別紙

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平成20年7月30日

 ユネスコ無形文化遺産の保護に関する条約は,締約国に対して,(1)自国内の無形文化遺産の目録の作成,(2)人類の無形文化遺産の代表的な一覧表(「代表一覧表」)への記載提案,及び(3)緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表(「危機一覧表」)への記載提案を求めており,本年6月の締約国会議では,本条約の実施のための運用指示書が決定された。
 こうした状況を踏まえ,我が国では,昨年11月に文化審議会文化財分科会に「無形文化遺産保護条約に関する特別委員会」(委員長:宮本袈裟雄・武蔵大学教授)を設置し,上記の3つの事項に関し調査審議を行ってきた。7月18日には文化財分科会において本特別委員会の審議結果が了承された。
 これを踏まえ,文化庁としては以下のとおり対応することとする。

1.目録の作成について

(1)締約国に求められること

  • ・ 本条約では,締約国は,無形文化遺産の一層の認知及びその重要性についての意識の向上の確保並びに文化の多様性を尊重する対話を奨励するため,「代表一覧表」への記載について提案を行うとされている。
  • ・ なお,どのようなものを提出するかについては,各国の判断に委ねられている。

(2)我が国の対応

  • ・ 国の指定・選定に係る「重要無形文化財」,「重要無形民俗文化財」及び「選定保存技術」の一覧を目録としてユネスコ事務局に提出する。

2.「代表一覧表」への提案について

(1)締約国に求められること

  • ・ 本条約では,締約国は,無形文化遺産の一層の認知及びその重要性についての意識の向上の確保並びに文化の多様性を尊重する対話を奨励するため,「代表一覧表」への記載について提案を行うとされている。
  • ・ 第1回提案の提出期限は本年9月30日と決定された。

(2)我が国の対応

  • 1.基本的考え方
  • ・ 我が国は,既に文化財保護法に基づき,重要性の高い無形文化遺産に関しては,国による指定等を行い,保護措置を講じている。一方,「代表一覧表」は,無形文化遺産に対する認知の高まりと多様性の尊重を目的として作成されるものであり,世界遺産とは異なり,専門機関による価値の評価は行われない。
  • ・ このため,「代表一覧表」への記載の有無によって,我が国の無形文化遺産の価値には何ら影響はない。
  • ・ 「代表一覧表」への記載に係る我が国の提案候補は,「重要無形文化財」,「重要無形民俗文化財」及び「選定保存技術」を対象とし,その中から順次選定を行う。
  • ・ 将来的には,記載基準に適合し提案可能なもの全てが「代表一覧表」に記載されることを目指す。
  • 2.提案候補の具体的選定方法
  • ・ 日本の文化的多様性を示す効果的な選定を行うため,「重要無形文化財」,「重要無形民俗文化財」及び「選定保存技術」のそれぞれから選定を行うこととする。
  • ・ 文化財の特徴及び指定件数に基づき区分を設定し,各区分の中では,原則として,指定の時期が早いものから順に選定する。
  • ・ 指定の時期が同じものが複数存在する場合には,地域バランス等を考慮する。
  • ・ 当面は,提案書作成に当たって資料提出等の協力を得られやすい総合認定等がなされているものから選定を行い,各個認定,保持者認定のみされているものの取扱いについては,今後の検討課題とする。
  • ・ 文化庁において提案書作成等の準備を進めていくが,提案の前提となる関係保護団体等の同意が得られない場合等には,次回以降に想定される提案候補の中から順次繰り上げて提案を行う。
  • ・ 本年6月の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議」等を考慮し,日本の文化の多様性をより一層示す観点から,上記の枠組みとは別に,「アイヌ古式舞踊」を第1回提案候補とする。
  • ・ 上記の考え方に基づき,別表に記載されている14件を第1回提案候補とする。
  • ※1 今後,関係する地方公共団体・団体等との協議及び外務省・文化庁連絡会議を経て,提案する無形文化遺産を決定し,本年9月30日までにユネスコ事務局へ提出。「代表一覧表」への記載は,平成21年9月の政府間委員会で決定される予定。
  • ※2 本条約に先立ち,ユネスコによって「人類の口承及び無形遺産に関する傑作」として宣言されている「能楽」,「人形浄瑠璃」及び「歌舞伎」は,「代表一覧表」に記載される予定。

3.「危機一覧表」への提案について

(1)締約国に求められること

  • ・ 本条約では,締約国は,緊急に保護する必要がある無形文化遺産がある場合には,「危機一覧表」への記載について要請を行うとされている。
  • ・ 第1回提案の提出期限は本年10月1日と決定された。

(2)我が国の対応

  • ・ 「危機一覧表」は,無形文化遺産の保護に関する法的・財政的な保護措置が図られていない国の貴重な無形文化遺産が消滅しないよう,国際的な枠組みで緊急に保護を図ることを目的としているが,我が国においては,文化財保護法で既に保護措置が確保されているため,「危機一覧表」への提案は当面行わない。
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