文化審議会著作権分科会(第35回)議事録・配布資料

  • 日時:平成24年1月26日(木)
  • 10:00~12:00
  • 場所:霞山会館 霞山の間

【議事】

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)平成23年度使用教科書等掲載補償金について
    2. (2)平成23年度使用教科用拡大図書複製補償金について
    3. (3)法制問題小委員会の審議の経過について
    4. (4)国際小委員会の審議の経過について
    5. (5)その他
  3. 3 閉会

【配布資料】

資料1
「平成23年度使用教科書等掲載補償金について」関係資料(308KB)
資料2
「平成23年度使用教科用拡大図書複製補償金について」関係資料(368KB)
資料3-1
平成23年度法制問題小委員会の審議の経過等について(1.9MB)
資料3-2
電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議報告概要(212KB)
資料3-3
電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議報告(864KB)
資料4-1
平成23年度国際小委員会の審議の経過等について(概要)(480KB)
資料4-2
平成23年度国際小委員会の審議の経過等について(284KB)
参考資料
第11期文化審議会著作権分科会委員名簿(140KB)

【議事内容】

  • ○ 平成23年度使用教科書等掲載補償金について
    使用料部会長及び事務局より説明があり,諮問案のとおり議決された。
  • ○ 平成23年度使用教科用拡大図書複製補償金について
    使用料部会長及び事務局より説明があり,諮問案のとおり議決された。

以上の議事については,文化審議会著作権分科会の議事の公開について(平成22年2月15日文化審議会著作権分科会分科会決定)その1(2)に基づいて非公開とし,同決定の6及び7に基づき議事要旨を作成し,公開することとする。

【土肥分科会長】
 それでは,ここからは公開といたしますけれども,ちょうどいい機会かと存じますので,河村文化庁次長に冒頭,ごあいさつをちょうだいできればと思います。よろしくお願いいたします。
【河村文化庁次長】
 機会をちょうだいいたしまして,ありがとうございます。1月6日付で文化庁次長に就任いたしました,河村でございます。どうぞ,委員の皆様方にはよろしくお願い申し上げます。
 申し上げるまでもなく,今の大きな社会の変化の中で,著作権制度のありようは注目を集め,また,いろいろなところに影響が及ぶものとなっておりますけれども,この審議の場が非常に重要なものという認識で,私どももまた,これまで同様,一生懸命務めてまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。
【土肥分科会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,(3)法制問題小委員会の審議の経過について,この議題に移りたいと思います。
 昨年の4月以降,各小委員会におかれましては,それぞれの分野において精力的に御検討を頂いてまいりましたけれども,本日は今期最後の分科会となりますので,各小委員会の審議の経過につきまして,それぞれの主査より御報告を頂きたいと思っております。
 もしカメラ撮りがございましたら,国立国会図書館からの送信サービスに関する権利制限規定に係るまとめについての事務局説明までとさせていただきますので,御了承願います。
 まず,法制問題小委員会の審議の経過につきまして,主査の私から概要を報告させていただきます。資料3-1をごらんいただければと思いますけれども,今期の法制問題小委員会における審議の経過につきまして,資料3-1に基づき御報告いたします。
 今期の法制問題小委員会では,著作権法第30条に規定する私的使用のための複製に係る権利制限規定について,関係者からのヒアリング等を通じ,論点の整理を行うとともに,国立国会図書館からの送信サービスに係る権利制限規定について検討をいたしました。
 また,これらに加え,いわゆる「間接侵害」に係る課題を司法救済ワーキングチームにおいて,また,「インターネット上の複数者による創作に係る課題」を契約・利用ワーキングチームにおいて,それぞれ検討が行われました。そして,一定の取りまとめができ上がったところでございますので,これらについて簡単に御報告をいたします。
 2ページでございますけれども,「著作権法第30条について」でございます。まず,著作権法第30条に規定されている私的使用目的の複製に係る権利制限規定については,先ほど御紹介しましたけれども,ヒアリング等を行いまして,これを通じて論点の整理をいたしましたので,今後は,政府の知的財産戦略本部からの提言や関係者の意見等を踏まえ,必要に応じて課題を抽出して適宜検討する,このようにしております。
 関係団体からのヒアリング等を通じてまとめました論点整理につきましては,別紙2にまとめてございますので,後ほどごらんいただければと存じます。
 次に,国立国会図書館からの送信サービスに関する権利制限規定についてでございます。これに関しましては,電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議において示されました検討結果を踏まえ,法制問題小委員会において検討いたしました。
 その結果,一定の範囲における国立国会図書館から公立図書館等への送信サービスの実施や,送信先におけるプリントアウト等のための権利制限規定を設けることが適当である,このような結論を得ているところでございます。
 本件につきましては,後ほど分科会においても御議論いただきたいと思っており,検討結果の詳しい内容につきましては,この後,事務局から説明していただければと思っております。
 次に,2ページ,3ページにわたって,司法救済ワーキングチームについて紹介がございます。司法救済ワーキングチームの健闘について御報告をいたします。
 いわゆる「間接侵害」等に係る課題については,司法救済ワーキングチームを設置して,関係団体からのヒアリングや主要裁判例の分析等を通じ,望ましい立法的措置の在り方について検討を行ってきました。
 ワーキングチームでは,一定の範囲の間接行為者について,差止め請求の対象となることが明確になるよう,立法的措置を講ずべきであることなどを内容とする「考え方の整理」が示されたところでございます。
 この「考え方の整理」の具体的な内容につきましては,別紙4をごらんいただければと思いますけれども,今後は,この「考え方の整理」を踏まえて,法制問題小委員会においてさらなる検討を行うことといたしております。
 次に,「インターネット上の複数者による創作に係る課題」について でございます。これについて御報告をいたします。
 「インターネット上の複数者による創作に係る課題」については,契約・利用ワーキングチームを設置し,現行法上の整理やその特性に関する検討を行うとともに,主に権利処理ルールの明確化という観点から,立法措置や契約等による対応の可能性等について検討を行ってきました。
 その結果,インターネット上の特性等の観点から,立法措置による対応は困難であり,契約等による柔軟な対応にゆだねる方が合理的である,このような内容の報告書が取りまとめられております。報告書の具体的な内容につきましては,別紙5を御覧いただければと思います。
 以上,極めて簡単でございますけれども,私からの報告とさせていただきます。  なお,法制問題小委員会の委員の皆様方,ワーキングチーム員の方々も含めて,今期を通じ精力的に御議論を頂いております。この場をかりて,皆様方にお礼を申し上げたいと存じます。
 私からは以上でございます。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
 それでは引き続きまして,国会図書館からの送信サービスに係る権利制限規定に係るまとめに関連しまして,説明をさせていただきたいと思いますが,内容に入ります前に,法制問題小委員会で検討いただいた前提となります,電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議での検討結果報告の概略を少し説明させていただきたいと思います。資料3-2,3-3としまして,検討会議の報告の本体,そして概要を配布させていただいております。説明は,資料3-2の概要に基づいて行いたいと思います。
 まず,検討の経緯といたしましては,平成22年3月から6月にかけまして,デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会が開催されまして,その中で,様々な検討事項につきまして示されたところでございます。
 そして,文部科学省で検討すべきものといたしまして,デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項,出版物の権利処理の円滑化に関する事項,出版者への権利付与に関する事項について,文部科学省で検討すべしということとなったわけでございます。
 この結果を受けまして,平成22年11月に当検討会議が設置され,14回にわたる検討を実施し,昨年12月21日に検討結果の報告が取りまとめられたところでございます。
 次のページをごらんいただきたいと思います。検討事項の1番目といたしましてのデジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項でございます。その中で,国会図書館からの送信サービスの実施について検討が行われたところでございます。
 国会図書館のデジタル化資料の活用の在り方は喫緊の課題であり,早期の実現を目指し,戦略的に取り組むべきとの視点に基づきまして,各家庭までの送信を目標としつつ,その第1段階として,国会図書館のデジタル化資料を,一定の範囲,条件のもとに公立図書館等で利用可能とできるよう,著作権法の改正を行うことが適当と整理をされているところでございます。
 対象出版物の範囲におきましては,市場における入手が困難な出版物とするということ,利用方法におきましては,公立図書館等における閲覧とともに,一定の条件下における複製を認めることが適当であるという形で整理されております。
 また,それ以外の事項といたしましては,国会図書館の蔵書を対象としました検索サービスの実施についてでございます。国会図書館のデジタル化資料を検索対象として本文検索サービスの提供が重要であるということが整理されているところでございますけれども,検索結果の表示方法等については,今後,関係者間の協議を進めていくことが必要である。
 デジタル化資料の民間事業者等への提供につきましては,そのための環境整備を行うための関係者間における協議の場の設置ですとか,有償配信サービスの実験的な事業の実施なども検討することが必要であるとまとめられたところでございます。
 2番目の検討事項であります,出版物の権利処理の円滑化に関する事項におきましては,さらなる電子書籍市場の発展に向けた出版物に係る権利処理の円滑化のため,中小出版者や配信事業者などの多様な主体によるビジネス展開の実現や,また,「孤児作品」などの権利処理の円滑化を目的とした,「権利処理を円滑に行うための仕組み」が整備されることが必要であると示されたところです。
 具体的な方策の在り方としましては,出版物に係る情報を集中的に管理する取組,権利処理の窓口的な機能を果たす取組,権利処理に係る紛争の処理に資する取組の3点が示されているところであり,それらにつきましては,その実現に向けて,権利者,出版者,配信事業者などの関係者の具体的な協議を行うとともに,関係府省が積極的な関与,支援を行うことが重要であると整理されたところでございます。
 次のページにありますが,3つ目の検討事項であります,出版者への権利付与に関する事項につきまして,まず,「出版者への権利付与」の意義,必要性といたしましては,電子書籍の流通と利用の促進の観点,出版物に係る権利侵害への対応の観点の2点から,検討が進められたところでございます。
 電子書籍の流通と利用の促進の観点から,積極的な意見として,権利処理の進展につながっていくことなどが示されたところでございますけれども,新たな権利者が増えることに対する新規参入を阻む可能性の存在や,電子書籍市場に与える影響についての経済的,社会的検証を行うことが必要であるといった,さらなる検討を要するといった御意見があったところです。
 また,権利侵害への対応の観点といたしましては,出版者が主体的に対応措置を図ることの必要性については意見が一致したところでございますけれども,具体的な対応方策として,出版者への権利付与,さらには,他(ほか)の現行制度における対応ですとか,現行法「出版権」の改正など,様々な方策が考えられるということで,さらなる検討が必要であるという形で整理されたところでございます。
 出版者への権利付与につきましては,今後,出版者等が中心となり,電子書籍市場に与える全般的な影響について検証が必要であるということ,そして,法制面に係る課題の整理などにつきましては,文化庁において専門的な検討を実施すること,その上で,電子書籍市場の動向を注視しつつ,幅広い立場からの意見を踏まえ,制度的対応を含めて,早急な検討を行うことが適当であるという形で整理されたところでございます。
 以上が,電子書籍の検討会議の検討結果の報告でございます。
 今御説明させていただきました,国会図書館からの送信サービスに係る権利制限の方向性が整理されたところでございますので,法制問題小委員会につきまして,その内容について御検討を頂いたところでございます。
 別紙3の資料をごらんいただきたいと思います。これが,法制問題小委員会の検討結果をまとめさせていただいた資料でございます。
 1ページ目の真ん中,第1節,検討の背景のところをごらんいただきたいと思いますが,国立国会図書館における図書館資料のデジタル化の状況といたしまして,平成21年,著作権法の一部改正によりまして,国立国会図書館におきましては,納本直後に図書館資料に係る著作物のデジタル化をすることが,権利制限規定の創設により可能となったところでございます。
 それ以降,国立国会図書館では,積極的にデジタル化が進められており,現在,210万冊のデジタル化がされているところでございます。
 デジタル化された資料といたしましては,昭和前期刊行図書や雑誌を中心に進められているところであり,レコードや映像フィルムなどのデジタル化につきましては,今後,関係者との協議によることとされているところでございます。
 具体的な内容につきましては,3ページ目以降をごらんいただきたいと思います。こちらが個々の検討結果を整理しているところでございます。
 まず,送信サービスの実施に係る基本的な考え方といたしましては,国立国会図書館からの送信サービスの実施が著作者や出版者の利益を不当に害せず,更に,電子書籍市場の形成,発展が阻害されないよう十分に配慮した上で,許諾を得ることなく送信が可能となるといったところにつきまして,権利制限規定を設けることが適当であると整理されているところでございます。
 2といたしまして,送信サービスに必要とされる限定でございます。ここでは,大きく3点に分かれておりまして,国立国会図書館からの送信先,送信サービスの対象となる出版物の範囲,そして,送信されたデジタル化資料の利用方法に係る限定が整理されているところであり,それぞれについて検討を頂いたところです。
 まず,国会図書館からの送信先でございます。これにつきましては,幅広く国民に利用されることが重要であるといったところから,まず,公立図書館が対象と考えられるところですけれども,それに限られるものではなく,大学図書館などを含め幅広く送信先として認められることが適当であるという考えに基づきまして,具体的には,著作権法31条の適用がある図書館等の範囲を参照した上で整理することが必要であるという形で,この考え方が適当であると示されたところでございます。
 2番目の,対象出版物の範囲でございます。4ページ目をごらんいただきたいと思います。対象出版物の考え方といたしましては,市場において入手することが困難な出版物を送信サービスの対象とすることが適当であり,具体的には,著作権法31条1項3号にあります,「絶版その他これに準ずる理由により入手することが困難な図書館資料」の考え方を参考にした上で,出版物の範囲を策定するべきであるという考え方が適当であるという形で整理されているところでございます。
 また,入手困難であるかどうかの確認を個別に行うことは,実際困難であるという部分があるところから,個別に確認すること以外の手法や基準につきましては,関係者間の協議において定められることが適当であると整理されたところです。
 また,入手困難な出版物のうち,著作者等からの求めに応じて一定のものを対象から除外するための仕組みを導入することも必要であるということが,検討会議の報告で示されているところであり,法制問題小委員会でも,その点,検討を頂いたところでございますけれども,1つといたしましては,入手することが困難であった出版物が再度流通する,いわば復刊など,出版物の改めての出版計画が存在するといったことにつきまして,除外するような仕組みを導入することが必要であるという形で御意見を頂いたところです。
 また,それ以外の出版物を除外する仕組みなどにつきましては,改めて検討などが必要であるという御意見を頂いたところです。
 3番目といたしましては,デジタル化資料の利用方法です。デジタル化資料の同時閲覧につきましては,国民の出版物へのアクセスのさらなる向上が喫緊の課題であるということを踏まえて,所蔵冊数を超える同時閲覧については,やはり認めることが適当であると考えるという形でまとめられたところでございます。
 また,送信先におけるプリントアウト等の複製につきましては,出版物が絶版等の状態にある市場で入手困難なものに限られているというところもあることから,著作権法31条1項1号で認められる複製の範囲であれば,著作者や出版者の利益を不当に害することには基本的にはならないのではないかという考え方については,適当であると整理されたところでございます。
 なお,送信先におけるデジタル化資料の複製物の提供が法令により適切に行われることが担保されることが必要であるといったことと,あとは,当該複製物の提供を電子媒体の複製物によって行うことについては慎重になる必要があるところから,具体的な在り方を定めた基準が関係者間において策定されることが必要であるという形で,整理されたところでございます。
 以上が,法制問題小委員会で御議論いただいた結果でございます。説明は以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ただいま,「国立国会図書館からの送信サービスに関する権利制限規定」の在り方について,検討会議及び法制小委の御説明があったところでございます。この点,今御紹介のあった内容につきましては,御質問も含めて御意見を賜りたいと考えております。どうぞ御遠慮なくお出しください。
 どうぞ。
【桐畑委員】
 一般社団法人日本映像ソフト協会の桐畑です。国立国会図書館からの送信サービスに関する権利制限について,一言申し述べます。
 このまとめで打ち出された方針は,検討会議での真摯(しんし)な御審議の結果だと思っておりますが,今回,権利制限規定を設けるに当たっては,必要な範囲にとどめていただくよう,お願いいたします。
 当協会,日本映像ソフト協会は,国立国会図書館より平成20年12月2日付の文書にて,頒布権により保護されている映画の著作物について,館外への提供を可能とする権利制限を要望している事実はないとの御説明を受けております。
 したがいまして,映画については新たな権利制限規定を設ける必要はありませんので,送信サービスに係る権利制限規定をつくるに当たっては,今回,検討の対象となった種類の著作物に限定していただくようお願いいたします。
 以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。どうぞ。
【常世田委員】
 国会図書館の資料,主に印刷物でありますけれども,デジタル系のコンテンツとして配信されるようになったというのは,非常に画期的なことだと思っております。
 ただ,一部誤解があるのは,国会図書館の資料を国民に提供するというのが初めてだと考える方もいらっしゃるのですが,これは間違いでありまして,これまでも国会図書館で所蔵されている資料については,大学図書館や公立図書館までは貸し出すことができて,そこで広く国民が利用してきたというのもありますので,そういう意味では,国民の利用ということで考えれば,同じレベルのサービスがデジタルによって継承されたということでありますので,そのことも確認するべきだと思っております。
 それから,電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議,資料3-3になりますけれども,6ページ,(1)送信サービスの実施についてというところの2つ目のマルの4行目に,「特に障害者や高齢者へのアクセシビリティについても十分に配慮されることが望ましい」と入っております。これも会議で再三協議されたものでありますけれども,具体的な方策が示されておりませんので,障害者の権利条約の批准というのも近づいておりますので,これについての具体的な配慮が必要と考えます。社会全体のバリアフリーという傾向も強まっていますので,これについては,例えば視覚障害者が,パソコンを使って音声化して,資料が耳から聞けるということが簡単に行われるような,技術的な配慮がされるべきだろうと考えています。
 それから,同じ資料3-3の8ページでありますけれども,マル1の国会図書館からの送信先の限定についての3つ目のマルのところであります。4行目,「高校生等による探求型学習等における」というところで,「学校図書館についても対象とすべきではないかとの意見があった」ということで,これも現行で法律上,厳密に当てはめてしまいますと,小中学校等は対象とされない可能性がありますので,国民に広く知的な財産を提供するのが今回の大きな目的でありますし,特に詰め込み学習ではない,いろいろなものを考えていく能力を育てるというのは,今,教育の重要な目的になっていることから考えますと,様々な資料を小,中,高で使われるということが非常に重要ですので,小,中,高の図書館に配信ということが重要なポイントになるだろうと思います。
 また,先生方が様々な教材を使って勉強するためにも,様々なコンテンツが学校図書館を通じて提供されるのは重要なことであると考えております。
 これらのことについて十分配慮されることが,重要だろうと思います。以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかに御質問,御意見ございましたら。どうぞ。
【金原委員】
 国会図書館からのデジタルデータの配信について,異論があるわけではありません,対象となる出版物の範囲については,今後の関係者間の協議に委(ゆだ)ねられるということですので,是非,その限定については明確にやっていただきたい,明確に区分をしていただきたいと考えております。
 国会図書館からの配信については,民間の事業者による電子配信を補完する目的であろうということですので,それが実行されていないようなものについて,公共図書館,あるいは大学図書館に配信されるということについては,大変意義のあることであると思います。しかし,その配信が,民間が行う電子配信の芽をつぶすことのないよう,例えば対象となる出版物ということではなくて対象となる著作物単位で考えていただきたい。1つの著作物が複数の出版物によって流通しているということもありますので,対象となる出版物の限定というより,むしろ対象となる著作物の限定の範囲を検討するということに是非していただきたい。
 また,今後の電子配信を促進するという意味からも,ちょっと繰り返しますけれども,民間事業者の電子配信されているものも含めて,それの障害とならないように,著作物の範囲の限定を明確にやっていただきたいと思います。
 以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。どうぞ。
【松田委員】
 今日,別紙3でまとめられている内容につきましては,現段階の整理としては妥当であると私は考えております。これは,既に210万冊の整理が行われている,入力が行われているということになりますけれども,更にこれを継続してもらって,ということは,予算をつけてもらって,継続しなければならないわけであります。  恐らく一定の数量がほぼ完成したというのは,700万部ぐらいではないかなと思っておりますが,そこまで早く継続してもらうためには,国会図書館内での利用だけで,そういう予算を投入できるというのではないと思いますので,広い利用がある程度できるように検討しなければならない。
 そういう状況になったときの国立国会図書館の書籍の意味が,日本中から検索ができて,それにアクセスできるという社会的基盤をつくることになるわけでありまして,これは日本の知識,文化だけではなく,産業も発展する要素を持つことになると思います。
 そういう意味で,予算の継続と,それから,日本の文化,産業の発展の原資とするという意味におきましても,著作権法を超えた大きな問題といいますか,プロジェクトだなと思っております。
 著作権法が,それによって改正できる点はどんどんして,この政策を促進すべきだろうと思っています。これが何年もかかるようなことではいけないと思っています。できるだけ審議を促進できるように,この分科会でも検討すべきではないかと私は考えております。
 あわせて,民間の書籍の電子的な流通が促進されつつありますから,これとの調整が必要だというのは,まさに今,意見があったとおりでございます。それについても賛成であります。
 しかし,それについては技術的に不可能ではない。言ってみますと,何らかの制度をつくることによりまして,同じ目的に,指摘されておりますけれども,その流通の範囲と利用の範囲というものを,権利者ないしは出版者も含めた権利者側の判断によって行われるという制度をつくることによって,十分可能であると考えるわけであります。
 以上,2つの意見を述べまして,このまとめを更に分科会において促進していくように,現段階で意見を述べさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかに御意見,御質問ございますか。どうぞ。
【瀬尾委員】
 電子書籍に関して,いろいろな動きの中で,国会図書館のデジタル化というのは今回,先ほど常世田委員からもあったように,大変大きなことなのかなと思います。
 ただ,もう一つの意見があったように,電子書籍の民間の市場の形成を阻むようなことがあってはいけないだろうとも考えますし,大変微妙なかじ取りが必要なのかなということを感じますが,先ほど御意見の中で,これまであったサービスをそのままというお話もございましたが,私もこの議論に参加している中で,これまで,例えば壊れそうだから出せなかったような資料も,貸出しすることができたり,窓口がいろいろなところで見られるようになったりして,今まで以上の利便性を提供することには,これで成功するのではないかなと思います。
 ですので,その新たな利便性を更に拡大していき,かつ電子市場の形成を阻まないというようなバランスのまず第1歩ということを感じておりますので,是非この方向というのは進捗(しんちょく)するべきなのではないかなと私は思います。
 もう一つですが,実は先ほどの電子書籍の報告書の中で,情報の集中処理等の機関なり仕組みが必要であるという結論が1つございました。実は,国会図書館のデジタル化によって,書式データのメタデータ,いわゆる情報が,インデックスデータがどんどん生成されてきます。これは単なる目録として使うだけではなくて,そのデータ自体が,日本のコンテンツのデータベースとしての利活用が可能になってくるということ,そして,それが先ほどの集中処理機構のようなところで活用されれば,これは国会図書館の収集のデジタル化の意義が二重にも三重にも高まってくるのではないかなと感じます。
 また,これが,納本制度によって資料が収集されるという国会図書館の基本機能が,単なる資料の収集ではなくて,その資料のインデックスをつくって,インデックスデータをためていくことによって,集中情報処理の基本になる可能性もあるのではないかなと感じます。
 ですので,単なる書籍のデジタル化ということだけではなくて,国会図書館のデジタル化は,今後の日本の電子書籍若しくは権利処理において,非常に有効な意義を持つのではないかなと私は考えます。
 ですので,これをはじめとして,より広範に,かつ,民間の市場形成を阻まない形で進捗(しんちょく)していくということは大変重要だと思いますので,是非こういう方向は継続して進捗(しんちょく)していただきたいと思います。
 以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ。
【福王寺委員】
 国立国会図書館の資料デジタル作業そのものについて,一言申し上げたいと思います。
 昨年に国会図書館へ行きまして,資料のデジタル化を見学させていただきました。その中で,書籍のカバーや箱や帯等の装丁部分が納本,収蔵時に捨てられ遺棄されています。これは極めて大きな問題だと思います。本の中身については,もちろんデジタル化しているわけなのですけれども,装丁部分や箱,カバーにつきましてはデジタル化もされていないということがありまして,それについて,私どもの日本美術著作権連合の7つの構成団体の中に,日本図書設計家協会があります。装丁家の先生方の集まりですね。紙の風合いや表紙の布地や箔(はく)押し,そして箱を含めて書籍としての一つの作品になっていると思います。これについては,図書設計の装丁家の先生のみならず,書籍というものにたずさわる全(すべ)ての人の問題になると思います。
 表紙,帯,箱の装丁部分も保存し,収蔵していただきたいということはもちろんですけれども,遺棄されてしまう装丁のデジタル化も本文と一緒にしていただきたいということを強く思います。去年の12月14日に国立国会図書館へ行きまして,長尾館長と直接,お会いして意見書を提出してきました。このことについて,著作権分科会でも御報告しなければならないと思いまして,意見として申し上げました。
 デジタル化されないまま捨てられてしまう表紙や帯や箱の装丁について,委員の先生方にも考えていただければ有り難いと思います。以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。どうぞ。
【松田委員】
 今日,別紙3でまとめられている内容につきましては,現段階の整理としては妥当であると私は考えております。これは,既に210万冊の整理が行われている,入力が行われているということになりますけれども,更にこれを継続してもらって,ということは,予算をつけてもらって,継続しなければならないわけであります。  恐らく一定の数量がほぼ完成したというのは,700万部ぐらいではないかなと思っておりますが,そこまで早く継続してもらうためには,国会図書館内での利用だけで,そういう予算を投入できるというのではないと思いますので,広い利用がある程度できるように検討しなければならない。
 そういう状況になったときの国立国会図書館の書籍の意味が,日本中から検索ができて,それにアクセスできるという社会的基盤をつくることになるわけでありまして,これは日本の知識,文化だけではなく,産業も発展する要素を持つことになると思います。
 そういう意味で,予算の継続と,それから,日本の文化,産業の発展の原資とするという意味におきましても,著作権法を超えた大きな問題といいますか,プロジェクトだなと思っております。
 著作権法が,それによって改正できる点はどんどんして,この政策を促進すべきだろうと思っています。これが何年もかかるようなことではいけないと思っています。できるだけ審議を促進できるように,この分科会でも検討すべきではないかと私は考えております。
 あわせて,民間の書籍の電子的な流通が促進されつつありますから,これとの調整が必要だというのは,まさに今,意見があったとおりでございます。それについても賛成であります。
 しかし,それについては技術的に不可能ではない。言ってみますと,何らかの制度をつくることによりまして,同じ目的に,指摘されておりますけれども,その流通の範囲と利用の範囲というものを,権利者ないしは出版者も含めた権利者側の判断によって行われるという制度をつくることによって,十分可能であると考えるわけであります。
 以上,2つの意見を述べまして,このまとめを更に分科会において促進していくように,現段階で意見を述べさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかに御意見,御質問ございますか。どうぞ。
【瀬尾委員】
 電子書籍に関して,いろいろな動きの中で,国会図書館のデジタル化というのは今回,先ほど常世田委員からもあったように,大変大きなことなのかなと思います。
 ただ,もう一つの意見があったように,電子書籍の民間の市場の形成を阻むようなことがあってはいけないだろうとも考えますし,大変微妙なかじ取りが必要なのかなということを感じますが,先ほど御意見の中で,これまであったサービスをそのままというお話もございましたが,私もこの議論に参加している中で,これまで,例えば壊れそうだから出せなかったような資料も,貸出しすることができたり,窓口がいろいろなところで見られるようになったりして,今まで以上の利便性を提供することには,これで成功するのではないかなと思います。
 ですので,その新たな利便性を更に拡大していき,かつ電子市場の形成を阻まないというようなバランスのまず第1歩ということを感じておりますので,是非この方向というのは進捗(しんちょく)するべきなのではないかなと私は思います。
 もう一つですが,実は先ほどの電子書籍の報告書の中で,情報の集中処理等の機関なり仕組みが必要であるという結論が1つございました。実は,国会図書館のデジタル化によって,書式データのメタデータ,いわゆる情報が,インデックスデータがどんどん生成されてきます。これは単なる目録として使うだけではなくて,そのデータ自体が,日本のコンテンツのデータベースとしての利活用が可能になってくるということ,そして,それが先ほどの集中処理機構のようなところで活用されれば,これは国会図書館の収集のデジタル化の意義が二重にも三重にも高まってくるのではないかなと感じます。
 また,これが,納本制度によって資料が収集されるという国会図書館の基本機能が,単なる資料の収集ではなくて,その資料のインデックスをつくって,インデックスデータをためていくことによって,集中情報処理の基本になる可能性もあるのではないかなと感じます。
 ですので,単なる書籍のデジタル化ということだけではなくて,国会図書館のデジタル化は,今後の日本の電子書籍若しくは権利処理において,非常に有効な意義を持つのではないかなと私は考えます。
 ですので,これをはじめとして,より広範に,かつ,民間の市場形成を阻まない形で進捗(しんちょく)していくということは大変重要だと思いますので,是非こういう方向は継続して進捗(しんちょく)していただきたいと思います。
 以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ。
【福王寺委員】
 国立国会図書館の資料デジタル作業そのものについて,一言申し上げたいと思います。
 昨年に国会図書館へ行きまして,資料のデジタル化を見学させていただきました。その中で,書籍のカバーや箱や帯等の装丁部分が納本,収蔵時に捨てられ遺棄されています。これは極めて大きな問題だと思います。本の中身については,もちろんデジタル化しているわけなのですけれども,装丁部分や箱,カバーにつきましてはデジタル化もされていないということがありまして,それについて,私どもの日本美術著作権連合の7つの構成団体の中に,日本図書設計家協会があります。装丁家の先生方の集まりですね。紙の風合いや表紙の布地や箔(はく)押し,そして箱を含めて書籍としての一つの作品になっていると思います。これについては,図書設計の装丁家の先生のみならず,書籍というものにたずさわる全(すべ)ての人の問題になると思います。
 表紙,帯,箱の装丁部分も保存し,収蔵していただきたいということはもちろんですけれども,遺棄されてしまう装丁のデジタル化も本文と一緒にしていただきたいということを強く思います。去年の12月14日に国立国会図書館へ行きまして,長尾館長と直接,お会いして意見書を提出してきました。このことについて,著作権分科会でも御報告しなければならないと思いまして,意見として申し上げました。
 デジタル化されないまま捨てられてしまう表紙や帯や箱の装丁について,委員の先生方にも考えていただければ有り難いと思います。以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。どうぞ。
【龍村委員】
 弁護士の龍村でございます。図書館に関しては,著作権法31条の適用が前提になるかと思いますが,同条には様々問題があり,例えば1項3号の入手困難性の点を見ましても,「絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難」という,規定振りが,一般条項的で,その内容が一見して明らかではない形になっております。
その基準は「関係者間における協議」で定めるとのことですが,本来は,政省令でその内容を埋めるに値するものと思われますし,パブリックコメントも取ってもいいような内容かと思いますので,関係者間における協議は十分充実させる必要がありましょうし,その「関係者」の範囲も広く考えるなり,利用者の視点を含め広く意見を聞く場を経ないと,事実上,一部の方に白紙委任することに近いようなことになるのではないかと懸念する次第ですので,その点,御留意いただく必要があるのではないかと感じたところでございます。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにはございますか。どうぞ。
【広崎委員】
 経団連の立場で,一言お話しさせていただきたいと思いますが,今回の検討内容,まとめられた内容を,まずは全体的に非常に妥当な方向ではないかなと,一歩踏み出したという感じで大変評価しております。
 その上で,2点お願いしたいと思いますが,1点目は,別紙3の4ページの中ほどにございますが,先ほども御指摘がございましたように,「市場において入手困難な出版物」という,やや定性的な表現があって,これは引き続き検討するということになってございますが,これについては,市場の活性化と,それから,こういう大規模データベースの国としての最大活用の両方が両立するような方向で,引き続き検討を深めていただきたいというのが1点目でございます。
 2点目は,先ほど瀬尾さんの方からメタデータのお話がございましたが,これは非常に重要な観点だと思ってございます。あるいは,別紙4の中にもありましたが,アクセス頻度,どのジャンルをどういうふうにアクセスしたかというデータも,公開できるかどうかは別にして,先ほどのメタデータとともに,非常に重要なナレッジベースの資産だと思います。
 したがって,このあたりを今後どのように産業,あるいは国益に結びつけていくのかという観点からの,いろいろな規制の緩和とか,あるいは新たな法的な仕組みの設定とか,是非深めていただきたいと思っております。
 といいますのは,1つは,今,国際的には,私ども経団連も加わってございますOECDの,産業諮問委員会を通じてOECDと議論しておりますが,OECDでは,2012年,2013年のタイムフレームの新たな横断課題の一つとして,ナレッジネットワーキングによって,非常に厳しい世界経済の中で,新たな持続可能な成長の種をつくっていこうじゃないかということが国際的に議論されております。
 そういった中で,日本がリーダーシップをとっていくためには,先ほど申し上げたような資源としての情報の基盤をしっかりつくっていくということが大事だろうと思われますので,是非メタデータ,あるいはアクセスデータ,その他,こういった2次データをどのように活用していくかといった観点も,是非今後の検討に入れていただければと思います。
 以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。よろしゅうございますか。
 「国立国会図書館からの送信サービスに関する権利制限規定」というものにつきまして,法制小委で検討した方向性については御了解いただいていると,今,承知したところでございます。
 本日,更に8委員から,様々な御意見をちょうだいしたわけでございますけれども,こうした御意見を留意した上で,法制小委のまとめに示された内容に基づいて,制度改正を含めた必要な措置のための準備作業を進めていく,このことをこの分科会において了承するといたしたいと存じますけれども,いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥分科会長】
 ありがとうございます。それでは,そのように進めていただきたいと存じます。
 次に,法制問題小委員会の審議の経過に係る報告において,ほかにもございましたので,その他の事項について,御質問,御意見がございましたらお出しください。
 その点はよろしゅうございますか。どうぞ。
【椎名(和)委員】
 30条の関連で,ちょっと申し上げたいのですが,利用の対応の変化拡大というものが,著作権法の想定するところをはるか超えて既成事実化していくという現実があると思うのですが,それに対応する権利制限は議論されるのですけれども,著作権法の役割として非常に重要な部分である,創造のサイクルの維持という観点からの議論はなかなか進んでいないと思います。それの象徴的なものに補償金制度というのがあるのではないかと思います。
 現在,東芝と権利者で裁判になっていますが,それは特定の録画機器が対象か,対象でないかという部分であって,この制度全体の帰趨(きすう)を決めるような裁判でもないわけですけれども,補償金制度に関する議論が全く進まないということが,非常にもどかしく思っています。なおかつ,裁判の第一審,第二審の判決を見ますと,この制度の不備というようなこともかなり示唆されているのではないかと思っております。
 去年の7月のヒアリングの際にも申し上げたのですが,録画の問題もありますが,録音に関しては,技術的保護手段と補償の必要性に関する関係者間の大きな立場の差異というものがないにもかかわらず,この点は全く進展していないというのは非常に遺憾でございます。
 本日は今期最後の分科会ということでございますので,来期以降,この点について再度議論を深めていただくことをお願いしたいと思います。以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。どうぞ。
【大寺委員】
 民放連の大寺でございます。今,椎名委員の方からありました著作権法30条の問題ですけれども,現在,係争中で,権利者サイドは最高裁に上告していますが,この事案は,司法判断に委(ゆだ)ねたいと思っております。
 ただ,今,椎名委員もおっしゃいましたけれども,個人による私的使用と,権利者の立場というものについて,きちんとした整合性をとった調和ある解決策を早急に見出(いだ)せなくてはいけないのではないかと思っております。
 また,瀬尾委員から,1年前だったと思うのですが,文化庁に対して,こういう問題も含めてアクションプランという形で,具体的な問題をきちんと時期を決めて1つ1つ解決していくということを提言されたと思います。是非,今回の問題も含めまして,法制問題小委員会の方で,いろいろある議論についても,検討をそのまま続けていくというよりも,一定の時期に結論を出して,それを具体的な法改正に結びつけるというふうに道筋をつけていただければと思っております。
 以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。よろしゅうございますか。
 先ほど御紹介いたしましたように,30条2項の問題もヒアリングの対象として受けているところでございますので,今後,関係者の意見等を踏まえ,必要に応じて課題を抽出して検討を進めるという,法制小委としては考えをしているところでございます。本日,2委員からの御意見も踏まえて,今後につなげていきたいと思っております。
 それでは,法制問題小委員会の御報告につきましてはこのぐらいにしたいと思います。
 次に,国際小委員会の審議の経過につきまして,道垣内主査から御報告を賜りたいと存じます。よろしくお願いいたします。
【道垣内委員】
 資料4-1と4-2でございます。4-1を見ていただきながらが,いいかと思いますけれども,私の方は4-2に基づいて御報告申し上げます。
 審議の経緯といいますか,検討の背景にある留意点は資料4-1に書いてあるとおりでございまして,そういうことを踏まえまして,本年度は,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方,2番目が,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,3番目として,知財,知的財産権及び開発の問題,フォークロアの問題への対応の在り方,その3点について検討いたしました。
 最初のインターネットによる海賊行為ですけれども,国としての,他(ほか)の国あるいは他(ほか)の地域との話合い,協議を踏まえまして,更に,民間の団体として一般社団法人日本レコード協会及び一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構からのヒアリングを行いました。これは,国境を越えたこの種の侵害行為については,個々の権利者では費用面等の点で限界があるものですから,団体による対応が必要ということでヒアリングをしたわけでございますが,政府のレベル,あるいは民間レベルでの対応はこのまま進めていただければということでございます。
 2番目,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方で,WIPOで議論されている幾つかのテーマについての検討でございます。このうち,従来懸案でありました,視聴覚実演の保護につきましては,今年の6月に外交会議が開催される方向になりつつあるという報告を受けております。
 そのほか,放送機関の保護,それから,権利の制限と例外について,まだ議論が定まっていない部分がありますけれども,我が国として,立場を明らかにして対応していくということでございます。
 3番目,特にフォークロアの議論がWIPOで進んでいるわけでございますけれども,それにつきまして,各国の動きがまだ定まっていないといいますか,全体としてどういう方向になるのかということ自体,まとまりつつあるとは言えない状況ですので,我が国としての対応の在り方について引き続き検討する。
 そのようなことを小委員会で議論いたしました。以上でございます。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。事務局からはよろしいですね。
 それでは,ただいまの御説明に基づきまして,御質問,御意見がございましたらお願いいたします。どうぞ。
【瀬尾委員】
 1つ質問なのですけれども,審議の経過の中で,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方というところで,権利者単独では費用や体制面で限界があるとしつつ,「団体として連携するための体制強化」ということが書いてございます。また,関係国,機関との連携ということで書いてございますけれども,具体的な機関とか連携する仕組みの提案という,何か新しい御意見等はあったのでしょうか。そこをお伺いしたいのです。
【道垣内委員】
 まだそこに至る前の段階で,現状の把握というので,今年度の検討は終わっております。
 ただ,御存じのように,個々の権利者では到底,侵害の把握自体が困難ですし,対応にも,コスト面で全く合いませんので,団体として動くのが効率的で,かつ,現実的に,先ほど申し上げた団体の活動は結構,実を結んでおります。例えば,中国のインターネットの運営者との間で話合いをして,削除の実績も上がっているようなところもございます。
 ですので,そういった活動は今後も続けていくべきで,国として何ができるかというのは次の問題かと思います。以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか,御意見,御質問。どうぞ。
【広崎委員】
 知財と開発問題,(3)に関しての質問ですが,「相互に合意可能な方策」,「相互理解を深める」云々(うんぬん)というのは当然だと思うのですが,日本としてどういう主張をしていくのかといったところは,合意形成できているのでしょうか。生物遺伝子情報なども,バイオ関係で非常に重要な問題ですが,これから更にコンテンツサービスとか新しい産業を考えていくと,フォークロアに関しても,ちょっと看過できないところがあるかなと思うのですね。
 非常に有名な話で,黒澤明さんの『七人の侍』,これが,『荒野の用心棒』にそっくりそのままフレームワークをまねられてしまったというのがございますね。それはそれでいいのですけれども,今後,「クール・ジャパン」,政府の方針で,新産業を興こそうという国としての合意があるのであれば,こういったフォークロアも含めて,国としてどういう基本方針で臨むのかということが,あってもよいのではないかと思うのですが,この点につき,どういう議論がされたかというのを聞かせていただければと思います。
【道垣内委員】
 国の立場について,事務局からお願いします。
【佐藤国際課長】
 ただ今の御質問でございますけれども,フォークロア,あるいは知財と開発の関係で,基本的に途上国の持っているフォークロア等をどう保護するのか,途上国側からの要求の案件になっております。途上国側では,例えば著作権法との関係ではパブリックドメインになっているものだと思いますけれども,そういうものを,条約化による権利付与をして保護していくべきだという主張と,先進国側は,著作権等IP制度との関係で条約化して保護を義務化するのではなく,各国に委(ゆだ)ねられるべきという主張が対立して議論がなされているような状況でございます。
【土肥分科会長】
 よろしゅうございますか。
 ほかには。どうぞ。
【瀬尾委員】
 実は,国際的な問題に関しては,今までは条約等,そういうことについてが,メーンだったのですが,今後,TPPとか国際的なものが非常に重要になってくる中で,単純に条約とか,今までの枠を超えた意思決定や何かをしなければならないので,今まで以上に,非常に重要な立場になるのだろうと考えています。
 先ほど広崎委員がおっしゃったポリシーの話ですが,ポリシーももちろん必要ですし,その後で,どういう仕組みが必要かということと,日本の海外との連携についての具体的な構想まで踏み込んだ強い体制を持っていかないと,今後,中で幾ら決めても,国際的な環境の中で,著作権制度が偏ってしまったり,崩れてしまったりすることもありますから,外に対する強い防波堤としての役割,ポリシーというのは,非常にこれから求められていくと思います。
 ですので,今まで以上に,ポリシーとか,具体的にもっと大きな仕組みというところまで広げた上で,その後で細部にわたるような,もっと強化拡大の必要性があるのではないかなという気が私はしております。
 実際に,日本の,これから著作権制度が,ここで審議されたことがすべてではなくて,外国から切られたカードが,この審議会の頭を通り越して決まってしまうことがないとも言えないというときに,こちら側からどういうカードを切れるのかということは非常に重要なテーマになってくると思います。
 そのときに窓口となるのは,今の国際的な関係と,又はアジアの中での協調,そのような関係というものが,より一歩進んだ形で実現していかないと,かなり問題が出てくるし,ここでせっかくつくった日本の著作権制度のよさが失われたり,若しくは創造サイクルが破壊されたり,そういうことが起きないとも言えません。
 杞憂(きゆう)すれであればもちろん結構ですけれども,でも,今のうちから,そういうことを考えた上での国際間の立ち位置と方向性というのは,是非お考えいただいて,これまで以上に強い国際間の政策というのを御検討いただきたいなと思います。以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。どうぞ。
【都倉委員】
 様々な御意見を伺っていて,インターネットによる国境を越えた海賊行為,これ,海賊行為だけじゃなくて,不法ダウンロード,あるいは非正規のダウンロード,いろいろな行為が,インターネットは国境を越えて行われるわけでございますけれども,そこで,もう一回我々が思い出さなければいけないのは,数年来,我々議論いたしました保護期間の問題,これは文化庁にもう一回確認させていただければ,議論は尽くされたと私は理解しておりまして,これがいつ,どのようなアクションを起こすかということを,私は今,期待とともに不安も半分,見守っているわけでございますけれども,これはもちろん御承知のとおり,我々JASRACも取り組んでおります戦時加算の問題に深くかかわってくる問題でございます。
 インターネット時代に,国によって保護期間の散らばりということ,これは基本的なシステムの欠陥だと僕は思いまして,この議論がこの前の数年間の議論で終わっていないことを望みたいという気持ちでございます。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ。
【北川委員】
 日本レコード協会の北川でございます。初めて参加させていただきまして,何となく全体で思いましたことは,利用を拡大するという方向はすごく我々も理解できるところなのですけれども,先ほど椎名委員がおっしゃったみたいに,ものをつくる,創造していくというところが,これは,私はレコード協会なので,世界のレコード産業は今,ものすごくシュリンクしています。これは結果的には,新しい作品が生まれてくるということがなかなか難しい状況にあるということは事実でございます。
 皆さんからごらんになると,いろいろな形で保護されているではないかと言いますが,現実問題としてシュリンクしていますから,されていようが,されていまいが,シュリンクしているという事実は変わりませんので,なかなか新しいものが出にくくなっている現実があるということだけ,御理解いただければ。
 それと,都倉委員がおっしゃった保護期間の問題なのですけれども,昨年,相次いで,レコードに関します実演ですね。やっている人です。それと,それをレコード化した人で,著作隣接権,皆さんもよく御存じだと思います。これをEUで,50年から70年というふうに延ばしました。昨年11月に韓国が議会で,50年,70年とすると決めました。
 ところが,日本は著作権も,著作隣接権を含めて50年なのですね。やはり世界の,これはTPP関係なく,日本はどうするのだということを,TPPがあるからとかないからではなくて,世界の事例が50年以上となっている中で,日本に同じ,今,僕らはどうするんだというところの議論をもう一回,再開していただきたいなと切に思っておりますので,よろしくお願いしたいと思っております。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。どうぞ。
【常世田委員】
 権利制限と例外のところについて,視聴覚障害者等に関する国際文書の提案というのと図書館・アーカイブに関する権利制限という文言がありますけれども,具体的にどのような議論を重ねているのか,教えていただきたいのです。
【道垣内委員】
 これも事務局からお願いします。
【佐藤国際課長】
 権利制限の例外ということで,これは,視覚障害者等に関する権利制限と例外につきましては,途上国側からの条約提案がなされまして,それに基づいて,視覚障害者の点字とかそういう,デジタル的なところの諸外国との輸出入の関係あたりを例外扱いできないかとか,基本的には権利制限と例外につきましては,ベルヌ条約,あるいは,WCTの条約上では,スリーステップテストの範囲内で各国が必要な措置をとることができるというような状況になっておりますけれども,その中で,視覚障害者等のアクセスの関係でそういう条約提案がなされておりまして,その議論が続いております。これを条約にするのか,あるいは,条約ではないモデル規定にするのか,あるいは勧告にとどめるのかという議論の交渉が,今現在なされているところでございます。
 図書館・アーカイブの権利制限・例外に関しましても,これも途上国からの要望でございまして,特にアフリカから条約提案がなされておりますけれども,図書館の利用に関する諸外国との著作物等のやりとり等に関する提案になっております。図書館とアーカイブにつきましては昨年の冬,11月に初めて議論がなされたところでございまして,まだ各国の図書館・アーカイブの例外,権利制限の各国の経験の情報交換等の段階の議論がなされているような状況でございます。
 また,これは引き続き,本年7月のWIPO著作権等常設委員会で議論が行われる予定になっております。
 以上でございます。
【土肥分科会長】
 常世田委員,よろしゅうございますか。
 ほかにございますか。どうぞ。
【福王寺委員】
 この著作権分科会は,去年4月に開催されて,今年の1月まで時間的にかなりあき過ぎると思います。1年に1回か2回というのは余りにも会議の回数として少なくて,法制問題小委員会,国際小委員会の中では,様々な議論をされていると思いますが,著作権分科会の開催日程については,予定をしっかりと立てていただきたいと思います。
 これにつきましては,様々な理由はあると思いますが,余りにも開催日数が少ないために,意見を言う場がないということもありまして,実際問題として,保護期間の70年の問題については,国際標準からいえば,日本ははるかにおくれていると思います。
 そういう中で,戦時加算や追及権の問題もあって,これは前回の著作権分科会でも申し上げましたが,CISACでは,保護期間を70年にすれば戦時加算撤廃にするということを言っているわけですし,客観的に国際標準というものについて,日本としてもっと真剣に取り組んでいかなければいけないと思います。
 私は画家ですので,創作者の立場から申し上げていますけれども,それにつきましても,著作権分科会の開催回数が余りにも少ないということについては,次年度からよく考えていただいて,会を何か月かに1回は開催していただくということを,できれば約束していただければ有り難いと思います。著作権課で何か意見がございましたら,お願いできればと思います。
【永山著作権課長】
 それでは,私の方からお答えしますが,今年の場合,正直申し上げますと,昨年1月に,一般規定とか技術的保護手段の最終的な御報告を頂きまして,まだ法制化,立法化措置が行われていないという状況にあって,そちらの検討を,我々としては第一義的に優先してきたということ,また,法制問題小委員会において,間接侵害も含め30条問題,非常に大きな課題について御検討いただいておりますけれども,まだ検討課題の整理ということと,間接侵害については,たたき台が今年の1月に初めて整理されたということで,これから本格的に検討の俎上(そじょう)に上がってくるという,様々な状況の中で,申し訳ないことに,4月に1回,1月に1回ということになってしまったということでございます。
 次期以降については,今,法制問題小委員会で御検討いただいている内容,また,様々な国際的な環境の変化という中で,この分科会においても御審議いただく内容が当然出てくるだろうと思っておりますので,その点,今日頂いた御意見も含めまして,次期の分科会長とも御相談の上,きちんと対応していきたいと思っています。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 国際小委の御報告以外の御意見等も出ておりますので,一応このあたりで,国際小委員会の報告につきましては,本分科会において了解したという扱いにしたいと思います。
 法制小委,国際小委に対して,各委員から頂いた御意見というものを踏まえて,これから各小委員会において検討を進めていただければと思います。
 本日の議題として,(5)がございまして,その他となっておりますので,これまで審議の事項になっておりませんでしたことも含めて,御意見をお聞かせいただければと思っております。どうぞ御遠慮なく御意見をいただければ。
 どうぞ。
【中山副分科会長】
 保護期間の問題ですけれども,保護期間の延長に関する著作権法上の意味については,私なりにいろいろ意見はありますが,それはここでは置いておきまして,外交問題として話をしたいと思います。
 北川委員は,TPPと関係なくやれというお話だったのですけれども,これは,外交交渉としては考えられないまずい策だと思います。アメリカがなぜ日本に要求してくるかというと,これは経済問題であり,我が国が期限延長すれば,それだけで何の見返りもなく日本からアメリカに大量の金が流れる。したがって,ハリウッドのロビー活動によって,日本に強い圧力がかかってくるわけです。
 TPPは,著作権問題ではなくて農業問題,保険問題等々いろいろありまして,厳しい交渉になります。そのときに,どれを国策として切るか,どれをとるかという,ぎりぎりの判断になってくるわけです。その交渉の前に大事なカードを1枚無駄に切ってしまうということは,これは外交交渉としては考えられないですね。
 少なくとも,ですから,TPP交渉はどうなるか,わかりませんけれども,その前にカードを切ってしまうということは,外交交渉としては愚策だと思います。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 それでは,都倉委員,どうぞ。
【都倉委員】
 今,中山先生の専門的な御意見,私もいろいろ外交的には,交渉事は難しいことがたくさんあると考えております。また,先ほど福王寺委員からも,CISACのお話も出ました。私,現にCISACとずっとかかわっておりますので,一言,現実的にどういう,保護期間も含めた問題が……。
 先生,もしお急ぎでしたら,どうぞ御退席いただいて,悪口は言いませんので。
 CISACにおきましては,日本の戦時加算に関しては全会一致で,この理不尽な条項は凍結するべきだという結論を頂きました。これは2007年のブリュッセルの総会において,148か国,全会一致で凍結を頂いたわけでございます。
 あとは,これは戦勝国,15か国,二国間の交渉で,政府間で妥結する,政府間でアグリーをすれば,二国間において戦時加算は,凍結されるというところまで来ております。
 ですから,実は自民党・政府とも随分,我々は交渉もいたしましたけれども,まず,政権がかわりまして,またゼロに戻って,そして,また一生懸命お話をさせていただいていたら大震災ということで,今,棚上げ状態ということになっておりますが,私は,戦時加算に関しましては,日本人としてのじくじたる思いを伝えることによって前に進んだと,我々ものをつくる者としてはそういうふうに思っていますが,しかし,外交はそう甘いものではございません,先ほど御指摘があったように,その背景には,70年を期待する各国の声が強くあるということは,実感として私は感じております。
 そして,先ほども御意見の中で,この小委員会をもうちょっと頻繁にやっていただきたいと。私もこれは大賛成でございまして,毎月やられるとこっちも困りますが,年にもう一,二回あれば,ですね。我々は,技術と法律というものはいつもイタチごっこをしている,これは皆さんおわかりのことだと思いますが,いろいろな著作権侵害事象,あるいは裁判の判決みたいなものが世界中で起こっているわけですね。日本は日本なりの準備をしていかなければいけない。
 例えば,この間のインターネット企業とASCAPの訴訟で,いわゆるストリーミングの定義,それから,ダウンロードが演奏権に当たるかどうかという判決が最高裁で出て,ASCAPが全面敗訴いたしましたね。これは対岸の火事で済まないことでありまして,これからクラウド時代になって,ストリーミングというものがどのぐらい我々の音楽業界のプラスに利用できるか,はたまた,先ほど北川委員が本当に心配されていたように,シュリンクもまた助けになってしまうなんていうことは大きな問題でありまして,アメリカの最高裁というのは,上告を棄却する理由は述べる必要はないらしくて,どういう理由でASCAPが,上告が棄却されたかというのは,我々もよくわからないのですが,ASCAPが主張しておりました,ダウンロードが演奏権に当たるかどうかということは,全く却下,無視されたという結果になっております。
 ところが,さすがにアメリカ魂といいますか,これは法律がおかしいということで,これからは立法をめがけて,ASCAPは頑張るというふうに彼らは言っているわけでございます。こういう事象も,我々小委員会の中で,どうでしょう,少し勉強するといいますか,そういうことを検討して,日本にはどういう影響を与えるかということを考える機会を与えていただければ非常に有り難いと考えます。
 ちょっと長くなりましたが,以上です。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 ほかにございますか。著作権法制全般にまたがって結構でございますけれども,御意見がございましたらお出しいただければと思います。
 よろしゅうございますか。特段ございませんようでしたら,本日はこのぐらいにしたいと思います。
 本日は今期最後の著作権分科会でございますので,河村文化庁次長から再度,もう一言ごあいさつを賜れればと思います。よろしくお願いします。
【河村文化庁次長】
 それでは,審議会の事務局に成りかわりまして,一言お礼のごあいさつを申し上げます。
 今期の分科会,ちょっと回数が少ないというおしかりがございましたけれども,「私的使用のための複製」,あるいは「国立国会図書館からの送信サービスに関する権利制限規定」などの制度の在り方論,それから,国際的なルールづくりへの参画の在り方といった,大変幅広い課題について御審議を頂きまして,私どもが用意させていただいた資料,課題にとどまらず,現場からの姿勢に立った御意見や大所高所からの様々な御意見を頂きましたことに,心より感謝申し上げます。
 課題については,まだまだ来期も引き続いて検討をお願いしなければならないことがございますので,是非,また来期にもお願い申し上げるかもしれない委員の皆様には,精力的な御検討をお願い申し上げたく存じます。私どももこれまで以上に力を注(そそ)いでまいりたいと存じますので,引き続きの御指導をよろしくお願い申し上げます。
 委員の皆様方には,大変お忙しい中,また,昨今,大変寒くなってきておりますけれども,この会に御参画いただきましたこと,そして,会の内外を問わず,様々な場での御尽力を頂きましたことに改めて御礼(おんれい)申し上げます。ありがとうございました。
【土肥分科会長】
 ありがとうございました。
 今期最後ということでございますので,私からも一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。
 本日の審議事項のみならず,それに関連して,各委員からいろいろ御意見をちょうだいしておりまして,例えば30条2項問題の話でありますとか,保護期間の問題でありますとか,その課題というものはよく承知しております。こういう問題について,分科会あるいは法制小委等が,これまで議論してこなかったわけではなくて,大変な時間をかけて議論を重ねてきた経緯がございます。
 しかし,なかなか最後のところでうまくまとまらなかったわけなのですが,私のお願いとしては,ここにおいでになる委員の方々は当然,それぞれ属される団体から,意見をこういう場で主張するように,あるいは,よって立つ団体の考え方というものを反映されることでおいでになっているのだろうと思います。ですけれども,皆さん方の長年にわたり涵養(かんよう)された経験なり,御所見なり,様々な高度な知識,経験というところに基づいてもまた,ここにおいでになっていると思っております。
 そういうことを考えますと,是非とも,単にそれぞれの団体の意見を強く主張されるというわけではなくて,大所高所に立って,いわゆる著作権法1条が目的としておりますところの文化的な所産の利用を図りつつ,著作権,著作者の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与する。この1条の規定の文言というのはなかなかすばらしいなと思うのですけれども,文化の発展にいかに寄与していくかというところを,是非とも考えて発言いただければと思います。
 今年の経験で申しますと,先ほど,国会図書館の資料に関して,この利用の問題について,検討会議の御意見がまとまったところでございます。これを受けて法制小委で検討させていただいたわけですが,検討会議の中で長い期間をかけて,関係者間で,意見調整がついたものを,法制小委で更に突っ込んでお願いするのは,いかがなものかという委員の御意見もございましたけれども,法制小委をあえてお願いした経緯がございます。
 それを受けて,私,詳しくは承知していないのですけれども,事務局には,恐らく大変御苦労があったかと思いますし,更に,ここにお座りになっている委員の中にも,一端まとまったものを更にということでございますので,大変御苦労をかけ,汗をかいていただいたのではないかなと思っております。
 しかし,その結果,東京でできることが北海道でも,九州でもできる。著作権法の今,置かれている,デジタル・ネットワーク社会の中の著作権法はどういうものかということの一端は,恐らく示されたのではないかと思っております。
 したがいまして,今後,難しい問題が出てまいりまして,更にいろいろと困難な問題に直面すると思いますけれども,委員におかれましては,是非とも著作権法1条の目的を十分頭に置いていただいて,大所高所から,日本の国益を実現するにはどうすればいいかというところで御意見を賜りたいと,このようにお願いいたしまして,私のあいさつにかえさせていただきたいと思います。
 以上をもちまして,今期の文化審議会著作権分科会は終了ということになります。本日はどうもありがとうございました。
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