別紙2

世界遺産暫定一覧表追加記載のための手続き及び審査基準

文化審議会文化財分科会世界文化遺産特別委員会は,国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界遺産条約」に定める条約の基本精神及び「世界遺産条約履行のための作業指針」(以下「作業指針」という。)に定める定義または基準等に基づき,以下に示すとおり,日本の世界遺産暫定一覧表に文化遺産を追加する場合の手続き及び審査基準を定めた。その際には,ユネスコが採択した各専門家会合の結論及び勧告,並びに国際記念物遺跡会議(イコモス・ICOMOS)注)が採択した各種の憲章・勧告等に示された文化遺産の保護に関する考えにも十分配慮した。この趣旨を踏まえ,審査基準の運用においても同様の配慮を行うこととする。

注)世界遺産条約に定める世界遺産委員会の諮問機関で,各締約国から推薦された文化資産の価値評価をはじめ,登録された文化遺産の保存管理状況等に関し,世界遺産委員会に対して勧告を行う非政府機関。

(1)世界遺産暫定一覧表追加のための手続き

  • 当該審査年度において,定められた期限までに,当該文化資産の所在する都道府県及び市町村が共同で提案書を作成し,文化庁に提出する。
  • また,前年度に文化審議会文化財分科会世界文化遺産特別委員会(以下「委員会」という。)の審査を受け,継続審査案件とされた提案については,前年度からの検討の進捗や提案の修正があれば,これに関する文書を文化庁に提出する。
  • 提案書及び継続審査案件に係る提出書類の書式については別途定める。
  • 委員会は,これら新規の提案及び継続審査案件とされている提案について,委員会の定める審査基準への適合性を審査し,「暫定一覧表追加が適当」なものを選定する。委員会は,選定した後,その旨を文化財分科会に報告し,了承を得る。
  • 委員会の審査の結果,「暫定一覧表追加が適当」とは認められなかったものの,今後,提案者において,提案内容を引き続き検討,改善すること等により,翌年度以降,すべての審査基準の項目の要件を充足する見込みがあると判断される提案については,委員会における「継続審査案件」とすることができる。

(2)世界遺産暫定一覧表追加のための審査基準

当該提案の内容がこの審査基準の各項目の要件をすべて充足すると委員会が認める場合には,当該提案はこの審査基準に適合することとなる。

  1. 当該提案に係る文化資産は,原則として複数の資産で構成され,共通する独特の歴史的・文化的・自然的主題を背景として相互に緊密な関連性を持ち,一定の場・空間に所在する一群の文化財(下記[6]の文化財))であって,総体として世界遺産条約第1条に記す記念工作物,建造物群,遺跡のいずれかに該当するものであること。
  2. 「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」を持つ可能性が高い文化資産であること。
  3. 「作業指針」が示す「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」の評価基準((ⅰ)~(ⅵ))(別添1参照)の一つ以上に該当する可能性が高いと判断される文化資産であること。
  4. 当該提案に係る文化資産が,(個々の構成資産のみならず,総体として),日本のみならず周辺地域の歴史・文化を代表し,独特の形態・性質を示す文化資産であると認められる可能性が高いこと。
  5. 真実性/完全性の保持に関する証明の可能性が高いこと。
  6. 構成資産の候補となる文化財の大半が,国により指定された文化財(国宝若しくは重要文化財又は特別史跡名勝天然記念物若しくは史跡名勝天然記念物に指定され,又は重要文化的景観若しくは重要伝統的建造物群保存地区に選定されているもの)又はその候補としての評価が可能な文化財であること。(原則として,複数の国指定の文化財が含まれていることが必要)
  7. 当該提案に係る文化資産の全体について,保存管理・整備活用に関する考え方(基本的な理念,基本方針等)が示されていること。さらに,包括的な保存管理計画及び個々の構成資産についての保存管理計画注)の策定を行う旨,明言されていること。
    注)特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の保存管理計画,国宝又は重要文化財の保存活用計画,重要文化的景観又は伝統的建造物群保存地区の保存計画を含む。
  8. 上記[7]の保存管理・整備活用に関する考え方の中に,周辺環境とも一体的な保全の方向性が示されていること。さらに,関係地方公共団体が,構成資産と一体を成す周辺環境に係る保全措置の方法を積極的に検討していく旨,明言していること。
上記基準[1]―[8]の基準の該当性を判断するにあたっては,世界遺産委員会が「世界遺産一覧表における不均衡の是正及び代表性・信頼性の確保のための世界戦略(グローバル・ストラテジー)」(平成6年)において示した遺産の価値評価に関する方針(別添2参照)をはじめ,近年の世界遺産委員会における文化資産の価値評価の在り方,登録に係る審査の動向等を考慮すること。
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