第2回第三専門調査会史跡・埋蔵文化財合同委員会コアメンバー会議 議事要旨

  1. 日時

    令和4年1月11日(火)15:00-17:00

  2. 議事

    埋蔵文化財保護に係る課題と方策について

  3. 出席委員

    坂井座長、伊藤委員、木下委員、坂井委員、桜井委員、佐藤委員、鈴木委員、福田委員、福永委員(※一部の委員はweb出席)

  4. 事務局

    山下課長、山村補佐、近江主任調査官、渋谷主任調査官 他

現状保存すべき埋蔵文化財、重要な埋蔵文化財の考え方関係

  • 〇 国が重要な埋蔵文化財として取り扱うべき遺跡の指針として、これまで何もなかったので、それを出すだけでも意味があるところもあるが、なかなか伝わりづらくピタッと来るものがない感じがする。
  • 〇 これまで指定してきた物件から考えていくというのもあると思うが、この100年間で指定してきたものの中で、戦前に指定したものと、戦後でも昭和40年代ぐらいまでに指定したものと、それから発掘調査がかなり進んできて指定しているものでは内容が大きく違っているところもあると思う。ここをどのように整理するかは難しいところなので、もう少し検討していくことが必要。

現状保存すべき埋蔵文化財、重要な埋蔵文化財の保護の方策関係

  • 〇 文化財保護の取組に熱心な所とそうでない所の差をどうにか埋めていくための取組が必要。リスト化はその策となるのか。リスト化と並行して自主的な発掘調査件数や、埋蔵文化財専門職員の数などについて、毎年実績報告書を提出・公表する等でないと、あまり有効ではないと思う。特に近世・近代の遺跡の数の差は、意識の違いを反映している面もあると思うので、そのようなことを頻繁にデータを収集し、周知していくことが大事。
  • 〇 重要な埋蔵文化財のリスト化について、現状保存する埋蔵文化財というのとセットで議論されていると思う。現状保存すべき埋蔵文化財は、いずれは指定に上げてくるということなので、指定に上げるとなると地方公共団体の事務としては相当大きな仕事になる。また、もしこれがセット関係にあるとすると、地方自治体における埋蔵文化財行政は、記録保存中心という性格からかなり変わってくる。地方自治体へも理解いただかなければならないし、予算的な裏付けも必要となる。重要な埋蔵文化財のリスト化した先、それをどこまで有機的に結び付けていこうと考えていくのかが重要。
  • 〇 リスト化はその位置づけや周知等をどうするのかを検討し伝えていかないと、協議にしても業者の建築設計にしても大きな影響が出てくると思う。リスト化するのは良いが、それを開発事業者との関係でどのように利用するかが難しいところ。
  • 〇 リスト化は、実質的に史跡指定の前に文化庁と自治体等とで協議をし、将来的には史跡指定するよう取組むことを合意をしながら進めていく、いわば公的な指定候補物件としなければ、あまり効果がないかもしれない。手間がかかりそうだとの心配もあるが、やり方によるだろう。
  • 〇 リスト化は、自治体の埋蔵文化財行政にとって、かなりのウエイトを占めることになると予想できる。それを現状の自治体の埋蔵文化財専門職員の体制でできるかは課題。
  • 〇 自治体の協力を経て作成したものを横に並べてみるのは、情報共有ということにつながるので、これは意味の無いことでは無いと思う。他の自治体の状況を知ることで意識が高まる効果があると思う。
  • 〇 近代遺跡については、リスト化するとしてもかなり難しい。各自治体の取り組みの差が非常に出やすい分野である。国でまとめたものを、有識者の意見も聞いて補っていくとしても、近代については学会等直接情報を拾えるようなルートからも意見を聞くことを考えるのも良いように思う。
  • 〇 リスト化に関して、近代遺跡の調査はすでに文化庁で行っているが、このリスト化とどのように関係するのか。近代遺跡調査の成果も活かしながら、文化庁の方から地方自治体の方へも出し入れを呼びかけていく形である程度できるのではないかと思う。
  • 〇 リストについて、全体としては、重要な埋蔵文化財にすると、史跡指定に向かっていくというベクトルがすごく働いているが、重要な埋蔵文化財とされたものについては、保護法第94条のように、事前協議にかけられるような仕組みも作り、その事前協議の中で重要性が確認されれば、史跡指定に向かうベクトルがそこから始まっていくような構えにしておいた方が、事業者にとっても自治体にとっても負担感が少ないのではないか。
  • 〇 第94条にある事前協議のようなことを第93条でもできるように考えてもらいたい。一方、足りないのは、試掘調査、確認調査という本調査の前の調査のあり方が、十分にされているかどうかということがある。平成10年通知では、確認調査が遺跡の内容を把握する調査と位置付けてあり、そこで理想的には10%と書いてあり、現実的には5%程度実施するとかなり内容を把握できる。そういう調査を事前に文化財部局側できちんと行うような、実務的なところも報告書で書いていく必要があると思う。そういうことを事前協議の中で事業者側と確認できるようにできると良い。

保存への協力関係

  • 〇 途中で価値が判明した場合において、高輪築堤跡のように事業者側との関係がある場合、どのように対応していくのか。事業者側への補償、配慮、協力や顕彰ということがあるが、もう少し具体的に考えると効果が上がると思う。これについては、行政側もそうだが開発事業者側も大変気にするところだと思うのでしっかり考えていただきたい。
  • 〇 補償や減税等ができれば非常にいいが、文化財保護法を一部改正して、重要な遺跡は国民共有の財産であって保護する必要があるというような、理念を変えていく必要がある。開発が行われるのは良いが、重要な遺跡が発見されれば保護に向けて検討するというリスクは負っている、事業者も国も負担をしてなんとか重要な、高輪築堤跡のようなものを守っていくというように考えていかないといけない。
  • 〇 補償や減税等については、事業者で記録保存調査の費用を負担してもらい事業を進めようとしている中で、遺跡が出てきたことによって事業ができなくなることがあるが、現行の制度や枠組みだと、それがきちんと評価されないと思う。減税でもできるものがあれば、欧米のように寄付等が上手く回っていくような、ある程度納得されるようなことができると良い。補償も、本来はそこにかけた事業費が補償されなければ、事業を止めることは難しいということだと思う。

近世・近代関係

  • 〇 平成10年通知の中で、「地域にとって」という観点で近世・近代の遺跡を考えることについて、高輪築堤跡は地域の問題ではなく、日本の近代国家形成と大きく関わる史跡であるので、「地域」というものを外した方がいいと思う。
  • 〇 平成10年通知だが、地域の観点が書いてあるのは、埋蔵文化財包蔵地にするかどうかの取り扱いの話であって、地域的な価値のみで対象を選定せよという話ではない。全国的な視点から重要であれば、それは当然、周知の埋蔵文化財にとして取り扱われ、内容によっては史跡指定されるということを前提としていたのだろうと思う。この考え方が、正しくあまり理解されてこなかったところもあったと思うので、正しく理解してもらえるように報告書には説明を記載してもらいたい。
  • 〇 近代の遺跡は、平成7年の通知(「特別史跡名勝天然記念物および史跡名勝天然記念物指定基準の一部改正について」平成7年3月6日付 庁保記第143号)で、どのようなものでも指定できると書いてあるにもかかわらず、また、近代遺跡調査をしているにもかかわらず指定があまり進んでいない等の状況があるが、そもそも指定すべきものが自治体と国との間で共有されていないような気がする。文化庁が20年以上かけてやってきた近代遺跡調査があるので、それと今回の検討が一体的に説明できるようにしていかないといけない。
  • 〇 近代のものは、建造物が近代化遺産として先に多くのものを指定してきており、有形文化財の建造物で指定されるものと史跡で指定されるものが、どう違うのかというのもあまり理解されていない。これは難しいとは思うが、高輪築堤跡のように広範囲の開発に伴い広い範囲を発掘調査できたからこそ、地下遺構のすごさを改めて感じさせたものもある。近代の遺跡は様々な態様があると思うので、埋蔵文化財から史跡までをカバーできるような説明を検討いただきたい。

その他

  • 〇 都道府県と市町村の関係について、そもそも文化財保護法では都道府県・指定都市に権限移譲されている。その後、都道府県から市町村へ条例で権限移譲しているところもあるが、都道府県の役割は大きく、そもそも司令塔は法律上都道府県にあるので、それが域内の市町村に対しての様々な判断等をきちんとすることが基本となると思う。
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