文化芸術振興基本法の一部を改正する法律の施行について(通知)

29庁房第125号
平成29年6月23日

各都道府県教育委員会

各指定都市教育委員会

各都道府県知事

各指定都市市長

各国公私立大学長

各国公私立高等専門学校長

各大学共同利用機関法人機構長

放送大学長

日本芸術院長

各文部科学省独立行政法人の長殿

公益財団法人日本博物館協会会長

全国美術館会議会長

関係各特例民法法人の長

関係各公益社団法人の長

関係各公益財団法人の長

関係各一般社団法人の長

関係各一般財団法人の長

文化庁長官
宮田亮平

第193回国会(常会)において成立した「文化芸術振興基本法の一部を改正する法律」が,平成29年6月23日に平成29年法律第73号として公布,施行されました。

今回の改正は,少子高齢化やグローバル化の進展など社会の状況が著しく変化する中で,観光,まちづくり,国際交流,福祉,教育,産業等関連分野との連携を視野に入れた総合的な文化芸術政策の展開がより一層求められていること,文化芸術の祭典でもある2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会は,文化芸術の新たな価値を世界へ発信・創出する好機であることから,文化芸術の固有の意義と価値を尊重しつつ,文化芸術そのものの振興にとどまらず,その各関連分野における施策を法律の範囲に取り込むとともに,文化芸術により生み出される様々な価値を文化芸術の継承,発展及び創造に活用しようとするものです。

本法の概要及び留意事項は下記のとおりですので,十分に御了知の上,本法の趣旨を踏まえた取組に努めていただきますようお願いします。

なお,都道府県教育委員会及び都道府県知事にあっては,域内市町村の教育委員会及び文化行政担当部局,所管又は所轄の学校及び文化施設その他の関係機関・関係団体に対して,このことを周知願います。

第1 法律の概要

1 題名等の改正

  • (1)法律の題名を「文化芸術基本法」に改めること。(題名関係)
  • (2)前文及び目的規定について,所要の整理を行うこと。(前文及び第1条関係)

2 総則の改正

  • (1)基本理念の改正(第2条関係)
    • 文化芸術に関する施策の推進に当たっては,文化芸術を鑑賞し,これに参加し,又はこれを創造することができるような環境の整備に関し,「年齢,障害の有無又は経済的な状況」にかかわらず等しくできるようにする旨を加えること。
    • 文化芸術に関する施策の推進に当たっては,我が国に加えて「世界」において,文化芸術活動が活発に行われるような環境を醸成することを旨として文化芸術の発展が図られるよう考慮されなければならない旨を規定すること。
    • 文化芸術に関する施策の推進に当たっては,乳幼児,児童,生徒等に対する文化芸術に関する教育の重要性に鑑み,学校等,文化芸術活動を行う団体(以下「文化芸術団体」という。),家庭及び地域における活動の相互の連携が図られるよう配慮されなければならない旨の規定を追加すること。
    • 文化芸術に関する施策の推進に当たっては,文化芸術により生み出される様々な価値を文化芸術の継承,発展及び創造に活用することが重要であることに鑑み,文化芸術の固有の意義と価値を尊重しつつ,観光,まちづくり,国際交流,福祉,教育,産業その他の各関連分野における施策との有機的な連携が図られるよう配慮されなければならない旨の規定を追加すること。
  • (2)文化芸術団体の役割に係る規定の新設(第5条の2関係)

    文化芸術団体は,その実情を踏まえつつ,自主的かつ主体的に,文化芸術活動の充実を図るとともに,文化芸術の継承,発展及び創造に積極的な役割を果たすよう努めなければならないこと。

  • (3)関係者相互の連携及び協働に係る規定の新設(第5条の3関係)

    国,独立行政法人,地方公共団体,文化芸術団体,民間事業者その他の関係者は,基本理念の実現を図るため,相互に連携を図りながら協働するよう努めなければならないこと。

  • (4)税制上の措置の追加(第6条関係)

    政府が講ずべき措置に税制上の措置を加えること。

3 文化芸術推進基本計画等

  • (1)文化芸術推進基本計画(第7条関係)
    • 政府は,文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,文化芸術に関する施策に関する基本的な計画(以下「文化芸術推進基本計画」という。)を定めなければならないこと。
    • 文化芸術推進基本計画は,文化芸術に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な事項その他必要な事項について定めるものとすること。
    • 文部科学大臣は,文化審議会の意見を聴いて,文化芸術推進基本計画の案を作成するものとすること。
    • 文部科学大臣は,文化芸術推進基本計画の案を作成しようとするときは,あらかじめ,関係行政機関の施策に係る事項について,5の(1)の文化芸術推進会議において連絡調整を図るものとすること。
    • 文部科学大臣は,文化芸術推進基本計画が定められたときは,遅滞なく,これを公表しなければならないこと。
    • 3.から5.までの規定は,文化芸術推進基本計画の変更について準用すること。
  • (2)地方文化芸術推進基本計画(第7条の2関係)
    • 都道府県及び市町村の教育委員会(条例の定めるところによりその長が文化に関する事務を管理し,及び執行することとされた地方公共団体(2において「特定地方公共団体」という。)にあっては,その長)は,文化芸術推進基本計画を参酌して,その地方の実情に即した文化芸術の推進に関する計画(以下「地方文化芸術推進基本計画」という。)を定めるよう努めるものとすること。
    • 特定地方公共団体の長が地方文化芸術推進基本計画を定め,又はこれを変更しようとするときは,あらかじめ,当該特定地方公共団体の教育委員会の意見を聴かなければならないこと。

4 文化芸術に関する基本的施策の拡充

  • (1)芸術の振興に係る規定に関する改正(第8条関係)

    芸術の振興に関する必要な施策の例示として「芸術の制作等に係る物品の保存」及び「芸術に係る知識及び技能の継承」への支援を加えること。

  • (2)メディア芸術の振興に係る規定に関する改正(第9条関係)

    メディア芸術の振興に関する必要な施策の例示としてメディア芸術の「展示」,「メディア芸術の制作等に係る物品の保存」及び「メディア芸術に係る知識及び技能の継承」への支援を加えるとともに,「芸術祭等の開催」を加えること。

  • (3)伝統芸能の継承及び発展に係る規定に関する改正(第10条関係)

    伝統芸能の例示として「組踊」を加えるとともに,伝統芸能の継承及び発展に関する必要な施策として「公演に用いられた物品の保存」への支援を加えること。

  • (4)芸能の振興に係る規定に関する改正(第11条関係)

    芸能の振興に関する必要な施策の例示として「公演に用いられた物品の保存」及び「芸能に係る知識及び技能の継承」への支援を加えること。

  • (5)生活文化,国民娯楽及び出版物等の普及に係る規定に関する改正(第12条関係)

    生活文化の例示として「食文化」を加えるとともに,生活文化の振興を図るため必要な施策を講ずるものとすること。

  • (6)地域における文化芸術の振興に係る規定に関する改正(第14条関係)

    各地域における文化芸術の振興に加えて「これを通じた地域の振興」を図ることとし,これに関する必要な施策の例示として「芸術祭への支援」を加えること。

  • (7)国際交流等の推進に係る規定に関する改正(第15条第1項関係)

    我が国の文化芸術活動の発展に加えて「世界の文化芸術活動の発展」を図ることとし,文化芸術に係る国際的な催しの例示として「芸術祭」を加えるとともに,国際的な交流等の推進に関する必要な施策の例示として「海外における我が国の文化芸術の現地の言語による展示,公開その他の普及への支援」,「海外における著作権に関する制度の整備に関する協力」及び「文化芸術に関する国際機関等の業務に従事する人材の養成及び派遣」を加えること。我が国における文化芸術の公演,展示等について多言語化対応を進めることもその他の必要な施策に含まれること。

  • (8)芸術家等の養成及び確保に係る規定に関する改正(第16条関係)

    芸術家等の養成及び確保に関し,芸術家等の例示として「文化芸術活動に関する企画又は制作を行う者」及び「文化芸術活動に関する技術者」を明示するとともに,必要な施策の例示として国内外における研修等に加え,「教育訓練等」,「文化芸術に関する作品の流通の促進」及び「芸術家等の文化芸術に関する創造的活動等の環境の整備」を加えること。

  • (9)日本語教育の充実に係る規定に関する改正(第19条関係)

    日本語教育の充実に関する必要な施策の例示として「日本語教育を行う機関における教育の水準の向上」を加えること。

  • (10)著作権等の保護及び利用に係る規定に関する改正(第20条関係)

    著作権等に関する「内外」の動向を踏まえることとし,著作権等の保護及び公正な利用に関する必要な施策の例示として「著作物の適正な流通を確保するための環境の整備」及び「著作権等の侵害に係る対策の推進」を加えること。

  • (11)高齢者,障害者等の文化芸術活動の充実に係る規定に関する改正(第22条関係)

    高齢者,障害者等の文化芸術活動の充実に関する必要な施策の例示として「これらの者の行う創造的活動,公演等への支援」を加えること。

  • (12)公共の建物等における文化芸術の振興に資する取組に係る規定の新設(第28条第2項関係)

    公共の建物等において,文化芸術に関する作品の展示その他の文化芸術の振興に資する取組を行うよう努めるものとすること。

  • (13)調査研究の推進等に係る規定の新設(第29条の2関係)

    文化芸術に関する施策の推進を図るため,文化芸術の振興に必要な調査研究並びに国の内外の情報の収集,整理及び提供その他の必要な施策を講ずるものとすること。

  • (14)民間の支援活動の活性化等に係る規定に関する改正(第31条関係)

    民間の支援活動の活性化等に関する必要な施策の例示として「文化芸術団体が行う文化芸術活動への支援」を加えること。

  • (15)関係機関等の連携等に係る規定に関する改正(第32条関係)

    関係機関等の連携等に関し,関係機関等の例示として「民間事業者」を加えること。

5 文化芸術の推進に係る体制の整備

  • (1)文化芸術推進会議に係る規定の新設(第36条関係)

    政府は,文化芸術に関する施策の総合的,一体的かつ効果的な推進を図るため,文化芸術推進会議を設け,文部科学省及び内閣府,総務省,外務省,厚生労働省,農林水産省,経済産業省,国土交通省その他の関係行政機関相互の連絡調整を行うものとすること。

  • (2)都道府県及び市町村の文化芸術推進会議等に係る規定の新設(第37条関係)

    都道府県及び市町村に,地方文化芸術推進基本計画その他の文化芸術の推進に関する重要事項を調査審議させるため,条例で定めるところにより,審議会その他の合議制の機関を置くことができるものとすること。

6 施行期日等(附則関係)

  • (1)この法律は,公布の日(平成29年6月23日)から施行すること。
  • (2)政府は,文化芸術に関する施策を総合的に推進するため,文化庁の機能の拡充等について,その行政組織の在り方を含め検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

第2 留意事項

  • 1 今回の改正により,地方文化芸術推進基本計画について法律上明記されたこと,文化芸術に関する基本的施策等が拡充されたことから,各地方公共団体においては,第4条に規定する地方公共団体の責務及び第35条の規定を踏まえ,自主的かつ主体的に,その地域の特性に応じた文化芸術に関する施策をより積極的に推進するよう努められたいこと。なお,文化芸術推進基本計画については,今般,文部科学大臣から文化審議会に対し諮問を行ったところである。
  • 2 上記1に際し,各地方公共団体においては,第1の2(1)4.の改正の趣旨を踏まえ,第37条に定められた審議会その他の合議制の機関を活かしながら,観光,まちづくり,国際交流,福祉,教育,産業等に関する部局等との連携を図るなど,自主的かつ主体的に,文化財を活かした観光,まちづくりの推進及び福祉,教育等の機関と連携した年齢や障害の有無等に関わらない文化芸術活動の場の充実等その地域の特性に応じた文化芸術に関する施策を総合的に推進するよう努められたいこと。
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