参考資料2-1

世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約の主な内容

この条約は,文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷,破壊等の脅威から保護し,保存することが重要であるとの観点から,国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的とするものであって,前文,本文38箇条及び末文から成り,その概要は次のとおりである。

項目 内容
1.前文 文化遺産及び自然遺産が社会的及び経済的状況の変化によってますます破壊の脅威にさらされていることに留意し,これらの遺産の中には,人類全体のための世界の遺産として保存する必要があるものがあることを考慮し並びにこのような遺産を集団で保護するための効果的な体制を確立することの重要性を強調している。
2.文化遺産の定義
(第1条)

この条約上の「文化遺産」及び「自然遺産」の定義について規定している。

(1)記念工作物
建築物,記念的意義を有する彫刻及び絵画,考古学的な性質の物件及び構造物,金石文,洞穴住居並びにこれらの物件の組合わせであって,歴史上,芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの
(2)建造物群
独立し又は連続した建造物の群であって,その建築様式,均質性又は景観内の位置のために,歴史上,芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの
(3)遺跡
人工の所産(自然と結合したものを含む。)及び考古学的遺跡を含む区域であって,歴史上,芸術上,民族学上又は人類学上顕著な普遍的価値を有するもの
3.自然遺産の定義
(第2条)

この条約上の「文化遺産」及び「自然遺産」の定義について規定している。

  1. (1)無生物又は生物の生成物又は生成物群から成る特徴のある自然の地域であって,鑑賞上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの
  2. (2)地質学的又は地形学的形成物及び脅威にさらされている動物又は植物の種の生息地又は自生地として区域が明確に定められている地域であって,学術上又は保存上顕著な普遍的価値を有するもの
  3. (3)自然の風景地及び区域が明確に定められている自然の地域であって,学術上,保存上又は景観上顕著な普遍的価値を有するもの
4.遺産の認定
(第3条)
自国の領域内に存在する遺産を認定することは,締約国の役割である。
5.国内的保護
(第4・5条)

締約国は,自国の領域内に存在する遺産を認定し,保護し,保存し,整備し及び将来の世代へ伝えることを確保することが第一義的には自国に課された義務であることを認識し,このために最善を尽くす。
締約国は,可能な範囲内で,かつ,自国にとって適当な場合には,次のことを行うよう努める。

  1. (1)文化遺産及び自然遺産に対し社会生活における役割を与え並びにこれらの遺産の保護を総合的な計画の中に組み入れるための一般的な政策をとること。
  2. (2)文化遺産及び自然遺産の保護,保存及び整備のための適当な職員を有し,かつ,任務の遂行に必要な手段を有する機関を自国の領域内に設置すること。
  3. (3)学術的及び技術的な研究及び調査を発展させること並びに自国の文化遺産又は自然遺産を脅かす危険に対処することを可能にする実施方法を開発すること。
  4. (4)文化遺産及び自然遺産の認定,保護,保存,整備及び活用のために必要な立法上,学術上,技術上,行政上及び財政上の適当な措置をとること。
  5. (5)文化遺産及び自然遺産の保護,保存及び整備の分野における全国的又は地域的な研修センターの設置又は発展を促進し,並びにこれらの分野における学術的調査を奨励すること。
6.国際的保護
(第6・7条)
締約国は,世界の遺産の保護について協力することが国際社会全体の義務であることを認識する。この場合において,遺産が領域内に存在する国の主権を十分に尊重するものとし,財産権を害するものではない。
この条約において,国際的保護とは,締約国がその遺産を保存し及び認定するために努力することを支援するための国際的な協力及び援助の体制を確立することであると了解される。
7.世界遺産委員会の設置
(第8~10条)
この条約によりユネスコに,世界遺産委員会を設置する。同委員会の構成国数は21とする。構成国の選出に当たっては,世界の異なる地域及び文化が衡平に代表されることを確保する。同委員会の会議には,文化財の保存及び修復の研究のための国際センター(ICCROM),記念物及び遺跡に関する国際会議(ICOMOS)及び自然及び天然資源の保全に関する国際同盟(IUCN)の各代表者が顧問の資格で出席することができる。
8.世界遺産一覧表等の作成
(第11・12条)
締約国は,文化遺産又は自然遺産の一部を構成する物件で,自国の領域内に存在し,世界遺産一覧表に記載することが適当であるものの目録を世界遺産委員会に提出する。
世界遺産委員会は,締約国が提出する目録に基づき,同委員会が定めた基準に照らして顕著な普遍的価値を有すると認めるものの一覧表として「世界遺産一覧表」を作成する。さらに,同委員会は,世界遺産一覧表に記載されている遺産のうち,保存のために大規模な作業が必要とされ,かつ,この条約に基づいて援助が要請されているものに関し,「危険にさらされている世界遺産一覧表」を作成する。
9.世界遺産委員会の任務
(第13・14条)
世界遺産委員会は,世界遺産一覧表に記載されている物件に関し締約国が表明する国際的援助の要請を検討し,同委員会が実施する援助の性質及び範囲並びにその活動の優先順位を決定する。
10.世界遺産基金の設立
(第15条)
顕著な普遍的価値を有する遺産を保護するための世界遺産基金をユネスコの財政規則に基づく信託基金として設立する。同基金の資金は,締約国の分担金及び任意拠出金,その他の国,機関及び個人からの拠出金等から成り,世界遺産委員会が決定する目的にのみ使用することができる。
11.分担金等
(第16条)
締約国は,締約国会議において決定される分担金(ユネスコに対する締約国の分担金の額の1%を超えないもの)又はこれを下回らない額の任意拠出金を2年に1回定期的に世界遺産基金に支払う。支払いが停滞している締約国は,世界遺産委員会の構成国に選出される資格を有しない。
12.国際的な募金運動等の支援
(第17・18条)
締約国は,遺産の保護のために募金を行う財団等の設立を奨励する。また,締約国は,遺産の保護のために募金を行う財団等の設立を奨励する。また,締約国は,世界遺産基金のため,ユネスコの主催の下に組織される募金運動に対して援助を与える。
13.国際的援助の要請
(第19~21条)
いかなる締約国も,世界遺産委員会に対し国際的援助を要請することができるが,国際的援助には,基本的には,世界遺産一覧表に記載が決定された遺産にのみ与えられる。国際的援助を要請する締約国は,作業計画,作業経費の見積もり,緊急度,自国の資力によって経費を賄うことができない理由等を要請書において明らかにする。
14.国際的援助の形態
(第22・23条)
世界遺産委員会が供与する国際的援助は,技術上の問題に関する研究,技術者等の提供,専門家の養成,機材の供与,貸付け,補助金の供与等の形態をとる。
15.国際的援助のための条件
(第24・25条)
大規模な国際的援助の供与に先立っては,詳細な学術的及び技術的な研究が行われる。また,国際的援助を受ける締約国は,原則として,事業の経費の相当部分を拠出する。
16.国際的援助のための協定
(第26条)
国際的援助を受ける締約国は,世界遺産委員会との間で締結する協定において,援助の実施条件を定める。
17.教育事業計画
(第27・28条)
締約国は,教育及び広報事業計画を通じる等により,自国民が遺産を評価し及び尊重することを強化するよう努め,この条約により実施される活動を広く公衆に周知させる。
18.締約国の報告
(第29条)
締約国は,ユネスコ総会に提出する報告において,この条約の適用のために自国がとった立法措置,行政措置等に関する情報を提供する。
19.最終条項
(第30~38条)
この条約の批准又は受諾,加入,効力発注,廃棄,改正等について規定している。
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