参考1 第1回企画調査会

過去の審議会報告における関連記述について

1.文化財の総合的な保護を行うための方策について

「時代の変化に対応した文化財保護施策の改善充実について」
(平成6年7月15日文化財保護企画特別委員会)

第2 文化財保護の対象・保護措置の拡大について

2.文化財の総合的な把握と保護

(1)各種文化財の総合的な保護
 文化財の保護は、従来は概して、美術工芸品、建造物、史跡、伝統芸能というような個々の種類・対象に着目して指定が行われてきた。しかしながら、文化財は、それが置かれた環境の中で、人々の営為とかかわりながら伝統的な意義と価値を形成してきたという側面を持っており、関連する文化財やその環境を保護する必要性が広く認識されつつある。このような要請に対応して、例えば、同一作家の作品と各種資料、祭礼行事における芸能・儀礼的所作と衣装・用具等、史跡や建造物と関係古文書・絵図などというように、文化財の種類の枠を超えて、総合的・一体的な保護の施策を講ずることが重要であるとの指摘がある。今後、そのための取組の一層の改善に努める必要がある。

(3)景観・環境に関する文化財保護
 従来の文化財保護制度は、主として文化財それ自体の保護に主眼が置かれていたが、個々の文化財は、それを取り巻く景観・環境と一体となって価値を形成しているものであることから、近年、景観・環境をも含めた文化財保護あるいはそれらをも視野に入れた文化財保護が重要な課題であると考えられている。
 現行の文化財保護法においては、建造物や史跡・名勝・天然記念物に関し、その保存に影響を及ぼす行為の制限や、これら文化財の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限する制度があるが、個人の財産権に対する制約を伴うことや、制約を課す際の判断基準などに対する国民的な合意が形成されているとは言えない状況にあることなどから、これらの制度は現在活用されていない。今後、文化財の意義についての周知を図り、国民の合意づくりを図りながら、これら制度の活用に向けて努力する必要がある。
 他方、都市計画、自然保護、地域づくり等の観点から、関係省庁や地方公共団体において、景観・環境のための各種の行政施策が近年講じられるようになってきている。このような現状にかんがみ、これらの行政施策との連携を密にし、文化財保護の観点から主体的な働きかけを強めていく必要がある。

第4 文化財の活用の推進について

1.文化財に国民が親しむ機会の拡大

(3)文化財集中地域の面的な整備
 歴史的建造物や史跡・名勝などの文化財が比較的集中している地域については、単体として当該文化財の保存・活用を図るにとどまらず、国民生活の中で広く文化財が生かされ、地域の文化環境を豊かにする観点から、博物館・歴史民俗資料館等の施設の整備と合わせて、文化財周辺の自然的・歴史的環境の保全を図り、広く歴史的文化地域として面的な整備を進めることが適当である。

「文化財の保存・活用の新たな展開 -文化遺産を未来へ生かすために-」
(平成13年11月16日 文化審議会文化財分科会企画調査会)

第3 総合的な視野に立った文化遺産の保存・活用

1 新たな課題

(1)文化財の周辺環境
 文化財は、その地域の歴史や風土との関連の中で成立したものであり、文化財のよりよい保存のためには、文化財を単体として点的にとらえるだけでなく、その周辺環境を含めて面的に把握した上で保護することが必要である。
 国指定の建造物、史跡等については、周辺の歴史的環境を開発・都市化等の影響から保護することが必要であり、文化庁が中心となって、都市計画や公園行政等を担う各省庁や地方公共団体に対して、積極的に取り組むよう働きかけていくことが必要である。

(4)総合的な把握
 一定の地域内に所在し相互に関連性を有する同一の類型の文化財で個々の文化財の価値が一定基準に達しないものや、文化財の類型を超えて一定の価値を持ちながら集まったものについては、総体としてとらえることで、新たな価値付けが可能となる観点から、その総体を一括して把握し保護の対象とすることを検討する必要がある。

「高松塚古墳取合部天井の崩落止工事及び石室西壁の損傷事故に関する調査報告書」
(平成18年6月19日高松塚古墳取合部天井の崩落止め工事及び石室西壁の損傷事故に関する調査委員会)

Ⅲ.今後の改善に向けて

2.今後の課題

(2)中長期的な課題

(1)文化財の総合的な保護体系の確立

 文化財保護を総合的に捉え直す必要があるとの観点から、調査委員会内部で論議が交わされた経緯もある。
 我が国の文化財は、それぞれの特性に応じ、有形文化財(美術工芸品、建造物など)、無形文化財、記念物(遺跡、名勝、動植物など)等に区分され、類型ごとに指定・選定等が行われ、必要な保護措置が講じられる仕組みとなっている。このような文化財保護法の体系に対応し、文化庁でも類型ごとに所管課が定められ、その保護に当たっている。
 こうしたことは文化財保護の長年の歴史を踏まえ、かつ、文化財のもつ基本的特性に基づくものであり決して誤りではない。
 今回の評価として、文化庁内外の縦割り体制とセクショナリズムに言及しているが、その背景として、このような現行の文化財保護法の体系とそれに極めて忠実に専門分化した所管課体制があることも同時に指摘しておきたい。
 しかし、文化財はこれまでの人間活動の集約体ないしそのシンボルであり、多くの場合極めて多元的な側面をもち、このような類型に単純に当てはめれば適切に保存できるというわけではない。
 文化財が同保護法で定めるとおり、「わが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすもの」であるためには、個別単体のそれもさりながら、それが存在する空間を含めてそれらの文化財そのものを歴史的背景のもとに総合的にとらえ、評価し、国民の理解を求めていくことが不可欠である。
 このことは、文化財保護制度そのものの根幹に関わる問題であり、長期的な課題として指摘しておきたい。

2.国民の文化財保護への理解と参加を促進するための方策について

「時代の変化に対応した文化財保護施策の改善充実について」
(平成6年7月15日文化財保護企画特別委員会)

第2 文化財保護の対象・保護措置の拡大について

3.文化財保護制度の多様化と充実

(3)民間の文化財保護活動に対する支援の充実
 国民の間には文化財保護活動への参加意欲が醸成されつつあるが、地域において文化財に関する様々な保護活動が一層効果的に展開できるようにするため、行政の立場からも関係団体の組織化や各種の支援を行っていくことが重要である。とりわけ、地域において文化財の巡視、普及活動を行う文化財保護指導委員(いわゆる文化財パトロール)や各地の文化財保護協会などの文化財保護関係団体等の活動については、全国的な規模での連絡協議を推進するとともに、行政との連携を一層密にして充実した活動を展開できるような方途を講ずる必要がある。また、地域の文化財を案内・解説する者や文化財の保守管理等のボランティア活動を行っている者に対しては、その活動を奨励するため、例えば資格制度や顕彰制度の導入などを図る必要がある。
 このほか、国民参加型の文化財保護活動(ナショナルトラスト)の促進、税制上の優遇措置等による民間資金の活用などについても努める必要がある。

「文化財の保存・活用の新たな展開 -文化遺産を未来へ生かすために-」
(平成13年11月16日 文化審議会文化財分科会企画調査会)

第2 文化財の保存・活用の今後の取組

Ⅰ 幅広い連携協力による文化財の保存・活用

4 民間等の活動の活性化

 民間レベルで文化財のために熱心な活動を行っているNPO、NGOや保存会と、国、地方公共団体は積極的な連携を図るとともに、NPO、NGO等が活動しやすい環境づくりに努めることが必要である。
 専門的な知識を地域の人々にわかりやすく解説する人材としても、NPO、NGO等で活動する人々の果たす役割は大きいと期待される。
 国、地方公共団体は協力をしながら、民間等の活動と緊密かつ有機的な協力関係を構築するため、ボランティア等の人材データバンクの整備を推進するとともに、身近な文化財情報を一般から収集するシステムを導入するための方策を検討する必要がある。
 国は、民間等の活動を活性化するため、民間資金を集めやすくするための税制を含む環境作りに努める必要がある。

Ⅲ 文化財の保存の充実

2 文化財に携わる人材の確保と要請

(2)幅広い人材の育成
 文化財に関する専門家の養成が必要であるのと同様、専門家以外でも、地域において積極的に文化財の保存・活用に携わっていくボランティア等の幅広い人材を育てていくことが必要である。
 このため、社会教育等において、文化財に関する講座を積極的に開催したり、美術館・博物館をはじめ文化財にかかわる施設において、積極的にボランティアを受け入れ、その研修機会を設けたり、NPO、NGOからの求めに応じて文化財に関する専門的な学習の機会を提供するなどの取組を推進していくことが求められる。

第3 総合的な視野に立った文化遺産の保存・活用

2 文化遺産の保存・活用への新たな取組

 (略)広い範囲にわたる文化遺産の保存・活用を担う主体として、文化庁が中心的な役割を果たしていくことはもちろんであるが、それに加えて各省庁、地方公共団体、産業界、NPO,NGOなどの民間団体、さらには国民一人一人等が積極的な役割を担うことが必要である。また、こうした保存・活用のための取組を促すため、文化庁が中心となって呼びかけを行うことが必要である。
 また、NPO、NGO等の民間団体の活動や、国民一人一人の取組を促しながら、参加型の保存・活用を推進することが必要であり、国、地方公共団体においては、このための支援的行政を一層推進する必要がある。(略)

第4 国民一人一人が文化遺産を大切にする社会を目指して

1 人々の文化遺産への理解と愛情を深める取組

 文化遺産の保存・活用の推進に当たっては、国民一人一人が文化財の保存・活用の活動に積極的に参加できる環境をつくることが重要である。
 国、地方公共団体は、地域の人々、老若男女すべてが生涯を通じて文化遺産に親しむ機会を提供するとともに、全国キャンペーンやシンポジウム等、人々の文化遺産への理解と愛情を深めるための取組を推進することが必要である。
 また、文化遺産に親しむための活動を行う団体や、とりわけ子どもに対して文化遺産に関する学習・体験の場を提供する団体など、文化遺産を側面から支える組織を育てることなどを通じて、国民一人一人が文化遺産の保存・活用の活動に参加しやすい環境をつくることが重要である。
 美術工芸品や建造物、史跡名勝天然記念物などに関し、修復・整備前の状況を示したり、その途中の様子を公開することなどにより、人々に文化遺産をまもることへの理解を深めることも有意義である。

2 子どもたちに文化遺産を大切にする意識を育む取組

 次世代の文化遺産の保存・活用の担い手となる現在の子どもたちに、文化遺産への理解と愛情をもって成長するよう働きかけていくことが重要である。(略)

3.様々な分野との連携方策について

「時代の変化に対応した文化財保護施策の改善充実について」
(平成6年7月15日文化財保護企画特別委員会)

第2 文化財保護の対象・保護措置の拡大について

2.文化財の総合的な把握と保護

(3)景観・環境に対する文化財保護
 (略)都市計画、自然保護、地域づくり等の観点から、関係省庁や地方公共団体において、景観・環境のための各種の行政施策が近年講じられるようになってきている。このような現状にかんがみ、これらの行政施策との連携を密にし、文化財保護の観点から主体的な働きかけを強めていく必要がある。

第4 文化財の活用の推進について

3.地域活性化施策・文化財関連産業振興施策との調整

(1)文化財を核としたまちづくり・むらおこし
 (略)文化財を核としたまちづくり・むらおこしに当たっては、今後、文化財行政部局が主体性を持って、企画、観光、商工、農林水産、建設等の関連行政部局と適切な連携を図り、施策の展開に努める必要がある。

(2)文化財関連産業の振興と文化財保護
 (略)地域に根ざした文化財は、関連産業の振興や地域振興なしには、その保護を十分に行うことができない場合が多いため、このような産業連関を視野に入れた施策の充実を図るとともに、関連行政機関との連携による施策の展開も必要となっている。

「文化財の保存・活用の新たな展開 -文化遺産を未来へ生かすために-」
(平成13年11月16日 文化審議会文化財分科会企画調査会)

第3 総合的な視野に立った文化遺産の保存・活用

1 新たな課題

(1)文化財の周辺環境
 (略)国指定の建造物、史跡等については、周辺の歴史的環境を開発・都市化等の影響から保護することが必要であり、文化庁が中心となって、都市計画や公園行政等を担う各省庁や地方公共団体に対して、積極的に取り組むよう働きかけていくことが必要である。

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