地方創生
人口減少社会が到来し,特に地方においては過疎化や少子高齢化等の影響,都市部においても単身世帯の増加等の影響により,地域コミュニティの衰退と文化芸術の担い手不足が指摘されている。
文化芸術,町並み,地域の歴史等を地域資源として戦略的に活用し,地域の特色に応じた優れた取組を展開することで交流人口の増加や移住につなげるなど,地域の活性化を図る新しい動きを支援し,文化芸術を起爆剤とする地方創生の実現を図る。2020年に向け,文化芸術を目的に訪日する外国人を大幅に増加させる。
2020年東京大会
2020年東京大会を文化の祭典としても成功させることにより,我が国の文化や魅力を世界に示すとともに,文化芸術を通じて世界に大きく貢献するまたとない機会であり,文化芸術の振興にとって大きなチャンスである。
ロンドン大会(2012年)の例では,大会の4年前である2008年から,英国のあらゆる地域で,音楽,演劇,ダンス,美術,映画,ファッション等の多角的な文化や魅力を紹介する文化プログラムが実施された。日本も,これらの例に学んで,2020年東京大会の開催効果を東京のみならず広く全国に波及させるため,文化プログラム等の機会を活用して,全国の自治体や芸術家等との連携の下,地域の文化を体験してもらうための取組を全国各地で実施する。
リオ大会(2016年)の終了後に,オリンピック・ムーブメントを国際的に高めるための取組を行い,文化プログラム実施に向けた機運の醸成を図る。
東日本大震災
大震災の被災地は,人口減少・高齢化・産業の空洞化など,今の日本が抱える課題が顕著である。一方,大震災を契機に文化芸術の果たす役割の重要性が改めて認識された。このため,従前の状態に復旧するのではなく,復興を契機にこれらの課題を解決し,我が国や世界のモデルとなる「創造と可能性の地」としての「新しい東北」を創造することが期待されている。
2020年東京大会観戦を目的とした訪日外国人が,力強く復興している東北地方を訪問し,地域の文化芸術の魅力と一体となった復興の姿を体験してもらう機会を提供するなど,復興支援を進める。
また,「国土強靱化基本計画」(平成26年6月3日閣議決定)において,大震災など過去の災害から得られた経験を最大限活用しつつ,人のつながりやコミュニティ機能の向上に資する地域の特性に応じた施策を推進するとされている点に留意する必要がある。
グローバル化の進展
グローバル化の進展に伴い,多くの人々が国境を越えて行き交い,国内外の文化人・芸術家等の相互交流が進む中で,文化芸術による対話や交流を通じて新たな価値を創出し,それを世界へ発信するとともに,国内外の文化的多様性や相互理解を促進していくことの重要性が一層高まっている。我が国の文化は,独自の継続性や柔軟な受容性等を包含する深みを持ち,世界に大きく貢献する力を有する資産である。互いの価値観やアイデンティティを尊重しながら,文化芸術を介しての国境を越えた人々の交流を推進することは,我が国が各国と連携していくに当たって大きな力となるものである。例えば,大学の徹底した国際化等により,グローバル化等に対応する人材の養成が行われているが,文化芸術分野においても,こうした取組を進める。
情報通信技術の発展等
インターネット等の情報通信技術の急速な発展と普及は,国境を越えた対話や交流を活性化させたり,情報の受信・発信を容易にしたりするなど,あらゆる分野において人々の生活に大きな利便性をもたらし,文化芸術活動の創造活動への貢献のみならず,多様で広範な文化芸術活動の展開に貢献するものである。一方,新たな社会的課題を惹起(じゃっき) している。例えば,人間関係に及ぼす様々な影響が指摘されるほか,違法配信等による著作権侵害の深刻化といった問題も生じている。こうした情報通信技術の利点や課題等を踏まえ,デジタルアーカイブ化の促進やデジタル・ネットワーク社会に対応した著作権制度等の整備を図る。