参考資料1-8

世界遺産における産業遺産について

平成6年(1994年)に世界遺産委員会が採択した「均衡のある世界遺産一覧表を構築するための世界戦略(グローバル・ストラテジー)」において,遺産の種別間における不均衡を是正するために,今後登録を推進すべきものとして示された遺産の領域の一つ。
『世界遺産条約履行のための作業指針』には「産業遺産」の定義は示されていないが,人類の科学技術の発展と産業活動の進展の成果を示すすべての遺産を包括していると理解してよい。
平成15年(2003年)国際産業遺産保存委員会(TICCIH)が採択したニジニー・タギル憲章においては,産業遺産は,「歴史的,技術的,社会的,建築学的,あるいは科学的価値のある産業文化の遺物から成り,それらは「建物,機械,工房,工場及び製造所,炭坑及び処理精製場,倉庫や貯蔵庫,エネルギーを製造し,伝達し,消費する場所,輸送とその全てのインフラ,そして住宅,宗教礼拝,教育など産業に関わる社会活動のために使用される場所から成る」とされる。
また,同宣言には,産業考古学について,「産業工程を目的とし,あるいはその結果作られた記録,人工遺物,層序,建造物,人間の居住地,自然景観及び都市景観など,有形,無形の全ての証拠を研究する学際的方法」であると定義し,「産業考古学が主として関心を寄せる年代は,18世紀後半における産業革命の開始から現代にまで及び,現代をも含む」と記すとともに,「産業化以前や産業化初期の起源についても調査の対象である」と明記している。
以上の定義によると,「産業遺産」の中には,産業革命に係る様々の遺産のみならず,それ以前の時代に属する遺跡の中にも産業遺産としての条件を十分に満たすものが含まれていると考えてよい。
これに関連して,平成17年6月4日に島根県大田市で開催された「鉱山遺跡の顕著な普遍的価値と保存管理に関する専門家会議」における結論には,「欧州に興った産業革命に関する遺産及びそれらが世界の各地に伝播したことを示す19世紀以降の産業遺産などとは異なり,それ以前に各地域の産業活動に関わる固有の遺産で顕著な普遍的価値を持つものについて正当に評価することが不可欠であり,(中略)欧州とは異なるその地域に固有の文脈の下に遺産を評価することが必要である」との指摘が行われた。

登録例

インドの山岳鉄道群 (1999年,インド)

ブレナボン産業用地 (2000年,英国)

エッセンのツォルフェライン炭坑業遺産群 (2001年,ドイツ連邦共和国)

ハンバーストーンとサンタ・ラウラ硝石工場 (2005年,チリ共和国)

ストルーブ測地線
(2005年,ベラルーシ共和国・エストニア共和国・フィンランド共和国・ラトビア共和国・リトアニア共和国・ノルウェー王国・モルドバ共和国・ロシア連邦・スウェーデン王国・ウクライナ)
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