの文化というのは大変やっぱり地域とか,国際競争力を考えると重要だと思います。それで一番上のほうに優れた文化芸術の中に,衣食住が入ると思います。例えば括弧に書いてある新進芸術家の中に,ファッションデザイナーとか建築家は入るというのは了解されると思いますが,料理人が入っていると理解はできるんでしょうか。私は料理人の方々は芸術家だと思いますけれども,例えば芸術選奨の中に,食の領域がありません。高名な日本の和食とかの料理人の方に会うと皆さんフランスの勲章をもらっていますが,日本のそういった賞はもらっていない方が多い。これを読むと,芸術家の方の海外研修というのは,料理人の方を海外に送るというふうに読めるんでしょうか。
 食文化は,消えてしまうものにまで美を入れるという,日本の特性が物すごい活かされた,優れた私は文化だと思うので,ぜひそれが読めるようにしていただきたい。

【田村部会長代理】ありがとうございました。
 大変申しわけございません。それでは,時間がちょっとなくなってしまいましたので,次のおつくりいただいた基本的施策の対比表というのがございますけれども,これについてちょっとご説明いただいて,余り時間がないんでございますけれども,ここも次につなげるという意味で,ご意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

【滝波企画調整官】それでは,次の議題ですけれども,基本的施策の部分についての説明をさせていただきたいと思います。資料は資料4でございます。
 この資料は,現在動いている第2次基本方針を右側の欄に,それから今回つくろうとしている答申,あるいは第3次基本方針として書いていくことが想定される文案として,とりあえず事務局案として考えてみたものを左側に,対比の形で表現したものになっております。備考欄については,どういう状況変化があったかであるとか,あるいは関係の文化芸術振興基本法の条文といったものを書き出していく形で整理をしたものでございます。
 ご存じのとおり,参考資料3の中にも,文化芸術振興基本法という法律の条文が書いてありますけれども,この法律に基づいて,芸術の振興から始まる各文化芸術の分野ごとの振興策を書き連ねていっているスタイルになっておりまして,これまで議論いただいております重点戦略というのは,そのうちの特に重点的に取り組むべきものとして位置づけた部分ですけれども,別にそれ以外にも文化芸術各分野それぞれに振興していかなければいけないと思いますので,それらをこういう形で今回整理したものであります。
 これまでの部会の中では,この基本的施策全般についての十分なご議論をいただく時間はとることができませんでしたので,とりあえず,我々事務局のほうで第2次基本方針策定からの状況変化等を考慮しまして,どんなふうに今時点で事務局案としてお示しができるかなということで,書き出していったものが左側だというふうにご理解いただけたらというふうに思っております。
 状況変化の主な内容としては,やはりこの7月以降にご議論いただきましたワーキングの検討がございましたので,そこで出された検討結果というものは,可能な限り反映していくというふうなことに心がけておりますし,それからそれ以外にも19年2月に第2次基本方針策定されておりますけれども,それ以降のさまざまな動きをとらえて,可能な範囲で更新をしていくというふうなスタイルでまとめております。
 そのような考え方でまとめていったところでありまして,特に赤字のところが現在の第2次基本方針との異なって書いた部分として書き出した部分であります。その部分を中心に,少しごらんいただけたらなというふうに思いますけれども,まず,1ページの左側の(1)の芸術の振興の部分ですけれども,少し見直しをしておりますのは,ワーキンググループの検討結果が出ておるということを踏まえての書き直した部分でございます。特に先ほど来,議論のありますような支援の在り方の見直しの話であるとか,日本版アーツカウンシル,あるいはPDCAサイクルの確立といった部分を書き込んでおります。
 それから(2)のメディア芸術の振興に関しましても,ワーキンググループの検討結果を踏まえて書き出していっているものでございます。特に従来の第2次基本方針の最初のポツのところで,一つの項目にまとめて書いていたものを,今回はワーキングの結果を踏まえて,少し内容を2つに整理し直して書き出したというふうなものになっております。
 以下,同様ですけれども,2ページに飛びまして,2ページの最初は(3)伝統芸能の継承・発展ですけれども,ここについてもワーキングの対応として,少し書き出した部分がございます。
 それから(4)は飛ばしまして,(5)に関しましては,生活文化,国民娯楽というところで,ここについてもくらしの文化のワーキンググループの結果を踏まえて,表現を改めております。
 それから従来,2次方針では,2.として文化財等の保存・活用というふうにございましたけれども,法律上の条文の整理としては文化芸術各分野について書いていくという考え方からしますと,文化財の保存・活用については,(1),(2),(3),(4),(5)の続きで,(6)というふうに整理したほうがふさわしいかなと思いまして,少しそこの表現,タイトルの番号を書いております。
 それから文化財の保存・活用の最初のポツに関しましては,少し情報通信技術のさまざまな映像技術など,多様な手法も用いて云々というところの記述を少し整理をし直しまして書き出しております。また,文化財保存活用の2ページの最後のところについては,先ほど少しご議論がありましたけれども,歴史文化基本構想の策定の支援といったような事柄であるとか,地域における歴史的風致の維持・向上に関する法律の策定がなされたというふうなことも踏まえての表現の整理をしております。
 それから3ページに関しましても同様の整理をしております。赤字の部分の修正が加えられております。
 それから新しいほうの2.地域における文化芸術の振興に関しましてですけれども,ここについては,従来,3.であったところの2つ目,3つ目,4つ目の項目を少し整理し直しまして,1つの項目に統合をしております。また,その次のポツについても,表現ぶりの適正化を図って見直しをしております。
 それから4ページでございます。ここは国際交流の推進に関する記述であります。ここもかなり整理をしておりまして,最初のリード文のところに,最後の文章を少し加えておりまして,ここは従来の2次方針でいいましたら,最後のポツで書いてあったようなところ,関係府省,国際交流基金,関係機関との緊密な連携といったくだりがあったんですけれども,ここについて,リード文のほうに新たに書き出しております。また,それ以外の各項目についても,ワーキンググループにおける提言事項を反映する形で整理をし直したものになっております。特に,新しいほうの2つ目,3つ目については,新たに項目を追加をして記述をしておりまして,例えば中核的な国際芸術フェスティバルに対する継続的な支援,あるいはアーティスト・イン・レジデンス等の取り組み,それから東アジアを始めとする世界各国との国際文化交流の推進といった事柄を新たに書き出しております。
 その2つ下のところで,外国人観光客の増加,国際交流の推進に大きな効果を発揮するメディア芸術というところで,ここについてもメディアワーキングの検討結果を反映しておるところでございます。
 それから次のページに飛びまして,5ページですけれども,最初のところで,従来,2次方針においては,先ほど少しご説明しましたけれども,配慮事項として芸術家等の地位向上のための条件整備ということを従来記載しておりましたけれども,ここについては配慮事項に書くほどではないのではないかというようなご意見もありましたので,ここではここの基本的施策のところに,芸術家の要請・確保という項目の中で,基本的施策として触れていくというふうに書き直しております。
 それから5番は,今度,国語の正しい理解の部分です。これについては特にワーキングの反映ということではありませんで,19年2月に現在の2次方針が策定されて以降の動きをとらえて,新しく書き出していったというふうな整理になっております。最初のポツについては,定期的な国語に関する調査の実施であるとか,調査結果の周知といった事柄,それから2つ目のポツでは,この6月に答申が出されました新たな常用漢字表,これを踏まえた取り組みというものを書き出しております。またその下の項目を新しく新設をしまして,国内における消滅の危機にある言語,方言についての実態把握等についての取り組みを記載しております。
 それから飛びまして,6ページになりますけれども,このあたりは前のページからの続きで,日本語教育の普及・充実に関する記述でございます。それぞれ2次方針策定後の動きとして,状況変化を記載をしておるものでございます。
 それから7.については,著作権等の保護及び利用でございます。ここの最初のポツについては,近年の知財計画の中での取り組みを反映して,デジタル化,ネットワークに対応した著作権制度上の課題についての検討といったくだりを記載を新しくしております。
 それから次に,8.の国民の文化芸術活動の充実に関しましては,(1)のところで,重点戦略のほうとも連動しますけれども,先ほどご説明しました展覧会における美術品損害の補償に関する法律に基づく国家補償制度の導入に関する記述を新しく追加をしております。
 それからこのページの最後のポツについては,別の項目のところに事柄として集約できるだろうということで,ここの項目としては削除をしております。
 それから7ページでございます。7ページの(3)は,青少年の文化芸術活動の充実でございます。ここについても子ども向け施策ということで,ワーキングの提言結果を踏まえての記述の見直しを図っております。
 それから今度は下の9.文化芸術拠点の充実等に関してでありますけれども,ここについても特に舞台芸術ワーキングの検討結果を踏まえて,新しく記述を盛り込む,あるいは見直しを図っております。最初のポツについては,劇場・音楽堂についての人々が享受できる機会の充実というところで,地域の核となる劇場・音楽堂等の文化芸術活動の支援,それからその下のポツについては,その法的基盤の整備についての早急に具体的な検討といったくだりを,重点戦略とも連動しますけれども,新しく書き加えております。
 それから今度は8ページに飛びますけれども,今の(1)劇場・音楽堂等の充実の最後の項目については,従来の項目を少し統合しまして,新たに整理をしております。それから(2)は,美術館,博物館,図書館等の充実に関する記述でございます。ここについても特に美術ワーキングの検討結果を念頭に置きながら,記述の見直しを図っております。
 最初の1つ目の項目については,美術館,博物館等の充実に関してであります。ここの中でワーキングの結果を踏まえて,企画展示技術の向上や文化財等の適切な保存管理の徹底を図る,あるいは地域の美術館,博物館等の館種や設置者の枠を超えた連携・協力を促進するといったようなワーキングの提言結果を反映した記述にしております。
 それから次のポツにつきましても,従来の2次方針の内容をさらに具体化する形で記述ぶりの見直しを図っております。
 3つ目の項目については,指定管理者制度の導入に関してのガイドラインの作成,これもワーキングの提言にございましたが,このことの記述を新しく加えております。それからその下のポツですけれども,優れた文化財,美術作品等の保存・公開のため,所蔵品の目録,資料台帳を整備を促すとともに,書誌情報やデジタル画像等のアーカイブ化を促進するということで,これについてもワーキングの提言を踏まえた記述としております。
 それから飛びまして,9ページでありますけれども,10.のその他の基盤の整備等に関しての(1)の項目の真ん中あたり,アーカイブ化というのがありますが,これもワーキンググループの提言を踏まえた修正でございます。(2)の地方公共団体,民間の団体等への情報提供の中でも同様に,アーカイブのことを意識した見直しを図っております。
 それから(3)民間の支援活動の活性化等の部分に関しましては,これもワーキングの提言を踏まえて,活動の促進のための税制の在り方の検討といったくだしを新しく設けております。
 最後のページ,10ページでありますけれども,(4)は関係機関等の連携等ということで,ここについてもワーキングの対応を踏まえて,関係機関がおのおのの役割を明確化するとともに,相互の連携強化を図るといったようなくだりを追加をしております。
 それから最後の(6)政策形成への民意の反映等のところでも最後のところ,評価も活用し,質的な側面を含む適切な評価方法の確立を図るといった形で,その後の状況変化を踏まえた見直しを図ったものにしてございます。
 以上のような形で,現在の第2次基本方針の中で,基本的施策として位置づけられている事柄について,現時点として事務局として考えたものを左側の欄のところに記述していったものになります。これはあくまで事務局として整理しただけでございまして,この部会の中ではまだ十分議論をしていただいたことがございませんので,ご議論いただきたいというふうに存じておりますし,それから今後の議論の中で特にこの文化審議会の中にそれぞれ分科会,国語,著作権,それから文化財,各分科会がございます。そちらのほうでもこういった基本的施策についても,ご議論いただく場をそれぞれ設けていただくことを考えておりますので,あわせてご紹介させていただきました。
 どうぞよろしくお願いします。

【田村部会長代理】ありがとうございました。
 それでは,時間が余りなくなってしまいましたが,ただいまのご説明を受けて,ご質問,ご意見などありましたらお願いしたいと思います。文化芸術各分野に関する事項から,基盤の整備などに関する事項まで,多岐にわたっておりますが,全体を通してご意見がありましたら,15分ほどしか時間がなくなってしまいました。よろしくお願いいたします。

【吉本委員】1点だけ,質問なんですけれども,資料2,3で述べられている重点施策と,それとこの基本的施策の関連で,この重点施策は基本的政策のどこかに位置づけられているというふうに考えてよろしいんでしょうか。必ずしもそうではない。

【滝波企画調整官】基本的施策は,基本法の中の第8条以下に,各文化芸術の分野ごとに規定がありますので,それに基づいた施策として網羅的に書いていくというスタイルをとっております。重点はその中で,特にこの5年間の中で重点的に取り組むことを抜き出して書いているということですので,当然,重複もあってもいいと思いますし,どこかしらに何か位置づけがあるというふうに理解をしております。

【田村部会長代理】どうぞ。

【西村委員】私も同じことを疑問に思ったんですけれども,だとすると,どこかに書いてあるんだとすると,境界領域のことがすごく少ないですよね。例えば地域振興だとか,産業振興だとか,先ほどの食ではないけれども,そういうもの,くらしの文化は少し書いてありましたけれども。いわゆる今までの在来的なコアの文化芸術に関しては,きちんと書き込まれていると思うんですけれども,これから広がっていく部分に関して戦略的には先ほど言ったような重点施策の5とか6に関する部分は余り書き込んでいないと思うんですね。その辺がどうも聞いていると,あれ,どうしたんだろうという感じがするんですけれども。

【大木政策課長】今のお二人の先生方のご指摘を踏まえまして,ちょっと重点戦略のところと,基本施策のところ,基本施策に必ず根っこがあった上でもって,その中から重点戦略が取り出されているという関係が,ある程度文言上も明確に,少なくとも我々,外向けに説明できるように再度整理をさせていただきたいと思います。
 それからあわせて少し印象論といたしまして,重点戦略にありながら,それから基本施策のほうに少し記述が足りないなり,ウエートづけが不十分であるなりということがありましたら,個別にまたご意見をちょうだいいたしたいと思います。印象論としてはそういうご指摘があることは理解いたしましたので,整理の過程では少しそれは念頭に置いてやってみたいと思います。

【田村部会長代理】吉本委員。

【吉本委員】そのときに,基本法にない項目というのが出てくるわけですね,どうしても。この基本的な方針は基本法に基づいてつくられるので,だから重点施策のほうは基本的な施策に入っていなくても,つまり基本法に盛り込まれていなくても,あえて必要と思うものを出せるというふうにしたほうが,私はいいのではないかと思うんですけれども。

【大木政策課長】私らの少しこの行政の世界にいた頭でもってあれしてしまいますと,基本法は少なくともオールマイティであらねばいかんし,オールマイティ的にすべてがどこかに網羅できているものでなければならないというふうに考えるものですから,それは法律を改正すればいいじゃないかといって直せるものでも全くございませんので,したがいまして,どこかにあてはめたほうが因果関係が説明しやすいのではないかという観点に立ちますと,無理無理にでもどこかにこじつけて,整理分類してしまうというような発想も,どうしても事務的にやっていますと出てまいるんですけれども,それは例えば留意事項で書いてみたりとか,いろいろなことの書きぶりはあるかもしれませんが,閣議決定と連動していくということをいろいろ考えますと,さてどうしたものかなという気も若干いたすところでございます。その辺は。

【佐々木委員】今回はそれぞれの各ワーキングでいろいろな問題を整理をして,そしてそれをこういう基本的施策,それから重点戦略,最終的には6つの項目でまとめられているわけです。結局,いわば横串をする形でまとめられているわけですけれども,恐らく今後文化政策としてやるべきことというのが,ほぼ網羅をされている形になっているわけですが,これはここまで心配する必要はないのかもしれませんが,例えば今後こういうものを材料にして,概算要求であるとか,政策コンテストで闘っていただくわけですけれども,そのときにそれでもなお,かなり目標が多過ぎるといいますか,つまりもう少しシャープな感じでまとめられないのかなと,そういうことが必要であるのかないのか,その辺はちょっと私の立場ではわかりませんけれども,実際に闘っていただかなければいけないですし,そういう立場としてこういう網羅的なものでいいのか,あるいはさらにやはりこういう審議会の場で,その中でなおシャープに先鋭化させていくべきものがあるのかどうなのか,その辺がちょっと気になるところなんですけれども。

【田村部会長代理】そうでございますね。基本法のときの成立過程でも,そういうご議論はありましたのですが,いかがでございましょうか。それは文化政策部会の答申としてはそれが可能なのでございましょうか。

【大木政策課長】繰り返しになりますが,閣議決定するという最終目標がございますので,それとの関係でどこまで整理分類するかということでございますけれども,先ほど来の話ともちょっと関連しますけれども,少なくとも文化芸術振興基本法自体は,網羅的に書いているという実態がございます。ですから,それを無視した基本方針であってはいけないとは思いますけれども。
 一応,審議会の答申と閣議決定は基本的には連動するものというような,要は段取り上の少し整理が前の部会でもございました。そんなことを含めて,ちょっとすみません,考えさせていただきたいと思います。

【田村部会長代理】たしか,第1次基本方針のときは,審議会でお出しする答申は,思いきったものにしたらいかがですかというお話があって,閣議決定のときに,問題があるならばどうぞ文化庁でお直しくださいという発言まであったように覚えておりますが。

【青柳委員】今回の基本方針には余り関係ないと思うんですけれども,2点,お願いしておきたいのは,1つはこの資料4の5ページなんですけれども,5のところで国語の正しい理解,それから6で日本語教育の普及及び充実ということで,国語は国民が語る語で,日本語は外人がということで,だけれども,最近大学等でも以前,国語国文学科というのがみんな日本語学科に変わりつつあります。
 それで,今回僕は期待していたんですが,国立国語研究所とか,国立国文学資料館というのがあるんですが,これはもう明らかに立ちおくれなんですね。やっぱり日本文化をどう相対化するということが,日本文化政策の一番の基本になると思うんです。もちろん,いろいろな法律に国語という言葉が使われているので,すぐには無理でしょうけれども,この国語という言葉自体を政策上,あるいは我々こういう会でも常にこれから意識していかなければ,本当の日本の相対化というのは進まないのではないかということが1点です。
 それからもう一点も余り関係ないんですが,今までずっと言われてきた日本版アーツカウンシルは,吉本委員がおっしゃるようになるべく試行的にも早く立ち上げていただきたい。そのときに,日本学術振興会,前にもちょっとお話ししたんですが,あそこは今,科研費2,000億強あるもののうち,恐らく9割程度をあそこで審査,あるいは分配をしているわけですけれども,そのために,審査委員が大体二,三千人登録されていると思いますね。それともう一つは,あそこに学術システム研究センターというのがあって,一種のシンクタンクみたいな。大学にいる各領域の分野の専門家が四,五十人いますかね。それで科学研究費の在り方とか,その効果的な使い方というのをやっていて,やっと日本もきちっとしたカウンシルのようなものができ上がってきた。ですから恐らく,このアーツカウンシルにも学術システム研究センターというのは参考になる組織ではないかなということだけです。

【田村部会長代理】ありがとうございました。
 どうぞ,富山委員。

【富山委員】3のところでございますけれども,上から4つ目ですね。これが削除ということになっています。これは8.(3)のところに集約するということになっていますんですけれども,今読みますと,伝統芸能という形の言葉が全く出てこないような形に変えるということなんでしょうか。

【田村部会長代理】いかがでございましょうか。

【滝波企画調整官】今,富山委員がおっしゃったのは,2ページの(3)の伝統芸能の継承及び発展の中で,下から2つ目の項目がここでは削除されておると。8.(3)のほうに集約をするのではないかというところでありますけれども,おっしゃるように,8.(3)のところに持ってきまして,7ページになりますけれども,7ページの(3)青少年の文化芸術活動の充実というところに移しかえておりまして,内容的には従来の9.の国民の文化芸術活動の充実の中の(3)の最初のポツとして書いていた事柄と,事柄的に近いものがあるだろうということで,一応ここでは集約をしてみたというものでありますけれども。

【白間伝統文化課長】整理学としては今回整理ですけれども,おっしゃるように,伝統芸能の重要性というのは柱は1本立っておりますので,そこははっきりわかるように工夫をしてみたいと思います。

【富山委員】ちょっと文言で工夫していただいて,我々も狂言の方とかお能の方,それからいろいろな邦楽,皆さんボランティアで小学校に行って教えているような状況がありますので,そういうこともやはりちょっと配慮していただけるとありがたいなと思っております。

【白間伝統文化課長】わかりました。

【田村部会長代理】後藤委員。

【後藤委員】2つほどあるんですけれども,先ほどのこの施策と,それから重点戦略の関係ということなんですけれども,やはりここで話し合ったことを閣議決定まで持っていくということを,前回か前々回に皆さんの意見で合意していたように私は記憶しているので,ここで話し合ったことは話し合ったことで,閣議決定は閣議決定というふうには私,ちょっと理解していなかったんですね。それはどちらなんでしょうかということを再度確認させていただきたい。私の理解では,ここで話し合ったことが答申であって,何ら閣議決定に反映されないというのはちょっと不満だなというか,そういう合意ではなかったような気がします。
 そういうふうな前提で見ると,重点戦略の5番は,どこにもやっぱり基本的施策のこの基本法の中にはないんですよね。この観光・産業振興などというのが,一体どこに入るのかなと,眺めていてもやっぱり何か座りが悪いので,どういうふうに入れ込めばいいのかなと思って考えていたんですけれども,考えさせてくださいということなので,ご検討いただきたいと思うんですけれども,ちょっと難しいなと。だから,そこの関係性をどうしたらいいのかなというのがやっぱりすごく課題かなというふうに思いました。

【大木政策課長】前回の議論だったでしょうか,閣議決定と一応本部会の報告なり,審議会としての答申なりを内容的にリンクさせるということについては,全然その後ぶれなく,私もそういう理解でおります。ただ,先ほど私,若干どうこなせばいいのかなと思いましたのが,閣議決定なら閣議決定でやる場合に,ある程度その柱立てというものを文化芸術振興基本法の柱立てに依拠したような形でもって整理するのがこれまでのやり方でございますし,そういうやり方にすると。それでその際に少し淡々と整理する部分がしたがって多くなってくるんだろうと思うんですけれども,文言上の工夫は幾らでもできようかと思いますが,さらにその重点をより明確に絞り込む形でもってそれを打ち出すという整理の仕方を,答申のほうでもって仮になさりたいという総意がここであった場合に,さて閣議決定で淡々と整理しなければならない世界の部分とどういうふうに,要は持っていったら,項目ベースの話になりますので,それは文部省表現の話ではなくて,弾込め,弾出しの話になりますので,それがどうしたものかなというちょっと事務的なこなしの難しさがあるかなということを申し上げただけでございます。そうことでは全然ございません。
 それで,閣議決定の場合にはちょっと言わずもがなの話ですけれども,したがって閣議決定をリンクさせるということになりますと,当然のことながら将来のある時点におきまして,各省折衝が必要になってまいります。そのとき,いろいろなことが多分出てくるんだろうと思います。したがいまして,可能な限りここでのご意見を要は閣議決定に反映するような努力はいたしますけれども,その一方通行だけではなくて,言われることも当然出てくると。そのやりとりの中でもってどこに落ち着けるのかということを,お互いにちょっとそれぞれ主張すべきことは主張し,おさめるべきことはおさめながら,ちょっとやっていっていただくというプロセスが何ラウンドか多分生じてくるということに,事務手続的にはなろうかというふうに考えております。

【田村部会長代理】ありがとうございました。
 先ほどの私の申し上げたことに誤解がおありになるといけませんので,そのぐらい強くおっしゃったということです。最終的には文化審議会からの答申はそのまま閣議決定されたという,過去の例はございます。そういう意味で申し上げたので,そのぐらい政策部会から強く意見を出すかどうかということかなとは思っております。
 それでは,この部分について申しわけございません,十分ではございませんのですけれども,皆様の今ご提案いただいたことなど,資料もお手元にございますので,もう一度ご検討いただきまして,改めてと思います。ご質問,ご意見などがあれば,文化庁のほうにいただければと存じます。文化芸術各分野に関する事項から,基盤の整備などに関する事項までたくさんございましたけれども,それについて,皆様のご意見がございましたら滝波さんのほうにお願いいたします。
 では,時間の配分を間違いまして,大変失礼いたしました。どうもきょうはありがとうございました。
 事務局におきましては,本日の委員の皆様からいただいたご意見を踏まえまして,また後半特に十分でなかったものですから,皆さんのご意見をいただけるものと思いますので,重点施策と基本的施策についてご精査いただくようにお願いいたします。
 次回,11月22日以降は,本年2月以降,これまでの審議を踏まえた全体的な意見の整理に入りたいということになっております。本日の審議までに重点戦略部分がおおむね固まってきておりますので,次回に向けては,新たに工程表の事務局案を作成いただくようにお願いしたいと思っております。
 それでは,事務局より,今後の日程についてご確認いただきまして,第13回文化政策部会を閉会とさせていただきます。

【滝波企画調整官】ありがとうございました。
 そうしましたら,次回ですけれども,資料の5番のところに,当面の日程及び進め方ということで記載をしております。今,部会長代理からもお話がありましたとおり,次回は11月22日(月),15:00から17:00の間に開催をいたします。これまでの意見の整理の議論をしていきたいと思っていますし,それから工程表の在り方,それからきょうは議論が十分ではなかった点も含めて,改めてご審議をいただきたいというふうに思っております。
 それでは,よろしくお願いします。ありがとうございました。

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