資料9

平成19年度「世界遺産暫定一覧表」追加記載への地方公共団体からの再提案(概要)

1.北海道・北東北の縄文遺跡群

<旧提案名:青森県の縄文遺跡群(青森県提案),ストーンサークル(秋田県提案)>

(1)所在地(※下線は今回新たに加わった地方公共団体)

北海道
函館市 伊達市 森町(もりまち) 洞爺湖町(とうやこちょう)
青森県
青森市 八戸市 つがる市 外ヶ浜町(そとがはままち) 七戸町(しちのへまち)
岩手県
一戸市
秋田県
鹿角市(かづのし) 北秋田市

(2)資産の種別

遺跡

(3)資産のコンセプト

縄文文化は完新世の温暖湿潤な気候に基づく自然の中で,狩猟・漁労・採集を生活の基盤とした特徴的な文化を約1万年も育んできた。北海道・北東北の縄文遺跡群は,成熟した社会組織を物語る集落遺跡,生業活動の復元を可能にする貝塚,精神活動の拠点となった環状列石,有機質情報が豊富な低湿地遺跡等によって構成される。人類史における自然との共生の成功を顕著に示すものである。

2.最上川の文化的景観-舟運と水が育んだ農と祈り,豊饒な大地-

<旧提案名:出羽三山と最上川が織りなす文化的景観-母なる山と母なる川がつくった人間と自然の共生風土->

(1)所在地

山形県
山形市 米沢市 鶴岡市 酒田市 新庄市 寒河江市(さがえし) 村山市 長井市 天童市 東根市(ひがしねし) 尾花沢市(おばなざわし) 南陽市 中山町(なかやままち) 河北町(かほくちょう) 西川町(にしかわまち) 朝日町(あさひまち) 大江町(おおえまち) 大石田町(おおいしだまち) 舟形町(ふながたまち) 大蔵村 戸沢村 高畠町(たかはたまち) 川西町(かわにしまち) 白鷹町(しらたかまち) 庄内町(しょうないまち) 遊佐町(ゆざまち) (計26市町村)

(2)資産の種別

記念工作物,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

源流部から河口まで延長229kmにわたる「最上川」の流域には,人々の河川の多様な活用により形成された独自の文化的景観が,極めて良好に保存されている。その景観は【舟運】【稲作】【祈り】に顕著な特徴を示している。これは人間と自然との共生のあり方を示す文化遺産であり,優れた土地利用の事例である。

3.金と銀の島,佐渡-鉱山とその文化-<旧提案名:変更なし>

(1)所在地

新潟県
佐渡市

(2)資産の種別

記念工作物,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

佐渡は,石見の技術を導入し,それをもとに効率的な金銀生産システムを確立させ,そのために日本で最も早い鉱業の近代化が急速に進められた。佐渡の技術とシステムは,国内外の鉱山開発に多大な影響を与えた。佐渡では,金銀生産システムの初期段階から近代化の段階まで,その全てを見ることができる。鉱山と関連した土地利用の実態が様々な形で残され,それが文化的景観を形成している。

4.近世高岡の文化遺産群<旧提案名:変更なし>

(1)所在地

富山県
高岡市

(2)資産の種別

記念工作物,建造物群,遺跡

(3)資産のコンセプト

高岡には城下町を基盤として,宗教的要素を取り入れながら商工業都市へと転換する近世都市の形成と発展形態を物語る記念工作物,建造物群や遺跡が良好に保存されている。さらにこうした文化遺産群を護り伝える思想は,藩主から町民,そして市民へと確実に受け継がれており,我が国における都市の成立と発展の過程を示す典型的な文化遺産群である。

5.城下町金沢の文化遺産群と文化的景観<旧提案名:変更なし>

(1)所在地

石川県
金沢市

(2)資産の種別

記念工作物,建造物群,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

金沢は,城郭,街路,寺院群,用水網など城下町にとって不可欠の文化遺産が良好に残ることから,城下町の都市計画の考え方が最も明確にわかり,加えて,これらの遺産が伝統文化や類い稀な伝統技術と一体になり,他の城下町に類を見ない都市の文化的景観を形成する,近世日本の城下町を代表する都市遺産である。

6.霊峰白山と山麓の文化的景観-自然・生業・信仰-

<旧提案名:霊峰白山と山麓の文化的景観>

(1)所在地

石川県
白山市 小松市
福井県
勝山市 大野市
岐阜県
郡上市(ぐじょうし) 高山市 白川村

(2)資産の種別

記念物,建造物群,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

世界有数の豪雪地帯である白山の山麓一帯は禅定道(ぜんじょうどう)を基軸に結ばれ,白山信仰を広めた御師(おし)の集落や木材や養蚕,焼畑などに支えられ,商品経済がいち早く展開するなど,山村特有の生活文化が培われた。白山は擬死再生の山とされ,生業の神として全国に広まった。白山麓には白山信仰を基盤とする真宗の信仰が浸透し,環境に適合した伝統的建築物や季節ごとの芸能など,山麓の自然と暮らしと信仰を代表する文化的景観が息づいている。

7.若狭の社寺建造物群と文化的景観-神仏習合を基調とした中世景観

<旧提案名:若狭の社寺建造物群と文化的景観-仏教伝播と神仏習合の聖地>

(1)所在地

福井県
小浜市

(2)資産の種別

記念工作物,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

若狭地域は,古くから大陸・半島と日本の結節地として機能し,多くの文化の痕跡を 今にとどめている。これらは,特に小浜湾の背後に聳える多田ヶ岳(ただがたけ)周辺に立地する社寺に顕著に現れており,これらが信仰の山や周辺の集落景観と一体となって文化的景観を構成している。さらに,これらの社寺群は,我が国特有の信仰形態である「神仏習合」の在り方を表している。

8.善光寺と門前町(もんぜんまち)<旧提案名:善光寺~古代から続く浄土信仰の霊地~>

(1)所在地

長野県
長野市

(2)資産の種別

建造物群,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

善光寺伽藍(がらん)を核とし,周辺地形と一体となった空間構成は,鎌倉時代以降の人々の精神的風土を明確に表し,優れた文化的景観を形成している。門前は単核型門前町(たんかくがたもんぜんまち)の典型であり,善光寺に向けて緩やかな登り勾配を持つ参道は,秀麗なビスタを形成し,また善光寺と宿坊(しゅくぼう)仲見世(なかみせ)や門前の伝統的な建造物群が遺存する景観は,寺と町が寛容性,開放性,庶民性を基軸として融合した結果であり,独特な都市景観を形成している。

9.松本城<旧提案名:変更なし>

(1)所在地

長野県
松本市

(2)資産の種別

記念工作物,遺跡

(3)資産のコンセプト

武田信玄によって縄張りがなされ,石川数正(いしかわかずまさ)康長(やすなが)父子によって天守や堀が築かれた松本城は,鉄砲戦を想定したつくりとされ,優れた土木技術を用いたもので,我が国城郭の歴史の中で「天正(てんしょう)文禄(ぶんろく)期」に分類される。さらに17世紀に入って辰巳附櫓(たつみつけやぐら)月見櫓(つきみやぐら)が増設され,戦国期の戦略拠点としての城郭と,平和が確立した後の優雅な(やぐら)が混在している。
(※なお,検討状況報告書において,世界遺産「姫路城」,暫定一覧表既記載遺産「彦 根城」の統合・再整理による「姫路城を中心とした日本の近世城郭群」(仮称)とい う主題のの設定に向けた研究を進めたいとの意向を示している。)

10.妻籠宿(つまごじゅく)馬籠宿(まごめじゅく)中山道(なかせんどう)-『夜明け前』の世界<旧提案名:妻籠宿と中山道>

(1)所在地

長野県
南木曽町 中津川市(なかつがわし)

(2)資産の種別

建造物群,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

妻籠宿(つまごじゅく)馬籠宿(まごめじゅく)は,中山道(なかせんどう)69宿のうち,江戸から42番目,43番目の宿として制定された宿場町である。妻籠宿を中心とする馬籠地区から与川(よがわ)地区までの一帯には,中山道の旧状が良く残り,また,宿場町のみならず,宿場を支える在郷(ざいごう),宿場と宿場の間で旅人に便宜を図るための立場茶屋(たてばぢゃや)間の宿(あいのしゅく)等が遺存する。日本に独特な近世交通システムを全体として良く伝え,それが周囲の自然とつくりあげる歴史的な景観を良好にとどめている。島崎藤村による日本を代表する歴史小説『夜明け前』の舞台ともなっている。

11.飛騨高山の町並みと祭礼の場-伝統的な町並みと屋台祭礼の文化的景観-

<旧提案名:飛騨高山の町並みと屋台>

(1)所在地

岐阜県
高山市

(2)資産の種別

建造物群,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

飛騨国は東西を険しい山に,南北を河川峡谷に囲まれ,9割以上が山林である。高山は金森長近(かなもりながちか)が16世紀末に町割(まちわり)を行った城下町である。17世紀末より幕府直轄領となり,高山城は破却されるが,宮川(みやがわ)以東の旧城下町全域が町人町となって,飛騨国の政治・経済の中心地として発展してきた。他の城下町と比べると町人町の広さにその特徴があり,飛騨匠(ひだのたくみ)の木工技術に支えられてきた伝統的な町家や祭礼の屋台が,この他の伝統文化とともによく残る。日常の生活の場である「伝統的町並み」と,ハレの場である「祭礼の場」とが結びついた独特な文化的景観である。

12.三徳山-信仰の山と文化的景観-<旧提案名:三徳山>

(1)所在地

鳥取県
三朝町(みささちょう)

(2)資産の種別

記念工作物,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

三徳山は中央貴族,近世大名等を始め多くの人々が信仰を寄せた山陰の霊峰であり,これに小鹿渓を含めた地域は,景勝地,信仰の場,宗教施設群としての価値が高いだけでなく,「人と自然の調和」という思想が顕在化した信仰の空間として,時代を超えて人と自然との関わりを示す文化的景観の顕著な事例である。

13.萩-日本の近世社会を切り拓いた城下町の顕著な都市遺産

<旧提案名:萩城・城下町及び明治維新関連遺跡群>

(1)所在地

山口県
萩市 山口市 防府市(ほうふし)

(2)資産の種別

記念工作物,建造物群,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

我が国の城下町は,都城と並ぶ東アジアの代表的な都市類型である。萩城下町には自然地形を読み取りつつ計画的に施された町割,土地利用が保持され,その上に町屋や寺社,武家屋敷などが良好に遺存している他,その背景・裏付けとなる動産あるいは無形的要素も継承されている。萩城下町はこれら有形・無形の遺産群が織り成す総合的な価値の体系であり,生きた遺産として受け継がれ,城下町の典型的な空間や景観,生活文化を顕示する都市遺産である。

14.錦帯橋と岩国の町割<旧提案名:変更なし>

(1)所在地

山口県
岩国市

(2)資産の種別

記念工作物,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

錦帯橋は,1673年の創建以来その必要性により,334年間架け替えを繰り返しながら世紀を越えて受け継がれてきた。生活ではなく防御に主眼を置いた特殊な町割と,それが故に生まれた木造アーチ橋,受け継がれてきた架橋技術と景観美等を示す文化遺産である。

15.四国八十八箇所霊場と遍路道<旧提案名:変更なし>

(1)所在地

徳島県
徳島市 鳴門市 小松島市(こまつしまし) 阿南市 吉野川市 阿波市 三好市 勝浦町(かつうらちょう) 神山町(かみやまちょう) 牟岐町(むぎちょう) 美波町(みなみちょう) 海陽町(かいようちょう) 板野町(いたのちょう) 上板町(かみいたちょう) (計14市町)
高知県
高知市 宿毛市(すくもし) 四万十市 安芸市 土佐清水市 須崎市 土佐市 室戸市 南国市(なんこくし) 香南市(こうなんし) 香美市(かみし) 東洋町(とうようちょう) 奈半利町(なはりちょう) 田野町(たのちょう) 安田町(やすだちょう) 芸西村(げいせいむら) 春野町(はるのちょう) 中土佐町(なかとさちょう) 四万十町(しまんとちょう) 大月町(おおつきまち) 三原村 黒潮町(くろしおちょう) (計22市町村)
愛媛県
松山市 今治市 宇和島市 新居浜市 西条市 大洲市(おおずし) 四国中央市  西予市(せいよし) 久万高原町(くまこうげんちょう) 砥部町(とべちょう) 内子町(うちこちょう) 愛南町(あいなんちょう) (計12市町)
香川県
高松市 丸亀市(まるがめし) 坂出市 善通寺市 観音寺市 さぬき市 東かがわ市 三豊市(みとよし) 宇多津町(うたづちょう) 多度津町(たどつちょう) (計10市町)

(2)資産の種別

記念工作物,遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

四国四県の空海ゆかりの札所寺院88箇所を巡る全長約1,400kmの巡礼道であり,地域社会と一体となった遍路文化が数百年にわたって伝承されている,日本の民間巡礼信仰と直接関連する生きた文化遺産であり,17世紀後半に現在の形に定着した。

16.九州・山口の近代化産業遺産群-非西洋世界における近代化の先駆け-

<旧提案名:九州・山口の近代化産業遺産群>

(1)所在地

福岡県
北九州市 大牟田市 飯塚市 田川市
佐賀県
唐津市
長崎県
長崎市
熊本県
荒尾市 宇城市
鹿児島県
鹿児島市
山口県
下関市 萩市

(2)資産の種別

記念工作物,遺跡

(3)資産のコンセプト

植民地化の危機のなかで,九州・山口は,一連の地域として我が国の近代化に先導的役割を果たした。日本は世界史的にも特筆されるべき,非西洋地域で初めての,かつ極めて短期間での飛躍的な近代化を遂げた。非西洋世界において近代化の先駆けをなした経済大国日本の原点を訪ね,語り継いでいく上で,極めて重要な文化遺産群である。象徴的な要素は,(1)自力による近代化,(2)積極的な技術導入,(3)国内外の石炭需要への対応,(4)重工業化への転換の4つである。

17.宗像・沖ノ島と関連遺産群<旧提案名:沖ノ島と関連遺産群>

(1)所在地

福岡県
宗像市 福津市

(2)資産の種別

記念工作物,建造物群,遺跡

(3)資産のコンセプト

「海の正倉院」と呼ばれる沖ノ島には,東アジア最大級の祭祀遺跡,すなわち古代における対外交渉の成就や航海の安全を願って執り行われた国家的祭祀の跡と,太古からの原生林と巨岩群がある。沖ノ島では豊かな自然と遺跡群が共生し,「神宿る島」として人々の信仰や禁忌は現在まで継承されている。日本固有の神道における崇拝形態の変遷を確認できる国内唯一の資産であり,今もなお,人々の中に信仰が脈々と生き続けている遺産である。

18.宇佐・国東-「神仏習合」の原風景-<旧提案名:宇佐・国東八幡文化遺産>

(1)所在地

大分県
中津市 豊後高田市 杵築市(きつきし) 宇佐市 国東市

(2)資産の種別

建造物群,遺跡

(3)資産のコンセプト

神仏習合は日本人の和の精神の基底を形づくる。それはまた日本史上最大級の宗教改革でもあり,宇佐地方と国東半島は神仏習合の根源的聖地といえる。そこには神仏習合の原風景ともいうべき岩屋(いわや)寺院や神社,その信仰や習俗,さらに土地利用形態に至るまで,当時の原形を現代に伝え,今も人と神と仏が対話する「生きている遺産」としての価値を有している。

19.竹富島・波照間島の文化的景観~黒潮に育まれた亜熱帯海域の小島~

<旧提案名:黒潮に育まれた亜熱帯海域の小島「竹富島・波照間島」の文化的景観>

(1)所在地

沖縄県
竹富町(たけとみちょう)

(2)資産の種別

遺跡(文化的景観)

(3)資産のコンセプト

祖先崇拝と自然崇拝のアニミズムが結びついた信仰が息づき,祈りの場(御嶽(うたき)井戸(いど)等)が地域共同体の信仰祭礼行事と共に島のいたるところに分布している。家屋,屋敷地,集落,山林,海岸など,島全体が総合的な信仰体系の宇宙を構成している。海をわたって運ばれ,育まれてきた文化を背景とした有形と無形の生きた文化的伝統を示す極めて価値の高い文化的景観である。

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