文化審議会著作権分科会(第33回)議事録・配布資料

1 日時

平成23年1月25日(火) 10:00~12:00

2 場所

文部科学省旧庁舎6階第2講堂

3 出席者

(委員)
石坂,いではく,大寺,大渕,金原,河村,瀬尾,大楽,辻本,道垣内,土肥,中山,野原,野村,広崎,福王寺,松田,三田,村上,山浦の各委員
(文化庁)
近藤文化庁長官 ほか関係者

4 議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)平成22年度使用教科書等掲載補償金について
    2. (2)平成22年度使用教科用拡大図書複製補償金について
    3. (3)技術的保護手段に関する中間まとめに対する意見募集の結果について
    4. (4)「文化審議会著作権分科会報告書(案)」について
    5. (5)その他
  3. 3 閉会

5 配布資料

資料1
「平成22年度使用教科書等掲載補償金について」関係資料(288KB)
資料2
「平成22年度使用教科用拡大図書複製補償金について」関係資料(420KB)
資料3-1
「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 技術的保護手段に関する中間まとめ
(平成22年12月)」に対する意見募集の結果概要
(376KB)
資料3-2
「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 技術的保護手段に関する中間まとめ
(平成22年12月)」に対する意見募集の結果
(2.54MB)
資料4-1
文化審議会著作権分科会報告書(案)概要(972KB)
資料4-2
文化審議会著作権分科会報告書(案)(0.99MB)
参考資料1
第10期文化審議会著作権分科会委員名簿(156KB)
参考資料2
大林委員意見書(128KB)

6 議事内容

  • ○ 平成22年度使用教科書等掲載補償金について
    使用料部会長及び事務局より説明があり,諮問案のとおり議決された。
  • ○ 平成22年度使用教科用拡大図書複製補償金について
    使用料部会長及び事務局より説明があり,諮問案のとおり議決された。

以上の議事については,文化審議会著作権分科会の議事の公開について(平成22年2月15日文化審議会著作権分科会分科会決定)その1(2)に基づいて非公開とし,同決定の6及び7に基づき議事要旨を作成し,公開することとする。

【野村分科会長】
 それでは3の議題に入りたいと思います。
 まず技術的保護手段に関する中間まとめに対する意見募集の結果概要につきまして,事務局より御報告をお願いいたします。
【壹貫田課長補佐】
 それでは資料3-1に基づきまして,技術的保護手段に関する中間まとめに対する意見募集の結果概要について,御報告いたします。
 まず意見募集の実施期間や,お寄せいただいた団体・個人等の総数などにつきましては,箱書きの中にあるとおりでございます。
 次に,主な意見の概要について紹介いたしますが,時間の関係もございますので,同様の内容につき複数の御意見が寄せられたものを中心に簡単に紹介させていただければと思います。
 4ページをお開きください。今般の技術的保護手段の見直しに当たっての基本的考え方に関しましては,中間まとめの整理は保護技術の実態に即した適切な考え方であり賛成であるとする御意見が複数ございました。一方で,著作物の違法流通は,今ある法的な権利を適切に行使すれば相当程度抑止することが可能であるといった御意見もございました。
 また,[3]のアクセスコントロール機能のみを有していると評価される保護技術につきましては,今回の見直しに当たって対象としないことに賛成であるとの御意見があった一方で,クラウドサービスといったビジネスを可能とするアクセスコントロール技術についても規制対象として検討すべきであるといった御意見がございました。
 次に5ページでございますが,音楽・映像用の保護技術と実態とその評価のところで,[1]の暗号型技術に関する御意見として,アクセスコントロール機能とコピーコントロール機能をあわせ有するものと評価している中間まとめの整理は,実態に即しており適切であるとする御意見がございました。一方で,中間まとめの整理では,ライセンス契約が法と同等の力を持つことになり問題であるといった御意見を頂いてございます。
 次に6ページでございますが,ゲーム機・ゲームソフト用の保護技術の実態とその評価に関する御意見といたしまして,いわゆるマジコン規制については当然のことであり賛成であるとする御意見があった一方で,自主製作ソフトと海賊版ソフトを見分けることができない仕組みを保護することにより,本来著作権法により権利保護が及ばない部分を巻き添えにすることのないようにするべきであるといった御趣旨の御意見を頂いてございます。
 同じページの第2節3(3)のまとめに関する御意見として,複製の防止を行っていない場合まで技術的保護手段の対象とすることは,結果として著作権保護に名をかりたプラットフォーム保護という弊害が生じるため妥当ではないといった御意見を頂いてございます。
 次に,少し飛んで恐縮でございますけれども,10ページ目を御覧ください。ここでは権利制限規定との関係に関する御意見が種々寄せられております。例えば,バックアップ目的の複製の場合には私的複製を認めてほしいとの御意見や,DVDやブルーレイディスクを購入しても,それらをポータブルデバイスに複製することができなくなり,私的な利用が阻害されることになるから反対であるとの御意見,さらには家庭内で行われる私的複製については,そもそも行為の把握のしようがなく,無理に規制しようとすると弊害が大きいといった御意見がございました。
 またそのほかにも,障害者が必要とする方式に変換するための複製は必要であり,障害者のアクセス確保を目的とした利用については保護手段の回避が可能となる制度設計を求めるといった御意見がございました。
 最後に,11ページでございますが,報告書本体以外のそのほかの主な意見といたしましては,著作権法の可及的速やかな改正及び施行を希望するとする御意見があった一方で,さらなるヒアリング等が行われることを望むといった御意見や,不正競争防止法とは別個に著作権法改正の必要性について検討すべきであるといった御意見がございました。
 以上,中間まとめに対する意見募集の結果概要について,主なものを簡単ではございますが,御紹介させていただきました。時間の関係上,ただいま御紹介できなかった御意見につきましては,後ほど資料の方を御覧いただければと思います。
 なお,資料3-2は寄せられた御意見をそのまままとめて整理してございますので,あわせて御確認いただければと思います。結果概要報告は以上でございます。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。それでは恐縮ですけれども,ここでテレビカメラの方は退出をお願いいたします。
 それではただいま御説明いただきました意見募集の結果報告を踏まえまして,御意見,御紹介がございましたら,お願いいたします。
 どうぞ。
【辻本委員】
 辻本でございます。今回,ゲームソフト初め,ほとんどのコンテンツがデジタル化されネットワークを通じて利用されるようになったことで,様々な問題,課題が表出してきていることから,権利そのものや権利保護の在り方は新たな局面を迎えているということを改めて認識をしたわけでございます。このような状況下で今般,多くの難しい課題を正面から検討され,解決に向けて御尽力を頂きました委員の皆様,及び部会長の皆様に対して,感謝と慰労の意をあらわしたいと思います。
 報告書をもとに立法化を進めることになろうと思いますが,権利者,利用者それぞれの立場がございますので,課題ごとに喜ばしい点,また懸念をされている点,それぞれございます。私どもといたしましては,報告書の終わりに記述されていますように,それぞれの懸念の点に十分留意をした上で条文化を進めていただき,施行されてからも法の運用状況を適切善処いただきつつ,必要に応じて適宜の見直しをお願いしたく存ずる次第でございます。
 以上でございます。
【野村分科会長】
 この技術的保護手段に関する中間まとめに対する意見募集について何かございますでしょうか。特によろしいでしょうか。
 よろしければ,次の議題に移りたいと思いますが,次は著作権分科会報告書案についてということでございます。
 それぞれ小委員会ごとにまとめてございますので,最初に一昨年の3月以降,各小委員会におきましては,それぞれの分野において精力的に御検討いただいてまいりましたけれども,本日は今期の当分科会の最後の会議となりますので,各小委員会における検討結果について,それぞれの主査よりまとめて御報告を頂いた後,御議論を頂きたいと思います。なお,各小委員会の主査の方から御報告いただいた後,事務局から補足の御説明を頂きたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,まず基本問題小委員会の検討結果につきまして,主査である私の方から御報告をさせていただきたいと思います。
 資料4-1を御覧いただきたいと思いますが,これは前回の分科会で既に御報告しているところから特段の修正はございませんので,簡単に報告をさせていただきます。報告書案の資料4-1の1ページを御覧いただきます。
 ここでは,検討の経緯とデジタル・ネットワーク社会に対する認識,評価について記述してございます。詳細は資料にあるとおりですけれども,本小委員会ではデジタル・ネットワーク社会におけるデジタル・ネットワーク技術の進展が著作権制度との関係性において,社会にもたらす変容についてまとめております。具体的には下の方の[1]から[5]に掲げられているとおりでございますので,後ほど御覧いただければと思います。
 次に2ページに写っていただいて,2ページ目では著作権制度の果たす役割と今後の検討が必要な関連施策に係る課題について記述してございます。ポイントだけ申し上げますと,コンテンツの創造,保護,活用の基盤となる著作権制度の役割は今後も重要であるとされている一方で,同時に利用者の利便性を図るべく必要な制度の見直しを図っていくことが必要であるとされております。また,具体的な検討課題といたしましては,大きくデジタル・ネットワーク社会に対応した著作権システムの構築,著作権に係る教育及び普及・啓発,著作権法制上の引き続きの重要課題など,3つに分けて整理しております。それぞれの具体的な内容につきましては,恐縮でございますが,これも資料の方を後ほど御覧いただければと思います。
 簡単ではございますけれども,私の方からは以上でございます。
 これにつきまして,御発言ございましたら,後ほどまとめてお伺いいたしますので,引き続き法制問題小委員会の検討結果につきまして,土肥主査より御報告を頂きたいと思います。
【土肥委員】
 それでは,御報告申し上げます。法制問題小委員会において,平成21年度,22年度の検討の結果を取りまとめたわけでございます。法制問題小委員会では,一昨年の5月以来,権利制限の一般規定や技術的保護手段の見直しを中心に検討を進めてまいりました。また契約・利用ワーキングチーム,及び司法救済ワーキングチームにおいても,それぞれ検討を行いました。
 結果を簡単に御報告いたします。まず,権利制限の一般規定についてでございますが,これは昨年12月,先月の本分科会において小委員会の最終まとめで御報告させていただいたとおりでございます。先ほどの資料4-1の4ページを御覧ください。導入の必要性につきましては,個別規定による対応の限界,利用者に対する萎縮(いしゅく)効果の軽減等の点から必要性は認められるというふうにしております。
 1枚めくって5ページでございますけれども,権利制限の一般規定の対象とすべき利用行為につきましては,A,B,Cの3つを掲げております。Aは,写真や映像の撮影に伴ういわゆる写り込みのような,他(ほか)の行為に付随的に生ずる利用,Bは著作物の適法な利用を達成しようとする過程において,合理的に必要と認められる利用,Cは技術の開発や検証のために著作物を素材として利用する,そういった利用のように,著作物の表現の知覚を通じてその表現を享受することを目的としない利用としております。
 なお,条文化する場合の課題といたしましては,7ページにございますようにスリーステップテストに係る判断基準や,明確性の原則に十分留意することなどが求められております。
 次に,技術的保護手段の見直しについて御報告いたします。9ページを御覧ください。まず,ファイル共有ソフト等により違法利用が常態化する中で保護技術が必要不可欠となっている一方,原稿の整理では信号賦課方式のコピーコントロール技術のみが対象となっておりますこと,こうした中,ネット上の違法流通によりコンテンツ業界に多大な被害が生じており,「知財計画2010」等においてアクセスコントロール等の回避規制が求められていることなどを記述してございます。
 次のページ,10ページでは,技術的保護手段の見直し等について検討いたしました結果,CSS等の暗号型技術は社会的にどのように機能しているのか,そういった観点から見ますと,コピーコントロールを機能させるために用いられていると評価できること,またゲーム機・ゲームソフト用の保護技術についても,アップロードの際に生ずる違法な複製等を抑止する意図で当該保護技術が用いられていると評価できることから,これらの技術を技術的保護手段の対象とすることが適当である,このように記述してございます。
 このことを踏まえまして,11ページでございますが,法技術の実態や新しい評価を踏まえた関係規定の見直しが必要であること,また回避規制及び回避行為規制ともに現行法と同様の規制とすることが適当であることなどについて記述してございます。
 技術的保護手段については,以上でございます。恐縮でございますけれども,詳細は資料の方を後ほど御覧いただければと存じます。
 なお,法制問題小委員会における御議論等を踏まえ,中間まとめから若干記述を修正しておりますので,この点については,後ほど事務局から補足説明をしていただければと思っております。
 それから,報告書案の方の90ページ以下でございますけれども,概要の方では省略しておりますので90ページ以下を御覧いただければと思っております。
 まず,公文書管理法に関する権利制限につきましては,平成21年度に成立した公文書管理法において国立公文書館等の長(おさ)に課されている義務を円滑に履行し,公文書管理法を円滑に運用するために必要な権利制限規定を置くことが適当としております。
 それから100ページ以下でございますけれども,いわゆる間接侵害に係る課題につきましては,近年の情報通信技術の発展に伴う状況の変化を踏まえ,新しい制度設計の在り方についての論点整理を行っております。今後は,関連する最高裁判決の内容の分析等も踏まえ,引き続き検討が行われる予定でございます。
 それから最後に102ページ以下でございますけれども,ネット上の複数者による創作に係る課題については,ネット上の複数者による創作の類型について法的な整理を行うとともに,主に権利処理ルールの明確化という観点から契約による対応可能性について検討を実施しております。今後は引き続き,主として権利処理ルールの明確化という観点から総合的な検討を行う予定でございます。
 私からは以上でございますので,事務局から技術的保護手段の見直しに係る記述の修正点についての説明等をお願いいたします。
【壹貫田課長補佐】
 それでは事務局より補足説明をさせていただきます。資料4-2の83ページを御覧ください。
 83ページの2の最後の段落でございますけれども,ここで自主製作ソフトに係る記述を追加してございます。具体的にはそこにある記述のとおりでございますが,ここではゲーム機・ゲームソフト用の保護技術に関しまして,自主製作ソフトを使用する場合はあるものの,規制の必要性の高さや実効性の確保の観点から,規制そのものに例外を設けるのではなく,法の適用に当たって当該回避装置等が社会実態上どのように用いられているか等を総合的に勘案して判断するものと考えている旨記述してございます。
 また,次に88ページの「おわりに」を御覧ください。ここでは,特に最後の段落において,今後,立法措置を講じていくに当たっては,保護技術とその回避の実態や明確性の原則等にも十分配慮しつつ検討作業を行う必要があること。障害者への情報アクセスの確保など制度の適切な運用を図るとともに,社会的実態等を踏まえつつ,時宜に応じて必要な見直しを行う必要があることについて追加して記述してございます。
 事務局からの補足説明は以上でございます。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは続きまして,国際小委員会の検討結果について道垣内主査より御報告を頂きたいと思います。
【道垣内委員】
 国際小委員会の報告をいたします。資料4-2の報告書案では103ページ以下に詳細な記述がございますが,ここでは資料4-1の12ページ以下に基づきまして御報告申し上げます。
 今期の国際小委員会では幾つかの課題の中で,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応について検討を行ってまいりました。日本の生み出すコンテンツは世界的に人気があるものが少なくありませんで,その海賊版がネット化によって瞬時に国境を越えて流通するようになっております。そのため,日本のアーチスト及びコンテンツ産業に対する被害は深刻化しているという認識でございます。
 このような状況下において,国際小委員会では,各国の法制度のもとで具体的にどのような障害に直面しているのか,その実態把握は困難なのですが,その実態をできる限り調査し,かつ,各国で近時行われている新たな法的な取組―特にいわゆるスリーストライク制度と言われるものについての比較法的な調査をいたしました。
 ビジネス上の障害と申しますのは,資料12ページの(2)のところに書いてあるのでございますけれども,海外でのビジネス展開に際しまして,例えば中国では外国映画の上映可能本数が総量規制のもとに置かれております。また,テレビ放映につきましてもゴールデンタイムには外国アニメーションの放映はしないという扱いのようでございます。
 次の侵害実態の把握が困難という点につきましては,どれほどの経済的な損害が生じているのかという実態把握が非常に困難な状況にあるということであります。最近は,後からも申しますが,違法サイトへのアクセスを導くリーチサイトと言われるものも多々ございまして,それが違法コンテンツの流通を更に増やしているわけでございますけれども,それらのことによる実際の損害の大きさというのはよくわからない状況にあります。
 そのため3段目ですけれども,一企業でそれらの違法なコンテンツの流通の状況を調査し,個別に削除要請を行っていくということは,効果が必ずしも明らかではありませんし費用が相当高いということで,非常に困難があるということございます。
 更に4番目,権利帰属証明の問題というので,それが削除要請の手続を困難にしているという実態があるようです。これについても恐縮ですが中国の例を申し上げますと,動画投稿サイトへの削除要請の場合,要請者が権利者であることを認めてもらうには,身分証明書,法人証明書,及び権利帰属証明書等が必要とされておりまして,音楽コンテンツについては日本では日本レコード協会がその権利の認証をするという体制になっておりまして,まだ可能な状態にございますけれども,音楽コンテンツ以外のコンテンツにつきましては日本国内に権利の帰属を証明する機関として,中国が認める機関がないということでございまして,そもそも第一歩のところが難しいという状況にございます。
 更に最後の削除要請先が不明という点につきましては,スマートフォンアプリや,先ほど申しましたリーチサイトによって,実際に運営している当事者と権利を侵害している当事者が分離しているという状態が起きておりまして,対応が非常に困難になっているということでございます。このような状況において,各国の国内法において問題となる点があれば,それを改善してもらうという二か国間協議が必要で,その対象先を広げていくということとともに,一企業での対応は困難ということに対しましては,コンテンツ海外流通促進機構などの団体に対して必要な支援ができるのであれば,それをしていくということでまとまった対応をしていくことを促進してはどうかという議論がございました。
 各国の法制度,すなわち,3番の(3)でございますけれども,いわゆる「スリーストライク制度」についてであります。この制度は,違法な状態が発見され,それに対して2度,3度と警告をし,3度目の警告がされた段階でインターネットへの接続を遮断するという制度でございます。この制度は,特に韓国ではうまくいっているようでございますが,しかし前提となる法制度がやや違うという点(発信者が特定できるという点)があるようでございます。そのほか幾つかの国で同様な法制度を整備しようとしているようでございます。
 こういった各国の法制度の動向に注目,注視し,今後しかるべき場において広い,更に広い観点から検討されていくべき課題であろうと思われます。日本での導入の検討については法制問題検討ということになりますので,国際小委員会の管轄事項ではないところかもしれませんけれども,そのような検討が必要だろうと思います。また,国際的な条約づくりに反映させるということも考えられるところでございます。
 13ページでございますが,13ページは国際的な議論の動向について状況を把握しつつ,適宜対応するという課題についての御報告でございます。
 中心になりますWIPOにおきましては,放送条約,視聴覚的実演条約が行き詰まっているわけでございますが,これについて早期合意に向けて引き続き検討していくという必要があると考えられます。また権利制限や例外についての議論も国際的な場でも行われております。
 その他,日本で特に関心があると思われるのはACTA(模倣品・海賊版拡散防止条約)であります。昨年のうちに交渉は妥結をいたしまして,今後,日本の批准,あるいは更に加盟の拡大という働きかけが必要だろうということが議論されました。
 最後に二国間の協議とか,これは従来どおりしていく必要がございますけれども,更に対象国を広げ,更に国際化のネットワークにつながるような議論をしていくという必要があろうかということでございます。
 以上でございます。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは最後に事務局より報告書案について補足の御説明をお願いいたします。
【吉田文化庁次長】
 それでは私の方から事務局側といたしまして,今般の報告書案に関する補足の御説明を申し上げたいと思います。
 お手元の報告書案117ページに,この分科会全体の審議のまとめというような形で,「おわりに」という文章を追加しております。これは今般,この分科会の報告書案の取りまとめに当たりましては,委員の皆様方に並々ならぬ御尽力を頂いたことでございますけれども,特に権利制限の一般規定の関係につきまして,これまでの議論の中では種々,様々な御懸念が示されたところでございます。これはこの権利制限の一般規定が我が国に新たな制度を導入するという,そういう性格上,そのような制度導入に当たっての御懸念が示されたというふうに認識しております。
 そういったことを受けまして,この報告書案の「おわりに」の2段落目,なお書きのところでございますけれども,この関係で権利制限の一般規定に関しまして,例えば立法措置を講ずるに当たっては,導入により実質的に権利保護に欠ける制度になることのないよう,あるいは利用者に混乱が生じないよう明確性の原則,あるいはスリーステップテスト,こういった原則に十分に留意することが求められるという記述をしております。
 また更に同様の観点から立法措置を講じた後も,その趣旨や内容,特に権利制限の一般規定によっても権利者の利益を不当に害するような,そういった著作物の利用行為は権利制限の対象とはならないということにつきまして十分な周知を図ること,またその後,適宜運用状況につきまして検証を行うことなどが強く求められる,こういった記述を盛り込んでいるところでございます。
 本日,この点につきましても御審議いただき,御了解いただければ,文化庁といたしまして,この報告書を真摯(しんし)に受けとめ,今後の法案化などの作業に入ってまいりたいと思いますけれども,その際,次の4点について十分に留意をした上で進めてまいりたいと考えております。
 まず,第1点は,法案化に当たりまして,これまで頂いた御意見を十分に考慮するとともに,条文の在り方などにつきましても,必要に応じ,関係者の御意見を十分聞くなど,慎重に作業を進めてまいりたいと考えております。
 第2に,一般規定という性質上,これまでの個別規定に比べれば,ある程度抽象的な規定とならざるを得ないということが考えられるわけでございますけれども,これをガイドラインというか解釈指針と呼ぶかは別といたしまして,例えば規定の趣旨や一般規定が適用されないと考えられる典型的な事例等につきまして,文化庁として一定の考え方を整理いたしまして,こういった考え方の周知に努めること,また必要に応じて,関連の関係者の協議の場を設定をするということなどにつきましても積極的に寄与してまいりたいと考えております。
 また第3に,こういった権利者と利用者の利害調整にかかわりますような,様々な著作権法上の課題が今後も生ずることが想定されるわけでございます。権利制限の一般規定のみによって解決するということは困難な事例も考えられるわけでございます。したがいまして,今後も法改正後の規定の運用状況や社会的な実態などを踏まえまして,必要に応じて個別規定の新設などについても検討してまいりたいというふうに考えております。
 それから第4の点でございますが,これは権利処理の集中機関などの課金システムの構築が図られ,その中で権利処理,課金が行われた上で著作物等が利用される場合には,そのような利用行為は権利制限の一般規定の対象とならないと考えておりまして,その旨の周知等を図ってまいりたいと考えております。
 今,4点ほど,この報告を受けた後の対応について,私どもの考え方を述べさせていただきました。いずれにしましても文化庁としては,権利者と利用者の利益のバランスなどに十分配慮した著作権制度の運用等に努めて考えております。
 最後に,本日この報告書案を認めていただけました場合には,今後文化庁として,この報告書に基づき,立法準備を進めてまいりたいと考えておりますけれども,その際にはただいま御説明申し上げたとおり,頂いた御懸念等にも十分留意して作業を進めてまいりたいというふうに考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。私からは以上でございます。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,各小委員会より御報告いただきまして,最後にこれまでの分科会の御発言等を踏まえて,吉田次長から御説明も頂きました。そこで,残りの時間で,報告書案の全体について,いろいろ御意見がございましたらお願いしたいと思います。
【中山副分科会長】
 一つ,確認的にお伺いしておきたいんですけれども,権利の一般制限規定についてです。
 ここの類型Cについてですけれども,かなり内容が漠然としているので確認的にお伺いしたいんですけれども,検索エンジンにつきましては47条の6でも規定してあります。仮にこの規定がなければ,これはC類型に含まれるようなものなのでしょうか。
【永山著作権課長】
 基本的に検索エンジンサービスと言われているものについてはC類型に含まれると。これは前の分科会でも御報告させていただいたとおりだと思います。
【中山副分科会長】
 そういたしますと,今の47条の6というのは,検索エンジンの専門家に聞いてみますと,かなり古いビジネスモデルを前提としていて,これから業を起こそうとするものはあんなものはやらないと。
 私なんかは素人だからわかりませんけれども,「求めに応じて」という規定がありますが,例えばプッシュ型のようなものは含まれない。そういうものは47条の6には含まれないけれどもC類型には含まれる可能性はあると,こういうことでよろしいでしょうか。
【永山著作権課長】
 最終的にどう整理されるかは具体的なサービスの内容によりますが,今の検索エンジン,要は個別規定に該当しないものであっても,かなり厳密にやられておりますので,多少その延長線にあるものについては含まれるというふうに考えております。
【野村分科会長】
 それでは石坂委員,どうぞ。
【石坂委員】
 ただいまの吉田次長の御意見に十分に賛成した上で,日本レコード協会として一つの意見を申し述べさせていただきます。
 権利制限の一般規定を導入する場合には,以下の3点についての取組をお願いしたいと思います。
 1,日本は諸外国に比べ,判例の蓄積がないので,混乱を防止するため,条文の要件を可能な限り明確にしていただきたい。
 2,条文の趣旨を国民に周知させることをお願いしたいと思います。
 3番目,居直り侵害者が蔓延(まんえん)する懸念がありますので,権利者の権利行使のための負担を軽減するために,法定損害賠償制度の導入について,引き続き是非検討していただきたいと思います。
 以上の3点です。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。ほかに御発言ないでしょうか。
 松田委員,どうぞ。
【松田委員】
 今回の報告書案はここ数年,いや,もっと近く,ここ2,3年といった方がいいと思いますが,極めて所々において議論されてきたものを最終的に審議会として取りまとめられるところに来たということになるだろうと思います。近年起こったことというのは,もう間違いなく,コンテンツ流通を促進するための方策をどうしたらいいだろうかということをみんなが考え始めた。そしてその方向性については,多分,どんな意見を持った人も方向を向いているだろうというふうに思うわけであります。
 そして,この意見にまとまるということになりまして,しかしながら,利用者が新しいビジネスモデルをつくった時に,即役立って,どんどんそれが著作権法上の検討なしに,著作権法との調整なしにどんどんできるというような法改正には至っていないことは間違いないだろうというふうに思います。これが言ってみれば,法制小委員会の最終的な結論として基本問題小委員会と,それから法制小委員会で提示し意見をまとめたところなんだろうと思います。
 しかし,この状況におきましても,やっぱりコンテンツ流通を促進しないといけないんだということは最初のテーマとして変わっていないんだろうと私は思います。それにつきましては,基本問題小委員会のところで資料4-1で言います2ページで整理されているところのデジタル・ネットワーク社会に対応した著作権システムの構築が更に必要なんだというふうに示されているところであります。
 そのうちの○がついている2番目になりますが,利用に係る新たなルールの構築というものを検討していきましょうということをやる。これはもちろん今回の案を前提とした上で,なおかつ新しいルールを構築するということに当然なるんだろうと思います。権利の集中管理の促進,それから契約の在り方,意思表示システムの構築,こういうことが多分きょうの案を補完してネットワーク社会を促進する,こういうことになっていくんだろうというふうに思われます。
 たまたまでありますけれども,この報告書が進行するのと同時に,今年の1月になりまして,最高裁がテレビ番組のコピー送信サービスに関する判断をいたしました。これはある意味で極(きわ)めて,この報告書をタイミング的には興味のあるところになるわけでありまして,言ってみますと,従前の著作権法上の適用をどこで複製が行われているのか,どこで送信が行われているのかということを認定していくという考え方を最高裁が示していて,ある意味で非常に私はわかりやすいものだろうというふうに思っています。
 そうなりますと,そういう最高裁の判断も含めますと,それでいいんだというふうにとどまっては,私はいけないだと思うんです。これは問題提起されたことを,最初に問題提起されたところも同様でありまして,それを前提として,なおかつ,更にネットワークを介したコンテンツの流通促進を図っていかなければならないということでありますので,この2ページの今言いました3つの新しいルールの構築に関する意識を更に促進していかなければならないというふうに私は考えています。是非,この部分についての審議が更に進みますように,文化庁においても比較を検討していただきたいというふうに考える次第です。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。ほかに御発言いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 ではまず,瀬尾委員,その後,河村委員,お願いします。
【瀬尾委員】
 これは全般でよろしいでしょうか。国際も含めて。
 一般規定に関していろいろなことが,そのものについては先ほどの次長からのきちんとした御説明も頂いて,かなり安心したところがあります。ただ,前にオークションにかかわる権利制限の場合に「等」という,「ネットオークション等」という一語が入ったために非常にその後の運用が難しくなった,又は規定なり何なりを相当考えこまなきゃならなくなっている経緯がございますので,あえて条文について,これは大林委員も懸念するところでありましょうけれども,是非慎重に,またかつ誤りがないような運用ができる条文をお願いしたいというのが一つございます。
 あともう一つ全般的なことなんですけれども,今回の国際小委員会のことにも関連しますけれども,基本的にインターネット上の侵害を食いとめるに当たって,個人がやはり匿名性が高いということが基本的な問題にあると思います。例えば韓国のように住民基本台帳と結びつくような,きちんとした特定の仕方ということ―これはプラスとマイナスがあると思いますけれども,やはりそういう対象を限定してきちんと国として管理するという方向性について,是非も含めて検討していく時期にきているんじゃないかなというふうなことを考えます。それによって各国がそういうことを整備していかないと,やはり侵害になったときに,プロバイダーだけが責任を負うということではなくて,国としての,もう一歩踏み込んだことが必要ではないかなということを感じました。
 それからもう一つは,やはり裁判,調停に関することなんですが,今まではきちんとした取引,侵害や何かの場合じゃなくても,契約を促進するとはいっても,そこにきちんとした組織,機関,仕組みを提案していなかったし,民間でできてはいますけれども,もっと積極的な取組が欲しいのではないかと思います。つまり,中間的に契約を取り持つとか,若しくは契約のトラブルを調停するとか―これは前に申しましたADR法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)に基づくような組織の性格と,それからデータベースのようなものが複合されたものかもしれませんけれども,匿名な人たちを特定したり,紛争にならないように,そして紛争になっても結構おだやかな状態で解決できるような仕組みというか組織というか,そういうようなものを提案しないと,何かいたちごっこになっていくような気がいたします。
 全体的にかなり世の中がコンテンツの流通と言っているよりも,もう現実に進む時代になってきています。そして電子書籍の時代になったときには,非常に小さなコンテンツが大量に出回る時代がかなり身近に想定されています。とすると,それに対応することをできるだけ早く検討していかないと,一度大量にコンテンツが出回ってしまった場合に,それに対してふぐあいが出ても,後でとりとめようがない。非常にがけっ縁のような状況というのが,著作権を取りまく環境の中にあるのではないかなと思っています。
 ですので,今回,一般規定ということ,その他いろいろな議論,技術的保護手段にしてもそうですが,ございましたが,そこからより一歩,現実的かつ実効性のある議論を続けて,是非行っていただきたいというふうに思います。かなり状況的な認識というのが,審議会の進行のレベルとちょっと乖離(かいり)してきているような心配がございますので,ほかの会議でもございますけれども,是非時代に即した著作権法の進行になることを祈っているというふうに思います。
 以上,意見です。
【野村分科会長】
 それでは河村委員。
【河村委員】
 技術的保護手段の見直しのところなんですけれども,先ほど事務局の方の御説明で83ページの「自主製作ソフトを使用する場合があるが」というところを,そこを読み上げていただいたわけですけれども,そこに規制の必要性の高さや実効性の確保の観点から,基本的に規制そのものに例外を設けるのではなく適用に当たってと,運用でというようなことが書いてあり,ここではゲーム機・ゲーム用自主製作ソフトというふうに書いてありますが,それももちろん含めて,権利侵害を行っていないユーザーの様々な行為,それが規制される可能性が,今回のこの報告書の考え方によって生まれることになります。もともと著作権法上,ユーザーや消費者に合法的に許されていることというのは大変少なくて狭い範囲しかありません。ですからほとんど何もかもが違法な行為となるわけですが,その中にグレーな部分や,限りなく白いものがまざっているという状態があるというふうに認識しております。
 これまでの,いろいろな方の御意見の中にも,将来に新しい技術ですとか新しい文化,コンテンツを生み出す人たちの行為がなるべく,自由に合法的にできるように,規制の在り方を具体的につくっていくときには最大限考慮していただきたいというふうに考えています。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。ほかに御発言いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは,まず福王寺委員,その後,広崎委員,それから山浦委員,お願いします。
【福王寺委員】
 美術家連盟の福王寺です。
 今,文化庁の方からの報告を聞きまして,安心した面もあるんですけれども,前回の分科会で申し上げたことと重なるんですけれども,2009年度に美術に関する関係者協議会というのを文化庁の著作権課の音頭で開いていただきました。これが大変有意義なもので,先ほど瀬尾委員の方からもお話がありました通り,インターネットオークション等の中に普通のオークションカタログも入るということを後から聞いたということで,その協議会を立ち上げていただいた経緯があったんですけれども,今回この条文ができてくると思うんですが,それは瀬尾委員と同じなんですけれども,その中で気をつけていただきたいということと,美術の中で,そういった協議会をいつごろから開いていただけるものなのか,それをお聞きしたいというふうに思います。
【永山著作権課長】
 先ほど文化庁次長から,権利制限一般規定に関連いたしまして,今後の立法作業に当たりまして,法案化の段階では配慮しなければいけない事項と,またその運用という観点から,解釈指針のようなものをきちんと示す,また,関係者間の協議の場を設定するということについて積極的に協力していきたいということで,発言をいたしました。
 今の御指摘の協議の場についてですが,一般規定以外のことも含めてということかと思います。そういう必要性については,当然先ほど次長から申し上げたように,一般規定の問題に限らず,私どもとしては積極的に対応していきたいというふうに考えております。具体的にいつかというのは,また御相談させていただきたいと思います。
【野村分科会長】
 それでは広崎委員,どうぞ。
【広崎委員】
 特に法制問題委員会を中心に,全般的にバランスが非常に難しい問題に対して,今回の報告書でかなりのことまで踏み込んでまとめていただいたということに対しまして,我々経団連としても大変高く評価しております。本当にありがとうございます。
 先ほどもちょっと御指摘であったんですけれども,今後ますますこのデジタル・ネットワークの形態,これは変わっていくだろうと思われます。例えば現在,大変大きな潮流になりつつあるクラウドですね。こういったものが出てまいりますと簡単に国境を越えてしまう。権利者と利用者が全く違うロケーションになる,あるいはサイト引用も非常に複雑になるといったことがございます。
 そういった観点から申しますと,従来の議論でともすれば法的基盤,この著作権に関する法的基盤というのは,かなり固定的に動かないというふうに思われていたものが,こうやって大変権利者側,それから利用者側の熱心な議論の結果,ある意味では地殻変動と言うとちょっと言い過ぎですけれども,少し流動性を持ってきたというのは,私は日本にとって大きな意義を持っているというふうに思います。
 したがって,これを大きな第一歩として,今後も予想されるクラウド,あるいはその次の時代の情報システムと,更にそれに付随するビジネスモデルですね。この変化に対して,日本全体が柔軟に対応できる体制を法的にも技術的にもつくっていくべきだと思っておりますので,先ほどの河村委員の御要望とあわせて,我々産業界からも要望とさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございます。それでは山浦委員。
【山浦委員】
 新聞協会の山浦と申します。
 先ほど吉田次長から,今後の文化庁としての対応についてのお話がございましたけれども,ここで改めて申し上げたいと思います。これまで,事務局及び各小委員会の委員の皆様方の御検討,つぶさに拝聴してまいりましたけれども,改めて敬意を表したいと思います。
 前回の著作権分科会で私から1点目,ベルヌ条約のスリーステップテストに抵触することがないようにというようなことをはじめとして,仮にこの権利制限の一般規定が導入された場合に懸念される留意点というようなことで3点ほど申し上げました。スリーステップテスト以外には,裁判で最終的に一般規定が適用されることが確定したものについては個別規定を新設していただきたいという点,それから権利処理の課金システムが整理されていない部分でも今後,課金システムの構築された場合にはその中で権利処理,課金を行えるような環境を整備すべきであり,この対象行為が一般規定の対象にならないように明確にすべきだというような点,計3点を申し上げましたけれども,1点目のスリーステップテストについては,報告書の「おわりに」に盛り込まれ,それから個別規定へのフィードバック,課金システムについては先ほどの次長のお言葉でございましたけれども,本来であれば,こういったことについても報告書の中に是非触れていただきたかったというのが私の気持ちでございます。
 それから,これまでの法制小委の議論をずっと拝聴してまいりましたけれども,かなり早い段階で一般規定の導入を前提とする方向性が打ち出されたということがございました。これまでの議論で,一般規定の導入が必要なのかどうかというところも含めて,前回の分科会等々でも立法事実の問題含めて申し上げましたけれども,本当に必要なのかというところをもう一度立ち返ってお考えいただいてもいいんじゃないかという気がしております。形式的侵害等々,著作権法上,様々な問題があることは重々承知しておりますし,毎日のように著作権侵害が行われて,我々の新聞社でもサイトからの我が社の情報の削除,場合によっては損害賠償も求めたりしております。こういった諸問題を解決していかなければいけないということについて,国民的なコンセンサスが形成されましたら,それは尊重したいと思いますけれども,まず一般規定ありきということでの議論ではなくて,これは個別規定でも対応できるんじゃないか,あるいは例えば3類型の1つ,B類型については,黙示の許諾でも対応できるんじゃないか。あるいは場合によっては契約で処理できるというような問題もあると思います。ですから,まず一般規定ありきという議論ではなくて,改めてゼロベースでこういったことについても考え直していただきたい。それでどうしても一般規定が必要だという国民的なコンセンサスができるなら,それについては我々が異議を差し挟むものではございません。
 今後,条文化に際して,明確性の原則等々,十分に慎重な議論を重ねていただきまして,一般規定といっても国民のだれもがわかる,理解できる状態に持っていっていただきたい。先ほどガイドライン等々のお話もございましたけれども,こちらも精緻(せいち)なものをつくっていただきたいというふうに考えております。その中でもし必要ならば個別規定で対応していただくのもよろしいかと思います。
 これまで,2年間委員をしてまいりましたけれども,改めて関係者の御労苦に敬意を表したいと,以上でございます。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございます。
 それでは野原委員,どうぞ。
【野原委員】
 いろいろな委員から今回の一般規定の考え方の導入について支持の声も,不賛成の声もあるわけですけれども,私自身は当初,米国版フェアユースの考え方を併記して検討が始まったと認識しています。関係者の方々に大変な努力をしていただいて,大きな一歩を踏み出したとはいえ,今回の日本で決めた一般規定というのは,十分なものとは言えず,非常に小さな一歩だったと思います。
 先ほど瀬尾委員,河村委員,広崎委員からも御意見がありましたように,ITの変化の速度は非常に大きいので,これで一段落ということでは決してないと思っています。今後も,社会の変化状況に合わせて,どう対応していくべきなのかを積極的に検討していくべきだと思います。文化庁の方々にお願いしたいのは,法制化したらこれで一段落ということのないように,決してITの変化に対応できたわけではないことを改めて認識いただきたいと思います。
 先ほど新聞協会の方からメディアとして非常に慎重な保守的な意見があったわけですけれども,日ごろ社会変化の様子を伝え,改革の必要性を訴えて国民世論に大きな影響力を持っていらっしゃる新聞業界の方々が,そこまで慎重派になって国民世論がないと言われるのは残念な気がいたします。今回の中間取りまとめに対するパブコメ意見募集でも,個人の意見にはむしろもっと先進的な法制度をという声が多かったと思いますので,そのこともこの委員会の場で認識しておきたいと思います。
 もう一点ですが,国際小委員会についての検討経過が,その他が大きくクローズアップされているだけに,少し注目度が低いのかなと思っています。国際小委員会で取りまとめていただいたように現状でのコンテンツ業界の著作権審議会の実態は厳しい状況にあると思いますし,一企業の対応に限界がある場合に,二国間協議だけではなくて,もっと広くという具体的な提案もたくさんあったと思います。これらの具体的提案の実現方法について,この報告書では体制強化が必要とか検討が必要という,とても遠慮がちで間接的な提案にとどめられている気がしますので,具体的なアクションに確実につなげていただきたいと思います。
 その上で質問ですけれども,今回の国際小委員会で出た幾つかの提案について,具体的にどのようなスケジュールで検討が進められるのか,教えていただけますでしょうか。
【野村分科会長】
 事務局の方から。国際課長の方から。
【大路国際課長】
 国際課長の大路でございます。御質問いただきまして,ありがとうございます。
 まさに国際小委員会でこのような御指摘を頂きましたので,これを受けて事務局で速やかに検討して進めるというつもりでございます。
 若干,背景的なことを申し上げますと,私ども,権利の行使というのは一義的には権利者の責任において行われるべきものだと思っておりまして,大変だということで国が権利者にかわって権利行使するという,そういう施策はあり得ないと思っているんです。ただ,国境を越えて権利行使する場合の難しさというのはやっぱりあるというふうに思っておりまして,特に政府を介してお願いをするということが,やっぱり効果的な場合もあるでしょうし,その場合に政府同士が物を言える環境をつくっておかないといけないだろうというふうに思っているわけでございます。
 その観点から言うと,中国と韓国,それから台湾との間では今,既に定期的な著作権に関する交渉を行っているわけでございますけれども,その相手をもうちょっと広げていく,例えば東南アジア諸国との関係でコンテンツの流通といった観点から,今後,市場が広がっていく可能性があるものでございます。そういったことを,できるだけ速やかに関係をつくっていきたいというふうに思っているという点が1点でございます。
 それから,2点目の体制強化という話でございますけれども,これも政府間協議を拡大していくことと全く関係ない話じゃなくて,非常にリンクしている話だというふうに思っておりまして,今,中国との間で話をしている中で,一番大きな争点になっておりますのが,先ほど主査の方からお話があった権利の帰属を証明するということの困難さという問題にどう対応していくかという問題だというふうに思っておりまして,やはり国境を越えて権利行使するわけですから,本当に権利を持っているのかどうなのかということを自ら証明するということは極めて難しい状況でございます。それを可能にするための方策として,中国との間では認証機関という形で日本レコード協会さんが唯一認められているわけでございますけれども,昨今,その交渉を続けていく過程において,CODA(コンテンツ海外流通促進機構)を中国から見た認証機関として認めてもらえるかどうかといったような瀬戸際になっているような状況でございます。そこを政府間協議の中できちっと認めていただくということに仮に相成るとすれば,そこにCODAに一定のコンテンツの権利帰属を証明するような事務をやっぱりやっていただかないといけない,体制を強化していかなければいけない,そういう観点から見ると,なかなか今のCODAの体制で十分かどうかというようなところもございます。
 そういったことを,これは文化庁だけでできる話かどうかというのもありまして,海外展開というような話になってくると経済産業省なんかもかかわってくる話だと思っていますので,経済産業省なんかとも協議しながら,海外で権利を行使するに当たっての体制の強化ということをこれもまたそんなに悠長に考えられる課題じゃないというふうに思っていますので,速やかに取り組んでまいりたいというふうに考えております。
 とりあえず問題意識だけちょっとお伝えしたような話になってまいりましたけれども。
【野村分科会長】
 ほかに御発言いかがでしょうか。
 いで委員,どうぞ。
【いで委員】
 この分科会でも一番時間を多く割いたように権利制限の一般規定に関する問題があると思うんですけれども,先ほどの吉田次長の方から制度化するに当たっての考え方というようなものを示されました。ちょっと安心をしているんですけれども,いずれにしてもこの一般規定は,一部のビジネスとか個人とかに有意義になるものではなくて,社会全般的に潤うという観点からやっていただければ,おのずからきちんとしたものができてくるんだろうというふうに思っています。
 それからもう一つ,基本問題小委員会の中でもいろいろな問題が提起されて,今後も引き続き重要課題というようなものも示されていますけれども,これも今後は具体的に,では私的録音の問題とか保護期間の延長問題とかどういうふうにしたら解決していくのかというようなことも,今後,いつまでも放っておいていいという問題ではないと思いますので,今後具体的にどういうふうに進めていくのかということをまた,考慮して示していただきたいと,こういうふうに思っています。
【野村分科会長】
 ありがとうございました。ほかに御発言ありますでしょうか。
 三田委員,どうぞ。
【三田委員】
 この一般規定の問題というのは,当初は日本版フェアユースという言い方をされて,インターネットというのは世界につながっております。諸外国と競争する上で,システムの開発であるとか,ソリューションの開発であるとか,コンテンツ産業の育成とか,そういうことを考えていた場合に,日本だけが鎖国的に違う状況になっているということはまずいんではないかというような提案がありまして,言ってみれば,開国をするような形でフェアユースという概念を導入するというようなことについて,私自身もそのことの危険性と必要性というものを私なりに考えてまいりました。
 議論の過程で,様々な条件をつけて,大変に制限された内容になっております。そのことについては,そういうプロセスをたどっていただいた委員の皆様に感謝をしているのですけれども,しかしながら,その限られた条件だけであれば,個別に権利制限を設けるようになるわけですね。ところが,やはりどうしてこの一般規定という形で法律を改正するということは,これはやはりインターネットが世界につながっているということから,是非とも必要なことなんだろうなというふうに推察をいたします。つまり,この一般規定ということは,どんなに条件をつけようとも,今是非とも必要なことなんだろうなというふうに私は解釈をしております。
 これは,この一般規定によって,権利者の権利がやはりかなり将来的に,あるいは今当面でも権利が損なわれる可能性は十分にあるわけですね。つまり,これはかなり大幅な一歩を踏み出すことになるんだろうというふうに思います。どんなに条件がつこうと,今後,関係者間で議論がなされようと,この一般規定というものが導入されるということは,日本の著作権法にとって大変,大きな一歩であろうというふうに私は考えております。
 だから,この一歩を踏み出すなということではありません。世界とつながるためには,我々はこの一歩を踏み出さなければならないんだというふうに考えております。
 ただ,これはやっぱり著作権者にとっては非常に大変な一歩であるということを御理解いただきたいというふうに思いますし,また,その権利者の権利を守るという点でも,やはり世界につながらなければならないというふうに私は考えております。日本だけが鎖国的に権利者の権利を小さくしている部分も幾つかあるだろうと思います。今御指摘のあった著作権の保護期間の問題,これは個人の持っている保護期間だけでなくて,映画の問題もあります。映画というのは,アメリカとヨーロッパでは方式が違うわけでありますけれども,日本は両方と比べても短く設定されているということがあります。それから,美術に関係しては,請求権というようなものもあります。著作者の権利も世界標準に合わせて開いていかなければならないと。この一般規定の導入によって,我々は世界標準に近づいていくわけでありますけれども,同時に著作者の権利も世界標準に合わせて守っていくということを,是非とも皆さんにお願いをしたいというふうに思います。
 以上です。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。ほかに御発言。
 金原委員,どうぞ。
【金原委員】
 権利制限の一般規定について,2つお願いをしたいと思います。
 1つは,これから条文化されることになるわけですが,このA,B,C分類というものが,是非その範囲からはみ出ないように,ふたを開けてみたら日本版フェアユースのような,そういうふうな規定になっていたりということは,ないとは思っておりますが,このA,B,C分類の範囲内に必ず収まるように,またそれが誤解を,あるいは拡大解釈を与えないような表現として,是非規定ぶりをお考えいただきたいというのが1つです。
 それから,更にその上で,とはいっても,これは一般規定ということですから,先ほど石坂委員もお話になっていましたけれども,やはり拡大解釈であるとか,あやふやな解釈によってこの規定をはみ出た利用というものが起こり得るわけですから,現在の30条の規定,あるいは35条の規定でも,我々権利者側から見ると,利用者は明らかに拡大解釈をして権利侵害をしていると。よく今,世間で言われております「自炊」は,部分的には30条の範囲内ということもあるかもしれませんけれども,かなりの部分において,30条の範囲を逸脱した複製行為であるというふうに見えるところがたくさんあります。そういうようなことが,更に一般規定ということになると起きやすいわけですので,先ほどの吉田次長もお話になっておられました,4-2の最後のところですね,このような形で明確に範囲の限定をしていただきたい。
 最終的には権利者サイドとすると,権利侵害,あるいは違法複製者に対して訴訟するということも考えられるわけですけれども,実際問題としては,我々,出版の立場としても,また更に著作者の立場としても実際に訴訟というのはなかなかやりにくいのが現実でありまして,そういう問題が起きないような事前の対応を是非とっていただきたいということであります。
 以上,この2点をよろしくお願いをしたいと思います。
【野村分科会長】
 それでは引き続き,大寺委員,どうぞ。
【大寺委員】
 今回の報告書の中で,アクセスコントロールの関係について,導入していただくということで,是非早期に著作権法の改正,立法化をお願いしたいなというふうに思っております。本当にこの点については感謝しております。
 このアクセスコントロールの関係で,ちょっと一般的なお話をさせていただきますと,当然こういうのは著作権法の関係のほかに不正競争防止法の関係もございます。この両者の立法,法律の間の整合といいますか,実際の運用関係について,また関係省庁間で議論を続けていただければなというふうに思っています。
 それで,ここに関係省庁間の調整ということで言いますと,先般のときに申し上げましたが,例えば,今回放送法等の改正等がなされまして,これと著作権法の関係もありますし,更に従来議論がありますけれども,著作権法とともに,いわゆる公取,独禁法との関係といいますか,そこら辺についての整合性というのもあります。今回,今後の課題としてありますが,権利の集中処理という過程におきましては,やはりこれは重要なテーマだろうと思っておりますけれども,そうしたときに,例えばいわゆる私どもは民放連の立場で言いますと,こうした事業者団体等がどういうふうに対応していくのか,あるいはこうした権利の集中処理に対して,その権利者,個々の権利者がそこに加入強制されるのかどうかとか,そういうようないろいろな問題が出てまいります。そうした点についての御議論というのも,是非今後展開していただきたいなというふうに思っています。
 以上です。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。ほかに御発言いかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。
 そうしますと,本日報告書の案につきまして,今後の具体的な立法化の過程でいろいろ御意見等を頂きましたけれども,分科会としては,この提案どおり報告書をまとめるということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,本報告書につきましては,31日に開催されます文化審議会において,私の方から報告させていただきたいと思います。なお,公表資料につきましては,事務局より各委員に改めてお送りしたいと思います。
 以上で,本日予定した議題は以上ですけれども,何か著作権分科会全般の事項について,御発言ございましたら。
 三田委員,どうぞ。
【三田委員】
 この会の冒頭で,教科書補償金について,毎年行っているような話が出たわけでありますけれども,実はこの補償金というものは権利制限と一体になっているものであります。我々著作者は教科書に作品が掲載されるということについては権利を制限されている,拒否権がないわけですね。その代償として補償金が支払われるということでありますから,我々は権利を剥奪(はくだつ)されることに対する代償として補償金が払われるということで,この権利の剥奪(はくだつ)と補償金というのは本来,一体になっているもののはずであります。
 ところが最近,教科書会社が倒産をしまして,権利の剥奪(はくだつ)によって既に教科書に作品が掲載されていながら,補償金が払われないという事例が起こっております。これは権利の剥奪(はくだつ)と補償金の支払がシンクロしていないわけですね。一たん教科書会社が教科書をつくって,かなりのタイムラグの後で補償金が支払われるということになっております。このように教科書会社の倒産によって本来支払われるべき補償金が支払われないという事例が,今後も起こる可能性がないとは言えない状況であります。これはシステムそのものに問題があるのではないかなというふうに思わざるを得ません。この点について,どうしたらいいんだろうかということを,できれば皆さんでお考えいただきたいというふうに思います。
 以上であります。
【野村分科会長】
 ほかに御発言ございますでしょうか。
 それではまず福王寺委員,それから石坂委員。
【福王寺委員】
 今回の法案ということの中で,文部科学省関連でもう一つ,美術品の保証制度ということが,昨年の衆議院では一回通過しておりますけれども,著作権とは直接は関係はございませんが,そういった美術品の補償制度について,著作権課と担当の芸術文化課の方になると思うんですけれども,そういったところでどういった連携というものがあるんでしょうか。
【永山著作権課長】
 美術品の国家補償法につきましては,今,福王寺委員からお話がございましたように,先の臨時国会で衆議院は通過をし,参議院で継続審議ということになっております。今後,参議院での御審議をお願いすることになると考えておりますが,直接的には私ども著作権課はその法案にかかわっているということではありませんで,文化庁の長官官房政策課と芸術文化課が関係課になると思います,そちらの2課で協力して,これまでの法案作業,また今後の国会審議での対応をしっかりしていきたいというふうに思っています。
【福王寺委員】
 ありがとうございます。
【野村分科会長】
 それでは石坂委員,どうぞ。
【石坂委員】
 私的録音・録画補償金問題に対しまして,フェアなトレードが必要だという視点も含めて,一言申し上げます。
 昨年末,私的録画補償金に関する管理協会と録画機器メーカーとの係争について判決がありましたが,この争いは,現行の制度に関する問題でありますので,速やかな紛争の解決を図るために,関係行政庁のより一層の御努力をお願いしたいと思います。
 また,私的録音・録画補償金制度は,著作権法上の制度として規定されております。1992年以来です。しかし,現実は,空洞化しつつあります。そのため,権利者は権利を制限されているにもかかわらず,適切な対象措置を受けておりません。機械の進歩などがありまして,現実と法文がずれてきました。一刻も早く,私的録音・録画補償金制度を録音・録画実態に合わせた制度に変更するか,あるいは私的録音・録画補償金制度に代わる新たな権利者への代償措置を導入できるように関係者の方々のより一層の取組を是非お願いしたいと思います。
 以上です。
【野村分科会長】
 ほかに御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは本日はこのぐらいにしたいと思いますが,本日,今期最後の著作権分科会となりますので,文化庁の近藤長官から一言ごあいさつをお願いいたします。
【近藤長官】
 文化庁長官の近藤誠一でございます。今期の著作権分科会,これで終了となりますが,それに当たりまして,一言御礼(おんれい)を申し上げたいと思います。
 私,ポストに就いて半年弱でございますが,いろいろな所掌事務の中で,この著作権の問題ほどダイナミックに実態が動き,そしてまたいろいろな技術進歩が,どこまで進むのかが十分にわかりきれないものはなく,そしてまた利害関係者の範囲というのもどんどん広がっていくと同時に,異なる体制のほかの主権国家との間の調整も必要であるという,極めて複雑な,本当にアメーバのような難しい問題だと思います。
 しかし,手をこまねいて見ていてはいけないわけで,関係者の方々の御理解,お立場を十分にお聞きしながら,政府としてやるべきことを少しでも前進をさせていく。そして法制化できるものについては,可能なものからしていく。しかし,それで済むものでは決してございません。今後とも長年にわたって関係者の御意見をお聞きしながら,恐らくどなたにとっても百点満点の答えというのはないのではないかと思います。しかし,全体の利益,国全体の利益,関係業界の利益を最大にしつつ,日本として国際的な流れの中で確実に国民のため,国全体のためにいいシステムというのをつくっていく,そういう努力は当分続けていかなければならないと思っております。
 先生方におかれましては,これまで長きにわたって,大変それぞれのお仕事でお忙しい中を,知見とお立場を披露していただいて,とりあえず大きいことか小さいことか,評価は分かれるかもしれませんが,ともかくこの報告書によって正しい方向に一歩を踏み出すということが言えると思います。今後,さらなる努力というものを私どもとしても続けたいと思います。これまで事務局としていろいろ不十分な点があったかもしれませんが,事務局としてはベストを尽くして,皆様方の御意見,お立場をできるだけ反映したものができるようなお手伝いをしてきたつもりでございます。今後とも是非引き続き先生方のお知恵と御意見をちょうだいしながら,よりよい体制をつくっていく,そういうことに努力をしていきたいと思います。
 この場をかりまして,これまでの先生方の大変な御尽力の御礼(おんれい)と,これからもますます御指導いただきますようにお願いを申し上げまして,ごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。
【野村分科会長】
 どうもありがとうございました。
 最後に当たりまして,私からも一言お礼を申し上げたいと思います。
 非常に難しい問題で,いろいろな意見がある中,最終的に本日おまとめいただいたような形で成果を得ることができまして,皆様の御協力に感謝したいと存じます。また,平成13年に文化審議会著作権分科会となってから10年たちまして,私もこれで10年間ということでやめることになりましたが,平成17年からは分科会長を仰せつかって,いろいろ皆様にも御協力を頂いてまいりました。無事,務めることができまして,更にさかのぼって,かつての著作権審議会当時,昭和60年からずっとかかわってまいりまして,二十数年になるかと思いますけれども,大変長い間どうもありがとうございました。
 それでは,本日はこれで著作権分科会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

11:38 閉会

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