国民の文化財保護への理解と参加を促進するための方策について
文化財保護に民間活力を活用するための方策、国民に文化財保護により親しんでもらうための方策として、国として以下の施策を講じている。
1. 個人・企業からの支援を促進するための方策
(文化を支援する者に係る税制優遇措置)
(1)特定公益増進法人に対する寄付について
文化財の保護を主たる目的とする法人に対して寄付をした個人・法人について、以下の税制優遇措置が講じられている。
- 個人による寄付について
- 法人による寄付について
<寄付金額(所得の30%が上限)-5千円>が個人の所得から控除され、所得税が減免される。
寄付金額のうち、一般の損金算入枠と同額が別枠で損金算入でき、法人税が減免される。
<上記の優遇措置が認められる法人の例>
- 国立美術館、国立博物館、文化財研究所等の独立行政法人
- 文化財保護を主たる目的とする法人として認められたもの
- 文化財保護・芸術研究助成財団
- ポーラ伝統文化振興財団
- 文楽協会 等13法人
(2)指定寄付金制度について
国宝・重要文化財等の保護のための修理及び防災施設の設置費用に充てるための募金については、個別に財務大臣の指定を受ければ、以下の税制優遇措置が講じられている。
- 個人による寄付について
- 法人による寄付について
<寄付金額(所得の30%が上限)-5千円>が所得から控除され、所得税が減免される
寄付金額の全額が損金算入でき、法人税が減免される。
(参考)
(1)特定公益増進法人に対する寄付の実績
(平成17年度:文化財関係の16公益法人に係るもの)
寄付の別 | 寄付者数 | 金額 | 小計 | 総計 | |
---|---|---|---|---|---|
個人 | 現金寄付 | 2,677人 | 120,587千円 | 1,088,814千円 | 2,646,634千円 |
現物寄付 | 105人 | 968,227千円 | |||
法人 | 現金寄付 | 856法人 | 1,484,693千円 | 1,557,820千円 | |
現物寄付 | 29法人 | 73,127千円 |
(2)指定寄付の実績
(i)過去5年間の件数及び承認額の合計
年度 | 平成13年度 | 平成14年度 | 平成15年度 | 平成16年度 | 平成17年度 |
---|---|---|---|---|---|
件数 | 2 | 5 | 6 | 2 | 2 |
総額(千円) | 81,130 | 636,442 | 1,120,187 | 357,000 | 241,975 |
(ii)17年度の実績
申請者 | 事業名 | 承認額(千円) |
---|---|---|
吉備津神社(岡山県) | 国宝吉備津神社本殿及び拝殿保存修理事業 | 30,000 |
願泉寺(大阪府) | 重文願泉寺本堂外5棟保存修理事業 | 211,975 |
2.民間活力の活用方策 <NPOとの連携事業>
○NPOによる文化財建造物活用モデル事業(平成17年度より開始)
特定非営利活動法人や公益的活動を行うその他の市民団体等が提案する文化財建造物の活用事業案のうち、独自性や創造性に富み、実現性に優れたものを選定して、文化庁の「活用モデル事業」として委嘱して実施。
文化財建造物の魅力を引き出し、心豊かな社会を実現する社会資本として、当該建造物を活用するモデル的な活動を企画・実施し、文化財保護の協力者が増えることを目指す。
- 文化財建造物の適切な取扱いについて、必要に応じて文化庁が技術的助言を行い、活用の参考となる事例を創出。
- 事業実施後、活用モデル事業実施団体が活動の成果を報告し、意見交換を行なう「実施報告会」を開催し、団体間のネットワークづくりを促進。
- 活用モデル事業実施により得られた活用のポイントを「活用テクニカルノート」にまとめ、文化庁のホームページで公開する等、情報の共有化を図る。
採択事業例
平成18年度では、以下の事業をはじめとする全9件の事業が採択されている。
- 地域と大学の連携により育てる“河崎まちづくり学生学芸員”構想
- 短期空家転貸“チャレンジショップ”による空家対策促進事業
【実施団体】NPO法人 伊勢河崎まちづくり衆(三重県伊勢市)
登録有形文化財伊勢河崎商人館は、博物館機能を有するまちづくり拠点施設であり、伊勢市より委託を受けて管理運営しているが、館の運営システムや財政状況では、学芸員を雇用し、博物館機能の維持や向上を図ることが難しい。そこで、地域の大学や県立博物館等と連携し、「学生学芸員」を募って調査、展示製作、関連イベントの実施を含む一連の活動を行い、企画展示を充実させることを目指す。
【実施団体】NPO法人 ネットワーク竹原(広島県竹原市)
伝統的建造物群保存地区の伝統的建造物である空家を短期に借り受け、清掃、応急的な修理を施し、店舗や展示場、イベントスペースとして空家の一時利用を希望する活用希望者の仲介を行う。この短期空家転貸の仕組みを「チャレンジショップ」と名付けて実践するとともに、長期的貸借を図る上での諸課題の検討を行う。
3.文化財についての情報発信のための方策
文化財についての情報を発信し、国民に文化財保護に対する理解を深めてもらうことを目的として、以下の事業が行われている。
○文化遺産オンライン
「国民の誰もがインターネットを活用し、良質で多様な文化遺産に関する情報をいつでも容易に総覧できる新しい環境を提供するとともに、世界に向けて発信すべき」という基本理念のもと、我が国が誇る文化遺産の情報に関するポータルサイトを確立し、文化遺産のインターネット上での総覧を実現することを目指して、以下の取組を進めている。
- 全国の博物館・美術館等の文化財・美術品情報をはじめとする文化遺産のアーカイブ化の促進
- 文化遺産情報を集約化し、必要な情報を検索できるシステムを整備するとともに、分野別・地域別等に情報を整理したリンク先を表示し、インターネットで公開するとともに、著作権等を保護した利活用を促進
○文化財保護(愛護)の推進方策及び普及啓発活動について

- 文化財保護強調週間(毎年11月1~7日)の実施
- 文化財防火デー(毎年1月26日)において、消防庁と協力して全国的に文化財防火運動を展開
- 地方自治体の文化財担当職員に対する文化財行政講座を実施
- 文化財愛護シンボルマークの制定と普及
- 政府刊行物を活用した広報活動の推進