第3回第三専門調査会史跡・埋蔵文化財合同委員会コアメンバー会議 議事要旨

日時
令和4年4月26日(火)15:00-17:00
議題
これからの埋蔵文化財保護の在り方について(第一次報告書)(案)について
出席委員
坂井座長、伊藤委員、木下委員、桜井委員、佐藤委員、鈴木委員、福田委員、福永委員(※一部の委員はweb出席)
事務局
山下課長、時枝補佐、近江主任調査官、渋谷主任調査官 他

近代遺跡の取り扱い関係

  • 〇 近代遺跡は地域によって取り上げられる遺跡に差があり、未周知のものがある状態。調査されずに滅失してしまうものもある。重要なものが漏れ落ちないような仕組みづくりが重要。
  • 〇 近代遺跡の取り扱いは、平成10年通知の考え方が基準となっているが、当時は発掘調査量がうなぎ上りに多くなっていたこともあり、近代遺跡を積極的に発掘調査して保護するという考え方がなく、単に「地域において特に重要なもの」と規定した。これにより地方によっては近代以降の遺跡については、対応しなくてもよいと受け止めているところもあり、平成10年通知がもたらした弊害と考える。
  • 〇 近代遺跡は、現在機能しているものの中に古い遺構が良好な形で残されていることも多く、文化財担当者は、その地域で近代に何が起こったのかということまで考えを及ぼしながら対応する必要がある。
  • 〇 近代についてはどのようなものを埋蔵文化財として扱うべきなのか、国と地方で考え方の共有ができていない。それが都道府県ごとの近代遺跡の包蔵地数の差に表れている。その解消を行う必要がある。
  • 〇 近代以降の場合、地方の担当者に対象が遺跡と認識されるかどうかが問題。遺跡という認識がなければ、不時発見時にも保存対象と認識されない場合がある。このようなものは保護対象となりうるということを、地方の担当者にも広く伝えることが必要。

文化審議会によるリスト化関係

  • 〇 リスト化を行う際、国がリスト案について助言を行うことも必要ではないか。市町村の担当は考古学専攻出身者が多く、必ずしも近代の文献等について知識があるわけではない。このため、国の助言がなければ近代遺跡が十分にリストアップされない可能性がある。
  • 〇 開発が緊迫した段階で、後押しするような意図をもってリストへの登載を行ったりすることもあるのか。緊急時におけるリストへの登載方法の仕組みの検討も必要。その際、きちんと遺跡を判断するために、その遺跡に関するデータを詳しく参照しなくてはならず、未成熟な情報のみで評価することが生じないよう留意が必要。
  • 〇 史跡相当の遺跡をリスト化しても、結局文化財保護法93条で土木工事等のための発掘届が上がってきてはじめて対応をとるのであれば、高輪築堤の際と変わらない。開発段階で解決しようとすると、補償の問題が発生することも踏まえ、できるだけ効果が上がるような実装の仕方が必要。
  • 〇 リスト化に当たって、所有者の同意を必要とするのか、文化財サイドで包蔵地のようにリスト化するのか、所有者の同意や情報共有の仕方については検討が必要。
  • 〇 文化審議会によるリスト化について、文化審議会や文化庁、自治体に一度に大量の作業が発生することが想定されるが、実現可能な段取りで対応をお願いしたい。
  • 〇 リスト化する際、遺跡地図についてはデータ化されて簡便に閲覧できるようになっている所が増えてきてはいるが、できていないところもあり、それを全国的に遍くできるようにすることが必要。
  • 〇 リスト化について、近代については文献資料が豊富なので、文献の上で埋蔵されていることがわかるものについてもリスト化できれば、近代の重要な遺跡の保存は実現できるのではないか。
  • 〇 今回のリスト化は新しい仕組みで、結構重い仕組みだと思う。リストの必要性等、きちんと整理しておく必要がある。
  • 〇 考古資料の場合、重要考古資料選定会議というものがあり、有識者の意見を踏まえて、重要考古資料を選定し、条件が整ったものから重要文化財に指定していく。所有者が重要文化財にすることを希望したものを審議するが、今回のリストはそのような手続き上の流れがない。所有者の意思が反映されないのであれば、その点についても整理しておく必要がある。

その他報告書(案)に関すること

  • 〇 報告書案の取りまとめにあたっては、開発側も交えた実務者会議を開催してご意見をいただいた。都道府県に権限移譲を行うまでは、文化庁は国交省や道路事務所等と定期的に意見交換を行い、埋蔵文化財について理解いただいていたが、権限移譲後、そういった機会がなくなった。その意味で今回の実務者会議はよい機会であった。
  • 〇 埋蔵文化財を三分類した際、(イ)に相当するものでも、地方指定がなされたり、時間の経過により価値が生じたりするものもあり、国の史跡に相当しないことについて不可逆的な価値を与えるような印象を与えないように留意が必要。
  • 〇 埋蔵文化財の内容把握の技術革新のための予算など、埋蔵文化財の把握と周知のための予算を文化庁で確保することが必要。
  • 〇 「埋蔵文化財に対する価値観を大きく変える段階にきている」ということを報告書に記載してほしい。モノだけではない価値観が求められているということを、自治体の人のみならず、市民、開発事業者にも理解してもらうことが重要。
ページの先頭に移動