文化審議会第10期文化政策部会(第5回)議事録

1.出 席 者

(委員)

宮田部会長,青柳部会長代理,伊藤委員,太下委員,岡本委員,片山委員,加藤委員,熊倉委員,宮川委員,山村委員,湯浅委員

(事務局)

近藤長官,河村次長,作花長官官房審議官,大木文化部長,石野文化財部長,大和文化財鑑査官,山﨑政策課長 ほか

2.議事内容

【宮田部会長】  おはようございます。皆様,お寒い中,またお忙しい中,ありがとうございます。第5回文化政策部会を開かせていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 さて,本日は,概算要求について,独立行政法人改革の検討状況,それから,日本芸術文化振興会のPD,POについて,日本版アーツカウンシルの施行の取組,これらの意見交換,さらに,報告事項としては,創造都市の推進に関する取組,また,古典の日の推進に関する取組について御報告を頂くということでございます。
 本日は,文化芸術創造都市の取組については,大阪市立大学の佐々木先生にお越しいただいております。御報告を頂きたいと思いますので,よろしくお願い申し上げます。
 それでは,皆さんにお配りしてあると思いますが,最近の情勢と今後の文化政策の提言に関して,9月29日でございますが,私より近藤長官に手渡ししております。机上にお配りしてございますし,またホームページにも動画で配信しておりますが,今日はその動画を映すんですか。

【内田調整官】  はい。

【宮田部会長】  ちょっと恥ずかしい感じですが。では,ひとつ映していただきましょうかね。
(動画上映)

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 多くの先生方のすばらしい御意見,御提言を確実に長官にお渡しし,そしてそれが遂行されているということでございますので,その御報告でございます。
 それでは,続きまして,次に移らせていただきます。この部会は,第3次基本方針の進捗状況管理という任務があります。去る9月7日に概算要求が財務省へ提言されております。基本方針の項目ごとに概算要求の内容を整理していただいておりますので,この件に関して,事務局,説明をよろしくお願いいたします。

【内田調整官】  資料1を御覧いただければと思います。
 事前に資料に関しましては送付いたしておりますので,なるべく私からの説明は短くして,議論に多くの時間を割きたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
 平成25年度概算要求への基本方針の反映状況でございますけれども,まず,この資料の1ページ目の一番上ですけれども,重点戦略1といたしまして文化芸術活動に関する効果的な支援ということで,上から2つ目,諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みの導入といたしまして,これまでの取組を一層充実した形で,更に基金の事業を試行の対象にするということで1億4,000万弱を要求しております。上から3つ目でございますけれども,劇場法の制定に伴いまして,劇場等を活性化するような事業といたしまして,舞台芸術の企画・制作ですとか,実演芸術の創造発信に対する支援ということで,こちらは約30億を新規要求しているところです。上から4つ目ですけれども,劇場法に基づきます指針づくりを現在進めておりまして,来年1月をめどに策定する予定としているところでございます。
 ページをおめくりいただきまして,2ページ目でございますけれども,重点戦略2といたしまして,文化芸術を創造し,支える人材の充実といたしまして,このページの一番下にございますけれども,大学を活用した文化芸術イノベーションといたしまして,10億3,000万を新規要求しております。この事業に関しましては,大学での若手芸術家の育成といったことですとか,専門人材の研修,そういったことに充てられるような予算として概算要求しております。
 次,3ページ目の重点戦略3というところですけれども,子どもや若者を対象とした文化芸術振興策の充実といたしまして,引き続きこれまで行ってまいりました次代を担う子どもの文化芸術体験事業,この事業について引き続き要求をしております。また,上から4つ目といたしまして,対話・創作・表現活動といったようなコミュニケーション教育などの充実に充てる,そういった予算も要求しているというところでございます。
 4ページ目に入りまして,重点戦略4,文化芸術の次世代への確実な継承としましては,一番上ですけれども,文化財の保存修理等に係る予算を充実しておりますほか,このページの一番下の欄ですけれども,文化財等の公開活用推進地域活性化事業として,地域の「たから」を効果的に生かすことによる地域づくり,そういった関係の予算を要求しているところでございます。また,その次のページ,引き続き,重点戦略4の最後ですけれども,被災地も含めまして,文化遺産オンラインということの事業の充実にあてる経費を要求しているところでございます。
 重点戦略5ですけれども,文化芸術の地域振興,観光・産業振興等への活用といたしまして,再掲になりますけれども,2つ目の丸ですが,地域と共働しての美術館・歴史博物館の支援事業ですとか,3つ目の丸で,文化財の公開活用推進地域活性化事業,そういった事業がございます。
 また,同じページ,重点戦略6,文化発信・国際文化交流の充実といたしまして,国際芸術交流支援事業ですとか,文化財海外交流展,そういった事業を引き続き要求しているところでございます。
 大ざっぱな概要ですけれども,第3次基本方針のそれぞれの項目に対応するような概算要求の状況は以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 6つの重点戦略に基づいて内田さんから御説明がございました。いかがでしょうか,先生方,この件に関しまして。
 ちょっと全体を皆様,御覧になっていただいて,少しお時間を頂きましょう。
 私が大学人であるからというわけではございませんが,新規で大学などにもという部分がございますが,これなども是非何とかやっていただけると,いろいろな意味で,大学というのは,ある意味での組織力がございますので,動きが非常に強いので,通ればいいなという感じがしておりますが。
 よろしゅうございますか。どうぞ,片山先生。

【片山委員】  片山です。1つ質問なのですが,今,日中韓の東アジア文化都市の取組が進んでいるところかと思いますけれども,この予算というのは,具体的にはどこに入っているのでしょうか。

【内田調整官】  資料の6ページ目でございますけれども,最後のページの6つの重点戦略の左側の一番下に,「東アジア地域における国際文化交流の推進」という項目がございまして,その1つ目の丸,「東アジア文化交流推進プロジェクト事業」という,こちらの項目がそれに該当するものでございます。

【片山委員】  わかりました,ありがとうございます。

【宮田部会長】  よろしゅうございますか。 はい,どうぞ。

【大木部長】  予算の項目名で「東アジア」という文言が入っているのは,ここ1か所だけでございますけれども,プロ向けの事業や国際交流事業などにおいても,これは審査会を通しての話ですけれども,価値づけをする過程で,「東アジア」というのは,トレンドとしては重視される傾向にあるのではないかと思っています。

【宮田部会長】  ということでございます。
 ほか,質問はございますでしょうか。
 どうぞ,宮川先生。

【宮川委員】  オーケストラは毎年国からたくさん援助を受けて,やっているのですけれども,この中にそれが入っているんでしょうか。

【大木部長】  オーケストラへ具体的にどういう形でお金が流れていくかということですが,プロのオーケストラに対しましては,資料1の1ページ目の一番上にございます,「文化芸術団体への新たな支援の仕組みの導入」がコアになる助成です。それから,3ページ以降に,子どもを対象とした文化芸術振興策として,オーケストラやオーケストラの団員などが学校で巡回公演を行う事業がございます。

【宮田部会長】  よろしゅうございますね。

【宮川委員】  ありがとうございます。

【宮田部会長】  今,宮川先生のような,御専門に関して特化した御質問でも結構でございますので,いかがでしょうか。
 それでは,気づいたら,また戻っても結構ですので,これで次へ進ませていただきます。

【近藤長官】  よろしいですか。

【宮田部会長】  どうぞ,長官。

【近藤長官】  この資料には,総額が書いてないですが,今年度の予算額が1,031億円で,来年度の予算要求総額が1,070億円ということで,非常にモデストな要求だという印象をお持ちだと思いますけれども,これは各省に,いわば割り当てられたと言いましょうか,いろいろな縛りがございまして,その中でやりくりをして,基本的には前年度の予算の1割はカットした上で,新しくその1.5倍まで積み増せるというような縛り,独立行政法人に対する人件費を低減していくとか,いろいろな縛りがあって,がんじがらめでございます。その中で辛うじて40億程度のプラスということを要求の中に確保したわけで,全額通っても,政府の総予算の0.11%という現在の比率はほとんど変わらないというのが現状です。大変歯がゆいところではございますけれども,今の政治というか,行政のシステムの中ではこれが精いっぱいということです。中長期的には,例えば,科学技術について何箇年計画で予算を倍増するとか,そういうような大きな政治的なリーダーシップに基づく計画というのが過去ございましたので,文化芸術,文化財についても,そういうような大きな政権の目玉として長期的に内容を充実させていくというようなことが,近い将来できればなと思っております。これは,この選挙の結果がどうなるか,新しい政権がどういうところに重点を置かれるかにもよると思いますが,それをプッシュするものとして国民的な盛り上がりというものがあって初めて政治のレベルもそれを酌み取るのだろうと思います。個人的には,文化・芸術をもっと増やしたいという先生方も少なくありませんが,それが政党として,あるいは政府としての力になるには,まだまだ国民,有権者から,あるいはメディアからの強いプッシュというものが必要だということを,今回もつくづく感じた次第でございますので,中長期的にそういう方向に持って行けるように,また先生方のお力を頂きたいと思います。

【宮田部会長】  ありがとうございました。まさしく中長期できちんと山が見えるという方向の路線ができるといいなとは思っておりますが,長官,ありがとうございます。みんな異口同音にその件に関しては思っておるということでございますので,よろしくお願いします。
 それでは,次に行きましょうか,よろしいですか。それでは,議題2に入らせていただきます。国立美術館や国立文化財機構,それから日本芸術文化振興会の3つがございますが,それらを1つに統合することや,運用を更に改善するための方向性が今年1月に決定されております。それに関しまして,文化庁さんで検討を進めておるわけでございますが,その状況について,事務局よりその進捗も含めて御説明ください。よろしくお願いします。

【井上リーダー】  それでは,御説明させていただきます。私,文化庁政策課に設置されております独立行政法人プロジェクトチームの井上でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは,早速,この横長の資料でございますけれども,資料2に基づきまして,文化法人の統合・機能強化策について,御説明させていただきます。
 今回の動きにつきましては,文化庁,あるいは文部科学省のみのものではなく,資料の1ページ目の箱の中の3つ目にございます,平成22年12月7日の閣議決定にあるとおり,開始後10年がたっている独立行政法人制度そのものの見直しを行おうということで,全省的に取組が行われている一環でもございます。以前の特殊法人,そして独立行政法人制度開始後も統合が行われてきたところですが,今回の見直しでは更なる統合も行われる予定となっています。その際,文化庁としては,単なる統合に終わることなく,この機会をとらえて,今まで課題となっていた事項もしっかり見据えて文化振興法人の充実に結びつけていければということで取り組んでいるところでございます。
 その事項といたしましては,赤い箱の中1つ目,2つ目にありますように,国立文化施設は,我が国の文化的価値を国民共有の財産として保存・蓄積・継承・発信するためのナショナルセンター,つまり文化芸術の振興の中核を担う重要な機関であるということを再認識いたしますとともに,そして,現状を鑑みると,全独立行政法人横並びの一律の制度とその運用を文化振興のための独立行政法人に機械的に当てはめていくというようでは,我が国の文化崩壊にもつながりかねない状況にあるのだという基本的な考え方でございます。
 それでは,具体的にどのような基本的な方向で今進んでいるかというところを御説明させていただきたいと思いますけれども,今回の独法改革の具体的な方向につきましては,先ほど申しました平成22年の閣議決定も踏まえたものとして,本年1月20日に新たな閣議決定がなされております。文化振興法人の統合に関しましては,美術館を擁する国立美術館と,博物館,文化財研究所を擁する国立文化財機構,そして国立劇場などを擁するとともに芸術文化振興基金を運営する日本芸術文化振興会の3つの独立行政法人を文化振興型の成果目標達成法人に統合しようというものでございます。文部科学省全体では,このほか,理化学研究所と科学技術振興機構等の統合を含んだ研究開発型というようなグループ,そして,日本学術振興会,大学入試センターなどを改革していこうという大学連携型といったようなグループに分かれております。そして,他省庁でもそれぞれのグループが形成され,見直しが行われているという状況でございます。
 先ほど申しました,本年1月の閣議決定では,資料2ページ目の2の丸2にありますように,美術品購入等のための基金を創設するということも示されています。この点につきましては,資料の3ページ目を御覧いただければと思いますけれども,委員の先生方には申し上げるまでもございませんけれども,博物館,美術館の収蔵品は,その国の国力を示す資産でございますので,価値ある収蔵品を適切に収集し展示することにより来館者の数を確実に確保できるということとともに,諸外国の名品を招く交流展実現への交渉力などにもなるものでございます。
 3ページの中ほどに記載してございますけれども,フランスのルーヴル美術館やイギリスの大英博物館と比較しますと,我が国の博物館,美術館の現状については,更に充実していかなければならないと考えているところでございます。また,近年では,中国,あるいは韓国といった国々も,博物館,美術館をはじめ文化の充実に注力いたしておりますので,アジアにおける我が国の位置という観点からも考えていかなければならないと考えております。
 現在,博物館,美術館では,毎年収蔵品購入のための予算を組み,計画的に収蔵品の充実を図っているところでございますけれども,3ページの下に記載してございますとおり,美術品等の流通の特性として,突然,収集家やその他機関からオークションなどに出品されることもあります。その際,美術館のコレクションにとって重要な意味を持つ作品の確保や,我が国の貴重な文化財が海外に流出しないよう,機を逃さず機動的に対応することが必要となってきますけれども,現在,高額な作品を機動的に購入できるような明確な仕組みは持っていないのが現状と言えます。
 そのための1つの有効な仕組みとして,基金の創設が今回の閣議決定にも記載されたわけでございますけれども,この点に関しましては,戻っていただきますと,資料の2ページの丸3,丸4にも関わってくるものと言えます。丸3に「利益剰余金を弾力的に目的積立金に認定できるようにする」とありますが,独立行政法人の基本的なルールとして,当該年度で剰余金が出た場合には,基本的に将来の赤字の補てんのため積立金として計上して,事業には使用できないこととなっています。しかしながら,財務省との協議の上,認められた部分につきましては,目的積立金として中期目標に記載されている事業,次年度の事業に使用できるという仕組みになってございます。これは,独立行政法人が努力した収入分を,自らの業務の充実に使用できるという意味で,インセンティブ付与の制度と言えますけれども,平成18年度にこの経営努力認定の新しい基準ができて以降,文化振興の独立行政法人では目的積立金が認められていないというような状態が続いています。この状況が続けば,経費を削減や,事業を充実しようという組織の意気,モラルにも影響を及ぼしかねないということを考えてございます。逆に,利益剰余金が弾力的に目的積立金に認定できるようになれば,あるいは中期計画期間もまたいで運用できるようになれば,その資金を,先ほど申し上げました収蔵品の緊急購入や,4にありますように,専門人材の人件費にあてることが可能となってくる側面がございます。
 その専門人材の点に関しましては,資料4のところに記載してございますけれども,博物館,美術館,劇場等の活動の維持と発展には欠くべからざる側面ですが,資金の問題とともに,昨年度まで常勤職員の人件費削減を内容とする総人件費改革がかかっておりまして,本年度もまだ方向が定まっていないため,身動きが取れないといったような状況となってございます。
 資料の5ページ以降に,独立行政法人に対する国からの運営費交付金や自己収入の推移,そして職員数の推移を例示させていただいておりますけれども,国からの運営費交付金は,事業費効率化係数などによって年々減少していかなければならない仕組みとなっております。その分を自己収入の増で補うという建前になっているわけでございますけれども,劇場の席数や公演の回数,あるいは適正な来館者数や展覧会の数にはおのずと限度がありますので,目的積立金の弾力的な認定がなければ,いわばじり貧状態が続くというような構図が生まれてしまうわけでございます。
 以上のような問題意識のもと,3法人統合のための個別法の内容を現在,検討しているところでございますけれども,それとともに財務省や総務省といった制度官庁とも協議を行っているところでございます。当初の計画では,前国会において独立行政法人の基本的なルールを定めた独立行政法人通則法を改正した後に,来年1月から始まる通常国会において各省庁が準備した独法ごとの個別法の審議が行われる予定でございました。御案内のような政治状況もあり,前国会に提出されていた通則法が廃案となりまして,今後の道行きが若干不透明になってきております。しかしながら,独立行政法人制度の充実のための改革という観点は,それらに左右されず重要なものでございますので,引き続き検討・協議を続けてまいりたいと考えております。
 以上,独法改革の状況について御説明申し上げましたけれども,今後の展開の中で委員の先生方にも御指導・御協力を仰ぐ場面があると存じます。その際は何とぞよろしくお願いを申し上げます。
 以上で説明を終わります。

【宮田部会長】  御苦労様でございました。
 3つの統合により機能強化を図るということで,その中で一番大きな目的積立金の運用の仕方が大きく変わるというあたりは,結構メーンの柱になりますよね。
 いかがでしょうか,先生方。どうぞ,伊藤先生。

【伊藤委員】  伊藤です。この独立行政法人の改革については,前からずっと関心を持って見守ってきており,今回の統合の方向というのは,基本的にはいいんじゃないかなという立場で,ちょっと要望と,それから質問を交えた形で二,三点触れたいと思っています。
 この目的積立金等々の動きだとか,柔軟性を盛り込む形での改革というのは是非お願いしたいと思っているわけですが,やはり文化関係の施設に関して,例えば,美術館・博物館系統,劇場系ではかなり性格が違う。そういった部分を,統合化していくに当たっての問題点というのはやはりあるんじゃないかと思っています。そのためには,これは前からほかの委員会でも申し上げていたんですけれども,国立大学法人のような形の,つまり,個々の施設の主体性,専門性というものをきちんと維持できるような仕組み,つまり,中央で全て決めてしまっていくような仕組みではなくて,個別の施設の主体性,専門性というものがきちんと確立できるような仕組みというものを,内部の中で是非盛り込んでいただきたいというのが第1点です。特に,先ほどの目的積立金の話,あるいは専門的人材の話も,博物館・美術館の方では説明があるんですが,劇場関係の方ではどうなっているのかちょっとわからない,この辺はちょっと質問で,後でお願いしたいと思っています。
 それから,2番目の要望点としましては,日本芸術文化振興会に基金があるわけでして,今日もお見えですけれども,基金の方でアーツカウンシルに向けての取組が進められているわけです。この動きが,この統合の中でどうなってしまうのかということは非常に気になっています。私の個人的な主張としては,基金は独立させて,アーツカウンシルを目指す方向で,別法人にした方がいいんじゃないかと思うんですが,今の御時世でなかなかそれは難しいということは重々承知なんですけれども,このまま行ってしまうと基金が非常に埋没してしまうんじゃないかなという気がしています。そういう点で,特にアーツカウンシルを目指すという方針が出されている以上,何らかの形で基金に関する部分というものを別扱いにできないか,この辺が要望でございます。
 以上です。

【宮田部会長】  わかりました。いかがでしょうか,その件に関して,どなたか。松田さん,お願いいたします。

【松田室長】  独立行政法人支援室長をしております松田でございます。御質問のありました劇場につきましては,劇場の公演等収入はすべてそのまま公演事業費にあてるということが,一応これは取決めで認められておりまして,各劇場それぞれが努力した分,それを公演事業費の充実に充てられるような仕組みにはなっているというのが今の実情でございます。

【宮田部会長】  どうぞ。

【青柳部会長代理】  私,国立美術館の理事長をしておりますので,ここで少しこの統合に向けて,我々の苦境というか,状況を御説明させていただきたいと思います。
 行政改革の仕分けにおいて,最初は,財政の負担なしに事業は充実しろという評価を得て,そして,昨年の4回目ですか,あの仕分けのときには,我々としては,国立美術館,3つの独法が統合するのは絶対に反対である,何のシナジー効果もないじゃないかと。それをある程度きちんと理論づけて委員会で訴えたのですが,もう既に仕分けの中では統合ありきという,つまり,数合わせの方針が決まっている状況でしたから,我々が何を言おうと聞く耳はないということで,この閣議決定まで至ったわけでございます。
 例えば,国立大学関係の方で,共同利用施設という,国立大学法人がございますけれども,そこなどでは,本部をつくったときに,三十数名の事務官をその下部についている,例えば,歴博,民博など5つぐらいあったと思いますが,そこから吸収するだけの余裕があって,それで本部機構をきちんとつくることができて,三十数人おります。それが,全く下部機構のセクションとは違う形で組織的に存在することができたと。ところが,今回,統合の予定になっております3つの独立行政法人は,それぞれ本部はございますけれども,その本部の職員は全て自分が属している美術館等の職員で兼務しております。ですから,それぞれの3つの独立行政法人の本部職員を集めて,新たに違う本部職員による本部をつくれるかというと,つくれないんですね。そういう余裕は全くないんです。
 全くないというのは,例えば,今お配りされている資料2のページ7を御覧いただきたいと思いますけれども,これは独立行政法人国立美術館における職員数の推移でございますが,当初,独法に移行したとき現員が112でございます。そして,その途中で,六本木の国立新美術館が出たので14の現員増になっておりますが,それでも103です。ですから,この103から国立新美術館の14を引いたら89になっているんです。つまり,112の現員が今現在89なんです。それほど減っているということです。それから,予算にしましても,例えば,私のいる国立西洋美術館では,平成12年の予算が11億数千万ございました。それが今7億を切っております。ですから,人員にしても,予算にしても,徹底的に搾り取られていて,私は,組織を預かる人間として,組織内によくぞモラルハザードが出てこないなということを常に感じていて,いつも職員,あるいは学芸員の人々に大変感謝しております。
 しかも,国立美術館,それから文化財の方も,様々な展覧会のパートナーとして,新聞社や放送局がございます。ところが,よく言われることですけれども,新聞社はバブル期までは日本で超優良会社でしたけれども,今は普通の会社になり,朝日新聞でさえ去年,歴史上初めて赤字決算を出しました。そのために文化事業をやる余力はほとんどなくなっていて,むしろ,収益を上げるための興行をやる組織になりつつあります。それほどに社会環境も悪くなっていると。そういう中で,今このような統合を始めようとしているから,どこかにその統合の良さを挙げなければいけないということで,我々,いろいろ頭を絞っているわけです。
 しかし,この博物館・美術館問題には非常に根本的な欠陥が1つございます。それは,博物館や美術館を理論づけている法律の一番の根幹は博物館法です。ところが,この博物館法は文化庁にないんです,文部科学省の生涯学習局の社会教育課が担当しているんです。そして,組織はこちら側の文化庁にあるという,行政上,ある意味で欠陥があるんです。ですから,今日の資料の中で,私が羨ましいなと思ったのは,資料1の1ページのところの4番目に,「劇場,音楽堂等の法的基盤の整備について」ということで,ここできちんと今年,劇場,音楽堂等の活性化に関する法律ができているわけです。それらを管轄する文化庁がそれらの基本法となるものをここで持っているわけですね。だから,こういう構造的な欠陥を今までずっとそのままにしてきたということは,どれだけ文化行政というものを,真っ当からきちんと,構築的に,構造的に進めようとしているのかということに関して,私は個人的には疑問を持たざるを得ないと。
 今現在,先ほど伊藤先生がおっしゃってくださったように,国立美術館や国立文化財機構,それから日本芸術文化振興会は,それぞれ大変性格が違う。特に,日本芸術文化振興会の場合は,ファンディングエージェンシーが非常に大きな役割としてある,一方で,文化財の方は,それを保存・維持するため,それから,美術館は美術を通じて国民の感性を高めるためという,かなり大きな違いがございます。しかし,それを統合するからには,どのようなシナジー効果を得られるのかというと,1つは,予算規模がある程度大きくなる,だけども,貧富の差がこの3つの法人にはありますので,恐らくそれはお互いにアンタッチャブルなものになっていくだろう,だから,その予算は拡大しても,セクショナル化している予算を大きく統合することは非常に難しいのではないかと。
 じゃあ,その人員が統合されるということで,特に学芸関係の人間が統合される場合,これは,文化財に関しても,それから美術に関しても,大変な人材の宝庫でございます。ですから,この方々がより自由に,より活発に,より知恵の出しやすいような組織にしていくことが必要ではないか。
 そのときに,重要なことは,ある程度,教育にかかわることによって,大学がいつまでも若いというのは,若い学生に教師が接触できるから若さを保ち得るんですね。ですから,この人材集団が,例えばですけれども,エコール・ド・ルーヴルのような,あるいは,フランスのエコール・パトリモアンヌといって,国立文化財機構のようなグランゼコールがございます。パリ大学などは,エコール・パトリモアンヌに行くための予備校化しているほどです。そういう学芸員集団がいるから,ある程度,例えば,大学共同利用施設のようなところとタイアップして教育をやっていけば,更にその人材としての磨きがかかるんじゃないか。
 現在,この3つの法人は股裂き状況です。つまり,管理運営に関しては文化庁だけれども,基本の法律は文部科学省にある。ですから,むしろ,我々の方が,法人の方が,文化庁と文部科学省の両方に手を出してもいいのではないかというようなことも考えられます。
 それから,現在,世界は,ヨーロッパもアメリカもそれほど景気が良くない,中国も停滞し始めていますけれども,美術市場というのは,私の試算ですけれども,20兆円ぐらいです。そして,中国が2兆円です。それに比べて,日本は,これも私の試算ですから数字に間違いがあるかもしれませんけれども,どう多く見ても2,500億円ぐらいです,余りにも小さい。この中で若い人たちが台頭していかなければいけないというんで,非常に窮屈になって,ですから,戦略的な動きをする村上隆などは,さっさと日本の市場を見限って外へ出て行くというすばらしい戦略を取らざるを得ないんですね。
 そういうことが,国内の中でも十分にやっていくようにしなければいけないためにも,この文化関係の3つの法人が統合して,そして,知恵を絞り合って,更に,せっかくの,これは強いられた統合ではございますが,もう決定して,これから実現していくわけですから,前に進むためには,何らかの新しい力となるようなプランを持っていかなければいけない。
 ただし,目的積立金にしても,最初,平成13年に独立行政法人が発足したときは,光り輝くような形で我々は期待して,私はそのころは大学にいて,むしろ羨ましいなと思っておりました。ところが,この利益金を目的積立金にするための裁量権は全て財務省にあります。財務省は,これだけ日本が財政上赤字になっていれば,どのような所からも,どのような理由があろうと,それ以上に大きな理由として,赤字解消のためということで,お金を取り上げていくことができます。その結果が,第1期中期計画の4年度までは,目的積立金があったにもかかわらず,それ以降は一銭もございません。しかも,第2期の5年間で,その利益金を積み上げているのが,例えば,国立美術館で約6億円ありましたが,それは全部,財務省に吸収されていきました。これほどに貧しい所が積み上げたお金がそのまま持っていかれるという状況です。ですから,幸いなことに,目的積立金のより円滑な利用とか,あるいは基金の設置というようなものが,一応,閣議決定されておりますので,是非明文化した形で,通則法ではなくて個別法の中でそれが明文化されない限り,また,以前の目的積立金と同じように,財務省の裁量権によって有象無象になっていってしまうというところでございます。
 そういう意味で,私どもは,大変非力ではございますが,この統一に向けての方向の中で,是非是非文化庁にも,また文部科学省にもいろいろ御努力を願いたいと思っている次第です。以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 お願いする所が2つあるという感じですね。それは,3つをまとめようとしているときに,お願いに行く所が2つあるのは,少し不思議な雰囲気がするので,大木さん,いかがでしょうか。

【大木部長】  私が話すのが適切かわかりませんが一言お話をさせていただきます。現在,3法人の所掌が股裂き状態になっているというお話がございましたが,博物館法は,自然系の博物館を含めまして,1つの法律で規定しております。旧文部省当時からのつくりとして,文化財保護委員会は別にいたしまして,文化部は社会教育部局から来ているなどの歴史があって,現在の形になっているわけです。国立の,少なくとも博物館,美術館に関しては,何か規制を受けるというつくりには法律上もなってございませんし,率直に言って,その辺の窮屈さを私どもが意識したことは余りございません。
 したがいまして,博物館法の所管が文部科学省本省だからといって,3法人の所掌が股裂き状態になっているという意識を,私は持っていなかったものですから,その点は御理解を頂きたいと考えております。

【宮田部会長】  井上さん,どうですか。

【井上リーダー】  今,青柳先生から,今までの経緯等も踏まえて問題点を御指摘いただきました。本当に,3つの大きなグループ,それぞれに御苦労されている部分がある,それを今回,統合という形,先ほどもう決まってしまったということがございましたけれども,1つの制度を変えていくきっかけといいましょうか,節目でもあると思いますので,できるだけ前に進めるように事務方としても検討をし,また関係の所と協議していきたいというふうに考えてございます。

【近藤長官】  先ほどの伊藤委員の御質問で,後半の御質問がありました,これは,私どもも非常に頭を悩めている点でございまして,仮に欧米のような本格的なアーツカウンシルを導入するとすれば,相当大規模な,今の基金が成長した形のアーツカウンシルというものが必要になってくるわけですが,今の独法改革の流れの中で,自分の所だけ特別扱いだ,新しいものをつくるんだという印象を与えると,恐らく真っ向からつぶされる。そういう今の,先ほどの予算にも非常に似ているところがありますけれども,例外なしに減らしていく,搾っていくんだという,大きな政治的,社会的な風潮の中では,なかなか苦戦もしていますし,ビジョンがつくりにくい状況です。
 しかし,第3次基本方針でも頂いた提言ですし,私自身も日本の文化政策,特に公的資金による助成の在り方について大きく変える期に差しかかっていると思いますので,そういう大きな政治的な流れの中で個別の例外事項としてできるだけ進めていくと同時に,先ほどちょっと申し上げましたように,そういう枠組みそのものを大きく見直して,文化芸術というものをより大きな柱として国の政策としてとらえ,そのためにはどういう仕組みがいいのか,ほかの,例えば,公共事業とか,社会保障とか,そういうのとはまた違う仕組みが当然必要だと思いますので,そういうものでどういうものが一番いいのかということを,中長期的に政治のレベルの方でしっかりと考えてもらうような材料づくり,準備を今からしていくと。
 そして,独法改革の流れを見ながら,私どもの目指しているものを,どうやったら一番合理的,効率的に,かつ十分に実現できるかという,これはかなり中長期的な粘りを必要とする作業になるかと思いますけれども,改めて皆様方のお力を借りながら,やっぱり世論というものを,マスコミも含めてその重要性というものを理解してもらうように訴えていく,そういう社会的な動きにしていくこと,そこをやっていかないと,枠組みの中の,役所レベルでのバトルだけではなかなか道が開けてこない。
 そういう状況がございますので,これはもう青柳先生の御指摘の点もそうですし,アーツカウンシルもそうですけれども,この数年間の大きな流れの,例外を許さない一律の削減というか,改革というか,改悪というか,その中で,我々としては諦めずに我々の考えの正当性をアピールし続けていくと。そして,あらゆるサポーターというものを増やしていく,そういったことを粘り強く続けていくことが必要かなと。今日やって,明日結果が出るというものではないということだけは,現実の問題として覚悟しなくてはいけないけれども,だからといって,決してあきらめてはいけない,これだけの強いサポートがあるわけですから,それをもっと世界に広げていく,そして,リーダーにアピールしていくという,そこの努力を更に倍加していく,そういったことが必要なのかなというのが,私の印象でございます。

【宮田部会長】  すぐに出る答えではございませんけれども,伊藤先生,並びに青柳先生のお話というのは大変ずっしり重いものを感じます。
 先生,お願いします。

【太下委員】  太下です。2点ございます。
 1点目が,青柳先生も御指摘を頂いてていた,利益剰余金の部分の目的積立金の件ですけれども,これは以前,私も論文で,そもそもの認定と,それから取崩しが非常に不自由であるということを指摘していましたので,これが柔軟になるということは大変すばらしいことだと思うのですが,1点御留意いただきたいのが,この目的積立金というのは飽くまでオプショナルな存在であるという点です。どういうことかといいますと,実際,今,地方自治体立の文化財団等で,設置者である都道府県等からの本来提供されるべき補助金が削減される中で,財団の基金を取り崩して,本来,使うべき使途に使っている,そういう余り健全でない状況が起こっているという事実があります。こちらの新しくできる組織の目的積立金の運用に関しては,そういう使われ方をしないように,飽くまでオプショナルな存在であると位置づけて,本来,提供すべき補助金等はきちんと提供するようにという前提で運用いただきたいというのが1点目です。
 2点目ですが収蔵品の購入のための基金が創設されるとのことで,これは非常にすばらしいことだと思います。3ページを拝見しますと,文化財等の写真が出ていて,こういうのも大変重要だと思うのですけれども,一方で,文化庁さんの方で,オーストラリア・リンツのアルス・エレストロニカを参考にしながら,「メディア芸術祭」を創設されて,非常に実績のあるフェスティバルになっていると思います。是非こういう分野の収蔵品も充実させていただきたいと思っていまして,とりわけ私が危惧しているのは,日本が誇る文化である漫画の原画についてです。御案内のとおり,漫画はソフトパワーとして非常に力を持っており,例えばイラクにおける復興支援の際にも自衛隊の給水車に漫画のキャラクターが使われていました。けれども,この漫画の原画が,実は余りきちんと保管されていないということが課題となっています。この原画は,のりづけされたりしており,保存にも一定の配慮が必要なのですけれども,従来,これはいわゆるメインストリームのカルチャーではない,サブカルチャー的な位置づけがなされてきたので,ミュージアムの収蔵品の対象にはなってこなかったのだと思います。しかし私は,今これが第2の浮世絵になるのではないかという危惧を抱いております。
 御案内のとおり,浮世絵は,かつて江戸時代のある種サブカルチャーだったわけで,これが有田焼や伊万里などの陶磁器の包み紙として海外に出たわけです。要は,正式な美術品として出たわけではないのに,海外で高く評価され,結果として浮世絵の重要な作品が現状,海外のコレクションになっているという事実があります。漫画の原画についても,漫画がれっきとした日本の文化であると考えた場合,そろそろ御存命の作家さんも亡くなったりするという世代交代の時期にも来ていますので,今から収集していかないと散逸するという危険性が非常に高いと思っています。是非そういった分野にも配慮された収蔵品の収集をお考えいただければと思います。

【宮田部会長】  ありがとうございました。2点ございました。
 言わないでおこうかなと思ったんですが,4ページの,クリーニング前とかクリーニング後とか,矢印が画像の中に入っちゃ駄目ですよ。違いがわからなくなるからね,これは全部画像より外側に描くようにしてくださいね。そういうところから,文化庁さん,「やっぱり違うな」と言われるようにしましょう。よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
 まだまだ御意見等ございますでしょうが,ちょっと次に移らせてください。
 それでは,現在,日本芸術文化振興会でPD,POが参画した日本版アーツカウンシルの試行に取り組んでおります。先般7月の第2回の部会において,日本芸術文化振興会の関理事から進捗状況を御報告いただきました,ありがとうございました。その後の進捗も含めて現在の状況をお伺いしたいと思います。関理事またPD,POの先生方から音楽分野や舞踊分野等々についても御説明を頂けたらと思っております。よろしくどうぞ。

【関理事】  日本芸術文化振興会の基金部担当理事の関でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今,宮田部会長からも御紹介いただきましたように,前回,7月18日に私から御報告をさせていただいておりますので,本日はPD,POの先生方からの具体の報告を中心にお聞きいただければと思っているところでございます。したがいまして,私からは1点だけ,こういうことで進めておりますということを,念のために申し上げさせていただきたいと思います。
 資料3でございますが,2枚目に,横長の表を差し上げております。これを御覧いただきたいと思います。資料3の2枚目でございます。
 これは,このようなスケジュールでやっておりますということを一覧にしたものでございますけれども,1年目の平成23年度におきましては,具体の申請を受けまして,それを採択するという作業,審査基準を作成する,それから助成対象活動の調査分析をする,こういったところにPD,POの先生方に関与していただいているというところでございます。2年目の本年度,平成24年度でございますけれども,公演調査の実施ということで,採択をいたしました公演が実施されておりますのが本年度でございますので,その調査,それから助成対象団体との意見交換を進めております。それから,今後の予定といたしましては,3年目の来年度でございますけれども,事後評価を導入いたしまして,4年目の平成26年度におきまして事後評価を本格的に実施すると同時に,助成成果を分析する,あるいは,音楽なら音楽,舞踊なら舞踊といった分野についての動向等の調査,こういうことにつきましても着手してまいりたい,このように考えているところでございます。
 それから,対象区分,どういう分野につきましてこの新たな制度を導入しているのかということを下に書かせていただいております。区分が大きく2つございますが,補助金事業といいますのは,文化庁から補助金を受けまして,それを私どもが執行しているもの,トップレベルの舞台芸術創造事業でございます。平成23年度からは,そのうち音楽分野と舞踊分野の2分野について導入しております。それから,平成24年度,本年度からは更に加えて2分野,演劇分野と伝統芸能・大衆芸能分野について導入しております。そして,来年度,平成25年度からは,基金事業,先ほど伊藤先生の御発言にも出ました芸術文化振興基金でございますけれども,この基金の助成金の事業につきましても新たな制度を導入するということを予定しているところでございます。
 それでは,私の方から,以上,申し上げました上で,以下,PD,POの先生方からお話をさせていただきたいと思います。御紹介をさせていただきますと,私の左手,音楽分野のプログラムディレクター,前PDでございます。

【前PD】  前でございます。

【関理事】  それから,その隣,舞踊分野のプログラムディレクター,中川PDでございます。

【中川PD】  中川です。

【関理事】  それから,もう1人,音楽分野のプログラムオフィサー,石田POでございます。

【石田PO】  石田でございます。

【関理事】  それでは,先生方,よろしくお願いします。

【前PD】  音楽分野のPD,前でございます。プログラムオフィサーの石田ともに御説明したいと思っております。
 資料3の1枚目の裏側でございます。主な取組内容というところでございます。これを簡単に御説明いたします。
 まず,1番目の募集及び審査に関する企画立案でございますが,これについては,助成事業の実績や課題などについて調査・分析をいたしまして,「助成に係る基本的な方向性」,それから「審査基準案」というものを作成いたしました。従来は,助成対象活動の審査後に審査基準というものを公表してまいりましたが,それを事前に公表することによりまして,審査の視点というものが非常に明確になったということがございます。これは,私どもだけではなくて,助成応募される側にも非常に好感を持って迎えられているように思います。何人かの方々からそういう御意見を頂戴いたしました。
 次に,2番目の丸でございますが,助成対象活動に関する調査・分析ということですけれども,これは,活動内容や,あるいは助成経費等について調査・分析をして,それを運営委員会に付議,説明をするというものでございます。この件については,まず団体から要望書というものが提出されてまいりますが,それを点検して,事前に各団体に対して何か疑問点があれば確認するというようなことをいたします。これにより,専門委員会の審査に対しては,かなり適切で有効な情報提供を行うことができたのではないかと考えております。
 それから,次の丸でございますが,助成対象活動の審査結果の分析等,これは書いてあるとおりでありまして,次年度の改善につなげるということが何より大事なことではないかと思います。
 では,2番目の公演調査及び事後評価の実施について申し上げます。
 公演調査計画というものを策定いたしまして,平成23年度から文化芸術活動調査員,通常「調査員」と呼んでおりますが,4名を活用しながら,効率的に公演調査を実施いたしました。なお,4名ではやはり少し足りないということで,今年度,更に2名増員しております。この結果,札幌,仙台,大阪,九州の大分には1名ずつ,首都圏には2名というように6名をお願いしております。この公演調査というものを行うことによりまして,各地域は,これまではとかく首都圏に比べて手薄でございましたけれども,目がかなり届くようになったのではないかと思います。また,地域の公演調査,及び調査員との意見交換というものをすることによりまして,地域の状況等もかなり把握できるようになったと思います。
 次に3番目でございますけれども,助成対象団体との意見交換等でございます。この件については,地域の実情というものをやはり把握する必要があるという観点から,平成23年度には,地方行政の方向転換が非常に顕著になっておりました,大阪を含む関西圏,それから,愛知からも2つのオーケストラの団体に参加していただきまして,意見交換を実施した結果,かなりいろいろな問題が出てまいりました。今年度,平成24年度については,トップレベルの舞台芸術創造事業として採択されましたトップレベルの年間活動支援型28団体を中心に意見交換を行いました。その際,専門委員会などで出ました意見と団体の現状,それから今後の展望,さらには助成制度の改善点等について意見交換を行いました。
 また,不採択になった団体,あるいは公演単位支援型として採択された団体については,その都度対応してまいりました。そのほか,いろいろな芸術団体とできるだけコミュニケーションを取りたいということで,例えば,全日本オペラネットワークが主催した東京オペラフォーラムというのが東京で行われ,出席いたしました。これには全国から37団体か,40団体近い団体が出てまいりました。採択されなかった団体が大半でございます。これらからも非常に生身の意見が出てまいりました。
 一例を申し上げますと,やはり全部に共通しておりましたのは,財政状況というものを改善する,こういうことをしている,それでも苦しいというようなこと,それから,特にオーケストラですけれども,世代交代というものがどうしても避けられないため積極的な嘱託の再雇用というものをしている団体が多いように思われました。それから,非常に明らかになりましたこととしては,高齢者の増加による,高齢者の聴衆に対する対策でございます。例えば,演奏会をマチネに持って来るなど,そういったことが共通の話題としてございました。
 そのほか,細かいこととしては,公演日数の,ゲネプロに関わる経費が今度,助成外になりましたので,そういう不満であるとか,それから,助成団体というものは,よく「ばらまき」と言われますが,広く浅くじゃなくて,もっと数を絞って,団体に厚くすべきじゃないか。それから,助成の採択結果というものを早く知らせてくれないか。でないと,年度当初の公演,例えば,フライヤー,チラシにも書けないということが意見としてございました。
以上でございます。

 

【宮田部会長】  ありがとうございました。では,舞踊分野について,中川さん,お願いします。

【中川PO】  舞踊分野も基本的に音楽と同じような流れでやっておりました。私と,そのほかにPO3名とでチームを組んでやっておりまして,今の前先生のお話に多少,私どもの方でつけ加えるとしますと,初めの(1)の募集及び審査に関する企画立案の1番目のところ,これは,やはり同じように,審査基準を事前に策定・公表したわけでございますが,平成24年度の募集に関しては,これは平成23年秋に募集をしたわけですが,その直前に決めたということでもあり,既に各団体,次の年度のラインナップは決めてあったわけです。ですから,実質的にこれが何らかの効果があったかということにはほとんどならなかったかと思いますが,平成25年度の募集以降は多少効果が出てくるものと期待しております。こういったものを我々は応援したいんだというメッセージを出してあるということでありますので,これはいずれ効果が出てくると思っております。
 それから,2番目の丸でございます,要望書に関して,やはり舞踊分野でも同じように,11月に要望書が届きまして,2月に審査が専門委員会で行われるわけですが,その間に,各芸術団体,申請のあった団体の方に,我々が見て疑問に思ったところを質問いたしました。主に経費に関するところが多かったのですが,この金額がなぜこういうふうになっているのかといったようなことを詳細に伺いました。そのために,専門委員会の席上で疑問として出たときには,ほとんどの質問に対して我々の方から答えることができまして,専門委員の先生からは大変歓迎されましたし,効率的に行うことができたということであったかと思います。
 それから,3番目の丸でございますが,舞踊分野に関しては,年間活動支援型の事業について,24年度では1団体も採択されなかったわけであります。
このことに関して,当然採択されると思っていた団体などからどういうことになっているんだという声が出ました。我々としては,年間活動支援型に対して,こういうところが足りなかったのだということをまとめてメッセージとして出しました。ここで御説明しますと,年間活動支援型というのは,団体を育てるための支援であるので,団体としてこういうふうにしていきたいという5年後,10年後のビジョンみたいなもの,志みたいなものをもっと語ってほしいということと,それから,収支の計画が,非常にずさんな書き方をされていたということで,積算の内訳をきちんと書いてほしいということとか,支払先を明確にしてほしいとか,こういったことをまとめて出しまして,これは後に各団体と意見交換をする際にどの団体にもお伝えいたしました。
 続きまして,(2)の公演調査と事後評価に関するところですが,公演調査は,私どもでも,平成23年度は途中からでしたので,おおむね6割ぐらいの公演を観てくることができました。それから,平成24年度は,現在のところはすべてのトップレベルで採択した公演は観ておりまして,今後もその予定でおります。調査員3名を使って,PD,PO調査員,合計7名の人間で,なるべく複数の人間が行くようにしているというふうにやっております。
 それから,振興基金で採択している事業に関しましても,将来トップレベルの方で,上がっていく可能性のあるものについては調査しておこうということでやっておりました。当初,来年度も引き続きトップレベルだけが我々の仕事の対象であると思っていたものでやっていたんですが,来年度からは基金も対象になるということだったので,これはやっておいてよかったかなと思っております。
 続きまして,3番目の助成団体との意見交換ですが,これは,トップレベルで採択されたすべての団体,舞踊の方は余り多くないので20団体ぐらいですが,意見交換を行いました。何を話したかといいますと,1つには,審査会,専門委員会でどのような意見が出たかということを先方にお伝えしました。それから,2番目に,それぞれの団体から,自分の団体の現状をどう考えているか,それから今後どのようにしていきたいと考えているかといったことをお話ししていただきました。そして,3番目に,現在の助成の制度について何かそちらでお考えのことはあるか,お感じになっていることはあるかということを伺いました。
 いろいろな意見が頂けたのですが,大きく出ていたことを2つばかり御紹介いたしますと,赤字補てんというやり方から脱却したことに関しては,これはもう大歓迎であるとほとんどの団体が言っておりました。ただ,公演前の支出に対して補助するというやり方については戸惑いがあるということで,これは,舞台芸術の世界は,リハーサルと本番とを分けてお金を払うということをしていないので,そういう習慣がないというところから非常に戸惑ったという意見が多く出ておりました。
 それから,2番目には,やはりお金のことでどこも苦しい思いをしているということでして,すべての支払が終わって,領収書を全部そろえないと助成金をもらえないということで,その辺のキャッシュフローの厳しさということをもうちょっと理解して,概算払とか,仮払いとか,そういったことはできないのでしょうかというようなお話を頂くことができまして,そのあたりは事務局にも伝えて,何とか改善できないかという話をしているところでございます。

【宮田部会長】  ありがとうございます。
 今のお話,加藤先生,どうぞ。

【加藤委員】  この制度については,大変大きな期待をしていたので,今御報告を聞いて,正直な感想,余り将来性を感じられなかったというのが誠に残念だなと思った次第です。個別の助成案件の評価ということからスタートしたというところはやむを得ない,それはそれで良いと思うんですが,更に政策そのものの評価をする仕組みをこの中に作っていかないと駄目だと思います。そのことと関連して言うと,先ほど青柳先生がおっしゃった,国立の文化施設法人の一体化について,危機意識を示されて,それには強い共感を覚えました。しかし,当事者だけが幾ら言っていても,結局,自分たちが困っているから言ってるだけだろうということになって,世論が喚起されない。
 幸いにして,政権が多分変わりますから,閣議決定をもう一回ひっくり返してもらう,閣議決定をしてもらうためにも,必ずしもこの一体化そのものを止めることはできないかもしれないけれども,ここで新たな文化振興策をきちんと立てるのだということをアピールしていく必要があると思います。という意味では,日本文化の振興のシステムの危機だということを世論に訴えていく必要がある。そういう際に,文化の団体だけで幾ら言っていても駄目だろう。そうではなくて,もう少し,例えば,企業の団体,経団連のようなところにこそ,日本の文化を振興させるシステムがこのまま危機状態でいいのかということを訴えて,そういうところから声を上げていただくということは非常に重要なんじゃないのかな。そうした働きかけが今のところ非常に弱いのじゃないのかなというふうに思います。
 私の所属している企業メセナ協議会は,企業が作っている文化振興の応援団なので,メセナ協議会などももっと活用されると良いんではないかと思います。今の理事の関さんではないので,誤解のないように申し上げますが,以前,この制度が導入されるという際に,意見交換をしたいとメセナ協議会から申し上げたところ,体よく断られた,それで,いろいろな意見は聞きたくない,ともかく自分たちが今,新しい制度を作るのだからということで,そういう姿勢を保っている限りは無理だろうと。文化の振興に対する世論形成という観点から言えば,幅広くいろいろな方と意見交換をして,そういう人たちを味方に引きつけて,外から意見を言ってもらう,応援をしてもらう,その体制を是非つくられるべきで,今のところ,文化の人たちが余りにもその業界の中だけで閉じこもっているのが,今の御説明でも私は感じられて,誠に残念です。積極的にこれから社会に向かって文化振興をやっていく上で何が必要かということを訴えていく,新たな政策提言をいろいろとしていく,そのために味方をできるだけ外にたくさん作るという方向性を持たれるといいのではないかなと思います。
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 たまたま私は国立大学協会に属しているわけですが,国大協用語というのがあって,これは一般国民の人は何を言ってるかようわからんというふうなことをこの間言いましたし,同時に,文部科学省の高等局の皆さんにも,文科省用語は国民用語ではないぞという話をしたんですが,加藤先生のそのお話というのはよくわかるような気がしますし,是非とも,先ほど近藤長官も,世論という言葉もございましたが,世論に訴える,そして世論からの声を引きつけるということも,文化のこの行政の中では一番大事な中の1つではないかという感じがいたします。ありがとうございました。
 片山先生,どうぞ。

【片山委員】  今年これから試行した上で事後評価に取り組まれるということは大変重要なことだと思っております。先ほどの発言にあった狭い文化の中に閉じこもらずということとも関係するのですけれども,今,日本全体で公益法人改革とか,NPO法の改定などによる,民間非営利セクターの強化が進んでいます。福祉の分野とか,環境の分野とか,まちづくりの分野とか,民間非営利の団体が公益的な活動を活発化させていこうと動いています。同様にやはり民間の芸術団体も公益をきちんと果たせるように,足腰の強い,持続性のある団体になっていくように育てていくことが非常に重要だと思います。年間支援というのは,まさにそういう団体の育成を目指しているものだと思いますので,事後評価を行う際は,単にその公演がうまくいったかどうかということだけではなくて,その団体の足腰が強化されたのか,ということを評価する項目や評価の仕組みを是非確立していただけたらと思っております。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 湯浅先生,どうぞ。

【湯浅委員】  簡単にですけれども,今お話を伺って,新しい仕組みが入ったことによって文化団体とのコミュニケーションが緊密になって,いろいろな問題が浮き彫りにされたということと,地方の状況が非常に分かってきたという,効果のところのお話もあったんですけれども,先ほどからずっと出ている,現在,世論をこれから味方につけていくかという中で,このアーツカウンシル的な組織の,今,取組内容として,調査,審査というものは非常に大きくありますけれども,もう一つ,コミュニケーションですとか,アドボカシーとか,そういった今,集まってきている情報をどのようにこれから外に向けて発信しながら,そして政策を引き寄せていくかというようなことも非常に大事になってくるのかというふうに思いましたので,コメントさせていただきます。

【宮田部会長】  ありがとうございます。とても大事なことだと思います。
 あと1時間ぐらい欲しいですね,困りましたね。とりあえず,関理事,今,1回目の,こうやって御発表がございました,経過報告を含めて,これはとても大事なことですので,これから方向性も含めて,1つの方向の,こういうやり方もあるなというふうなことで御評価を頂いた,また発表を楽しみにお待ちいたしております。よろしゅうございますでしょうか。

【関理事】  この後,文化庁からお聞きしている限りでは,もう1回,今年度から導入しました演劇,それから伝統芸能・大衆芸能分野からも御報告をさせていただく機会を,またいずれ与えていただけるというふうに承知しておりますので,そういった機会も活用して適宜御報告をさせていただきたいと存じます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。お三方,どうも御苦労さまでございました。ありがとうございました。我々,期待を込めていろいろお話をさせていただいていることです。今後とも,よろしくどうぞお願いいたします。
 さて,それでは,次に移らせてもらいます。創造都市の推進に関する取組でございます。これまで様々な自治体において,創造都市ということで,文化芸術の持つ創造性の生かし方,産業振興とか地域活性化等の取組が進められてきております。文化庁もこれまでの長官表彰,それから調査研究事業,モデル事業等を進めてきていると伺っております。この創造都市の取組に関して,大阪市立大学の佐々木先生が第一人者でございますので,いろいろな調査結果も含めて御尽力されてきております。来る1月には横浜市に日本の創造都市の拠点,「創造都市ネットワーク日本」,これは仮称でございますが,創設される予定でございます。1つの節目でありますので,今日は佐々木先生にお出でいただいておりますので,恐縮でございますが,御説明を頂けると有り難いと思います。

【佐々木教授】  ありがとうございます。佐々木でございます。
 資料4に手短にまとめておりますので,御紹介させていただきます。
 クリエイティブシティ,「創造都市」という訳語を当てておりますが,これは,私ども,都市の在り方や,あるいは文化芸術から地域を再生するという研究をしておる者の間で共通の概念として21世紀初頭から浮かび上がってきたものでございまして,具体的にはEUが1985年から欧州文化首都事業を開始いたしました。もう既に27年ぐらいたつわけですけれども,この中で幾つかの典型的な事例が生まれてきました。そこで,この欧州文化首都が世界的に注目される中で,ユネスコにおいても2004年から創造都市ネットワーク事業というものが始まります。
 このときの背景というのは,ちょうど20世紀初頭にかけて経済・金融の面でのグローバライゼーションが急速に進みましたときに,文化が画一化される恐れがある,特に映画産業などのような文化産業においての,ある1つの国が一人勝ちをするという状況に対して,ユネスコが危惧を表明して,むしろ,文化の多様性を保たなければならないということから,世界の各都市から,草の根から文化産業を多様に発展させよう,こういう観点から2004年にその事業を開始しております。
 現在は,音楽や映画や,7つの文化ジャンルというもので,世界で34の都市がこの指定を受けるようになりました。東アジアにおいては,日本で名古屋,神戸,金沢の3都市,それから中国で4都市,韓国は3都市ということで,34の世界の創造都市の中で10を東アジアが占めるという形で,近年は非常に東アジアにおいての創造都市事業というものが注目を集めております。
 日本においては,2000年以降,金沢,横浜,神戸などから始まりまして,次第に全国に広まっております。そして,文化庁におかれても,青木保先生が長官をされておりましたときですね,平成19年度に文化庁長官表彰の中に文化芸術創造都市部門というものを設けていただき,以来,各年,4から5の地域,自治体を表彰するという形にしておりまして,現在のところ,21地域ですね,自治体がこの表彰を受けております。
 そして,平成21年度以降は,創造都市推進事業というものを開始いただきました。これは,私どもの,私が理事長しておりますNPOで受託をしておりますが,全国的なネットワーク化を図れないかということで,ユネスコなども進めておりますが,これの国内版という意味で進めております。さらに,平成22年度以降は,創造都市モデル事業という形で,大都市や中都市,あるいは農村,様々なタイプの創造都市事業についての支援を行うという形での取組が始まってまいりました。
 こうした中で,具体的には,今,約30ぐらいの自治体が対象になっておりますが,「創造都市ネットワーク日本」というものを立ち上げたいということで準備を進めております。このモデルにしておりますのは,カナダに「創造都市ネットワーク・カナダ」という団体がございまして,これは10年ぐらいの歴史があります。約100団体,100自治体がここに加盟いたしまして,広い国土ですから,トロントとかバンクーバーが東西のリーダーになって,交互に事務局を務めるというような形で進んでおりますが,これを具体的に創造都市事業の先行しております横浜,金沢,神戸の3都市,さらには,近年は小規模な都市や農村でも,「創造農村」という言葉も出てきまして,進んでおりますので,その代表として山形県の鶴岡市,あるいは兵庫県の篠山市,合計5都市ですね,5自治体が幹事役となって,この規約づくり,あるいは呼びかけ,さらには具体的な事業の内容について検討するという形で進んできておるところであります。
 お手元の資料の1ページの下の方からは,その経緯について書いてございます。そして,最後のところには,「ネットワーク日本」の設立に向けたアジェンダという形でまとめてございますので,御参照いただければ有り難いと思う次第です。
 どうもありがとうございました。

【宮田部会長】  ありがとうございました,3都市あるいは5都市,小さいところでも意味のある創造都市の計画があると,取組でございます。ありがとうございました。
 この件に関しましていかがでしょうか。
 やはりこの3都市に行きますと,駅へおりただけでも浮き浮きするような空間を感じますね。

【佐々木教授】  そうですね。今,挙げた3都市以外にも,例えば,札幌市,仙台市,それから浜松市ですね,新潟市,最近は高松市,熊本市,こういったところにも広がっていますから,北から南まで非常な広がりがあるということと,あわせて,秋田県とか大分県ですね,県の単位でも取組の関心が広がっています。例えば,秋田県は国民文化祭が予定されていますが,この文化祭事業の中に創造性という切り口を入れて,創造立県ですかね,県全体で創造都市,地域を広げる,こういうことが議論されるようになってきています。

【宮田部会長】  ありがとうございます。
 どうぞ,先生。

【青柳部会長代理】  去年,たしか欧州文化首都はマルセイユでしょうか,ああいうところの何箇所か見ましたけど,かなりの規模で,それで5年ぐらい前,決定したらもうすぐに準備を始めて,それで大体世界中からやってくる,ちょうど文化に関するエキスポのような状況がつくられています。それから,それ以外にも今いろいろな都市の高揚のためのこういう取組がありますが,日本の中では特になんですけど,ユネスコの創造都市とか,それからこちらでやってらっしゃることとか,それから毎年の国民文化祭であるとか,どうも色分けというか,きちんとしたアイデンティティがわからないような,もう少しはっきりとそれぞれが特徴のある運動をしているということが必要じゃないかな,そうすればもっと盛り上がるんじゃないかなといつも思っているんですけれども。

【佐々木教授】  ありがとうございます。
 私も,半ばそういう,同じような感想を持っていまして,これまで先行してきた自治体がかなり実績を積んできた段階ですね。そして,私は,個人的には,前,河合隼雄先生が長官のときに申し上げたのですが,やはり東アジアなり,アジアで欧州文化都市のようなものをやるべきだろうということで申しておりましたが,だんだんその機運が醸成しておりますので,東アジア全体での,欧州文化首都の東アジア版ですね,これが始まることとあわせて,国内のネットワークをして,そして,更にグローバルなものとしてユネスコネットワークがある,この3層ぐらいのレベルで取組が進んでいくという形が良いだろうと思っています。
 それから,もちろん文化庁さんの御支援というのはとても大事ですし,カナダのネットワークが10年続いてきたのは,カナダ文化遺産省というのがございますね。これが非常に強いリーダーシップをとられたので,やはり都市のネットワークというものを国がきちんと支援する,支えるという姿勢を頂きますと,更にはずみがつくんじゃないか,こんなふうに思っています。

【宮田部会長】  ありがとうございます。
 今,青柳先生からも,佐々木先生からもお話がありましたように,どうもちょっとぱらぱらしているんで,それがまとまると,大きな力になって,エキスポのような感じができたらいいでしょうね。ありがとうございました。そういう意味では,その顕彰制度というのは功を奏しているんじゃないかという感じがしますね。
 どうぞ。

【近藤長官】  ユネスコ大使をしておりますときから,このユネスコの創造ネットワーク,それからヨーロッパの創造都市,最初は「文化首都」と言っていましたが,関心を持って,日本でもできないかなと思っておりましたが,佐々木先生の大変なお力で,この2年ぐらいで大変な盛り上がりがあると思います。
 それから,東アジアにつきましては,日本の提案で,日中韓文化大臣会合でやることが決まりまして,再来年から3つの国で,日中韓で,最初の年は3つの国が都市を決めて,その後は多分,交代で欧州がやっているようにやっていくと。それと,国民文化祭と,今作られつつあるネットワークをどう組み合わせるか,それがこれからの課題になると思います。今のこの御時世で,最も物事が前に進んでいるのが,この佐々木先生のリーダーシップのもとでのネットワークだというふうに思っております。

【宮田部会長】  ありがとうございました。やっぱりせっかくやっているのと重ね合わせると強い力になりますね。またお力を十分に発揮していただきたいと,かように思っております。ありがとうございました。
 それでは,報告事項の2番目に移らせてもらいます。古典の日の推進に関する取組でございます。
 11月1日を古典の日とする法律が制定されました。初の古典の日として,文化庁や大学の関係機関で様々な取組が行われました。簡単にその状況を御報告いただければと思いますが。恐縮ですが,私,東京藝大第1号,早い者勝ちで取らせていただきました。

【内田調整官】  それでは,資料5を御覧いただければと思います。
 前回の部会におきまして,11月1日を古典の日と定める「古典の日に関する法律」が公布されましたということを御報告申し上げましたけれども,国,大学,都道府県などで,ここに記載のあるような様々な取組が行われております。
 資料の上段にありますが,文化庁におきましても,記念シンポジウムを開催いたしました。熊倉委員にコーディネーターをお願いいたしまして,能楽師の河村晴久氏,囲碁棋士の小林千寿氏,落語家の柳家さん喬氏などをお招きいたしまして,実演や講話を行っていただきまして,合計300名の参加がありまして,非常に大盛況でした。
 下の欄には,大学・地方公共団体の取組といたしまして,東京藝大さんをはじめといたしまして,こちらに記載のあります様々な機関で展覧会や記念講演というような形で,本当に様々なバラエティーに富んだような形で行われましたところです。
 1枚おめくりいただきますと,文化庁で行われましたシンポジウムのチラシをおつけしておりますのと,3枚目のページには文化庁のシンポジウムのアンケートを記載しております。御参考いただければというふうに思います。
 以上,簡単でございますけれども,御報告でございます。

【宮田部会長】  いかがでしょうか。
 このチラシですが,古典の日をテーマとしたものでしょうから,更に工夫が必要かもしれませんね。今後,おっしゃってくれば,チラシ作りに協力しますよ。熊倉先生,大変すばらしいコーディネーターだとお聞きしました,ありがとうございました。
 さて,これに関して,いかがでしょうか。

【近藤長官】  度々発言して申し訳ございません。
 今年は,9月初めに法律が通って,既にもう予算も,もちろん今年度は決まっていましたので,スケジュール上限界はありましたが,来年度以降は,もっと大々的に伝統文化,伝統芸能,伝統工芸,幅広く大いに盛り上げるきっかけにしたいと思っております。特に伝統工芸の後継者が,伝統芸能の一部,文楽はいろいろ問題になっていますが,いろいろな後継者問題があって,今,文化庁が持っている仕組みだけで本当に支えきれるのか,大変な困難もあると思いますので,この古典の日制定を機会に,古典芸能,伝統工芸の持っている意味合い,力を大いにアピールし,鑑賞者を増やす,それを買おうという人を増やす,つまり,需要を増やすようなことも含めて,そういう古典文化が,単なる博物館ではなくて,生活の中に入る,みんなが買いに,みんなが見に行くというようになるように盛り上げていくきっかけにしたいと思っております。

【宮田部会長】  長官からのお気持ちを頂きました。ありがとうございました。
 一応,用意した案件はこのぐらいでございますが,事務局,今後の日程を含めてお話しください。

【内田調整官】  今後の部会の開催日程でございますけれども,また改めて調整させていただきまして,後日,連絡させていただきたいと思います。以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 これは言っておきたいみたいなものはございますでしょうか。

【青柳部会長代理】  1つよろしいですか。
 まず,古典の日ってすばらしいんですけど,古典とは何かというのは少し概念整理しておかなくちゃいけないと考えます。今,近藤長官もおっしゃったように,古典と,日本では伝統芸能,古典芸能とか,取り違えているときがよくあります。欧米の場合,「クラシック」という場合には,文学で言えば,ラテン・ギリシャのものを言って,そして,そういうギリシャ・ラテンのものが後代の文学にどれだけ基準となって使い得るかというような,バロメータになるから「古典」と言うんですね。それから,クラシック音楽などでも,ヨーロッパの18,19世紀ごろの,17世紀も入りますが,音楽のことを古典として,それがいろいろな形で新しい時代の基準として使える,あるいは出発点として使える,それで「古典」というわけです。ですから,古典と伝統とは違うんですね。今まで日本では余り古典というものに対してのきちんとした概念整理がされていないままに,ですから,文学は,「源氏」が古典だということを言いますが,じゃあ,それ以外の分野のものが,何が古典で何が古典じゃないのか,あるいは伝統と古典とはどう違うのか,その辺が今回の法律ができる前にどれだけ十分きちんと考えていられたのかというのは,ちょっと疑問であると。だから,そういう意見が出てきたときにも,ちゃんと対応できるだけの「古典」という言葉に関するブラッシュアップというか,みんなでの意見の交換というものが必要じゃないかなと思います。

【宮田部会長】  あと,どなたか御意見ございますか。
 岡本先生,どうぞ。その後,熊倉先生。

【岡本委員】  岡本です。最初に予算のところが出てきました。組織の統合のところでも,全体の流れは押しとどめられなくても,文化振興というものを本当に図っていくためにできることが何かという方向でやはり考えた方がいいという御意見がありました。この予算についても,大きな枠で多大な予算をとっていくということは現実的に無理と思います。ただ,例えば,震災復興のときの御報告を聞いていても,小さい予算規模で頑張っている団体であるとか,連携を深めることで効果を上げるということができる,その中で,やはり国の予算の使いにくさといった問題が非常に出てきました。ですから,予算規模としてはそれほど大きくならなくても,その使い方,連携の仕方で,この枠内でいかに効果を上げていくのかという視点をもう少しこれから作っていけば良いのかなというふうに思いました。
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 熊倉先生,いかがですか。

【熊倉委員】  今のことにも関連するかと思うんですが,もう文化庁の中でも,多分,問題は共有されていると思うので,飽くまでこの委員会での委員としての指摘ということになってしまうんですけれども。最初の予算のところでの,昨年度からの継続のイニシアチブですけれども,今,岡本委員の御指摘にあったように,事実上,大変使いづらいということがございまして,結果論として,私も幾つかの自治体に,こういうのがありますよ,今年はしっかり準備をすれば応募ができるんじゃないですかというふうに御案内を申し上げましたが,もう皆様方,釈迦(しゃか)に説法だとは思いますが,どの自治体も,制度の設計上,自分のところの予算を半分文化庁が持ってくれるという認識になりますので,文化の現場からは,現場にお金が増えないというふうな声が強く聞こえてきております。それが1点目,既に御懸念のことだとは思いますけれども,一応この場でも指摘をしておきたいということが1点。
 もう1点は,すみません,今日の諸々の感想みたいなことになりますが,3つの法人の統合に関しては,長官からもお話を頂いて,仕方がないことなのかなと思いましたけれども,やはりこれに関しても,今のイニシアチブと同じような危惧を感じます。統合してしまう結果,日本芸術文化振興会の方に持っております基金が,そのうち,知らないうちに,なし崩し的に国立の美術館などの運営費の方に切り崩されていて,大きな前進じゃなくて,小さくコンパクトに,「あれ?」みたいなふうに,5年後,10年後になってしまっていたらどうしようというような危惧をちょっと抱きました。そのためにも,このPD,POの皆様方の就任は大変期待が大きくて,なかなか難しい現在のお立場の中で,大変精力的に動いてらっしゃって,現場とのコミュニケーションが増して,それは非常に良かったんだと思うんですが,今日のお話の中では,最後に湯浅委員もおっしゃいましたけれども,アドボカシー的な,こういう状況なのでこういうふうに良くしていきたいというようなところまでの御提言をこの部会にいただけないと,もしもどうしても統合というようなことになると,ちょっと将来に対して,負の遺産をここで作ってしまうことにもなりかねないなというふうに思いました。

【宮田部会長】  ありがとうございます。まさしくそのとおりかなと思います。特に今日,PD,POのお三方の先生方,ありがとうございました。その辺も踏まえて,こういうチャンスを是非つくりたいと思いますので,よろしくお願いします。
 それから,委員の先生方にも,今のお話を含めまして,是非忌たんのない御提言を頂きたいと思います。例えば,僕も思ったんですが,古典というと,中高のときはどうしても「枕草子」,「源氏物語」のというふうになっちゃうんですよ。それ以外にこんなにいっぱいあるんだ,というふうなことにならないような論法がちょっとあってもいいのかなとも思います。今までの授業のカリキュラムだと,古典,イコール,そっちなんですよね。もっと古典というのは違うんだというか,面白いんだとか,広いんだというふうなあたりも文化庁さんから御提言いただけるような環境があったらいいのかなと思います。ありがとうございました。
 まだ相当,御意見が出てきそうなんですが,今日はこれにて締めたいと思います。どうもありがとうございました。
 さっき山村先生,ちょっと,太下先生が漫画の下絵の話もしましたが,是非お2人で御提言,御提案いただけたらと思います。ありがとうございました。

── 了 ──

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