「文化財レスキュー事業」の発展的解消について ~2年間の活動への御礼と今後の展望~

 東日本大震災の発生を受け,被災した文化財等を緊急に保全し,廃棄・散逸や盗難の被害から防ぐため,文化庁が直ちに「文化財レスキュー事業」を,次いで「文化財ドクター派遣事業」を立ち上げたことは御存じのとおりです。

 このうち,美術工芸品等動産を中心に扱う「文化財レスキュー事業」は,関係者の御協力を得て平成24年度末までに,文化財等の一時的な避難・応急措置という所期の目的をおおむね達成しました(福島県については下記参照)。したがってこの事業そのものはここで終了し,今後(平成24年度から)は,被災した博物館資料の修理や,収蔵場所の確保,その他復興に向けた各種事業への支援を行うために新たにつくった「被災ミュージアム再興事業」の下で,これらの文化財等の本格的な修理を行い,所有者への返還につなげていくことに致しました(建造物等の不動産を対象とする「文化財ドクター派遣事業」は,今年度も関係機関と連携協力しながら継続して活動する予定です)。

 ここに改めて,救援委員会を構成する関係各団体の皆様をはじめ,同委員会の活動に支援の手を差し伸べていただいた方々に,心より感謝を申し上げます。おかげさまで平成23年4月の呼びかけ(東北地方太平洋沖地震被災文化財の救援と修復に協力を)に対して,これまでに約3億円程度の御寄付を御提供頂き,2年間に岩手県,宮城県,福島県,茨城県の90を超える箇所で,のべ6,800人もの方々の御協力を得て本事業を行うことができました。

 なお福島県内の警戒区域等においては,「文化財レスキュー事業」により,各自治体の博物館施設の収蔵品のうち運び出せるものについては警戒区域外に移しております。これまで区域内に立ち入れずにいまだ残されているものと併せて,残された文化財等について,引き続き,各自治体や関係団体等と連携の上,救出に努めることとしています。

 文化財は地域の人々の心の支えと連帯の象徴であり,文化の復興が被災地の復興を加速するものと考えています。今後とも,文化財の救援について,皆様の御理解,御支援を賜りますよう,お願い申し上げます。

平成25年4月
 文化庁長官  近藤誠一

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