文化芸術は,最も広義の「文化」と捉えれば,人間の自然との関わりや風土の中で生まれ,育ち,身に付けていく立ち居振る舞いや,衣食住をはじめとする暮らし,生活様式,価値観等,およそ人間と人間の生活に関わる総体を意味する。他方で,「人間が理想を実現していくための精神活動及びその成果」という視点で捉えると,その意義については,次のように整理できる。
第一として,豊かな人間性を涵養(かんよう) し,創造力と感性を育む等,人間が人間らしく生きるための糧となるものである。第二として,他者と共感し合う心を通じて意思疎通を密なものとし,人間相互の理解を促進する等,共に生きる社会の基盤を形成するものであると言える。第三として,新たな需要や高い付加価値を生み出し,質の高い経済活動を実現するものであると言える。第四として,科学技術の発展と情報化の進展が目覚ましい現代社会において,人間尊重の価値観に基づく人類の真の発展に貢献するものであると言える。第五として,文化の多様性を維持し,世界平和の礎となるものであると言える。
このような文化芸術は,国民全体の社会的財産であり,創造的な経済活動の源泉でもあり,持続的な経済発展や国際協力の円滑化の基盤ともなることから,我が国の国力を高めるものとして位置付けておかなければならない。
我が国は,このような認識の下,心豊かな国民生活を実現するとともに,活力ある社会を構築して国力の増進を図るため,文化芸術の振興を国の政策の根幹に据え,今こそ新たな「文化芸術立国」を目指すべきである。