23庁房第108号
平成23年6月1日
各都道府県教育委員会
各指定都市教育委員会
各都道府県知事
各指定都市市長
独立行政法人国立美術館理事長
独立行政法人国立文化財機構理事長
独立行政法人国立科学博物館館長 殿
財団法人日本博物館協会会長
全国美術館会議会長
大学博物館等協議会会長
日本放送協会会長
社団法人日本新聞協会会長
社団法人日本民間放送連盟会長
文部科学副大臣
笹木竜三
(印影印刷)
展覧会における美術品損害の補償に関する法律等の施行について(通知)
このたび,第177回国会(常会)において成立した「展覧会における美術品損害の補償に関する法律」(以下「法」という。)が,「展覧会における美術品損害の補償に関する法律の施行期日を定める政令(平成23年政令第155号)」(以下「施行期日政令」という。)により,平成23年6月1日から施行されることとなりました。
また,本法の施行に伴い,「展覧会における美術品損害の補償に関する法律施行令(平成23年政令第156号)」(以下「施行令」という。)及び「展覧会における美術品損害の補償に関する法律施行規則(平成23年文部科学省令第23号)」(以下「施行規則」という。)が平成23年6月1日付けで施行されました。
本法は,政府が美術品の損害を補償する制度を創設することにより,海外等からの美術品の借り受けの円滑化,展覧会の主催者の保険料負担の軽減等を図り,国際レベルの展覧会や地方巡回展の開催を促進しようとするものです。
本法は,政府が美術品の損害を補償する制度を創設することにより,海外等からの美術品の借り受けの円滑化,展覧会の主催者の保険料負担の軽減等を図り,国際レベルの展覧会や地方巡回展の開催を促進しようとするものです。
本法律等の概要及び留意事項は下記のとおりですので,域内市区町村及び市区町村の文化行政担当部局,加盟団体の文化担当部局又は美術館・博物館並びにそれぞれの所管の美術館・博物館に対し法の趣旨,内容等を御周知くださいますようお願いします。
なお,法,施行期日政令,施行令及び施行規則は別添のとおりであり,これらを含む関係資料は文化庁のホームページに掲載しておりますので,御参照ください。
記
第一 法律等の概要
Ⅰ 法の概要
- 法律の目的等
- (1)目的
- この法律は,展覧会の主催者が展覧会のために借り受けた美術品に損害が生じた場合に,政府が当該損害を補償する制度を設けることにより,国民が美術品を鑑賞する機会の拡大に資する展覧会の開催を支援し,もって文化の発展に寄与することを目的とすることとしたこと。(法第1条)
- (2)定義
- この法律における「美術品」及び「展覧会」を定義することとしたこと。(法第2条)
- 補償契約の内容等
- (1)補償契約
-
- 政府は,展覧会の主催者を相手方として,当該主催者が当該展覧会のために借り受けた美術品に損害が生じた場合に,政府がその所有者に対し当該損害を補償することを約する契約(以下「補償契約」という。)を締結することができることとしたこと。(法第3条第1項前段)
- 一.の展覧会及び展覧会の主催者の要件を定めることとしたこと。(法第3条第2項及び第3項)
- (2)補償金
-
補償契約による政府の補償は,次に掲げる場合において,それぞれに定める額(それぞれの場合のいずれにも該当する場合にあってはそれぞれに定める額の合計額とし,それぞれに定める額又はそれぞれに定める額の合計額が政令で定める額(以下「補償上限額」という。)を超える場合にあっては補償上限額とする。)の限度で行うものとすることとしたこと。この場合において,補償対象損害(補償契約による補償の対象となる損害として補償契約で定める損害をいい,補償契約の相手方である展覧会の主催者が2の(4)の規定に違反したことにより生じた損害を除く。以下同じ。)の額は,対象美術品(補償契約の相手方である展覧会の主催者が当該展覧会のために借り受けた美術品のうち,補償契約による補償の対象となるものとして補償契約で定めるものをいう。以下同じ。)の約定評価額(対象美術品の価額として補償契約で定める価額をいう。以下同じ。)によって算定することとしたこと。(法第4条第1項)
- 当該補償契約に係る対象美術品について生じた補償対象損害(地震による損害その他の政令で定める損害(イにおいて「特定損害」という。)に該当するものを除く。)の額の合計額が政令で定める額を超える場合 その超える額
- 当該補償契約に係る対象美術品について生じた補償対象損害(特定損害に該当するものに限る。)の額の合計額が政令で定める額を超える場合 その超える額
- (4)対象美術品の取扱い
- 補償契約の相手方である展覧会の主催者は,対象美術品の展示,運搬その他の取扱いに当たっては,その損害の防止のために必要なものとして文部科学省令で定める基準を遵守しなければならないこととしたこと。(法第6条)
- (5)その他
-
- 補償契約の締結及び補償対象損害の額の合計額に関する政令を定めるに当たっては,政府は,多様な展覧会の開催に資するよう配慮しなければならないこととしたこと。(法第3条第1項後段及び第4条第2項)
- 報告の徴収,補償金の支払を受ける権利の時効,補償金を支払った場合における残存物代位及び請求権代位,補償契約の解除,業務の管掌並びに業務の委託等について定めることとしたこと。(法第7条~第14条)
- 施行期日等
- この法律は,公布の日(平成23年4月4日)から起算して二月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしたこと。(法附則第1項)
- 政府は,この法律の施行後三年を目途として,この法律の施行の状況,社会経済情勢の変化等を勘案し,国民が美術品を鑑賞する機会の一層の拡大を図る観点から,補償契約による政府の補償の範囲について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて所要の措置を講ずることとしたこと。(法附則第2項)
Ⅱ 施行期日政令の概要
法の施行期日は,平成23年6月1日とすることとしたこと。
Ⅲ 施行令の概要
- 補償上限額
法第4条第1項に規定する補償上限額として政令で定める額は、950億円とすることとしたこと。(施行令第1条)
- 特定損害
法第4条第1項第1号の政令で定める損害は、地震若しくは噴火又はテロリズムの行為によって生じた損害とすることとしたこと。(施行令第2条)
- 法第4条第1項第1号の政令で定める損害は、地震若しくは噴火又はテロリズムの行為によって生じた損害とすることとしたこと。(施行令第2条)
- 法第4条第1項第1号の政令で定める額は、50億円とすることとしたこと。(施行令第3条第1項)
- 法第4条第1項第2号の政令で定める額は、1億円とすることとしたこと。(施行令第3条第2項)
- 業務の委託
法第13条の規定により委託することができる業務は,次に掲げる業務とすることとしたこと。
- 補償金の支払の請求の受付
- 補償対象損害の額に関する調査
- 一.及び二.に掲げるもののほか,補償金の支払に関する業務(補償金の額の決定を除く。)で文部科学省令で定めるもの(施行令第4条)
- 施行期日
この政令は,法の施行の日(平成23年6月1日)から施行することとしたこと。(施行令附則)
Ⅳ 施行規則の概要
- 補償契約に係る要件
- (1)補償契約に係る展覧会の要件は,
-
- 不特定かつ多数の者に美術品を鑑賞する機会を提供するものであること。
- 開催予定期間が20日を超えるものであること。
- 対象美術品の評価額の合計額が50億円を超えるものであること。
- 展示を予定する美術品のうち主要なものが海外から借り受けるものであること。
- 利益の分配,物品の販売その他営利を主たる目的とするものでないこと。
- 当該展覧会の利益を文化の振興その他の公益を目的とする事業に充てること。
- とすることとしたこと。(施行規則第2条)
- (2)展覧会の主催者の要件は,
-
- 当該展覧会を安全かつ適切に実施するために必要な資金を確保する見込みがあること。
- 当該展覧会に関する業務の執行及び会計の経理を適正に行うための体制が整備されていること。
- 当該展覧会に相当する規模及び内容の展覧会を主催した実績を有すること。
- とすることとしたこと。(施行規則第3条)
- (3)展覧会の開催施設の要件は,
-
- 開催施設の建物が耐火性能及び耐震性能を有する構造のものであること。
- 適正な温度,湿度及び照度を保つことができる設備が設けられていること。
- 常時作動する防火・防犯設備が設けられていること。
- 開催施設が独立した専用の施設として区画されていること。
- とすることとしたこと。(施行規則第4条)
- (4)補償契約に係る展覧会の主催者が,当該補償契約に係る対象美術品について,当該対象美術品に補償対象損害が生じた場合における当該補償対象損害の額のうち当該補償契約により補償される額を控除した額を填補するための損害保険契約を締結する場合には,当該損害保険契約において定める美術品の価額と政府との補償契約において定める美術品の価額を同一の額とすることとしたこと。(施行規則第5条)
- 補償契約の締結の手続
補償契約を締結しようとする展覧会の主催者は、当該展覧会の内容、借り受ける美術品、主催者の業務体制、開催施設等に関する事項を記載した補償契約の申込書に、当該展覧会の収支予算書、開催施設に関する図面、美術品の展示・運搬に関する計画等の書類を添付して、文部科学大臣に提出しなければならないこととしたこと。(施行規則第6条)
- 対象美術品の取扱いに関する基準
- (1)対象美術品の展示に当たっては,
-
- 対象美術品の監視,開催施設の警備等の措置を適切に行う体制を整備すること。
- 対象美術品の性質に応じた適正な温度,湿度及び照度を保つとともに,これらの測定値の記録を作成及び保管すること。
- 温度等維持設備及び防火・防犯設備の保守及び管理に関する責任者を定め,定期的に点検整備を行うとともに,その記録を作成及び保管すること。
- 展示に関する業務のマニュアルを作成し,担当者に周知徹底すること。
- としたこと。(施行規則第7条第1項)
- (2)対象美術品の運搬に当たっては、
-
- 搬出入等の作業の際、当該作業について知識及び経験を有する学芸員等を立ち会わせ、当該作業に従事する者を指揮監督させること。
- 搬出入等の作業の際、美術品の点検及び修復について知識及び経験を有する学芸員等に対象美術品の状態を確認させるとともに、その記録を作成及び保管すること。
- 対象美術品の評価額の合計額に応じて二回以上に分けて運搬すること。
- 道路上の運搬に当たっては、美術品専用車両を使用すること。
- としたこと。(施行規則第7条第2項)
- その他
保険会社への業務の委託、補償金の額の算定方法及び外国通貨による支払等について定めることとしたこと。(施行規則第8条~第10条)
- 施行期日
この省令は、法の施行の日(平成23年6月1日)から施行することとしたこと。(施行規則附則)
第二 留意事項
- 政府補償の適用について
本制度は,(万が一に損害が生じた場合における)国の負担の下に,展覧会の主催者の保険料負担を軽減するものであり,政府補償の適用に当たっては,展覧会における「文化芸術的意義や公共的利益」及び「美術品の安全管理体制」の審査が特に重要となること。
- 補償契約の内容について
- 補償契約の内容は,民間の美術品保険に準拠させることとしており,「故意又は重大な過失」,「美術品の固有の瑕疵又は性質」,「陸上における戦争危険」,「原子力危険」等は法第5条に規定する補償対象損害に含まれないこととなること。
- 政府による補償は一定額(通常損害50億円,地震等・テロ損害1億円)を超えてからその超える額分について発生し,その補償上限額は950億円までとなっており(施行令第1条~第3条),政府補償の対象外の範囲については,従来通り,民間の美術品保険によって対応することとなること。
- 補償契約に係る要件等について
- 法制度の要件に該当しない施設で政府補償の展覧会を企画している場合は,都道府県教育委員会等の担当窓口に相談し,政府と補償契約を締結するまでに博物館法上の「登録博物館」又は「博物館相当施設」としての指定を受ける必要があること。(法第2条)
- 本制度の対象となる美術品は,展覧会のために一時的に借り受けた絵画,彫刻,工芸品等の有形の文化的所産である美術品(法第2条第1項)であるため,自ら所蔵する寄託品のほか,人の創作的行為が加わらない自然物(化石,剥製等)は対象外となること。
- 対象美術品の取扱いに関する基準(施行規則第7条)は,通常の企画展覧会で実施されている基本的な事項を定めたものであるため,この遵守義務に違反した場合には,その重大性に鑑み,補償対象損害に含まれないこととなること。(法第4条)
- 補償契約の締結の限度について
法第5条の年間補償契約締結限度額は,本制度の対象となり得る展覧会の美術品の評価額を毎年度調査し,その額を基に定めることとなること。
- その他
- 文化庁ホームページにすでに掲載したとおり,本年6月に美術品補償制度の内容及び申請方法の説明会を開催すること。
- 展覧会のために海外から借り受けた美術品等に対する強制執行等を禁止する「海外の美術品等の我が国における公開の促進に関する法律」(平成23年4月1日法律第15号)は,本年9月末を目途に政省令と併せて施行する予定であること。
〔参考〕文化庁ホームページアドレス
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bijutsukan_hakubutsukan/hoshoseido/index.html
(ホーム > 政策について > 美術館・歴史博物館 > 美術品補償制度)
【本件連絡先】
文化庁 文化財部美術学芸課 評価企画係
〒100-8959 東京都千代田区霞が関3-2-2
TEL:03-5253-4111(内線:3168)
FAX:03-6734-3821