第三専門調査会史跡・埋蔵文化財合同委員会(審議要請の審議) 議事要旨

全般

  • 〇 課題としては以下の点。
  1. 平成12年の地方分権により埋蔵文化財に関する国の権限の大部分が移譲され、これに伴い、国と地方公共団体、都道府県と市町村との関係性にも変化が生じている。
  2. 重要遺跡の内容について、国と地方公共団体の認識の相違がある。
  3. 資格取得,試験受験を目的とした取組
  4. 平成10年通知において、近世・近代の遺跡のうち、埋蔵文化財として扱う範囲に関する考え方では、「我が国にとって」という評価の視点がないため、重要遺跡の抽出が困難ではないか。
  • 〇 高輪築堤跡は、史跡指定されたもののその指定範囲が十分でないという意見があった。今回の検討においては、そこで充分でなかった点や現地保存が達成できなかった失敗事例の分析が重要。

価値判断関係

  • 〇 埋蔵文化財調査の際、遺跡の評価について市町村の職員では地域的な視点では評価できるが、全国的な視点が欠ける。その評価を行うためには、文化庁文化財調査官が関与する機会を多くもつことが有効ではないか。
  • 〇 埋蔵文化財の価値付けについて、地域において全国的な視点での評価を行うことは非常に難しい。文化庁が関与することにより、地域の埋蔵文化財専門職員に全国的な視点からの評価を提供するようにしていただきたい。

近世・近代関係

  • 〇 特に近代の遺跡は、地方公共団体間の認識の格差が大きい。「我が国にとって」という視点での評価が必要。
  • 〇 本件は多方面からの検討が必要な事案だが、特に近世・近代を中心に重要遺跡の定義をまとめる必要がある。

地方公共団体関係、人材育成関係

  • 〇 地方公共団体の埋蔵文化財専門職員の配置の問題。専門職員が配置されていても、他の分野の業務に従事していることもある。各地方公共団体での専門職員の世代交代に伴う引継ぎも上手く実施されておらず、次世代への継承が課題。
  • 〇 埋蔵文化財専門職員の採用後の育成も課題。育成に関連して、文化庁文化財調査官による現地指導等が、地方公共団体の専門職員にとっては大きな励みとなっている。
  • 〇 文化財建造物の専門職員などに比して、埋蔵文化財専門職員の地方公共団体における配置率は非常に高く人的資源は豊富という認識。
  • 〇 埋蔵文化財専門職員が多数配置されているのは事実だが、都道府県と市町村の関係性が疎遠となっている傾向があり、埋蔵文化財専門職員が課題を共有出来ないということもある。
  • 〇 都道府県が市町村に指導助言しないことで、その間に事態が深刻化する事例も見受けられる。地方分権が、都道府県と市町村の意思疎通を阻害しているところもあると思うので、文化財保護に関する指導助言を行えることを明確にする必要性を感じる。
  • 〇 発掘調査を民間発掘調査組織に委託して実施している事例も多く、埋蔵文化財専門職員自体が域内の文化財への知識・認識が希薄になっている傾向が認められるのも課題。
  • 〇 平成12年の地方分権以降、大規模な開発が減少し、広域の発掘調査組織が消滅しているところもある。発掘調査の減少に伴い、地方公共団体では文化財関連業務に従事せず、他業務に従事する事例があるのも実情。
  • 〇 財政的課題として、各地方公共団体に経済的余裕がないため、国庫補助金や都道府県の随伴補助が必要である一方で補助金も減少している実態がある。そのため、国・都道府県の財政的援助の減少とともに影響力も同時に減少しているように感じる。

その他

  • 〇 歴史的建造物の保存も同種の課題があったが、登録有形文化財制度の創設によって状況が大きく変化した。文化財建造物の修復等を目的とするのではなく、文化財建造物の価値を登録により認めることで、国宝・重要文化財の指定物件を上位とし、その裾野に登録有形文化財の建造物が多く存在することを広く認識できた。また、登録制度には消滅を容認するという特質がある一方、登録されることで建造物の価値が顕在化し、所有者もその価値を認識したことで建造物の保護への効果も一定程度高まったと思う。
  • 〇 文化財が観光資源として活用される傾向にある中で、文化財部局が首長部局に移管され、更に、文化財保護よりも観光の視点を重視して業務を遂行する傾向なっていることも課題。
  • 〇 公共事業など事業主体によって埋蔵文化財の取扱いについて厳しい指導等を行い、それを先例として、民間企業の事業主体の事例などにも取扱い手法を広げていくことも考えられるのではないか。
  • 〇 埋蔵文化財の保護に協力した民間企業には、なんらかの優遇措置(顕彰するシステム、減税措置等)を実施することを検討すれば有効なのではないか。
  • 〇 法改正により文化財保護法が保存より観光を重視するような考え方に変わってきているので、その考え方への対応も留意した形での検討が必要。
  • 〇 地方公共団体とも共通認識を持つためには、法改正がないと難しいのではないか。文化財を観光に利用する際に文化財の価値を有識者が語っても行政には響かないことが多い。法的権限に基づく行政的な関与が必要だと思われる。
  • 〇 文化財保護法に係る権限について、地方公共団体に一括して移譲するのではなく、各地方公共団体の文化財保護に係る実積に応じた資格審査のような制度が必要ではないか。例えば資格審査で不十分な地方公共団体には国が関与するシステムなど。
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