[2]文化芸術振興の波及力

人々の営為の上に生成する文化芸術は,もとより広く社会への波及力を有しており,従来,教育,福祉,まちづくり,観光・産業等幅広い分野との関連性が意識されてきたところであるが,国家戦略として「文化芸術立国」を実現するためには,それら周辺領域への波及効果を視野に入れた文化芸術振興施策の展開がより一層求められる。

特に昨今,様々な分野において創造性を核とする取組が脚光を浴びている。欧州を起源とする創造都市の取組は,今や世界的な広がりを見せており,我が国においても先駆的な取組事例が増えつつある。また,英国やシンガポールをはじめとして創造産業の発展に注力する国も現れている。

我が国としても,新たな成長分野として雇用の増大や地域の活性化を図る観点,国際的には特に東アジアにおける文化的存在感を高める観点も踏まえ,「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)に位置付けられた「クール・ジャパン」の取組など自国の強みを()かした施策を戦略的に展開する必要がある。文化芸術は,これら創造性を核とする取組に大きく寄与するものであり,伝統文化からメディア芸術やデザイン,ファッション,食文化まで多彩な日本文化を積極的に発信するとともに,その価値を生み出す創造的人材の育成・集積を図るべきである。

なお,グローバル化が急速に進展する中,国際文化交流を推進するに当たっては,我が国の存立基盤たる文化的アイデンティティを保持するとともに,国内外の文化的多様性を促進する観点も重要である。

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