文化審議会著作権分科会(第34回)議事録・配布資料

1 日時

平成23年4月18日(月) 17:00~19:00

2 場所

文部科学省旧庁舎6階第2講堂

3 出席者

(委員)
石坂,上治,大寺,大林,大渕,金原,河村,久保田,小泉,後藤,椎名,瀬尾,大楽,竜村,道垣内,都倉,常世田,土肥,野原,広崎,福王寺,山本の各委員
(文化庁)
近藤文化庁長官 ほか関係者

4 議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)文化審議会著作権分科会長の選出について
    2. (2)小委員会の設置等について
    3. (3)その他
  3. 3 閉会

5 配布資料

資料1
文化審議会著作権分科会委員名簿(140KB)
資料2
小委員会の設置について(案)(116KB)
資料3-1
第11期文化審議会著作権分科会 各小委員会における検討について(132KB)
資料3-2
「文化審議会著作権分科会報告書(平成23年1月)」等で示されている今後の検討課題(328KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(164KB)
参考資料2
文化審議会著作権分科会(第33回)議事録(500KB)
(机上配布)
文化審議会著作権分科会報告書(平成23年1月)

6 議事内容

  • ○ 今期の文化審議会著作権分科会委員を事務局より紹介した。
  • ○ 本分科会の分科会長の選任が行われ,土肥委員が分科会長に決定した。
  • ○ 副分科会長について,土肥分科会長より中山委員が副分科会長に指名された。
  • ○ 会議の公開について運営規則等の確認が行われた。

※ 以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【土肥分科会長】
 それでは,今期最初の著作権分科会を開催することになりますけれども,本日は最初の分科会でございますので,近藤文化庁長官からごあいさつを頂戴(ちょうだい)できればと思っております。よろしくお願いいたします。
【近藤文化庁長官】
 文化庁長官の近藤誠一でございます。ほとんどの先生方には,既にいろいろな場でごあいさつをしたことがございますが,新しい先生方もいらっしゃいますので,第11期の分科会の最初の会合に当たりまして,一言ごあいさつを申し上げます。
 まずは,大変御多忙の中,委員をお引き受けいただきまして,まことにありがとうございます。これまでの前期の検討の結果,この1月に権利制限の一般規定,あるいは技術的保護手段の見直しといった点につきまして御提言を頂きました。しかし,これはたくさんある問題の中の一部でございます。大変重要な一歩ではございますが,まだまだ目の前には多くの課題があると思います。したがいまして,著作権法の改正という大きな課題に向けて,文化庁としてもますます力を挙げてまいりますけれども,御承知のような国会の状況でございまして,ともかく復興が最優先課題ということで,今後,この改正がどうなっていくか,現時点では何とも見通しがつきません。しかしながら,世の中はどんどん進んでおりますし,そして,恐らくは,こういう大震災の後の日本の新しい国づくりにおいて,日本という国は,従来の,いわゆる第2次産業中心から,より知的産業といいましょうか,知の力で国をつくっていくという方向に向かうことは間違いないと思います。それが加速される可能性が非常に高いと思います。そういう意味では,この著作権の問題というのは,日本自身の将来にとって,そして,国際競争力という点でも大変重要な課題であると思います。
 他方,いろいろな角度から,この著作権の問題にかかわっていらっしゃる方々,団体がございますので,なかなか一朝一夕に明確な結論が出にくい。そういう意味では大変難しい分野でもございます。そういう中で,先生方には大変なお時間と英知を傾けていただくことになると思いますけれども,着実に前に進んでいくということで,日本の将来のために,よりよい著作権の体制,そういったものをつくっていくために,文化庁としましても,事務局として最大限の努力をしてまいりたいと思います。
 これからの行方は必ずしも明確に描けませんけれども,一方で,復興のための,それぞれのお立場からの努力をしながらも,この著作権改正の問題については粛々と進めていかなければいけないと思っております。そういう意味では,大変お忙しい中で恐縮でございますけれども,是非先生方のお力を,そして御協力を改めてお願いいたしまして,最初の会合の私のごあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【土肥分科会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,文化審議会著作権分科会運営規則第3条第1項の規定に基づきまして,小委員会の設置について決定をしたいと思います。今期の小委員会の設置案につきまして,事務局から説明を頂戴(ちょうだい)したいと思います。  
【壹貫田著作権課課長補佐】
 それでは,資料2に基づきまして,御説明申し上げます。
 まず,資料2の1にございますとおり,文化審議会著作権分科会運営規則の第3条第1項に基づき,今期におきましては,法制問題小委員会と国際小委員会を本分科会に設置する旨,記述してございます。
 次に,委員会における審議事項といたしましては,2にございますとおり,法制問題小委員会では著作権法制度の在り方に関することを,国際小委員会では国際的ルールづくりへの参画の在り方に関することを掲げてございます。
 また,各小委員会の構成員につきましては,著作権分科会運営規則第3条第2項に基づきまして,分科会長が指名する委員,臨時委員及び専門委員により構成されることとなっております。
 最後に,その他といたしまして,各小委員会における審議の結果につきましては,分科会の議を経た上で公表することなどを記述してございます。
 資料2につきましては以上でございます。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして,御意見,御質問等ございましたら,お願いいたします。
【福王寺委員】
 昨年度までの小委員会の中で,基本問題小委員会というのがございましたけれども,今期はそれがなくなるということでしょうか。
【永山著作権課長】
 基本問題小委員会については,昨年,最終的な取りまとめを頂き,今後,この分科会,また各小委員会で検討すべき内容,その方向性をお示しいただいたと思っております。今後については,基本問題小委の方でお示しいただいた内容を踏まえて,事務局からの御提案としては,法制問題小委員会,また国際小委員会でそれぞれ具体的な検討を進めていってはどうかという案の御提案でございます。したがって,基本問題小委員会については,昨期,第10期でとりあえずの取りまとめを頂いたという,そういう原案になってございます。
【福王寺委員】
 そうしますと,保護期間の50年から70年の延長問題ありますけれども,そういったことや,あと,戦時加算の問題については,どの小委員会で御議論されるんでしょうか。
【永山著作権課長】
 また,次に,資料3-1,3-2の説明にかかってくる問題になりますけれども,今回,法制問題小委員会,国際小委員会で,また後ほど,御説明,事務局からさせていただきますけれども,それぞれ検討課題例ということで幾つか挙げさせていただいております。それに加えて,当然,保護期間の問題,これは基本問題小委員会で,今後の検討課題ということで御指摘を頂いております。そういう内容については,今後の状況に応じて,検討体制についても,今回,11期,2つでそのままいくということではなくて,様々な状況の変化,また電子書籍の問題などもございますので,検討体制については,11期の途中においても,適宜,柔軟に,今回見直しをさせていただいてはどうかという御提案が資料3-1にございます。
【福王寺委員】
 わかりました。ありがとうございます。
【土肥分科会長】
 ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは,ただいま事務局から説明ございましたけれども,小委員会としては,法制問題小委と国際小委員会,この2つの委員会を設置するということでございますけれども,御了解いただいたということで進めさせていただきたいと存じます。
 あと,今,お認めいただいた小委員会と使用料部会に分属をお願いする委員につきましては,これも文化審議会令第6条第2項及び文化審議会著作権分科会運営規則第3条2項の規定がございまして,分科会長が指名すると,このように定められております。
 したがいまして,私から指名をさせていただくことになりますけれども,各小委員会への委員の分属につきましては,後日,皆様にお知らせさせていただきたい,このように思いますので,よろしくお願いいたします。
 先ほども,検討課題について質問が出ておりましたけれども,今期の著作権分科会において検討すべき課題につきまして,意見交換を行いたいと思っております。
 まず,各小委員会における検討等について,事務局から説明をいただければと思いますので,お願いいたします。
【壹貫田著作権課課長補佐】
 それでは,資料3-1及び資料3-2に基づきまして,御説明申し上げます。
 まず,資料3-1についてでございますが,当資料では,第11期の各小委員会における検討課題例を簡単に記述してございます。資料にもございますとおり,法制小委員会では,引き続き検討されることとなっております間接侵害や,複数者による創作に係るコンテンツ等に係る課題などを掲げております。
 また,国際小委員会では,国際裁判管轄等に関する国際ルール形成の在り方や海賊行為に対する課題の在り方といったものを掲げております。
 以上,2つの小委員会における検討課題例を簡単にお示ししておりますけれども,この資料の冒頭にもございますとおり,また,先ほど御説明申し上げたとおりでございますけれども,今後の状況の変化等に応じまして,検討体制等について適宜見直すことも考えられるのではないかと考えているところでございます。
 次に,資料3-2でございますが,本資料では,本年1月にお取りまとめいただきました分科会報告書において示されている検討課題など,著作権法制に係る課題についての検討の方向性や具体的な課題について,御紹介の意味を込めまして,簡単にまとめてございます。
 まず,分科会報告書でございますが,1の(1)で基本問題小委員会について,(2)で法制問題小委員会について,(3)で国際小委員会についてそれぞれ検討課題を記載してございます。
 細かな説明につきましては割愛をさせていただければと思いますが,基本問題小委員会におきましては,例えば,2ページ目以降にございますけれども,権利の集中処理の推進や契約の在り方,意思表示システムの構築,書籍のデジタル化といったもの。それから,3ページ目になりますけれども,私的録音録画補償金制度,保護期間延長問題,放送と通信の融合,違法流通対策といったものが掲げられております。
 また,その他としてまとめられているものの中では,30条の見直しや学術,教育関係の権利制限規定の在り方などといったものも掲げられているところでございます。
 4ページ目でございますけれども,法制問題小委員会の記述におきましては,権利制限の一般規定に係る取りまとめにおいて示されておりましたパロディやクラウドコンピューティングといった課題のほか,間接侵害,ネット上の複数者による創作に係る課題といったものが掲げられているところでございます。
 更に1枚おめくりいただきまして,国際小委員会についてでございますけれども,国際小委員会におきましては,コンテンツ業界の著作権侵害の実態と課題についての状況把握や,WIPOにおける議論の動向の把握とその積極的な関与といったものが,5ページ,6ページにわたって記述してございます。
 次に,7ページ目,最後のページでございます。まず,2として,「知的財産推進計画2011」関連についてでございますけれども,同計画につきましては,現在,知的財産戦略本部におかれまして検討が進められております。その中で,著作権法制に係る検討課題の方向性といたしまして,資料にもございますとおり,クラウド型サービスの環境整備や創作基盤としての二次創作の円滑化といったものが掲げられているところでございます。
 また,3にございますように,行政刷新会議,規制・制度改革に関する分科会において決定されました「規制・制度改革に係る方針」におきましては,学術用途における権利制限の在り方の検討といったことが検討課題として掲げられているところでございます。
 以上,資料3-1及び3-2に基づきまして,今後の検討課題例として,既に示されているものを簡単に御紹介させていただきました。委員の皆様方におかれましては,これらの検討課題例を御参考としていただき,今後,どのようなことについて検討していくべきかなど,御自由に御提言をいただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明に対する御質問も含めまして,検討課題についての意見交換を行ってまいりたいと思っております。
 それでは,どうぞ,御意見ございましたら,お出しください。
【石坂委員】
 違法配信を撲滅するための新たな法整備の検討を是非お願いしたいと思います。著作権法が昨年改正されまして,1月より,違法な音楽,映像を違法と知りながらダウンロードする行為が違法となりました。この法改正の周知については,官民が協力して行い,大分浸透してきたと思います。レコード協会としても,映画館での告知のスポットなどを積極的に取り上げました。しかし,まことに残念ながら,依然として,正規流通を上回る大量の著作権侵害ファイルが蔓延(まんえん)している状況に大きな変化は見られません。
 この著作権法30条の改正は,私どもも,3年前ぐらいから皆さんにお願いして,実現したのを非常に喜びとしているものですが,基本的には,啓発活動を強くするという状況が設定されたことだと思っております。罰則規定はありません。
 そして,日本レコード協会が昨年実施した調査では,違法な音楽映像等のダウンロード数は,視聴のみが許可されているストリーミングサイトからの不正なダウンロードを含め,年間43.6億ファイルと違法が推定されています。これは,正規有料音楽配信の2010年ダウンロード数4.4億ファイルのおよそ10倍に相当いたします。不正の商品が正規のものより10倍に流通するというのは,他産業でも見られません。また,正規音楽配信の販売価格に換算した場合はおよそ6,683億円となりまして,正規音楽配信の2010年の年間売上げ860億円のおよそ8倍に相当いたします。2010年度のパッケージと配信合わせた音楽ソフトの正規市場の規模は約3,700億円ですから,無形の商品とはいえ,これは膨大な違反の量であるのが御理解いただけると思います。
 私どもも,強い姿勢を持って,この違法状況の蔓延(まんえん)を何とか取り除きたいと思っておりますが,かなり若い音楽ユーザーが対象ですので,最適の撲滅手法というものがまだ確立されておりません。是非,この著作権侵害ファイルの総量を減少させるため,通常の著作権侵害として,例えば,ペナルティーを導入するなどの新たな法整備の検討を是非お願いしたいと思っております。
 以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。それとも,今おっしゃっていただいた御意見について何かございますれば,お出しいただければと存じますが。
 違法配信の額が10倍とおっしゃったんですけれども,これは,昨年,我々がこういう場でちょうだいしていた資料からすると,当時はたしか,少し違法配信の方が多かったという,そういうデータじゃなかったかなと思うんですけれども,急に10倍になったというのは,ちょっと状況がつかみにくいんですけれども,何かあったのでしょうか。
【石坂委員】
 2009年度までは,モバイルダウンロードのシステムを使っての違法音楽配信ファイルが多かったんですが,その後,パソコンがぐっと増えまして,要するに,従来はモバイルダウンロードシステムを使っての違法が多かったのが,今やパソコン,それから,動画サイトを使う新たな違法テクニックなど,燎原(りょうげん)の火のように違法のチャンネルが広がっておりまして,今後ますます増えていくのではないかと考えております。1年ごとに増えております。
【土肥分科会長】
 ありがとうございます。
 ほかに何かございますか。この点,あるいは別にでも結構ですけれども,検討課題。
 久保田委員,どうぞ。
【久保田委員】
 今の話と関連がありますが,実は,違法の録音,録画のダウンロードについて,法律を知っていたかというアンケートをしましたところ,若い世代では非常によく理解しているんですね。けれど,これからもファイル共有するかという問いについては,わかってはいるけどやめられない,やりますというのが50%を超えている状況です。そういう意味では,啓発・普及が非常に重要なことだと思いますこの件については,それぞれの権利者団体でいろいろ努力はしているのですが,何か抜本的な対策を打たなければなかなか難しいのかなと思っております。意見ですけれども。
 以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。瀬尾委員,どうぞ。
【瀬尾委員】
 今のこととは全然違いますけれども,今年,やはり復興と,先ほど長官がおっしゃったように,非常に大きなテーマになってくると思います。著作権の,この分科会をはじめとして,非常に昔から検討されてきたこととか,長期的な視野で見ていっていることがたくさんあります。ただ,今回の復興で,情報というものの価値が非常にクローズアップされてきたし,更に重要であるという社会的な認識も非常に高まっている時期だと思います。ですので,今,インフラと同じように,水や水道と同じように情報が必要だという時代に,まず必要な,今回の復興に役立つ,短期的なことと長期的なことを少し事務局で切り分けてお考えいただいた方がよろしいのではないかなという気がします。というのは,1年後,2年後に効果があるものと,来年度にすぐ必要なもの,若しくは緊急な措置もあるのかもしれません。そういうことは,この審議会で考えたり委員会で考えるべきではないかなと思います。
 それと,もう一つ,今回の震災の中で,非常に特例的な措置によって,いろんなことが行われたのを私も見聞きしております。例えば,放送がネット上で普通に流されたのをみんな見ていた。そして,その有用性を確認していたのではないかなと思います。具体的な法制度の前に,具体的にそれがあの事態で重要になっていたという事実があると思いますし,例えば,前回……,別の会議かな,図書館さんが情報を送ると。要するに,法的などうのこうの以前に,必要な情報を非常措置として送ると,こういうことも行われていたし,そういう必要性もみんなわかってきている。そういう社会的な状況と復興の状況に合わせた,今必要なことと,それから,継続されている重要なテーマとを切り分けて,今必要なことがもしあるのであれば,その意見を募って,この審議会の中でも,比較的スピーディーに最初の方のテーブルに載せていただくことで機能するのではないかなと思います。
 これまで審議会の中で,私ももう大分長く出させていただくようになってしまいましたけれども,この中で話していることは,2年,3年かかって,やっと決まることが多かった。ただ,今年は,2年,3年では駄目なこともあるんではないでしょうか。そしたら,この審議会の中で,より活発な提案と短期的な御配慮,それから,時限的なものであっても,何かきちんと通すことを,この審議会がやっていくべきではないかなと思います。今年の運用に関しては,例年と違ったそのような運用をしていただければいいのではないかなと思っております。これは,事務局に対してのお願いでもあり,皆さんに対しての御提案でもあります。
 以上です。

【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。どうぞ。
【広崎委員】
 今の瀬尾委員の見解に私も賛成なんですけれども,経団連の方でも,これを機会に,やはり足元をきちっと固めることと,それから,今まで課題だ,課題だと言いながら,実態は先送りになっていたような,いろんな産業政策等,むしろこれを機会に,日本が課題解決先進国になっていくんだといったことをやっていこうよといったエネルギーが非常に満ちあふれています。
 更に,私,幾つかの学会にも関係していますけれども,学会という,ある意味では,異なった利害を持つ方が集まっている中立的な団体ですね。こういったところが,いろんな利害の相違を超えて,例えば,今回の津波で具体的に破壊,破損した建物の状況であるとか道路の状況であるとか,そういう現場データを集めて,これをみんなで共有していって,日本の貴重な財産にしていこう,データベースにしていこうといったようなことを,学会が音頭をとってやるといったような動きも出始めております。
 いずれにしましても,今,瀬尾委員がおっしゃったように,これまでなかなか見解がまとまらなかったようなことを,これを契機に,是非新しい将来の日本のために,今までと半歩違った,半歩先を見た立場で議論をする,そういう活動にしていただければ有り難いなと思っています。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。どうぞ。
【福王寺委員】
 権利制限の一般規定ということで,内容が,昨年度から,A類型,B類型,C類型,あるいは特定の利用目的ということで議論されてきまして,それを条文化する作業というのはもう済んでいるものなんでしょうか。そういうものが済んでいるとすれば,そういったものを前もって拝見したいなと思いますけれども,その辺はいかがでしょうか。
【永山著作権課長】
 現在,本年1月に御提言を頂きました内容について法制化をする作業,まだ続けている最中ということで,まだ原案というものができている段階には至っておりません。本年1月の第10期の分科会の最後に,私どもの次長から申し上げましたとおり,本年1月の報告を受けての法制化,著作権法改正に向けては,関係団体との意見調整も含めて,これまで以上に丁寧にやっていきたいと考えております。その過程で,また関係団体の意見もお聞きしながら法制化をし,しかるべきときに国会の提出につなげていきたいと考えております。
 以上でございます。
【福王寺委員】
 わかりました。ありがとうございます。
【土肥分科会長】
 ほかにございますか。どうぞ。
【大林委員】
 WIPOの議論の中で,視聴覚的実演の保護について,条約についてですが,策定に向けた議論が進展しており,米国からの提案があったと伺っていますが,それが今年中にどういうふうになっていくのか,そういうことも情報を入れていただきながら議論ができれば。つまり,私たち実演家にとりましては懸案になっていますので,その辺も,ここの分科会の中で情報を開示していただきながら議論ができればいいのかなとは思います。
 それと,基本問題のことが先ほど出ましたけれども,基本問題の中で言われていたこと,流通を支え,そして,視聴覚物の利用対価を創作した人に還元していく,そういう制度として,文化の発展に寄与するという,著作権法の基本的な精神というのは,やはりどこの議論でも,最終的にはきちっとその精神でチェックされていくということをしっかり確認をして,先へ進んでいったらどうかと思います。
 今,いろいろ,想定外ということも言われているようですけれども,やはり想定外ではなくて,いろんなことを想定して,この著作権の分科会の中でも活発な議論がされるべきではないかと思っております。
【土肥分科会長】
 どうぞ。
【大寺委員】
 事務局に御確認したいんですけれども,この基本問題小委員会,幾つか課題が出ておりますね。前期,そういうふうに出したんですが,これが今回の法制問題小委員会だとか国際小委員会ではどういうふうに反映されるのか,あるいは,更にその検討については先延ばしになるのか,そこら辺の,前期までの課題抽出と今期との間の整合性というのはどういうふうになっているのか教えていただきたいんですけれども。
【永山著作権課長】
 それでは,事務局からお答えさせていただきますが,基本問題小委員会,非常に多岐にわたる検討課題について御提言を頂いていると思っております。したがって,その課題ごとに,今後どういうふうに取り扱っていくのかというのはかなり違いがございます。今,大林委員からお話もございました国際的な動向を踏まえて,当然,国内法の問題を検討していかなければいけない事項,また,国内の様々な状況を踏まえて,補償金のように検討していかなければいけない事項など,それぞれ課題によってかなり状況が違います。
 また,今年の1月,御提言いただいた権利制限の一般規定,また,技術的保護手段についても,一方で法制化の作業も進めていくという中で,また震災後の状況,国会の状況など様々な状況を踏まえながらの,今後の在り方,今後の検討課題についてできるだけ適宜適切に検討していきたいと考えております。したがって,現時点でそれぞれの課題について,こういう見通しでということは申し上げられない段階でございますが,先ほど,資料3-1で整理された議題は非常に重要なもの考えておりまして,様々な変化に適切に応じて,適宜,検討体制についても,この11期の途中であっても見直しをし,それぞれの課題について時宜を逃さずに検討していきたいと考えております。
 以上でございます。

【土肥分科会長】
 はい,どうぞ。都倉委員。
【都倉委員】
 先ほど,冒頭で著作権課長の御説明で,基本問題小委員会とは別に,法制問題,国際小委員会についての御説明があって,戦時加算,保護期間の問題についてはどうだという委員からの御質問があったときに,議論の行く末を見て,もしかしたらそういう話題も議題に上るかもしれないというようなニュアンスに僕は受け取ったんですけれども,誤解だったら,ごめんなさい。私は,戦時加算,保護期間の問題は絶えず,これはシステム,国際ルール,両方にかかわる問題だと。それの象徴みたいな感じがするので,その議論の行く末で,自然的にそういう話題になればそれを取り上げるということじゃなくて,やっぱり最初から,戦時加算,保護帰還問題というのは,1つ,タイトルに据えて議題にしていただければ有り難いな,そういうふうに感じました。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにいかがですか。どうぞ。
【吉田国際著作権専門官】
 先ほど,WIPOの話が出ましたので,先週,WIPOの非公式会合がありましたので,簡単に御報告をさせていただきたいんですが,先週(水)から(金)まで,WIPOで,視聴覚的実演条約,AV条約と放送条約に関する非公式会合がございまして,どちらも少し前向きに進んでいこうということになりました。
 具体的に,AV条約の方は,暫定合意ができていない12条という権利移転の部分に関しての妥協案を,これからメキシコとインドとアメリカでつくっていこうということになりましたので,今度は6月にWIPOの著作権常設委員会があるんですが,そこに向けて新たな提案が出てくるという見込みです。
 それから,放送条約については,日本からも,今回の震災で放送機関の重要性を,皆さん,改めて感じているというようなことを説明しながら,条約の必要性を主張しまして,議論は引き続きやっていくことになりましたが,特に,今までの文書だけではなかなか議論が進まないので,今回,非公式会合の議長を務めたスイスの方から,新しい文書をつくるように検討したいという話がありましたので,今後,6月に向けて,放送条約についても新しい文書が出てくる見込みという状況でございます。WIPOの会合の報告は,今後も随時,国際小委員会でもまた御報告させていただきたいと思います。
 以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかに御意見,御質問,いかがですか。どうぞ。
【竜村委員】
 昨年からの持ち越し課題になっている筆頭で挙げられている事柄かと思いますが,間接侵害の問題は,先般,最高裁の判決が出たこともございますし,煮詰まってきている面もあろうかと思います。解釈論のレベルにとどめるのか,何らかの立法的な措置も視野に入れるのか,利用者からの予見可能性の観点も含めて,そろそろ何らかの方向付けをつける時期に来ているのではなかろうかと思います。
 また,例えば,特許法における間接侵害との対比で,著作権においての在り方について検討する観点などもあり得ましょうし,すそ野の広い問題ではないかと思います。
 先般来話に出ています違法配信の問題も,サービスプロバイダーの責任問題等々にも及ぶ問題でしょうし,あるいは,実際にどのようにエンフォースするのかについても,どうももう一つ決め手がない状況があるように思われます。それらの点を三位一体で論議するには,いい頃(ころ)合いなのではないだろうかと思う次第です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございます。今おっしゃっていただいているところについては,法制小委の中で従来ワーキングチームを立ち上げておりまして,継続的に検討を頂いているところでございます。また,法制小委の中にそういうワーキングチームの設置というようなことも問題の中に入ってくると思いますので,適切に対応したいと思っております。
 ほかにございますか。どうぞ。
【福王寺委員】
 CISACという国際組織がございますけれども,そういうところから意見書が長官官房の方へ行っているかと思うんですけれども,何年か前には,戦時加算について,国際標準として,50年のところを70年にすれば戦時加算を撤廃するという内容をCISACから,その団体で決議された内容が長官官房の方へも意見書として行っていると思うんですね。
 昨年は,11月にCISACの視覚芸術分野のCIAGPの会議がニューヨークでございまして,その際に,追及権ということで,導入に向けて,著作権,文化審議会において審議していただきたいという内容を,やはり長官官房の方へ意見書が行っていると思います。
 この内容について著作権課で議論されておられると思うんですけれども,実際,法制問題小委員会の中で,そういったものを議論していただけるものかどうか,お尋ねしたいと思います。
【土肥分科会長】
 法制問題小委はこれからということになりましょうから,本日直ちに法制問題小委でこういうことを議論するということをなかなか申し上げにくいんだろうと思いますけれども,委員がおっしゃっておられるところについては,法制小委にきちんと伝達をしたい,分科会の中でそういう御意見があるということについては,きちんとお伝えをすると,そういうふうに思っておりますけれども,何か事務局からこの点についてございますか。
【永山著作権課長】
 今,分科会長からお話がありましたとおり,今日頂いた意見については,当然,今後の小委員会での検討につなげていく事柄だと考えておりますので,その意見を踏まえて,今後,それぞれの小委員会での御検討を頂きたいと思っております。
【土肥分科会長】
 本日の分科会の御意見というのは,今お話ございましたように,小委員会においてどういう議論をしてほしいという,そういう御意見が一番有り難いのかなと思っております。しかも,例えば,これについては中長期的に議論してほしいとか,あるいは短期的にこういう問題についてはというのは,大体既に御発言出ておりますけれども,ほかにそういう観点からの,この分科会における委員の御意見ございましたら,ちょうだいしたいと思っておりますけれども,いかがでしょうか。
 河村委員,どうぞ。
【河村委員】
 この著作権分科会,何年か務めさせていただいていますけれども,私,消費者団体から来ておりますが,いつも,ほとんど消費者団体と言われるのは私一人ですし,消費者団体という枠に限らずとも,ユーザーの側(そば)といいますか,そういう側(そば)の人間が本当に少ないんですね。小委員会も,基本問題小委員会はなくなったということで,私もそのメンバーに入っておりましたが,そうなってくると,ほとんどユーザーの声というような,利用者側の考え方というのが入らないところで検討が進んでいくと思うんですね。
 ずっと感じていますことは,許されない違法行為をし放題にしているユーザーと,絶対に許さないとおっしゃっている方々。ここでよしあしを言うつもりはないんですが,それ,ずっとやっていても,どうも何か打開できないような気がするんですね。これも許さん,あれも許さん。許さんと言いつつやられてしまっているという状況を考えますと,何かもっと効果的なやり方があるんじゃないかと。何もかもいけないと言うのではなくて,もっと効果的な解決法があるかもしれませんし,そのためにも,もっとたくさんのユーザーの側(そば)の声を取り入れてというか,耳を傾けて,未来に向かっての著作権というものを考えていかないと,問題意識はここでたくさん共有されているような気がするんですが,つまり,許さんという側(そば)の意識が共有されていると思うんですが,解決には向かっていかないし,何となく幸せな未来が描けないと,前も私,申し上げましたけれども,これからの検討に際しては,ユーザー側の考え方というのに耳を傾けて,より何かいい方法というのを探っていくということを,是非やっていただきたいと思います。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 どうぞ。
【広崎委員】
 ちょっと別の観点からのコメントを追加したいんですが,最初の方で,基本問題小委員会のこれは法制と国際である意味で集約されて,こちらに吸収して検討すると。お互いの連絡をとるというのが大事だと思うので,そこを是非お願いしたいということと,それから,その際に,日本が自分で感じている以上に,実は周り,世界の動きが非常に速いというか,グローバル化が大変な勢いで進んでいる。これ,もとをただせば,89年のベルリンの壁以来ということになるんですけど,逆に言うと,世界の動きの速さに,残念ながら社会全体の動きがついていけなかったというのが,全体的に見ると,現在の日本の地盤沈下につながっているかなという気がするんですね。
 そういったことを各業界で,知的財産権,あるいは著作権以外にも,ものづくりであるとかIEであるとか,いろんなところで真剣に今,各業界が,未来に向け,これからどうするんだと議論しているんですね。そういったさなかに今回の震災が来たということで,ある意味では,老いも若きも全国民が心を1つにして,何とか新たな未来をつくろうと1つになっている貴重な時期だと思うんですね。したがって,ちょっと前置きが長くなりましたけれども,著作権についても,国際的に起こっていることを,もう少しちゃんとフィードバックをしていくと。早目早めにフィードバックをする。先ほどのWIPOの御紹介ございましたけれども,非常に動きが速いというのを感じていらっしゃると思うんですね。ここにフォークロアの問題であるとか,ここには出ておりませんけれども,クリエーティブ・コモンズの問題,あるいはヨーロッパのブルースカイ問題,非常に流動的に新しい知識社会のルールづくりということで世界は動いている。そういった中で,果たして我々の知財,その中でも著作権で根幹をなすところについて,一体これからどう再構築していくんだろうかということを,先ほど話した,これまでの立場を少し,それぞれの業界で0.5歩,半歩自分自身を先に進めてみて,そこで見直して,お互いに連携をとって,新しい知識秩序をつくっていくんだというぐらいのことで,新たな小委員会活動が進むと有り難いなと思っておりますので,是非よろしくお願いします。
【土肥分科会長】
 ありがとうございます。
 どうぞ。
【瀬尾委員】
 今のポイント,私も非常に強くそう思っています。国際小委員会が,条約を中心に動かざるを得なかったし,これまでもそうしてきたという経緯はあるのかもしれませんが,例えば,今,サーバーの設置がどこの国にあって,それの利用者がどこにあって,どういうふうなことについて問題があるのか。例えば,情報を発信した違法のサイトがどこにあってとか,非常に直接的な問題もやはり国際間の問題になり得るし,そしてまた,実際にインターネットによって国境が取れてしまった状況があるのにもかかわらず,そこで逆に線引きをしてしまったような部分があるようにも思います。それは,逆に議論をする,例えば,私なんかにしても,何かそこで線を引いてしまうような気がします。そういうふうなことを取り払って,そして,国際小委員会がもっとフレキシブルに,法制やこちらの小委員会,この親会とのコミュニケーションと報告の中で有機的に動くことは非常に重要かなと考えます。
 それと,もう一つ,今回の震災,震災,私はうるさいですけれども,今回の中で,やはり日本だけが孤立して考えているというよりも,知的情報が世界的に流れていく中で問題が解決されていくということがあるとすると,やはり今後,単なる条約だけの問題以上に,国際間の知財の流通というのは重要になってくるのではないかなと思っております。
 先ほどから,何名かの委員から,保護期間延長の問題ということが出ております。これも,私はやはり,国際間の問題としてとらえるべきなのではないかなと最近思ってきています。つまり,日本の権利者が,周りが70年だから70年にしてほしいということではなくて,国際化の中で,日本の知的財産の,著作権の保護期間がどれくらいであったら日本の国としてよいのかとか,バランス論とか。例えば,インターネットの時代にどれが重要であるのかとか,そういう中で国際問題としてとらえていく。そういう,周りの国々もかかわっている事案に関しては,かなりグローバルな視野でとらえていって解決しないと,なかなか解決しないのではないかなと考えております。ですので,是非国際間の問題というのは,これまでのような1分野ではなく,もっと広い意味でとらえて,情報の交流と事案として取り上げていただきたいなと思っております。これは強く感じるところです。意見でした。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかに御意見等ございますか。よろしゅうございますか。
 ほかに特段御意見ございませんようでしたら,本日は,本分科会における各小委における検討課題についてはこのくらいにしたいと思っております。小委の設置及びワーキングチームの設置等も含めて,今後,検討の状況に応じて,変化の状況に応じて,適宜,流動的に対応するということがございましたので,また,本日,検討課題として伺っているところからすると,どれも皆重たい問題ばかりでございますので,また,この分科会においてはお知恵をちょうだいせざるを得ない,そういうことも出てこようかと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは,最後に事務局から連絡事項がございましたら,お願いいたします。

【壹貫田著作権課課長補佐】
 本日はありがとうございました。次回の文化審議会著作権分科会につきましては,改めてまた御連絡をさせていただければと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会第34回を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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